長野県にある「上高地」は、東京からも数時間程度でアクセスできる距離ながら、大らかな自然を味わえる山岳リゾートです。上高地の人気観光スポットやシーズン別の魅力、楽しみ方、東京や名古屋など主要都市からのアクセス方法をまとめました。
長野県の名所「上高地」とは
長野県・北アルプスの間に横たわる平野、「上高地」。上高地のウォーキングコースは約10kmにも及び、周囲には川や池、林や湿原といった現代ではなかなか見かけることが少なくなった豊かな自然が広がります。1952年には、日本の特別天然記念物と特別名勝に指定されました。
上高地が観光地として広く知られるようになったのは約100年前のこと。1927年に上高地を舞台とした小説が発表されたことや、日本を代表する景勝地の一つとして選ばれたことがきっかけとなり、観光客が訪れるようになったのです。
天然記念物や名勝地に指定されたことにより、上高地の自然を保護しようという動きが早くから広がりました。そのため、上高地には珍しい植物や魚、動物たちが多く生息しています。
上高地の人気観光スポット
川や山、池……。あらゆるスポットが集まる雄大な上高地。東京や名古屋といった都会から数時間程度の近さながら、別世界のような自然が広がります。ここからはそんな上高地に行くならぜひ訪れてほしい観光スポットをピックアップしてご紹介します。
上高地のシンボル的存在「河童橋」
上高地でもシンボルのような存在が「河童橋」です。1891年に設置された初代の河童橋は、丸太でできた簡単な橋でした。その後、4回の架け換えが行われ、1997年に設置された5代目が現在の河童橋となります。
澄み切った水が流れる「梓川」にかかる河童橋は、美しい梓川と山々を一望できる場所となっています。紅葉が美しい秋や新緑が瑞々しい夏など、木々が色付く様子も眺めることができます。
ちなみに、日本でも有数の文豪・芥川龍之介が書いた『河童』は、上高地や河童橋が舞台となっています。芥川の代表作として有名な作品は、上高地が知られるきっかけのひとつとなりました。
鏡のような水面が美しい「大正池」
長野県と岐阜県にまたがる山「焼岳」。この焼岳が噴火したことでできたのが「大正池」です。大正池は周囲が山々に囲まれており、大正池を生み出した焼岳も眺めることができます。天気が良い日にはその山々が池に映り込み、鏡のような光景が広がります。
さらに大正池には、カラマツやシラビソなどの木々が、倒れずに立ったまま枯れるという「立ち枯れ」という状態で並びます。
上高地の象徴ともいえる「穂高連峰」
上高地の象徴ともいえる存在が「穂高連峰」。通称・北アルプスと呼ばれる山岳エリアの南部にあり、涸沢岳、奥穂高岳、明神岳、北穂高岳、前穂高岳、西穂高岳といった山々が連なっています。イギリス人宣教師のウォルター・ウェストンが山案内人である上條嘉門次と共に穂高連峰の山々に登頂し、交流を深めた場所としても知られています。
どのエリアにいてもその姿が拝める壮大な穂高連峰は、登山者からも人気の観光スポットとなっています。
槍ヶ岳や穂高へ続くスポット「横尾」
槍ヶ岳と穂高連峰、蝶ヶ岳といった山々への分岐点である「横尾」。上高地に流れる梓川の起点でもあります。観光客が多く訪れる河童橋や大正池とはまた趣が異なり、静かで荘厳な雰囲気が流れる横尾。クライマーのスポットである屏風岩や山々を臨む横尾大橋など、散策しがいのあるスポットがたくさんあります。
周辺には様々な草花が生息し春先には「イワカガミ」や「ニリンソウ」といった可憐な花が咲き誇ります。ほかにも上高地には希少な植物が見られるスポットや、思わず写真に収めたくなるような絶景が数多くありますよ。
上高地のおすすめ観光シーズン
上高地には咲き誇る花々や新緑、紅葉といった季節ごとの魅力がたっぷり。開山から閉山までの時期で、おすすめのシーズンをご紹介していきます!
5月下旬~6月上旬の上高地の見どころ
5月下旬~6月上旬の上高地は木々が芽吹き、瑞々しい新緑が美しい時期です。気候も暖かく、ハイキングにはぴったり。白く可憐な「ニリンソウ」が咲き始めるのもこの時期です。一面に広がるニリンソウの群生上高地ならではのもの。
「ウォークラリー」や「ウェストン祭」といった、上高地の自然に触れあえるようなイベントも開催されますよ。
7~8月の上高地の見どころ
上高地は真夏でも最高気温が23度程度。最低気温になると14度まで下がることもあるため、数多くの観光客が涼しさを求めて訪れます。
また、上高地には梓川や大正池、田代池といった水場が多く、夏の暑さを忘れて涼を取れるはず。毎年8月11日の山の日には「四方山祭り」も開催。アーティストによるライブや講演、クラフト作品の販売などが楽しめますよ。
夏であっても朝や夕方は冷え込むため、羽織ものを持っていくことをおすすめします。
10月頃の上高地の見どころ
気温がぐっと下がる秋は、防寒具などが必須となる季節。そして、上高地のあちこちに色付く紅葉を見ることができます。上高地のシンボル的スポットの河童橋からは、鮮やかに染まる紅葉と川、山々を一望できます。梓川沿いに並ぶ木々の紅葉を見つめながらウォーキングするのも趣深いです。
大正池の立ち枯れと紅葉の組み合わせは、この時期だけ見られる珍しい光景です。ちなみに上高地は11月16日~翌年4月中旬までが閉山期となっていて、お店や施設なども閉まっています。交通機関もストップしてしまうため立ち入ることができません。
滞在時間別、上高地のおすすめウォーキングコース
今回は上高地のおすすめの過ごし方として、日帰りで行ける「1~2時間コース」と「3~4時間コース」、「半日コース」をご紹介していきます。上高地の入口ともいえる「上高地バスターミナル」からスタートするおすすめコースです。
上高地のおすすめ1~2時間コース
最初にご紹介するのは1~2時間程度で回れるコースです。比較的ゆるやかなルートなので、ウォーキングシューズなど軽装備でも対応できます。
上高地バスターミナル→河童橋→ウエストン碑→田代橋・穂高橋→上高地バスターミナル
[スポット1]河童橋
バスターミナルをスタートし、まずは梓川左岸を歩きつつ、河童橋へ。ビューポイントであるだけでなく、お土産屋や売店もあるので、食事をするのにもおすすめです。
[スポット2]ウエストン碑
河童橋を渡り、梓川右岸の方に向かうと「ウエストン碑」があります。イギリス人の宣教師であるウォルター・ウェストンは、日本に登山の魅力を伝えた人物。上高地の名前を世界に発信した功労者でもあります。
[スポット3]田代橋・穂高橋
長野県産の木々からできた田代橋・穂高橋。穂高連峰と焼岳を臨むことができるスポットです。ベンチや東屋も設置されているので、休憩にも便利です。
田代橋・穂高橋周辺では、ニリンソウやキツリフネといった植物も楽しめます。体力に自信のない方や、カジュアルに上高地の景色を楽しみたい人にはおすすめですよ。
上高地のおすすめ3~4時間コース
数多くのスポットが集まる上高地は、3~4時間ほどあればより自然に触れ合うことができます。
上高地バスターミナル→河童橋→穂高神社・明神池→ウエストン碑→田代橋・穂高橋→中の瀬園地→上高地バスターミナル
[スポット1]穂高神社・明神池
河童橋を渡り、梓川右岸を歩きます。そこから1時間ほど歩けば、荘厳な「穂高神社」が見えます。奥宮にある「明神池」は、穂高神社の神域として知られます。池に集まるマガモやオシドリたちといった野鳥も見所です。
[スポット2]中の瀬園地
梓川の右岸に沿って川の下流に向かって歩きましょう。すると、ウエストン碑と田代橋・穂高橋を越えたところに「中の瀬園地」が見えます。中の瀬園地では、梓川と遠くに見える穂高連峰が同時に拝むことができます。
穂高神社や明神池を回るコースでは、自然だけでなく神秘的なスポットにも触れることができますよ。
上高地のおすすめ半日コース
しっかりと上高地を堪能したいのなら、半日を掛けてじっくりと周りましょう。
上高地バスターミナル→河童橋→穂高神社・明神池→徳沢→新村橋→ウエストン碑→田代橋・穂高橋→上高地バスターミナル
[スポット1]徳沢
梓川右岸に位置する草原「徳沢」。ハルニレやカツラといった木々に、群生するニリンソウなど、上高地でも有数の植物を楽しむことができるスポットです。キャンプ場でもある徳沢では、のんびりとした時間を過ごせますよ。
[スポット2]新村橋
梓川上流にかかる「新村橋」。横尾や槍ヶ岳といった山々への登山口も近い新村橋の近くでは、都会では中々見ることができないようなそのままの自然を味わえるはず。
徳沢や新村橋のエリアは山道に近いため、トレッキングシューズなどの装備で挑むことをおすすめします。
上高地へのアクセス方法
都会とは雰囲気がガラリと変わり、美しい風景や植物に出会える上高地。最後に東京と名古屋から上高地への主なアクセス方法を紹介します。
上高地ではマイカーでのアクセスを規制しています。自然を守るためにも「高速バス」または「電車+バス」を利用しましょう!
上高地への行き方(1)高速バスでのアクセス
最初にご紹介するのは「高速バス」を使ったアクセス方法です。新幹線などを使って行くのと比較して、安い値段で乗り換えも少なく上高地に到着できるので、荷物が多い人やお子様がいる人にもおすすめのアクセス方法ですよ。
東京から上高地へのアクセス
・新宿駅からのアクセス(直行バス)
バスタ新宿・JR「新宿」駅西口→上高地バスターミナル(さわやか信州号で約5時間)
料金:6500円~※スタンダードシートの通常料金
・新宿駅からのアクセス(松本で電車またはバスに乗り継ぎ)
バスタ新宿→松本バスターミナル(高速バス「松本線」で約3時間30分)
松本バスターミナルから上高地行路線バスに乗換。または、松本駅から松本電鉄上高地線(電車)乗車、新島々下車、新島々バスターミナルから上高地行バスに乗換。
【新宿から松本バスターミナルまで】
【松本バスターミナルから上高地まで】
・渋谷からのアクセス(直行バス)渋谷マークシティ→上高地バスターミナル(さわやか信州号で約7時間20分)
料金:8,200円~※スタンダードシートの通常料金
※情報は2021年度のものです
名古屋から上高地へのアクセス(直行バス)
名鉄バスセンター→上高地バスターミナル(名鉄バスで約6時間5分)
料金:7800円
※上記のバスの2020年運行内容は2020年6月現在確定していません。情報は2019年のものです。2021年度の運行は終了しています
上高地への行き方(2)電車+バスでのアクセス
次に紹介するのは電車とバスを使ったアクセス方法です。乗り換えは多いのですが、高速バスでのアクセスよりは早く到着できるというメリットがあります。
東京から上高地へのアクセス(電車+バス)
東京(東京駅・新宿駅・上野駅・浅草駅など)→JR「長野」駅(北陸新幹線で約1時間20~50分)、JR「長野」駅→JR「松本」駅(普通電車で1時間15~30分※ワイドビューしなので50~55分)、松本電鉄「松本」駅→「新島々」駅(上高地線電車、約31分)、新島々バスターミナル→上高地バスターミナル(アルピコ交通路線バスで約1時間5分)
所要時間:約4時間11~56分 料金:11620円※東京駅発・新幹線自由席利用の場合
名古屋から上高地へのアクセス(電車+バス)
・ルート①
JR「名古屋」駅→JR「松本」駅(ワイドビューしなので約2時間4分)、松本電鉄「松本」駅→「新島々」駅(上高地線電車、約31分)、新島々バスターミナル→上高地バスターミナル(アルピコ交通路線バスで約1時間5分)
所要時間:約3時間50分~4時間15分 料金:8320円
・ルート②
JR「名古屋」駅→JR「高山」駅(ワイドビューひだで約2時間22分)、高山濃飛バスセンター→中の湯(アルピコ交通路線バスで約1時間10分)、中の湯→上高地バスターミナル(アルピコ交通路線バスで約14分)、新島々バスターミナル→上高地バスターミナル(アルピコ交通路線バスで約1時間5分)
所要時間:約4時間32分~5時間5分 料金:8270円
電車とバスを使うアクセスは乗り換えが多いですが、上高地へ行く前に長野や松本を経由するので、他の観光地に立ち寄ることもできます。
一帯が特別天然記念物に指定されていることもあり、美しい自然がそのままに保護されている上高地。少し歩いただけでも珍しい植物や澄んだ川の流れなどに遭遇できます。いつもとは違った観光を楽しみたい人はいかがでしょうか。
大学卒業後、1年ほど広告会社で経験を積んだあと、大学時代に報道サークルに所属した経験を活かし、フリーのライターとして活動を開始。関西在住として地域に根差した強みを活かし、近畿圏で行なわれるアート・音楽・お笑い・グルメ・エンタメなど多岐にわたりイベント取材・レポート記事を執筆し、写真撮影も担当。また、地域ならではの「あるある」ネタやその地方の文化・歴史に関する深堀りネタにも注力。現在は5媒体以上のメディアで定期的に取材・記事執筆を行なう。
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