日本一の山として知られる富士山には、毎年多くの人々が集まります。人気の富士山周辺観光はもちろん、いつか富士登山に挑戦したい人も多いのではないでしょうか。そんな富士登山にあたって、おすすめの登山コースや持ち物、天気、アクセス情報など、事前に知っておきたい情報をまとめました。
富士登山のベストシーズンは?
標高3776mの富士山は、地上と比べると天候や気温は大幅に異なります。そのため、登山シーズンを守って登山することが非常に大切です。富士山の登山シーズンは、例年7月上旬から9月上旬まで。そのシーズン以外は登山道やトイレ、宿泊施設が閉鎖されます。
シーズン外の富士登山はより厳しい環境になるので、遭難者や事故も発生します。また、トイレが閉鎖されることで排泄物が放置され、生態系へ影響が出るという事態にも。富士山はベストシーズンである夏季に登山を楽しみましょう。
初心者におすすめの時間帯、日にち、コースは?
富士登山においてもう一つ確認しておきたいのが、登山に行く時期、時間帯です。富士登山のシーズンは、2カ月という短期間。そのため、シーズン中の土日祝日やお盆休みは特に登山客が集中します。また、富士登山の醍醐味である「ご来光」を見るために、23時から5時までは頂上付近や8~9合目が非常に混雑することも。
混雑期間は山小屋が予約できないこともあります。自分のペースでゆったり登山を楽しみたい人は、できるだけ混雑を避けられる平日の昼間に登り始めるのがいいでしょう。
またルートによっても混雑具合は異なります。初心者には登りやすく施設が整っている吉田ルートか富士宮ルートがおすすめですが、基本的には混雑します。登山に少し自信があり、混雑を避けてご来光を見たい場合には、比較的上級者向けの御殿場ルートか須走ルートを利用し、平日に登山計画を立てるのがおすすめです。
富士登山前に必要な準備
豊かな自然を全身で味わえる富士山。それだけに自然が猛威を振るい、危険な目に遭うこともあります。少しでも安全に登山をするために、登山前に準備を整えておくことは何より大事です。
●装備
はじめに、富士登山に必要な装備をご紹介します。荷物が重くなることは登山において苦しいことでもありますが、必要な装備を持って登山に挑むことが、安全確保にも繋がります。
・シャツの換えやウィンドブレーカー、保温性のあるセーター
とにかく天候が変わりやすい富士山。寒さによって体力を奪われたり、風邪になったりすることも十分にあり得ます。すぐに着替えられるような換えの服や、防寒具は欠かせません。
・ヘッドライト
夜間登山には必須のアイテムです。懐中電灯だと手が塞がるため、頭に取り付けられるヘッドライトにしましょう。
・レインウェア
天気予報では晴れでも急に雨が降ることもあるのが富士山。手が塞がる傘は避け、両手が自由に使えるレインウェアを選びましょう。富士山では風が非常に強いので、ビニールのレインコートは風にあおられて破けます。ズボンと上着に分かれたもので耐久性の高い登山用の雨具が望まれます。
・ヘルメット
近年、落石によって負傷する事故が発生しています。落石だけでなく、転倒への備えや噴火対策のため、ヘルメットを持っていくことを忘れずに。
・靴
砂や砂利が入りにくい底が硬いハイカットのものを履きましょう。
・小銭
富士山ではトイレの利用の際には、場所により100~300円のトイレチップが必要となります。カードが使用できないため、登山には必ず小銭を持っていきましょう。ご紹介した装備は必要最低限なものばかり。他にも日焼け止めや非常食など、快適に登山するためのアイテムは確認しておきましょう。
●トレーニング
最低でも5時間は急な山道を歩く必要があり、砂利やジグザグ道など、ハードな道を歩くこともある富士登山。標高が高くなればなるほど酸素は薄くなり、高山病などの症状に陥る可能性もあります。
日頃からスポーツをする人でもハードな富士登山なので、登山にあたって体力作りをしておくことは大切です。ジョギングやハイキングなどの有酸素運動を行い、心肺機能を鍛え、スクワットや腹筋をして筋肉に負担をかけましょう。
何より、体調不良を引きずったまま登山に挑むのが最も危険。登山1週間前には睡眠や食事をしっかりと摂り、もし登山日にも体調不良が続くようなら中止も視野に入れましょう。
●ルールを覚えておく
富士山にはさまざまな植物や動物が生息しています。そのため「富士山カントリーコード」はじめとし、環境を保全するためのルールが設けられています。
富士山カントリーコードを含めた、代表的なルールは以下の通りです。
・動植物の採取禁止
・溶岩や石の持ち出し禁止
・テント設営やたき火の禁止
・ペット等の放し飼い禁止
・ゴミは絶対捨てずに、すべて持ち帰る
・登山道を外れて歩かない
富士山は、五合目より上は国立公園特別保護地区に指定され、自然保護のため厳しい規制がかけられています。常にルールを頭の隅に置いておき、自然を守りましょう。
覚えておきたい「富士登山」4つの登山ルート
富士山に登るなら必ず頭に入れておきたいのが登山ルートについてです。富士山には吉田ルート、須走ルート、御殿場ルート、富士宮ルートの4種類の登山ルートがあります。
富士登山ルート①吉田ルート
吉田ルートは登山道と下山道が別になっています。山小屋や救護所など施設が最も充実しており、首都圏からのアクセスが便利であるため、富士登山者の半数以上が利用するといわれています。ただし、混雑に巻き込まれる可能性が高いということは覚えておきましょう。
五合目標高:2305m
往復の距離:約14km(上り 約6.8km、下り 約7.2km)
登頂時間の目安:上り 約6時間、下り 約4時間
富士登山ルート②須走ルート
樹林に囲まれた登山ルート。見通しが悪くなることもあり、八合目から岩場が増えるというやや上級者向けのルートです。御殿場ルートに次いで混雑しないので、落ち着いて登山したい場合にはおすすめです。
五合目標高:1970m
往復の距離:約13km(上り 約6.9km、下り 約6.2km)
登頂時間の目安:上り 約6時間、下り 約3時間
富士登山ルート③御殿場ルート
山頂までの距離が長く、斜面が多いルートです。登りはハードなので、上級者向きなルート。
下りは「大砂走り」という快適なルートで下山することができるので、登山に慣れている人にはおすすめです。また、4つのルートのうち、唯一マイカー規制されていないので、登山口まで車で行きたい人も快適でしょう。
五合目標高:1440m
往復の距離:約19km(上り 約10.5km、下り 約8.4km)
登頂時間の目安:上り 約7時間、下り 約3時間
富士登山ルート④富士宮ルート
標高が最も高く、山頂まで最短ルートである富士宮ルート。登山ルートと下山ルートが同じなので、一部が混雑する場合も。山小屋が多く、登山の距離も短いので初心者向けのルートです。
五合目標高:2380m
往復の距離:約8.6km(上り 約4.3km、下り 約4.3km
登頂時間の目安:上り 約5時間、下り 約3時間
4つのルートは、メリット・デメリットもそれぞれ異なります。登山する際の日程や自分の体調、経験値などを含め、どの登山ルートが合っているかをよく考えて選択しましょう!
富士山へのアクセス方法
富士山へのアクセス方法は、大きく分けて電車、バス、車の3種類。各ルートの最寄り駅までバスや電車でアクセスしたあと、五合目まではバスか車で向かいましょう登山シーズンには「マイカー規制」も行われているので、事前に情報をチェックしておくことが重要です。
●電車+バスでのアクセス
まずおすすめしたいのは、電車とバスを使ったアクセスです。マイカー規制に左右されず、環境にも優しいアクセス方法です。4つの登山ルートに最寄り駅も異なるので、東京からの主なアクセス方法をまとめました。
・吉田ルート
【電車】
JR「東京」駅→JR「新宿」駅→JR「高尾」駅→JR「大月」駅→富士急行線「富士山」駅(約3時間4分)片道料金:2199円
【バス】
富士急行バス「富士スバルライン五合目」に乗車(約1時間)片道料金:1570円
・御殿場ルート&須走ルート
【電車】
JR「東京」駅→JR「国府津」駅→JR「御殿場」駅(約1時間56分)片道料金:1980円
【バス】
・御殿場ルート
富士急行バス「御殿場口新五合目」に乗車(約40分)片道料金:1110円
・須走ルート
富士急行バス「須走口五合目」に乗車(約1時間)片道料金:1540円
・富士宮ルート
【電車】
JR「東京」駅→JR「沼津」駅→JR「富士」駅→JR「富士宮」駅(約3時間7分)片道料金:2640円
【バス】
富士急行バス「富士宮口五合目」に乗車(約1時間20分)片道料金:2030円
いずれも登山シーズンである夏季の情報です。シーズン外となると、バスの本数なども変化するため気を付けましょう。
●高速バスでのアクセス
大阪や名古屋など、他の地域から富士山に向かう場合は高速バスがおすすめです。中でも最も利用人数が多い吉田ルートからのアクセス方法をご紹介します。
・名古屋
名鉄バスセンター→「富士山」駅(約4時間半)片道料金:4500円
・大阪
天王寺駅(あべのハルカス)・近鉄なんば駅西口(OCATビル)・大阪駅前(地下鉄東梅田駅)→「富士山」駅(約10時間15分~)片道料金:5600円~
・京都
京都駅八条口(F3のりば)→「富士山」駅(約9時間12分)片道料金:5100円~
・岐阜
高山濃飛バスセンター→「富士山」駅(約4時間50分)片道料金:5000円
高速バスでアクセスする場合は、電車の乗り換えなどなくスムーズに向かうことができるので便利です。また、よりリーズナブルな往復料金やパック料金も。
●車でのアクセス
登山装備を積み込み、自宅やホテルからスムーズにアクセスできるメリットがあるのが、車でのアクセス。東京や大阪など、各高速道路を使った車でのアクセス情報をまとめました。
・東名高速道路
■富士宮ルート
東京 東名道・東京料金所→富士IC(約1時間)
大阪 名神道・吹田IC→富士IC(約4時間)
■御殿場ルート・須走ルート
東京 東名道・東京料金所→御殿場IC(約1時間)
大阪 名神道・吹田IC→御殿場IC(約4時間半)
・中央自動車道
■吉田ルート
東京 中央道・調布IC→河口湖IC(約1時間)
大阪 名神道・吹田IC→河口湖IC(約5時間50分)
●富士山のマイカー規制とは
毎年登山シーズンには、多くの登山客が集まります。そのため、渋滞解消や環境保護のために「マイカー規制」を行っています。マイカー規制期間中は、各ルートの五合目まで、車で向かうことができなくなります。
規制対象となるのは、レンタカー含む自家用車、自動二輪車、原付バイク。規制中の期間に車を利用する場合は、富士山の麓に駐車し、五合目までバスで向かいましょう。マイカー規制の期間は、毎年異なりますので注意しましょう。
・駐車場
利用料金:1台 1000円前後
利用期間:24時間利用可能
・バス
往復料金:2000円~
また、登山ルートのうち比較的混雑しない御殿場ルートのみマイカー規制の対象ではありません。体力に自信がある人は御殿場ルートを利用してみては?
初心者におすすめな登山ツアー
富士登山において、必要な装備やルート、注意事項など、覚えることはたくさん。山登りに慣れていない人や富士山に初めてチャレンジするという人にとってはなかなかハードルが高いのではないでしょうか。
そんな人におすすめしたいのは「登山ツアー」です。各旅行会社やツアー会社が主催する登山ツアーは、富士登山に慣れたガイドが先導してくれるので、初めての富士登山でも安心。
東京駅をはじめとした首都圏の主要駅で集合し、各登山口までバスで向かうため、登山口までのアクセスで悩むこともありません。
また、関西や東海地方、東北地方など東京以外の地域からバスでアクセスするツアーパックもあります。
●ツアースケジュールの例
旅行会社が取り扱う登山ツアーの日程イメージをご紹介します。
【1日目】
「新宿」駅をバスで出発 (7:30)
富士山五合目・雲上閣到着(11:00)
登山スタート(12:30~)
約4時間で富士山八合目・山小屋到着。山小屋で夕食。(16:30)
仮眠(23:00まで)
【2日目】
山小屋を出発(23:00~)
約4時間で富士山山頂に到着、ご来光を見る(5:00)
下山開始。富士山五合目到着(11:00)
富士山ふもとの宿泊施設にて休憩(12:00~)
東京駅に到着(17:30)
会社や出発場所、日数により異なりますが、東京初の宿泊ツアーの場合、料金は1万7000円から3万5000円ほど。ツアーパックには経験豊富なガイドさんが付いてくれるだけでなく、山小屋の予約や食事まで確保されているので安心です。
いきなり富士登山に挑むのは怖い、という場合はまずツアーで参加してみてはいかがでしょうか?
まとめ
富士山では登山が初めてという方も多く、マナーやルールなど理解不足なまま登山し、事故や傷病などに繋がるケースも。登山にあたって「無理な追い越しはしない」や「落石を起こしたら大声でまわりに知らせる」などのルールやマナーを守り、安全で快適な富士登山を楽しみましょう!
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