海外で人気を集める商品を扱う企業に、開発秘話や日本ならではのこだわりをお聞きし、各国の編集者がいる『LIVE JAPAN』目線で、その技術力と魅力を紹介するのが「世界に届けたい逸品、日本の伝統技術ーMade in JAPAN」特集です。
今回は、今年で発売40周年を迎えるロッテの『雪見だいふく』。アイスをお餅で包むという斬新なアイデアで、子どもから大人まで大好きな日本では国民的なアイスです。外国人からも高い人気を誇る、日本ブランドを代表するアイスでもあります。
そんな『雪見だいふく』はどうやって生まれたのか、他社がマネできないおいしさの秘密、今回の40周年リニューアルではどんなところが変わったのかについて、発売元の株式会社ロッテに聞いてきました。開発ご担当者様もおすすめ、『雪見だいふく』ならではのアレンジメニューも必見です。
■お話をうかがったのは、株式会社ロッテの大塚さん
今回、『雪見だいふく』の開発エピソードや、40周年のリニューアルシリーズについて詳しく教えてくれたのは、株式会社ロッテ、ブランド戦略部雪見だいふくブランド課の大塚さんです。
ご自身も甘いものが大好きで、本場イタリアで開催されたジェラート職人のコンテストでも入賞するほどの腕前。『雪見だいふく』への愛情も、ひしひしと伝わってきました。
■雪見だいふくはなぜ生まれた?
―雪見だいふくは、どういった経緯で誕生したのですか?
「当社が『雪見だいふく』を発売したのは1981年、今年で40周年を迎えます。当時、アイスクリーム市場は乳業メーカーが席巻しており、後発のロッテは参入しづらい状況でした。そのため、他社とは違うもの、何か奇抜なものやインパクトのあるものを出さないと、アイス市場で戦っていけないと思ったんです。
そこで、1980年に『雪見だいふく』の前身である、アイスをマシュマロで包んだ『わたぼうし』という商品を売り出しました。すると女子高生を中心に若い世代で、とても人気が出たんです。
これをもっと幅広い層に広めていけないか?と思い、若者向けのお菓子のイメージが強いマシュマロの代わりに、和菓子でも使われるお餅にしてはどうかと。お餅は老若男女問わず、日本人なら馴染みのあるもので、かつ日本の伝統的な食材でもあります。
また、マシュマロだとどうしても外側が分厚くなってアイスとマシュマロの味わいの両立が難しかったのですが、お餅ならもっと薄く包むことができるのでは?と、お餅でアイスを包むというアイデアで商品を作っていこうとなりました。
■『雪見だいふく』のモチモチ食感!生み出すまでの苦労
―とはいえ、アイスをお持ちで包むという技術、さらにこのお餅のやわらかい食感を実現するというのは、そう簡単ではなかったのではないでしょうか?
「まさにおっしゃる通りで、かなりの難題でした(笑)。お餅は冷凍すると固くなってしまいますが、アイスなので当然冷凍保存が必要です。冷凍室に入れた状態で柔らかさを保つにはどうすればいいのかと、餅粉の産地、品種、粒子のサイズなど、数えきれないほどのパターンを検証して、ようやく黄金比にたどり着いたんですよ。」
「さらにもう一つの課題がアイスを包むということです。お餅で包むためには、かなり高い温度でないと包めません。ですがそうなると、当然アイスは溶けてしまいます。マイナスとプラスの温度帯、まったく真逆のものをどうしたらお互いの良さを活かしたまま包めるのかということで試行錯誤しました。アイスの配合、作り方を工夫して、溶けにくいアイスを開発したんです。」
■冬にアイスを食べる!『雪見だいふく』が新たな食文化を生み出した
―今年で40周年と、かなりのロングセラー商品です。ここまで長く多くの人に支持されているポイントは、どんなところだと思われますか?
「おかげ様で、本当に多くの方に愛される商品になっています。以前、当社で行った調査では、日本での『雪見だいふく』の認知率は90%以上とのことでした。以前は、学校給食でも出されていたこともあるほどでしたし、これだけ多くの世代に広く知っていただけているアイスというのは、おそらく他にはないと思います。」
「一番の理由は、ユニークな商品であったということだと思います。年配の方にお聞きすると、発売したときの衝撃が今でも忘れられないとおっしゃいます。『雪見だいふく』のモチモチな食感、お餅をアイスで包んだ大福というのは他に代わるものがない、唯一無二のものだと言っていただけるのが嬉しいですね」
「また、『雪見だいふく』は、冬にアイスを食べるという新しい食文化を生み出した商品でもあります。当時、アイスは夏のクールダウンのための嗜好品でした。
ただ、徐々に家庭に暖房が普及してきた時代でもあったので、あえて「こたつに入りながら、雪を見ながら冬でも食べられるアイスにしよう!」というコンセプトで勝負したんです。
発売時期は、他社の発売の少ない10月に。パッケージは、ほとんどの商品が青色の涼しげなカラーが主流のなか、あえて温かみのある赤色を選択しました。
極めつけは、雪を見ながらアイスを食べる『雪見だいふく』というネーミングです。ライバルが少ないタイミングで、今までにないインパクトを出して印象づけられたというところが、一気に認知していただけた理由ではないかなと思います」
■海外では、日本にないオリジナルの味も!
―現在、海外へはどのように展開しているのですか?
「数十年前から、お米文化に馴染みのあるアジアを中心に輸出をしていて、現在は、海外20カ国以上で販売されています。2017年からはコストコなど海外の店舗と協力して専売商品を作るようになり、欧米にも本格的に展開しています。
海外のアイスはシンプルなものが多い一方、日本のアイスは形状や味など凝ったものが多く、海外の人にとってはめずらしいのだと思います。特に『雪見だいふく』のように、アイスがお餅に包まれている丸い形状、かつあのモチモチ感というのは、海外では見られないのではないでしょうか」
―海外限定の味はあるのですか?
「はい、日本では発売していない海外限定のものが、6種類あります。例えば、アジアで展開しているマンゴー味などは人気です。日本だと、和のテイストなのにマンゴー?とあまりピンとこないかもしれませんが、現地ではマンゴーそのものが人気なので『雪見だいふく』でもとても評判がいいんです。
最近では、コストコ専用商品でもオリジナルフレーバーを作っていますね。パッケーッジについても、海外ではオリジナルのマルチパックでの販売が多いです。2年ほど前から日本のような2個入りを発売していて、アジアでは人気になっています」
―海外展開してから、想定外の反応はありましたか?
「海外ではサイズの大きなアイスが主流なので、『雪見だいふく』の小ささに良い反応をいただきました。特に最近では、糖類制限やダイエット、健康志向の方が増えているので、小さいものが受け入れられています。
お餅という原料も和食に通じてヘルシーなイメージがあるようで、「健康的なアイス、ヘルシーなアイス」として捉えていただいているようです。日本らしいお餅の存在そのものやモチモチ食感がウケると思っていたのですが、健康面というのは意外でしたね」
―新しい味を出す際は、どのように決めているのですか?
「通年で販売しているものは、定番のバニラ味の2個入りと9個入りのミニサイズ。加えて、春夏秋冬の季節ごとに商品を出しています。2021年は、春にクリームチーズ、夏にクリームパンで有名な八天堂さんとのコラボ商品。この秋は、「コクのショコラ」と「とろける生チョコレート」の2種類を秋冬限定で販売しています。」
「11月にも、博多の銘菓「鶴乃子」の石村萬盛堂さんとコラボした商品が発売予定です。実は「鶴乃子」は『雪見だいふく』誕生のきっかけになった商品です。40周年を迎えるにあたり、コラボさせていただくこととなりました。
このように新しい味を開発したり、他社様のさまざまな商品とコラボしたりすることで、より多くのお客様に『雪見だいふく』を知って、食べていただきたいと思っています。
日本は豊食なので、次から次へと新しい商品を出していかないと飽きられてしまいます。そういった中でも、長くずっと残っているというのもめずらしいですし、ありがたい限りです。
海外ではここまで商品転換をせず、同じものをずっと発売し続けるという傾向が強いですね。日本ほどの頻度とはいかなくても、ニーズがあればどんどん新しいフレーバーは出していきたいと思っています」
■40周年の新『雪見だいふく』はここが変わった!リニューアルポイント
―そんな『雪見だいふく』の、今回のリニューアルポイントについて教えてください。
「『雪見だいふく』はお餅が伸びるほど柔らかい食感が特徴で、それがお客様から高い評価を得ています。同時に柔らかさに加えて、もっとお餅の食感を楽しみたいという声も多くいただいていたんです。
そこで、柔らかさを保ちながらも、食べたときのお餅の食感がもっと感じられるように弾力を加えました。その名も「弾むぷにぷにモチ」です。
お餅はみなさんが想像されている以上に繊細で、微妙な配合や温度、作り方が変わってしまうと伸びが無くなったり硬すぎてしまったりしまうんです。そのため、あらためて一から原料を見直して、数え切れないほどの試作を行いました。
実は発売以来、お客様の声を参考に少しずつリニューアルを加えているんです。2020年は、アイスを改良して濃厚感がアップしているなど、よりご満足いただけるものをと研究を続けていています。
今回は雪見だいふくにとってメモリアルな40周年のタイミングと、弾力のあるモチモチ食感が実現したことことから、思い切って大々的なリニューアルに踏み切りました」
■『雪見だいふく』をもっと楽しむ!47都道府県のご当地レシピ
『雪見だいふく』は色が白くお餅を使ったシンプルな味わいなので、いろいろなメニューにアレンジできるのも魅力のひとつ。ロッテでは、自社のサイトで『雪見だいふく』を使ったアレンジメニューを紹介しています。
なかでもユニークなのが「47都道府県レシピ」。全国各地のご当地食材・特産品を使ってアレンジしたものや、その地域の名物をイメージしたもっと楽しめる雪見レシピです。
■担当者さんおすすめ!絶品アレンジ「雪見トースト」を実食!
さらに、開発担当の大塚さんイチオシのおすすめのアレンジメニューが「雪見トースト」。
「しょっぱいと甘い、冷たいとあったかい、さっくりとしっとりと、いろんな味わいと食感が楽しめてとてもおいしいんです。より多くの方にぜひ食べていただきたいです。」
おすすめと聞いたら、食べずにはいられません!そこでさっそく、40周年でリニュ―アルした『雪見だいふく』を使って、LIVE JAPANのアメリカ人スタッフ・ティモシーさんに再現&実食してもらいました。
作り方はとても簡単!食パンにスライスチーズ、『雪見だいふく』をのせて焼き目が付くくらいまでトースターで焼くだけです!
焼き上がると『雪見だいふく』のまわりがトロ―っととけてきます。見るからにおいしそう…。
いざ実食!「これは新しい!不思議な感覚ですね。甘くてトロッとしていて、なんだかチーズアップルパイのような…そんなおいしさです!チェダーチーズのように味や風味、塩味の強いチーズを使っても、もっとおいしくなるかもしれないです。またやってみたい!」と、外国人ならではの意見も。
■進化した『雪見だいふく』で、懐かしさと新しさを味わってみて!
日本人ならどこか懐かしい、外国人なら日本らしくて新しい!変わらない味を保ちながら、常に新しいおいしさも追及している『雪見だいふく』。モチモチな食感はまさに癒し系。心が満たされる幸福感も運んできてくれる日本発のアイスを、今すぐ味わってみてください。
旅ライター×海外ツアーコンダクター。社会人向け教育コンテンツの企画開発・編集担当として11年従事。プライベートでは学生時代から旅に魅了され、これまで世界約50カ国150都市以上をめぐってきた大の旅好き。世界中、日本中のグルメを味わい、自然を感じ、世界遺産や歴史的建築を見て、温泉めぐりをするのが生きがい。そんな旅好きが高じて、会社員から旅ライター×海外添乗員へと転身。現在は、年間100日以上海外を飛び回りながら、旅ライターとしても活動。旅の楽しさ、日本の魅力、世界の多様な価値観をより多くの人に広めるべく、インバウンドの添乗や旅ライターの取材等で、日本各地を訪れて情報発信をしている。
※価格やメニュー内容は変更になる場合があります。
※特記以外すべて税込み価格です。
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