池袋メトロポリタンプラザの程近くのビルの、4階でエレベーターを降りた時、私はすぐ気づいた。その場所「池袋防災館(池袋都民防災教育センター)」が存在する重要な背景についてだ。消防車と象のマスコットが描かれたフォトゾーンのすぐ横には、マグニチュード7.0を記録した熊本地震の写真パネルが飾られていた。2016年に起きたこの大地震では、建物や道路だけでなく、熊本城も被害を受けたという。
さて、2時間の「防災体験ツアー」のスタートだ!
揺れに始まり…
「これから行うのは、日本に未曾有の被害をもたらした、2011年の東日本大震災の揺れの体験です」。大きなテーブルを前に、インストラクターの廣田さんがそう言った。世界でも5本の指に入る大地震…私はこわばり、同伴してもらった日本人の友人・ケイと目を合わせた。地震のメカニズムの説明が終わると、いよいよ体験が始まった。
「揺れが始まったらすぐにテーブルの下に潜って、テーブルの脚をしっかり握ってください」。テーブルを囲むスクリーンに映像が映し出され、震災の短い説明の後、突然、右足の下に強力な衝撃が訪れた。
揺れに終わる…
「来た!」できる限りの速さでテーブルの下に身を沈め、クッションをつかんだ。最初の揺れから2~3秒後に、突然の大きな揺れが訪れた。だが、私はこれがあくまでシミュレーションであると、どこかで安心していた。ジェットコースターに乗る時のように、恐怖でストレスは感じながらも、思わず笑みがこぼれてしまった。
しかしそれは間違いだった。体験は終わったと私が思ったまさにその時、テーブルごと揺り動かされるほどの、これまでにない大きな振動が訪れた。私は驚きとショックで叫び声を上げたが、それはケイも同様だった。日本人の彼女にさえ、全く経験したことのない揺れだったのだ。
始まりと同じく、突然に揺れは収まった。映像は地震から壊滅的な津波のシーンに移り変わった。
私の鼓動の高まりはすぐには収まらなかった。大きな揺れは突然訪れるため、わずかでも余震を感じたらすぐにテーブルに潜ることが安心だと、廣田さんは強調した。もはや地震を過小評価する気持ちは全く起こらなかった。
「火事だー!」日本の消火体験
続いては消火体験だ。体験では水が入った消火器を使い、火事の映像が映った防水モニターにかけて鎮火させる。それは上手くいったのだが、初回の体験では大事なことを忘れていた。それは「火事だー!」と周囲に叫ぶこと!
真剣ながらも興味深いアトラクションのように感じられた地震体験に比べ、消火は手ごたえのある体験だった。「火事だー!」と叫びながら素早く火を消す、という一連の動作を必死で行った結果、私はケイよりも素早く火を消すことができた。
日本で火事が起こる主な要因について説明を受けた。料理油による引火、煙草の火の不始末、そして気づかれにくい場所にある電気コードからの発火は特に起きやすいという。
暗く、臭く、不快な場所
続いては火事において炎と同じくらい危険な、煙の体験だ。「火災のアナウンスが聞こえたらハンカチを鼻と口にあて、姿勢をできるだけ低くして避難してください」と、廣田さん。
いよいよ、煙の充満した迷路のような暗闇の室内を進み始めた。窓の外には、火事を模した光が赤々と灯っていた。周囲はほとんど見えず、ハンカチをあてているにも関わらず鼻をつく煙の臭いに圧倒された。長い脚が幸いしてか、私は驚くほど素早く煙の迷路を抜け、咳と息切れを引き連れながら、安全な世界への扉をなんとか開けた。
学びは楽しい!
実は今回、こんなにも興味深い体験ができるとは思っていなかった。防災訓練というと、面白くないという印象も持たれやすい。しかしここでは、防災という重大なテーマを、楽しく学ぶことができるのだ。どの体験も安全に配慮された方法でありながら、大変リアルな手ごたえが感じられる。地震や火事では、その場を切り抜ける方法を知ると共に、それらが起こる背景についての知識も十分に知る必要がある──気さくでエネルギッシュなインストラクターの廣田さんは、私たちにそれを気づかせてくれた。
あなた自身が体験を
2011年の東日本大震災の発生時、私は日本にいなかった。私が体験した最大震度は震度4だ。だから大地震の際にどう行動すべきかなどは知るすべもなく、不安だった。未知とは、不安を感じる大きな要因だが、防災館は、災害に対する無知と誤解の両方を取りのぞいてくれる。ためらわないで、ぜひ一度実際に体験を!
<池袋防災館>
・体験料…無料
・言語…案内は日本語。説明映像とパンフレットは多言語対応あり
・通常コース…2時間(事前の希望者は救命訓練も追加可能)
・ショートコース…地震体験と防災ビデオの鑑賞のみ。毎日11時10分から開催
・事前予約が必須。Webサイトを参照(日本語、英語)
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池袋都民防災教育センター(池袋防災館)
- 住所 2 Chome-37-8 Nishiikebukuro Toshima-ku, Tōkyō-to 171-0021
ドイツ・ベルリンの大学で日本学科を卒業し、2014年から再び日本で暮らしはじめました。日英翻訳をはじめ、日本の歴史、民俗、現代文化、社会問題などに関心があります。
※価格やメニュー内容は変更になる場合があります。
※特記以外すべて税込み価格です。
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