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富士山に登ってみたいと思ったことはありませんか? 2020年は新型コロナウイルスの影響により残念ながら富士登山はできませんが、せっかく登るなら、気候のよいベストなタイミングで楽しみたいものですよね。
今回は富士山や富士五湖周辺のガイドツアーを行っている「マウントフジトレイルクラブ」の代表理事で、500回以上も富士山に登った経験を持つ太田安彦(おおたやすひこ)さんに、富士山の魅力についてお話をうかがいました。
※マウントフジトレイルクラブ:富士登山ガイドの有志で結成された団体。登山ガイドのほか、環境保全・安全対策なども手掛けている
main image:(c)Yamanashi Prefecture, Fujiyoshida City
富士山に登るなら、狙いたいのはこの時期

富士山の登山シーズンは、例年7月1日から9月10日に限られています。それ以外の時期は、雪が積もっていて危険なのだそうです。
シーズンの中でも、特におすすめの時期はあるのでしょうか。
「7月の山開きから海の日(今年は7月23日)までと、お盆休み過ぎの8月下旬から山閉め(9月10日)までは、あまり混雑しないので、ゆっくりと登山を楽しめます。特に平日は、休日より登山客が6割ほど減り快適ですよ!」
せっかく富士山に登るのですから、少しでも空いている時期を選びたいですね。
おすすめは星空を楽しめる日
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山の上から見る日の出「御来光」を楽しみに富士山に登る人は多いようです。雲海から昇る朝日は荘厳で神秘的。他ではなかなか見ることができない特別な光景です。
そして、もう一つおすすめしたいのが、富士山から見る満点の星空です。
「外灯がない自然の中なので、新月の時期や月が沈んで空が暗いと、空一面に星空が現れます。せっかくなので、流星群の時期にぜひ登ってみてください。運が良ければ、数分間にいくつもの流れ星が見ることができます」
「御来光目的で登山する人々を乗せた車が多いと、ヘッドライトの灯で星が見づらいことがあるので、観察する時間帯や場所を選ぶようにすると良いですね。タイミングが良ければ、素晴らしい天体ショーが楽しめます。かなり寒いので、防寒対策は忘れないでください」
山頂で御来光を見るのであれば、登山者は前日の夕方までに山小屋に到着して仮眠するのが安全なスケジュールです。
「山小屋の近くでは、登山者の列から外れて安全な場所を確保できるので、星空を観察しやすくなります。また寒さが厳しい時や高山病で具合が悪い時は、宿泊や仮眠、休憩ができる山小屋が近くにあると安心です(山小屋の規定や宿泊状況、混雑状況によります)」
「山小屋には水道がなく、水はとても貴重です。歯磨きはペットボトルの水、洗顔はふき取りなどが良いと思います」
富士登山のスケジュール
ここで、富士登山の一般的なスケジュールを見てみましょう。
「宿泊先の標高(合目)によって大きく変わりますが、参考までに八合目の山小屋に泊まる例をご紹介します」
<一日目>
12:00 集合 夏期シーズン、富士スバルラインはマイカー規制となっているので、シャトルバスをご利用ください。詳しくは、ご予約後にご案内をさせていただきます
19:00 山小屋 夕食、自由時間、就寝
<二日目>
2:30 起床、山小屋出発 当日の混雑状況や天候、参加者の体力やペースによって、時間は前後します
4:30 ご来光 混雑を避けるため、八合五勺あたりでゆっくりご来光を拝みます
6:00 登頂、お鉢巡り、剣ヶ峰 記念撮影や休憩取り、天候や体調、体力を考慮して、お鉢巡り(約1時間30分)に出発します。お鉢巡り噴火口を一周するコースで、日本最高峰の剣ヶ峰を目指します ※悪天候の場合は、ガイドの判断によりお鉢巡りを中止することがあります。あらかじめご了承ください
9:00 下山 お鉢巡りを終え、再度休憩、自由時間を取り、下山を開始します
14:00 解散 富士スバルライン五合目に到着、解散
main image:(c)MFTC
「ポイントは、混雑時間を外すこと。しっかり仮眠して体力を温存(回復)させるスケジュールを立てることが重要です」
富士登山には体力が必要?
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富士山は日本で一番高い山。登山にはかなりの体力が必要だと、心配する方もいるでしょう。
実は、筆者も富士登山に挑戦したことがあります。当時はフルマラソンに出場するくらい体力に自信があった筆者ですが、ちょっと登っただけで汗ダクダク、心臓バクバク。富士山に登るには、相当な体力が必要だと感じました。
「どれだけ体力があれば登頂できるかは、分からない……というのが正直なところです。登頂するためには、前提として高山病にかからないことが重要です。だからこそ、私たちガイドは、お客様に合わせたペースでご案内しています」
太田さんは、体力のない子どもやお年寄りの登山を積極的にサポートしているそうです。
「子どもやお年寄りのガイドに力を入れているのも、コツさえつかめば登頂できる確率が上がるからです。自分には登頂は無理だと諦めている方にも、“ちゃんと登れますよ”とお伝えしています」
「富士山では、馬に乗って登っている人を見かけますが、あまり、馬のことは考えない方がいいですね。もちろん楽しみで乗りたい人にはおすすめですが、馬は七合目までしか登れません」
「大切なのは、自分の力だけで登り降りできるだけの体力を作ることです。体力はあればあるほどよく、自信のない方は、まずはスクワットや階段の上り下りからトレーニングを始めるとよいでしょう。ある程度体力がついてきたら、次のステップとして、初心者でも挑戦しやすい低めの山に登ってみましょう。登山のための体力は、やはり山で作るのが一番だと思います」
やはり登山ガイドさんにお願いするべき?
自力で富士山に登る人もいますが、できれば登山ガイドさんをお願いした方がよいのでしょうか?
「初心者の場合、ガイドがいた方が安全なのは間違いありません。ガイドは、緊急時や救護が必要なときに頼りになるだけでなく、事前に安全管理ができる点が最大のメリットです。例えば、歩くペースをコントロールして高山病や低体温症を予防し、落石、落雷から身を守るためのマネジメントを行います」
自然の中では何が起こるか分かりません。慣れない登山ではプロにお任せする方が安心ですね。
気になる高山病と体調不良
登山で怖いものの一つに高山病が挙げられます。高山病は血中の酸素濃度が下がり、頭痛、めまい、吐き気、疲労感などが起こるものです。
「高山病を予防するためには、睡眠をしっかりとる、定期的に休憩をはさみながら、ゆっくりと一定のペースを保って登山することなどが大切です。食事については、日頃からしっかり栄養をとるように心がけましょう。当日はこまめに、行動食(エネルギ―を補給するための軽食)や水分を摂取することが大切です。水分補給は高山病予防にもつながります。トイレでしっかり老廃物を体内から排出することがポイントですね」
しかし、いくら体調に気を配っていても、当日、具合が悪くなる人もいるかもしれません。酸素缶を持参している人を見かけますが、効果があるのでしょうか。
「酸素缶は特にすすめていません。もし、具合が悪くなった人が、酸素缶を持っていれば使用していただくようにしています。重要なのは、歩き方やペース、呼吸です。上手に高度順応(低酸素の状態に順応していくこと)しながら登るようにガイドします」
筆者は山小屋の中で、隣の人と肩が接するほど狭いスペースで寝ていたこともあり、息苦しくなった経験がありました。もし、そのようなことが起こったら、どうしたらよいでしょうか。
「山小屋の外や人がいないところに移動して深呼吸をするのがよいと思いますが、体調や状況にもよります。もし、そのような症状が出たときは、ガイドや宿泊先のスタッフに相談するとよいでしょう」
何度登っても変わらない感動
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登山には不安がつきものですが、苦労を乗り越えて、頂上に辿り着いたときの達成感は格別です。頭上に広がる青空、そよぐ風。何より「富士山に登った」という感動が素晴らしいのです。
「富士山の頂上では、写真を撮っている外国の方を多く見かけます。日本独特の文化である神社も人気があります」
富士山の頂上でも、携帯電話の電波が通っているので、その場で写真をSNSに投稿する人も多いそうです。
「富士山に何度登っても、富士山から絶景を眺めたときの感動は変わりません。また、人との出会いも楽しみの一つで、飽きることはありませんね。富士山の魅力は、非常に深く確かなものだと年々感じています」
ガイドツアー申込方法
では、太田さんが所属するマウントフジトレイルクラブのガイドツアーへの申し込み方法をご紹介します。
春には外国人向けの予約プラットフォームをホームページに掲載する予定だそうですが、現在は、メール(info@mftc.p)で受け付けているそうです。
富士山の山小屋は大変混雑するので、最低でも2週間前までには予約しましょう。山小屋の予約やガイドの手配の関係上、なるべく早めに問い合わせる事をおすすめします。
施設名:一般社団法人マウントフジトレイルクラブ
住所:〒401-0320 山梨県南都留郡鳴沢村字富士山10453-285
電話番号:0555-86-2130
E-mail:info@mftc.jp
HP:http://mftc.jp/
まとめ
いかがでしたか? 富士登山成功のポイントやおすすめの時期、事前の準備などについて、お分かりいただけたでしょうか。
「いきなりチャレンジするのではなく、まずは、もっと低い山に登りながら体力づくりをしましょう。当日はガイドさんにナビゲートしてもらいながら登るのが安全です」
筆者の友人のイタリア人の女子学生は、「富士登山が人生で一番素敵な経験だった!」と言っています。
富士登山は、価値のある素晴らしいものであるのは、間違いないようです。未経験の方は、ぜひ富士登山に挑戦してみてください。
<取材&執筆>
株式会社ダリコーポレーション
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