日本食にはさまざまなジャンルがありますが、手軽に楽しめる庶民の味といえば、うどんが挙げられます。小麦粉でできた細長い麺に、香り高い出汁をかけて食べるのが一般的ですが、京都には普通のうどんとは全く違う、「一本うどん」と呼ばれるうどんがあります。長さも太さも規格外、インパクト大の見た目が人を引き付けてやまない一本うどん。一本うどん発祥とされる店に訪れ、気になる味をレポートします。
一本うどん発祥の店 たわらや
北野天満宮前の交差点からすぐ南に、歴史を感じさせる古い建物があります。築400年というこの町家は、手打ちうどんと信楽焼を商う「たわらや」の店舗です。
たわらやは、江戸時代の享保年間(1716~1736)創業と伝わる老舗。たわらやが生み出した「一本うどん」は当時から有名で、太くて長い一本うどんを入れた重箱を天秤棒で担ぎ、町中を売り歩いていたそうです。皇族が住職を務めた門跡寺院の仁和寺にも出入りし、その時に使われた螺鈿細工の重箱が、今でも店に残っているそう。
戦後にうどんの材料が手に入りにくくなり、一度は閉店してしまいましたが、1996年に復活。今では北野天満宮の参拝客が次々に訪れる人気店になっています。
もちもち食感と出汁の香りの最強タッグ
たわらや15代目の店主が店を再開させた時に、かつての名物も復活させようと考案したのが、現在の一本うどん。太く長く生きられるように願いを込められた一本うどんは、「名物たわらやうどん」(税込760円)と名付けられました。
幅も厚みも1cmの極太うどん2本がドドンと丼に入った様子は、思わず「おおー!」と歓声が上がるほどインパクト大です。
食欲をそそる香り高い出汁からうどんを引き上げ、一口かじってみると、うどんとは思えないもちもちの食感にさらにびっくり。噛めば噛むほど小麦の香りが口の中に広がり、出汁の香りと絶妙にマッチします。
添えられたおろししょうがを加えると、さらに風味がアップ。少しずつしょうがを足して、味の変化を楽しむのがおすすめです。
一本うどんと普通のうどんを徹底比較
一般的な京都のうどん麺は5~6mm四方で、やわらかめの食感です。それに比べて一本うどんは、太くてもっちり。このお団子のようなもちもち感は、極太の麺を1時間かけてじっくり茹でることで生み出されるそうです。
長時間茹でても煮崩れないように、絶妙に調整しながらで茹でられているので、表面はつるんとしています。お店の方にお願いして比較させてもらったところ、普通のうどんの長さは約30cmでしたが、一本うどんは何とその長さの倍以上、約75cmもありました。
実は、本来の1本うどんは、さらにその倍の長さ。あまりに長くて食べるのが難しいということで、現在は半分に切っているそうです。1本うどんなのに丼に2本入っているのは、こういう理由があるからです。
京風のうどんや甘味もおすすめ
たわらやと言えば一本うどんと言われるほど、名物たわらやうどんが不動の人気ナンバーワンですが、一般的なうどんやお蕎麦ももちろんあります。おすすめは、梅の名所である北野天満宮にちなんだ、「梅の香うどん」(税込890円)。
京風のやわらかいうどんに梅干しが入っています。梅干しのまろやかな酸味と、青じそのさわやかな香り、こんがり焼かれた鶏肉の旨みが食欲を刺激。食べ進めるうちに、梅干しの香りが出汁に移って、味の変化が楽しめるうどんです。
甘味も充実していて、年間通じて一番人気は「わらび餅」(税込630円)です。プルンプルンで滑らかなわらび餅は、口に含むととろけるようなやわらかさ。黒蜜との相性も抜群で、あっという間に食べ終わってしまうおいしさです。
京都で一本うどんが食べられるのは「たわらや」だけ
現在京都で一本うどんが食べられるのは、発祥の店である「たわらや」だけ。インパクト抜群のビジュアルと食感は、ここでしか味わえません。伝統的な町家の建物や、店内に陳列された信楽焼もぜひ見てください。料理を待つ間も楽しい時間が過ごせます。
歴史ある一本うどんや、歴史ある建物が楽しめるたわらやは、京都旅行の楽しい思い出となること間違いなしです。
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たわらや
- 住所 〒602-8386 京都府京都市上京区馬喰町918
- 電話 075-463-4974
営業時間:11:00~16:00
定休日:不定休
Text by:株式会社ワード
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