
外国人旅行客が日本を旅行中にインフルエンザなどの感染症にかかって体調を崩したり、けがをしたりした場合、どうすれば良いのでしょうか?外国人旅行客の受け入れが可能な医療機関をどう探せばいいのか、受付から医療費の請求までの流れや注意点など、「いざという時のために知っておきたいお役立ち情報」を解説します。
※ 2025年2月10日時点の情報です
※ TOP画像:PIXTA
病気やケガで困った時に医療機関を探す方法

ケガや病気をしたら重篤化する前に病院へ
日本では、健康保険制度により1割から3割の自己負担額で治療を受けることができます。そのため、比較的気軽に医療機関を受診する人が多いようです。
ところが、世界ではさまざまな保険制度があり、日本のように誰もが医療保険に加入しているという訳ではありません。また、海外では救急車が有料であることも多く、病院や医師によって治療費が異なる、そもそも医療費が高い、ということも少なくありません。
そのため、外国人旅行者の中には、旅行中にケガや病気をしているにも関わらず、なるべく市販薬で済ませようとして、症状が重篤化してから医療機関を受診するケースもあります。重篤化してしまうと、治療費が高額になりやすい、帰国が先延ばしになるなどの他、感染症を広めてしまうリスクも考えられます。なるべく早めに医療機関を受診するようにしましょう。冬季を中心にインフルエンザなどの感染症が拡大している時には、クリニックが混雑し受診しにくいこともあるため、特に注意が必要です。
日本の病院についての基礎知識
日本には大学附属病院、国家や市が運営する公立病院、大規模な私立病院、小規模なクリニックがあります。大規模な病院は複数の診療科目があり、設備やスタッフも豊富ですが、紹介状を持った患者が優先されます。紹介状を持っていない患者の場合、一定規模以上の対象となる病院では特別料金として5,000円~7,000円が診療代とは別でかかるほか、診察までに長い時間待たされることもあります。
小規模なクリニックは基本的に診療科別で、予約制であることが多いです。旅行客であることを伝えた上で、予約がなくても受診可能か相談してみてください。小規模なクリニックは主要駅前などでも比較的多くみられますが、大規模な病院と比べると、日本語以外の言語が通じにくいかもしれません。持病がある場合や妊娠している場合は、症状や医療情報をあらかじめメモとして用意しておくと、比較的スムーズに意思疎通が可能になります。具体的には以下のような項目です。
・名前
・血液型
・現在治療中の病気
・服用中の薬
・アレルギー
・医療歴
・宗教(輸血などの治療方針に影響する可能性があるため)
・緊急連絡先
医療機関の探し方

日本を旅行中の外国人旅行客が医療機関を探す方法は、主に次の5つです。
(1)ツアーであれば旅行業者や同行の通訳などに紹介してもらう
観光庁の調査によると、約5割の旅行業者で、外国人旅行者が滞在中に病気やケガで医療機関に行く必要があった場合、外国人旅行者に対して紹介する医療機関をあらかじめ決めていることも多いようです。また、医療機関まで同行してもらえる場合もあります。
ただし、ツアーで訪れる全ての地域で必ず紹介できる医療機関を決めておくことは難しく、場合によっては適切な医療機関の紹介を受けられないこともあるので注意が必要です。
(2)宿泊施設のコンシェルジュやフロントに紹介してもらう
症状を伝えると、宿泊施設近隣の医療機関を紹介してもらえることがありますが、医療機関までの同行はしてもらえることは少ないと考えておきましょう。
(3)観光案内所で紹介してもらう
観光案内所では、多言語対応されている資料が用意されていたり、近隣の医療機関を紹介してもらうことができます。また、JNTO(日本政府観光局)が認定している外国人観光案内所では、外国語でのコミュニケーションが可能なスタッフが常駐していることも多いようです。
災害発生時には各種交通機関の運行状況や、避難所の開設状況といった情報も提供していますので、積極的に利用しましょう。
(4)海外旅行保険に加入していれば、保険会社に紹介してもらう
もしも海外旅行保険に加入している場合、保険会社に連絡して医療機関を紹介してもらいましょう。訪日外国人向け海外旅行保険に加入している場合には、提携医療機関での治療費や薬代などの支払いは保険会社が直接行うため、キャッシュレスで診療を受けることができます。
また、外国人旅行者向け海外旅行保険の場合には、医療機関での医師とのコミュニケーションを電話で通訳をしてくれたり、通訳者を探して手配してくれる場合もあり、これらの費用も補償されます。
※ 地域によっては、キャッシュレスで治療を受けることができる医療機関を手配できない場合があります。
※ 薬剤費などの費用は、キャッシュレス対応が出来ない場合があります。
(5)インターネットで探す
日本政府観光局のWebサイトでは、訪日外国人旅行者の受け入れが可能な医療機関を検索することができます。このWebサイトは、日本語の他、英語、中国語、韓国語などに多言語化されており、地域や病院が対応している言語、診療科などによって絞り込むことができます。
緊急の場合は救急車を呼ぶ
緊急の場合は、119に電話して救急車を呼んでください。方法は以下の通りです。
- 119に電話する。
- 「医療緊急事態」であることを伝える。(英語でも構いません)
※119は火災と救急の両方に対応するため、医療緊急事態であることを伝えることが重要です。 - オペレーターに自分の居場所を伝える。
- 「誰が」、「いつから」、「どんな症状か」を伝える。
- 「患者の名前」、「連絡先」(電話番号など)、「患者の年齢」を伝える。
通常、上記の情報は電話で確認されます。オペレーターにできるだけ正確に答え、現在の居場所がわからない場合は、近くの日本人に助けを求めてください。
日本の救急車は国籍に関係なく無料です。ただし、一部の地域では、緊急性が低いにもかかわらず救急車を呼んだ場合にはお金がかかるケースもあります。目的地の病院での医療費は自己負担となります。
受診する際には、何が必要か?

医療機関を受診することが決まったら、必ず持っていきたいのは次のものです。
・パスポートまたは観光船舶上陸許可書
・海外旅行保険に加入している場合には保険証券
・現金もしくはクレジットカード
また、これ以外にもあると便利なものもあります。
たとえば、イラストと単語が組み合わせてあり、指をさすだけで症状を伝えることができる「指差し会話帳」や、自分の既往症やアレルギー、服用中の薬、宗教の有無を伝えることができるメモなどです。
観光庁では、外国人旅行者が、日本の医療機関を受診する際に役立つガイドブックを用意し、こうした便利なツールを多言語化してダウンロードできるように整備しています。万が一に備えて、あらかじめ準備しておくと、よりスムーズに治療を受けることができるでしょう。
受診後の医療費精算方法について

医療費精算方法の流れ
それでは、医療機関を受診した場合の精算までの流れを説明します。
(1)受付で支払い方法を確認する
医療機関を受診した際に、受付で支払い方法について確認します。日本では、比較的大きな医療機関を中心に、現金の他にクレジットカードでの支払いができる場合が多いです。ただし現金しか使えない場合も少なくないほか、キャッシュレス決済が可能な医療機関はそれほど多くないため注意が必要です。海外からの旅行客の場合、受付時にパスポートなどの確認を求められるケースもあります。
(2)海外旅行保険に加入している場合には保険会社に支払い方法を確認する
海外旅行保険の商品によっては、いったん患者自身が立替払いをして後日保険金を請求するケースや、保険会社が直接医療機関に支払いをしてくれるケースがあります。自分が加入している保険がどういう支払い方法なのか、確認しましょう。
また、クレジットカードにも旅行保険が付帯している場合がありますが、旅行代金そのものをクレジットカードで支払った場合のみ補償するというケースもあります。そのため、治療費が補償の対象となるかどうかを確認しておく必要があります。
(3)デポジット(保証金)を支払う
海外からの旅行客の場合、前払い制であったり、診療前にクレジットカードもしくは現金でデポジットを支払ってから診療後に精算をするというケースもあります。受付時に確認しましょう。
(4)診療後に精算をする
診療内容を確認し、請求金額の支払いをします。
処方箋が出される場合がありますが、薬は病院とは別の薬局で処方してもらうことがほとんどで、仮に医療機関内で薬を処方される場合にも、治療費とは別で精算をします。薬局は病院の近くに併設されている場合が多いですが、分からない場合は受付で最寄りの薬局を確認しましょう。
また、日本語以外の診断書などが必要になった場合、作成に時間がかかるため、後日郵送されることもあります。その場合には、郵送料を先に請求されます。
外国人旅行者の治療費は全額自己負担

外国人旅行者の場合には、診療でかかった治療費は全て自己負担となります。症状や治療内容、病院によっても異なりますが、保険なしでの医療費の目安は以下の通りです。
- 初診料:約3,000円
- 血液検査:約6,000円
- X線撮影:2,000円から(部位や画像の枚数による)
- 腹部CT:約15,000円
- 手術:数万円~
日本の医療では医師の判断によって治療に必要と判断されれば検査などが追加され、治療費として積み上がっていきます。また、通訳の手配やサービスを利用した場合にも費用が追加されます。重篤な病状の場合には、治療費が高額になることもあるため、海外旅行保険に加入しておくことをおすすめします。
治療費の支払いに関して困った場合は、医療機関の受付や海外旅行保険会社に相談してみてください。なお、自国の外国旅行保険に加入していない場合は、日本に来てから加入することもできます。日本での緊急事態に備え、こうした保険に入るのは安全な選択です。
東京海上日動火災保険株式会社
対応言語:英語、韓国語、簡体字、繁体字
保険料:1日800円~
申し込み可能な期間:入国日(入国手続きを終了した日)当日から申し込み可能。ただし入国日から5日以上経過した場合は申し込み不可。
保険期間:1日~31日
医療機関の受診は不要だが、薬が欲しい場合
例えば軽い風邪症状や胃の不調、飲み過ぎ、転んでできた傷などの場合は、医療機関を受診するほどではないものの、薬が必要になるかもしれません。その場合は街にあるドラッグストアに行って相談してみましょう。特に渋谷、新宿、池袋、銀座など観光客の多いエリアの店舗には、英語、中国語、韓国語を話せるスタッフがいることが多いです。
詳しくはこちらの記事をご確認ください。
日本旅行中に体調不良になったら、迷わず専門家に相談を
日本旅行中に思わぬ体調不良やけがに直面した場合、言葉や文化の違いに不安に思うこともあるかもしれません。でも、自国ではないからこそ無理は禁物です。海外旅行保険の加入など自分でできる備えをした上で、万が一の場合には、重篤化する前に医療機関を受診するようにしましょう。
※ 本記事は、2019年7月時点のものを2025年2月に再編集・更新しています。
※ 情報は日々刻々と変更になるため、最新の情報をご自身で事前に確認されることをおすすめいたします。なお、掲載内容による損害等は、補償いたしかねますので、あらかじめご了承くださいますようお願いいたします。
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