寺町の谷中、職人の街だった根津、文豪や芸術家に愛された閑静な街、千駄木。頭文字をとって「谷根千」とよばれるこのエリアには、町の至る所に歴史の足跡が残されている。その足跡を辿ってみると、昔の街並みが見えて来る。
谷中が寺町たる理由
谷中は「谷中生姜」という今にその名を残す生姜が特産の農村だった。1625年に江戸城の鬼門にあたる上野に寛永寺が創建され、それに伴い、上野にほど近い谷中にはお寺が多く建てられた。さらに1648~1651年に幕府の政策により、隣接区の神田界隈から多くの寺院が谷中に移転してきた。これにより寺の数が飛躍的に増え、今も谷中には70以上もの寺院が点在する「寺の町」となっている。谷中のメインストリート「三崎坂」の沿道の両側は、民家よりも寺の数の方が多いほどで、谷中が寺の町だということを象徴する通りである。
東京大空襲を逃れ再建
創業1900年、4代目が暖簾を守る和菓子店『谷中岡埜栄泉』は、その趣ある店構えが上野公園へと続く散歩コースのランドマークタワーとなっている。現在の建物は先々代が戦後、建てたもの。第二次世界大戦末期、空襲されるという噂が絶えなかった谷中町は被害を最小限に留めるためにこの一帯を更地にした。同店もその時、店を閉め、建物を壊した。その際、店の看板は近所のお寺に預け、守ってもらったのだそう。そして終戦後すぐに先々代が木材を集めて店を建て、商売を再開した。現在お店に掲げられている看板は、寺で守ってもらった当時のもの。
伝統の製法でつくる菓子
近所の人たちに愛され続ける同店の「豆大福」は甘さ控えめの餡を柔らかくコシのある餅で包んだもの。また、かつてこの地で広く栽培されていた「谷中生姜」にちなんで作られた「浮草」は、生姜を練り込んだ皮で餡をコーティングした焼き菓子。生姜がほんのりピリッとしてアクセントになっている名物菓子だ。どちらも昔ながらの製法と伝統を守り、変わらぬ味を提供している。
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谷中岡埜栄泉
- 住所 6-1-26, Yanaka, Taito-ku, Tokyo, 110-0001, Japan
かつての藍染町に現存する「染物・洗張 丁子屋」
不忍通りの根津神社入口交差点から北東の古い住宅地内の「藍染大通り」を行くと「丁子屋」がある。同店は1895年創業の染物屋で、手拭をはじめ、ブックカバーや扇子入れなどを販売している。丁子屋が店を構えるこの場所は1965年まで「藍染町」とよばれており、店の前の通りには藍染川という川が流れ、川沿いに染物屋ががいくつも並んでいた。当時、この界隈では、藍染川を利用して染色作業が行われていたのである。現在、川は埋立てられ、染物屋はこちらの1軒が残るのみとなってしまった。
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染物・洗張 丁子屋
- 住所 2-32-8, Nezu, Bunkyo-ku, Tokyo, 113-0031, Japan
蛇行する区境の道路
三崎坂を下り千駄木駅方向に歩くと、うねうねと蛇行している道がある。その形状から地元では「へび道」とよばれ、へび道は現在、文京区と台東区の区境になっている。なぜこのような形状をしているのかというと、ここは現在は暗渠となっている藍染川の流路だったからだ。藍染川は水はけが悪く、よく氾濫したため、1921年から暗渠工事が始められ、現在はその姿は残っていない。へび道に沿って上手いこと建てられている家並みを見ながら、くねくね歩いてみるのもおもしろい。聞くところによると、へび道は15の曲がり角があるのだとか。
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へび道
- 住所 2, Yanaka, Taito-ku, Tokyo, 110-0001, Japan
文豪や芸術家に愛された閑静な街
日本を代表する作家・夏目漱石や森鴎外をはじめ、芸術家や著名人が居を構えた千駄木。日大病院横の解剖坂を登り切り南側に進むと「夏目漱石旧居跡」の碑があり、半生を千駄木で過ごした森鴎外の原稿などを展示する記念館「森鴎外記念館」など、千駄木の街では彼らの軌跡をたどることができる。そんな千駄木の街で時を止めたかのような木造の屋敷「旧安田楠雄邸庭園」が穏やかに佇んでいる。旧安田邸は、1919年に実業家・藤田好三郎氏により建てられた近代和風建築の建物である。水曜と土曜の週2日、邸内を見学することができる。
日本の伝統的な木造建築
戦前の日本の伝統的な木造建築を見ることができる旧安田楠雄邸庭園。大きなガラス戸を開けて入ると、当時のままの姿が残されており、柱に施された細かな彫り物や古い電話、畳や襖など昔の建築文化を垣間見ることができる。また大きな庭には四季折々の木や花が咲き誇り、2階の窓から望む風景はまるで絵画のように美しい。
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金吉園
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住所
110-0001 東京都台東区谷中3-11-10
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- 電話 03-3823-0015
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