世の中で食に関係する言葉には、一見同じように見えるのに、違う名前がついているものがたくさんあります。たとえば「唐揚げ」と「竜田揚げ」や、「ピーマン」と「パプリカ」。その違いを明確に説明できる人って意外と少ないのでは?
そんな“○○と△△の違い”について、これまで「日本の定番料理編」と「食材編」をお届けしてきましたが、今回は「調味料」をテーマに調査! 有名ホテルで経験を積み、都内の飲食店で活躍する人気シェフのH崎さんにお話を聞いてみました。
■「バター」と「マーガリン」、「ファットスプレッド」の違い
トーストやパンケーキに塗ったり、料理やスイーツをつくる過程で使ったり、何かと身近な「バター」と「マーガリン」。同じような調味料として、最近では「ファットスプレッド」という名前もよく目にするようになりました。なんとなく味に差がありそうな気はしますが、その違いはどこにあるのでしょうか?
「簡単に説明すると、バターは動物性の油脂を使用した乳加工品。マーガリンとファットスプレッドは、多くが植物性の油脂を使用した加工品です。つまり、乳脂肪を使っているか、その他の油脂を使っているかに違いがあります」
動物性の乳脂肪が80%以上含まれるものが「バター」。一方で「マーガリン」に80%以上含まれるのは、乳脂肪以外の油脂。主に大豆油や、コーン油、菜種油、パーム油といった植物性の油脂が使われているそうです。
含まれている油脂が80%未満であれば「ファットスプレッド」に分類され、果実やチョコレートなどの味をつけることが許されているのだとか。たしかに、チョコレートクリームやピーナッツクリームの原材料で「ファットスプレッド」の表記を見かけることが多い気がします。
「バターは乳脂肪を含んでいるぶん、香りや風味が強くてコクがありますね。マーガリンはバターよりもさっぱりとした味わいです。カロリーでいうと、ファットスプレッドが一番低いんですよ」
■「からし」と「マスタード」の違い
見た目はほぼ同じ黄色いペースト状で、ピリッとした辛味を加えたいときに使う調味料の「からし」と「マスタード」。「和からし」や「洋からし」といった呼び方も耳にしますね。なんとなく和食では「からし」、洋食では「マスタード」をよく見かける印象がありますが、その違いはどこにあるのでしょうか?
「からしもマスタードも、実は同じアブラナ科のからし菜の種子から造られています。まず一つめの違いとして、からしとマスタードでは、使われる種子に差があります。からしに使用される種子は、“オリエンタルマスタード”。一方マスタードに使用されるのは“イエローマスタード”や“ブラウンマスタード”の粒。マスタードの種類によって、使われる原料が変わります」
「からし」に使用されているオリエンタルマスタードは、鼻に抜けるようなツーンとした辛味が特長。イエローマスタードやブラウンマスタードに比べて刺激が強いそうです。また、原料だけでなく製法にも違いがあるのだとか。
「からしは、からし菜の種子をすりつぶして粉にしたものを、水に溶いて造ります。一般的に練りからしと言われるものです。一方マスタードは、からし菜の種子に酢などを混ぜ合わせて加工したもの。種子をすりつぶして練ったり、すりつぶさずに粒のままで使われたりします。後者はいわゆる粒マスタードですね」
からしに比べて、マイルドな味わいなのがマスタード。強い辛味を感じたい場合は「練りからし」、たくさんかけて辛味と味わいを感じたい場合は「マスタード」を選ぶと良さそうです。
■「濃口しょうゆ」と「薄口しょうゆ」の違い
日本料理に欠かせない調味料といえば「しょうゆ」。最近では減塩のものが人気を集めるなど、ひと口に「しょうゆ」と言っても、様々な種類が販売されています。なかでも「濃口しょうゆ」と「薄口しょうゆ」の違いは、料理をするうえで気になるところ。濃さが違うだけでしょ?と思いがちですが、その違いはというと……。
「濃口しょうゆと薄口しょうゆは、製造過程で濃化を抑制しているかどうかに明確な違いがあります。味の濃さや見た目の色で判断しがちですが、実は塩分濃度は薄口しょうゆのほうが高いんですよ」
「濃口しょうゆ」も「薄口しょうゆ」も、主原料は大豆と麦。そこに穀類や小麦グルテンなどを加えたり、原料を仕込んだあとに米や甘酒を加えたりされ、また、製造するときに色の濃化を抑える工程を入れたものが「薄口しょうゆ」という名称で呼ばれているそうです。
「薄口しょうゆは、白身魚など色をつけたくないときの調味料としてよく使われます。少量でもしっかり味が感じられるように、塩分濃度を高く造られているようです」
■「豆板醤」と「コチュジャン」の違い
麻婆豆腐やビビンパを作るときなど、家庭料理のレシピでもよく目にする「豆板醤」と「コチュジャン」。どちらも辛味をつけるための発酵調味料というイメージなので、どちらかを持っていれば代用が可能なのでは?と思う人もいるのではないでしょうか。その違いは、原料にも味にもあるようです。
「豆板醤は、中国四川省が発祥の調味料です。原料には唐辛子とそら豆がメインに使われていて、辛味が強いのが特長です。一方のコチュジャンは、韓国が発祥です。原料のメインは大豆ともち米、唐辛子。もち米が発酵することによって味は甘辛くなり、コクがあります」
どちらも辛味系の発酵調味料として大きく分ければ同じですが、辛味が強い「豆板醤」に比べて、甘味も感じられるのが「コチュジャン」。とくに日本で売られている「コチュジャン」は、甘味が強めに造られているものが多い印象を受けます。味の好みや料理の種類によって使い分けるのが良さそうですね。
編集・ライター歴トータル17年以上。マンガ、小説、雑誌等の編集を経てフリーライターに転向後、グルメ、観光、ドラマレビューを中心に取材・執筆の傍ら、飲食企業のWEB戦略コンサルティングも行う。そのため、日本グルメの新商品やトレンドのキャッチアップが早く、LIVE JAPANでは幅広い年齢層や国籍の方にわかりやすく伝えている。
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