年の瀬も押し迫った12月に入ると、にわかに夜の街が活気づき、お酒を飲んで上機嫌の人たちを見かけるようになる。大勢で歩いているグループを見かけたら、彼らは間違いなく、「忘年会」を楽しんでいる人々だ。
お互いに一年の苦労をねぎらう
「忘年会」とは文字通り、「一年を忘れる」ために催される。会社の同僚や友人同士、町の寄り合いなど様々なグループの人たちが集まってお酒と食事を楽しみ、「今年もいろいろあったけど、それは忘れて来年も頑張ろう!」とお互いを慰労しあうのが目的だ。
仕事関係の付き合いが忘年会の主流
忘年会に繰り出すグループはさまざまですが、やはり一番多いのが会社など仕事関係の人々。多くの場合、一緒に働く時間の長い部署単位で忘年会を開催し、「今年も一年間ご苦労様でした」という部長などグループの上長のあいさつでスタートし、約2時間から3時間の宴を楽しむ。会場はグループの人数にもよるが、参加者が数十人にのぼる場合は、広い座敷のある「居酒屋」さんが好まれる。椅子に座るテーブル席ではなく座敷の場合もあり、普段あまり話す機会のない人とお近づきになることも。
また、予算はおおよそ一人4000~5000円(ぐるなび調べ)で飲み放題(時間制限つき)のコース料理をオーダーすることも多い。
飲みの席で覚えておきたい作法・お酌
ビールや日本酒、ワインなどボトルやお銚子で提供されたとき「お酌」という儀礼がある。要は人のグラスにお酒を注ぐ行為だが、相手が上司など目上の人の場合はお酒を注ぐときも、また注がれるときも作法を守らなければなりない。まず注ぐときは必ずボトルを両手で持ち、「一年お世話になりました」などの感謝の言葉をそえて注ぐ。その際、ボトルのラベルが相手に見えるように持つのがマナー。またお酌を受ける際はグラスを持つもう一方の手で底を支え、両手で受ける。グラスがお酒で満たされたらテーブルに置かず、ひと口飲むのがお酌の礼儀だ。
仕事の問題点も浮き彫りにする
参加者の慰労が目的の忘年会は、同時に仕事上の問題点を洗い出す場としても機能する。本音を隠しがちな日本人が、お酒の力を借りて普段なかなか言えない仕事の不満や人間関係の悩みなどを打ち明け、部長を始めとする統括者はそれを聞き、次の年の改善に役立てることも。より多くの本音を聞き出すために、忘年会のはじめの挨拶で、「今日は無礼講で行きましょう」と宣言されることがある。
腹を割って語り合う無礼講の宴席
この「無礼講」とは上下の身分を取り払い、この場に居る人たちが、「イコールな存在」であることを宣言する言葉だ。部長と新人がお酒を酌み交わし、腹を割って話をすることで参加者の結束がより強固なものになるのだ。しかしいくら無礼講とはいえ、目上の人に対して行き過ぎた無礼を働くのは禁物。ある程度の節度をもって忘年会を楽しもう。
忘年会の重要ポスト「幹事」とは?
忘年会シーズンの年末は、飲食店にとって超繁忙期で、12月の半ばを過ぎると人気のお店は予約でいっぱいに。宴会場の確保など早目に手配する必要があり、これらの業務を一手に引き受けるのが「幹事」だ。多くの場合、若い社員が任命され、忘年会の会場の予約から、会の進行、そして会計まで一連の作業を任される。本業の仕事とは関係のない、たかが身内の飲み会のセッティングと思われがちだが、忘年会を滞りなく遂行すれば、「あの人が仕事ができる!」と一目置かれるようになり、若手社員の力の見せ所にもなる。
一芸を披露するのが忘年会のたしなみ
忘年会も中盤にさしかかると、お酒がまわってお腹もいっぱいになり、停滞感がただよう。そんなときに場を盛り上げるために披露されるのが 「宴会芸」。主に若手社員の出し物が多く、一芸に秀でた人は歌や漫談、マジックなどを披露する。特に芸を持たない人はその年に流行したコメディアンの一発芸(2016年はPPAPなど)を自分なりにアレンジしたものをお披露目するのが定番だ。最近ではうるさいだけの素人芸は周りのお客さんに迷惑ということで敬遠されることもあるが、それでもまだ健在だ。忘年会に参加する人は事前に芸を仕込んでおこう。
日本企業のスタートは新年会とともに
忘年会の興奮も冷めやらぬ新しい年を迎えて早々、今度は新年会が催さる。忘年会との違いは上長の挨拶が、「一年お疲れ様でした」が、「今年も頑張ろう!」に変わる。宴会場の予約など準備は忘年会と一緒に進められる場合が多い。
これから始まる一年の決意を固める場というよりも、「年末年始何をしていましたか?」と一週間ぶりぐらいに合う同僚との近況報告の場となっている。
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