文化や生活習慣が異なる日本とアメリカ。ビジネスにおいても同様で、その違いは顕著なようです。今回は「就職面接」に焦点をあてて、日米の違いを洗い出していきましょう。
企業にとって人材は貴重な財産ですから、自社にふさわしい人物であるかを面接によって見極めなければなりません。ところが、この「見極め方」が日本とアメリカで大きく異なるというのです。
具体的にどのような点に違いがみられるのか、ニューヨークでマスコミのキャリアをスタートし転職のたびにステップアップ、現在は日本企業で活躍するアメリカ人男性に聞いてみました。
(以下は、インタビューに応じてくださった個人の体験に基づいた意見です)
1.日本の面接は時間が長い!アメリカで面接を受けたときは10分とか15分くらいだよ
「日本で面接を受けたとき、必ずといっていいほど1時間はかかったよ。ときには1時間半以上続くこともあったね。アメリカでは10~15分ほどで終えるところがほとんどだよ」
日本では「採用したい」と思う相手に対しては、その人のことをもっと知りたいという理由から面接時間は1時間くらいかかるのが一般的ではないでしょうか。そのため、逆に面接があっという間に終了した場合には手ごたえがなかったと考える人も…。
「アメリカでは、面接が早く終わるほど採用の可能性が高いことが割りと一般的だと思います。自分のケースでもあったけど、たった5分の面接で採用が決まるケースも珍しくないよ。面接時間が伸びている場合は、判断に迷うほど微妙なラインにいると考えたほうがいいかもね」
2.面接前に履歴書をチェックしないの!? 面接中に読み込んでいる人が多いよね
求人に応募するときに履歴書を送るのは日本もアメリカも同じ。しかし、アメリカの場合は面接に至る前に履歴書の内容をしっかりとチェックしているようです。
「日本では、面接をする前に応募者のことをよく調べていない印象が強いです。履歴書をじっくりと読んでいないのかなと思ったことが何回かありました。だから、結果的に大勢の人を面接するという効率の悪いことをしているように感じるね。アメリカでは、面接をする時点ですでに採用の可能性は高いというほど書類選考を重視しているところが多いと思います」
3.面接で「人柄」を伝える必要はあるの?
日本で採用する際の決め手のひとつとして「人柄」も入っていそうなものですが、アメリカの面接ではあんまり関係ないとのこと。
「アメリカでは、採用する人の性格を気にすることはほとんどないよ。能力があるかどうか、それだけ。才能さえあれば即採用というのがアメリカでは一般的だと思う。どんなタイプの人でもうまく扱うのがマネージャーの仕事という考え方だね。
わかりやすくいうと、アニメの『ワンピース』みたいな感じ。ものすごく変わった人でも関係なく受け入れて最高のチームを作り上げるルフィは理想のマネージャーそのものだよ!」
日本では、人柄を知るために趣味をはじめとした私生活のことも聞かれることがあると思います。しかし、アメリカで自己PRをするのであれば、求められる答えは、実務経験やスキルに限るのだそうです。
4.自分の会社をそんなに褒めてほしい?建前を聞いてうれしいのかな?
日本で面接を受ける際には、その会社に入りたい気持ちがどれほど強いのかをアピールするために志望動機を述べる機会があるのが普通ですよね。
「日本の面接官は『うちの会社をどう思う?』『うちの会社のどこが好きですか?』なんて聞いてくることが多くないですか?自分が面接官だとしたら『御社のここが素晴らしいです!』なんていう建前は聞きたくないよ(笑)まだその会社で働いたこともないのにね。ウェブで調べた情報から作り上げた上辺だけの話を聞いて意味があるのかな」
たしかに、志望動機は面接対策として事前に用意してきた表面的な言葉を言ってしまう人がいるのかもしれません。何社も掛け持ちして面接を受けていることを面接官も理解しているでしょうから、冷静に考えると滑稽なやり取りになっているのかも…。
5.履歴書に書く内容がアメリカでは訴訟になるレベル!?
日本の履歴書はフォーマットがあり、記載する項目はほぼ決まっています。この記載事項がアメリカ人には驚愕なようで……。
「アメリカでは履歴書に性別や生年月日、出生地、配偶者や扶養者の有無なんて基本的に書かないよ!特別な仕事でない限り、写真を貼る必要もないです。差別になりかねないと考えてしまうんだ。日本の履歴書をアメリカで書かせたら訴訟問題になってもおかしくないんじゃない?」
アメリカでは実際に本人に会って初めて性別がわかるのは当たり前とのことだそうです。結婚しているか、子供がいるかどうかも面接時にはわかりません。日本とはだいぶ違いますね。
6.経験やスキルを重視した質問が少ないという印象がある
「アメリカの面接でチェックするのは、極端にいえば『能力』だけ。仕事ができるのかどうか、その一点に限られているんだ。だから、応募者がどのような経験をしてきてどのようなスキルを身に付けているのかが重要です。日本でも経験やスキルを気にしているんだろうけど、詳細に聞いてこない面接もいくつかありましたね」
アメリカ人は特に、キャリアについて明確なビジョンをもって経験を積んでいくのだそうです。そのために転職をくり返すこともあるほど。日本では会社に入ってから教育を受けてスキルを高めていくというやり方もまだまだ根強いので、アメリカ人には違和感があるのかもしれませんね。
7.面接にノートパソコンを持ち込むってどういうこと!?
最近は、どこにでもノートパソコンを持ち歩くビジネスマンを多く目にします。打ち合わせや会議で、全員がノートパソコンを開いているという光景も珍しくなくなりました。ところが……。
「日本で面接を受けたときに、面接官がノートパソコンを開いているのにはビックリしたよ!面接の記録をとっているのだろうけど、最初は記憶力が弱いか仕事ができない人だと思ったよ。パソコンを開いている面接官とは距離を感じるし、相手に失礼じゃない?アメリカの面接ではあり得ないね」
8.日本の面接はまるで裁判を受けているかのように空気が重い!
「日本で面接を受けると、『ここは裁判所か?』と思ってしまうほど空気の重さを感じました(笑)まるで取り調べを受けているみたいだよ。なかには全然笑わない面接官もいるしね。こっちが笑わそうと努力しても絶対に笑わないのが辛かったな」
日本人でも面接はとても緊張するものです。シーンと静まり返った室内で次々と質問をされるうえに、こちらの一挙手一投足までもチェックされている独特な緊張感に耐えかねる人も多いでしょう。
「面接ではお互いに本音を言えるやわらかい空気をつくらなければならないのにね。アメリカでは面接を始める前に“アイスブレイク”といって緊張をほぐすために簡単な雑談をするのは常識だよ。でもこれは日本でも徐々に浸透してきている気もします」
9.面接官がズラッと並んでいるのはなぜ?
「採用の責任を負いたくないから何人も一緒になって検討しているのでは?と本気で思っていました。わたしの経験上、トップレベルの会社ほど面接官の数はひとりだった印象があります」
日本の場合、「理解のあるやさしい面接官」や「意地悪な質問をする面接官」というように意図的に複数のタイプの面接官を用意して応募者の反応をチェックする会社があるとか、そんな話を聞いたことがある人も多いと思います。それにしても、面接官にズラリと並ばれてしまうとプレッシャーは相当ですよね。
10.日本で面接を受けるには予行演習が必要!
日本の面接では「ドアをノックしてから入室し、『失礼いたします』と会釈をして椅子の脇に立って名乗り、許可を得てから着席する」といった決まったルールがあります。これにはアメリカ人は苦労をするようです。
「日本のビジネスマナーに慣れるまで、外国人は本当に大変(笑)日本語学校のビジネスコースで3か月くらい学んだよ。アメリカでは、ドアをノックしてお辞儀をするといった礼儀をチェックする習慣はないからね」
日本でも大学生が就活に備えて面接の練習に励みますよね。入社後も必須となるビジネスマナーですから、必ず身に付けなくてはなりません。
「それから、自己紹介の練習はたくさんしたよ。『わたしは○○と申します。自身の経験を活かして御社に貢献したいと思います』なんて決まり文句は、今ではスラスラ言えるようになったよ(笑)」
こうして比較してみると、アメリカの企業は一貫して「能力に優れた人」を必要としていることがわかります。ビジネスとプライベートをはっきりと区別しているアメリカ人ならではといえるでしょう。
また、アメリカ人から見ると日本の面接には無駄が多いと感じるようです。日本人は昔から仕事仲間を家族のように迎え入れる感覚があるので、じっくりと人柄を見極めたいのでしょうね。それぞれの国のビジネススタイルにふさわしい面接が行われていますが、効率化できるところは日本も参考にしてもいいのかもしれませんね。
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