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「みなさま、はじめまして。しがない執事でございます。私が本日いるのは、東京・柴又。そう、日本人ならみんな知っている寅さんで有名な映画『男はつらいよ』の舞台にもなった街です。柴又は昔ながらの雰囲気を残し、情緒にあふれています。参道にはお団子屋さんやお土産屋さんなど、昔ながらの風情漂うお店が軒を連ね、食べ歩きをしながら散策するのにうってつけです。
街の人々は温かく親しみやすいので、お喋りを楽しむのも良いでしょうね。まさに下町の雰囲気を味わってみたい方にはぴったりの観光スポットでございます。
柴又駅を出ると寅さんの立派な銅像が建っていて、街散策をする気分も一気に高まることでしょう。ちなみに寅さん像と対になる形で妹のさくらの銅像もありますよ。さらに柴又には寅さん記念館もあるので寅さんの世界をとことん満喫できます。
……おや?なにやら怪しい人がおりますねぇ」
日本人男性(スリスリ……)
外国人女性「あの……失礼ですけど……あなたはいったいなにをしているんですか?」
日本人男性「えっ!……あぁ、この寅さんの銅像の左足を触ると願いが叶うって言われていて……。最近良いことないし、ご利益にあやかろうと思って……」
執事「ふむふむ、最近良いことないんですか?」
日本人男性「うわっ!また出た!執事さんに絡まれてばっかりだから、良いことないんだよ」
執事「おやおや、それは心外ですねぇ」
外国人女性「あの……あなたはいったい……」
執事「おっと、失礼いたしました。私はしがない執事。東京に遊びに来られた外国人のお客さまに、面白い観光スポットをご案内してまわっている者でございます。ところで、もしかして柴又へは観光に?」
外国人女性「ええ、町を散策しつつ、予約しているホテルに向かおうと思って」
執事「そうでしたか!では、せっかくですし、この私に案内させてくださいませ」
外国人女性「それはありがたいです。あの、私、ジェイミーといいます」
執事「ジェイミーさま、素敵なお名前ですね。では早速まいりま……」
日本人男性「ちょーっと待ったー!!ぼくを無視して進行しすぎでしょ!!今回だってぼくもついて行きますよ?ね?良いですよね?」
執事「……はぁ。それでは気を取り直して、ジェイミーさま、ついでに五十嵐さま、柴又観光へと参りましょう」
執事「まずは、柴又帝釈天に続く参道へ向かう前に、その手前にあるこちら『ハイカラ横丁』で遊んでいきましょう。ちなみに参道とは、お寺や神社を参詣するために設けられている道のことを言いますよ」
ジェイミー「ここは?」
執事「こちらは1階が駄菓子屋さん、2階がおもちゃ博物館になっているお店です」
五十嵐「本当だ!駄菓子がたくさんあるよ!」
執事「駄菓子とは、主に子供に向けて作られている値段の安いお菓子のことです。昭和のレトロな雰囲気を残したお店なので、外国人のお客さまも珍しがって大勢立ち寄られていて、購入した駄菓子をお土産にされる方もいらっしゃいます。早速なかへ入ってみましょうか」
執事「こちらには、駄菓子の他にレトロなおもちゃなどの雑貨を含め、約3,000種類のアイテムが並んでいます」
ジェイミー「3,000種類も!?」
執事「ええ。ひとつ数十円という低価格なので、まとめて“オトナ買い”するのも良いかもしれませんね」
五十嵐「駄菓子って安くておいしいから、日本人ならば誰もが一度は買ったことがあるくらい普及しているんですよ。遠足のときに持っていったりね」
ジェイミー「へぇー!子どもの味方なのね」
執事「さらに奥にはレトロなゲームもあります。デジタルな時代だからこそ、このアナログな感じが心にしみるんですよ」
五十嵐「あ!射的もあるよ!ジェイミーさん、やってみたら?」
ジェイミー「射的?」
執事「木製のおもちゃの銃でお菓子などの標的を撃ち落とすゲームです。見事撃ち落としたものは景品としてプレゼントしてもらえます」
ジェイミー「おもしろそう!やってみたいわ」
ジェイミー「ガンを構えて……こうね!」
パンッ!!
五十嵐「あ!当たったよ!」
五十嵐「すごーい!ガムが当たったね!」
ジェイミー「ふふふ。アイ・アム・ガム・ハンター!」
執事「では、私も……」
五十嵐「執事さんまでやる必要ある!?」
パンッ!!
執事「あー……」
五十嵐「ヘタクソー!全然当たってないですよ…。やっぱり日頃の行いですなぁ」
執事「……まぁ、本気を出せば全部撃ち落とせますけどもね。さて、ジェイミーさん、せっかくですし、駄菓子を食べてみましょう」
五十嵐「負け惜しみ!」
執事「お味はいかがですか?」
ジェイミー「すごくおいしい!駄菓子って安いのにクオリティが高いのね」
執事「喜んでいただけてなによりです。では次へ参りましょう」
執事「さて、ここからは『帝釈天参道』となります。柴又のシンボルともいえる柴又帝釈天題経寺の門前町です」
執事「この参道には、お団子屋さんやそば屋さん、漬け物屋さんなどが並び、いずれも歴史のあるお店ばかりです」
ジェイミー「建物もとてもレトロでキュートね」
五十嵐「古き良き日本の面影が残ってますよね」
執事「せっかくなので、こちら『髙木屋老舗』さんでお団子を買ってみましょう」
執事「こちらは明治元年に創業した、とても歴史のあるお店です。一日に1万個ほどのお団子が売れていく人気店です。定番の焼だんご(税込160円)、草だんご(税込160円)、オリジナルの磯おとめ(税込160円)、どれも他では食べられないおいしさです」
ジェイミー・五十嵐「いただきまーす!」
ジェイミー「爽やかな香りが口中に広がって、あんこの甘さとベストマッチね!くどくない後味だから、何本でも食べられそうだわ!」
五十嵐「磯おとめは、磯辺もちみたいな味がする!これなら甘いものが苦手な人でも食べられるよ」
執事「定番の焼だんごは、甘じょっぱいみたらしがクセになります。熱い煎茶とあわせてお楽しみください」
ジェイミー「駄菓子といいお団子といい、ここにはおいしいものがたくさんあるのね」
執事「満足するのはまだ早いですよ。さて、次はとっておきの場所へご案内いたしましょう」
執事「ここは『山本亭』。柴又に縁のある山本栄之助翁の自宅だった場所です。和と洋が複合された、当時としては非常にモダンな造りで、なかでも庭園が見ものなんです」
ジェイミー「庭園?ジャパニーズ・ガーデンね!」
執事「きっと息を呑む美しさだと思いますよ」
ジェイミー「これは……!」
ジェイミー「なんて美しさなのかしら……。もうこれはアートですね」
執事「ええ。こちらの庭は、アメリカの日本庭園専門誌『Sukiya・Living・ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング』の2016年日本庭園ランキングで、見事3位に選ばれています。全国900カ所以上のなかから選出された庭園なので、その美しさはお墨付き。池には鯉が泳ぎ、これからの季節は虫の声もキレイでしょうね」
五十嵐「このお庭は、赤松や黒松といった常緑樹がほとんどだから、一年を通して、緑が青々としている風景を楽しめそうですね」
ジェイミー「なんだかこうしていると……」
執事「心が洗われて……」
五十嵐「頭が空っぽになりますねぇ」
執事「それは五十嵐さんだけです。もともとかもしれませんが」
五十嵐「ちょっと!!」
執事「さて、注文していたものが届きましたよ」
執事「お抹茶、ぜんざい、ラムネです。どれも日本ならではのものばかりですよ」
ジェイミー「私、抹茶が大好きなの!」
執事「そうでしたか。では、早速お召し上がりください」
ジェイミー「うーん……香り高くて、ちょっとビターな後味。セットになっている甘い和菓子との相性も最高ね!」
五十嵐「ぜんざいはすっきりした甘さで、白玉団子はもっちもち!柴漬けと交互に食べると、エンドレスリピートになっちゃうね」
執事「私はラムネを……」
執事「なんだか少年時代を思い出す、懐かしい味わいですねぇ」
五十嵐「ふっ、どんな少年だったんだか」
ジェイミー「日本庭園を見ながら、抹茶をいただけるなんて……。すっかり日本を満喫できた気がします」
五十嵐「ジェイミーさん、まだまだだよ!日本に来たばっかりなんだから、もっといろいろ遊ばなきゃ」
ジェイミー「ええ、もちろん。だけど、おふたりに出会って、あらためて日本って良いところなんだなって思いました。最初は変な人たちって思ったけど」
執事・五十嵐「…………」
ジェイミー「駄菓子屋さんもお団子屋さんも、そしてここ山本亭の人たちも、初めて会った外国人の私に、とってもフランクに話しかけてくれました。正直、最初は少し不安だったんです。日本ってどんな国なんだろうって。だけど、そんな心配はいらなかった。この街の人たちは昔ながらの人たちだからなのか、変な遠慮がないんですよね。それが逆に心地よかった。日本人とか外国人とか関係なく、私をひとりの人間として見て、接してくれたことに感動しました。この日本庭園のように、日本人の心って美しいのね……」
執事「ジェイミーさまがそう感じたとすれば、それはジェイミーさまの心が美しいからでもあります」
ジェイミー「え……?」
執事「人の心は写し鏡。ジェイミーさまが気取らず、心の底から楽しんでいたからこそ、みんな気さくに接してくれたのでしょう」
ジェイミー「執事さん……、ありがとうございます」
執事「いえいえ、では、そろそろホテルへとお送りしましょうか」
執事「ジェイミーさまが本日お泊りになられるのは、こちら『SHIBAMATA FU-TEN Bed and Local』ですよね」
ジェイミー「さすが!もう全部わかってるのね!」
五十嵐(さすがにそこはツッコんでも良いような気もするけど……)
執事「こちらは柴又の下町をイメージしてリノベーションを施した宿泊施設です。全室個室のゲストルームに加え、お客さま同士が交流できるラウンジや中庭、共用のキッチンも完備しています。若いスタッフさんが多いので、気軽に話しかけることができますし、ジェイミーさんのようにひとりで来られる方が多いんですよ」
ジェイミー「すごく開放感があって素敵!」
執事「さて、チェックインしましょう」
ジェイミー「執事さんのおかげでスムーズにチェックインできたわ!ありがとう!」
執事「いえいえ、そしてこちらをお忘れでは……?」
ジェイミー「あ!私のトランク!観光が楽しすぎて、駅のロッカーに預けっぱなしだった」
執事「そう思って、準備しておきました」
ジェイミー「なにからなにまで、本当にありがとう!あなた、最高の執事さんね!」
執事「とんでもございません」
五十嵐(なーんか喜んじゃってるし、良いムードだから言えないけど……、さすがにやりすぎでしょ!執事だからって、そこまでする!?一歩間違えればただの危ない奴だろーーーーー!……今回はツッコミ足りなかったから、これですっきり)
執事「五十嵐さん、なにか言いたいことでも?」
五十嵐「なんにもありませーん」
執事「……ふん、まあいいでしょう」
執事「さて、みなさま。今回も楽しんでいただけましたでしょうか?ここ柴又は、誰もが気兼ねなく楽しめる町。お団子片手に、昭和の雰囲気あふれる街並みを、ぜひ堪能してみてくださいね」
今回まわった柴又 半日コース
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ハイカラ横丁
- 住所 7-3-12 Shibamata,Katsushika-ku,Tokyo
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最寄駅
柴又駅
- 電話 03-3673-9627
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髙木屋老舗
- 住所 7-7-4 Shibamata,Katsushika-ku,Tokyo
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最寄駅
柴又駅
- 電話 03-3657-3136
-
山本亭
- 住所 7-19-32 Shibamata,Katsushika-ku,Tokyo
-
最寄駅
柴又駅
- 電話 03-3657-8577
五十嵐が目撃した、怪しい執事のサービスショット(暑いなかでも着崩さないその姿勢だけは尊敬します)
大先輩?寅さんと同じポーズで
顔ハメ看板からこんにちは
気取ってるけど、タレがついてます
日本庭園を横目に、憂いを帯びた表情
正座、痛くないですか?
俳優・モデル・MC・作家 オリオンズベルト所属。主な出演作品にCM「楽天生命保険」、映画「進撃の巨人」、ドラマEX「Doctor-X 外科医・大門未知子」、舞台「~崩壊シリーズ~九条丸家の殺人事件」・「リメンバーミー」等がある。劇団「お座敷コブラ」は主宰・脚本・演出・出演を手掛ける自身の劇団。多才を生かし様々なジャンルで幅広く活躍中。
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