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数種類の花を色合いや形を鑑みて取り合わせ、花を鑑賞物としてより美しいものとする日本の芸術「生け花」。日本が世界に誇る伝統的な芸術のひとつで、昔ながらの技術を継承しつつも、今日の現代芸術にも密接に関連する、日本ならではの美しい文化だ。可憐にアレンジされた花や植物がここまで日本の文化に浸透した例は、生け花以外にないだろう。なかでも、いけばな小原流は、生け花の文化の繁栄と継承に多大な貢献をもたらしてきた。一般財団法人として全国各地に数多くの支部を構えるのみならず、世界に59の支部が存在し、全世界で30万人を超える人々が生け花の普及事業を進めている。
いけばな小原流は、単に花をアレンジするだけでなく、生け花という文化を世界に発信し、共有する力を持っている。今回、生け花の歴史や文化について探るべく、いけばな小原流が開催する教室に参加した。
生け花の基本
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生け花の歴史は600年以上前まで遡る。それまで神聖な仏教花で常緑植物として認識されていた植物を、「供花」として儀式などに使い始めたことに生け花のルーツがある。15世紀中期までに、生け花は芸術の形態のひとつとして確立され、芸術的に発展。花やコケ、葉っぱ、枝、フルーツに至るまで生け花として扱い、植物の新たな活かし方を提唱した。生け花をマスターするには、専門的な細かい知識まで相対的に備える必要がある。
生け花は、植物そのものに焦点を当てたものではなく、容器や植物の空間をも芸術として利用する。芸術性を創造するために、自然では発生し得ない美しさを孕んだ作品を生み出すことが、ひとつの生け花の大きなテーマとなる。
いけばな小原流とは
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いけばな小原流は19世紀後期に小原雲心氏によって創始された。当時は、日本が西洋文化に多大な影響を受け始めていた頃で、生け花も大いにその影響を受けた。小原流教室で使われる二つの生け花の形態は、盛花と瓶花だ。盛花は、広口の浅い花器を使って花を「盛る」形態の生け花。一方で瓶花は、背が高く深い花瓶を使用して生ける形態だ。
雲心氏は、生け花の新形式・盛花を創作、水盤を生け花に取り入れた第一人者である。小原流の特徴は、自然の風景を尊重し様々な要素を取り入れた独特な盛花の世界観だ。例えば、湖のような水辺を作り、そこにアシやユリの花を組み合わせるといったものだ。
長い年月を経て、雲心氏当人や彼の子孫によって様々なスタイルの生け花が創作され今日の小原流の流派に伝承されてきた。小原流三世家元の小原豊雲氏は、「文人調いけばな」と「琳派調いけばな」を創案。小原流四世家元の小原 夏樹は、近代的な構成で知られる「花舞」や「花意匠」などを創案。現小原流五世家元の小原 宏貴は、現代のスタイルに密接した新しい感覚の作品「花奏」を創案した。
野草から生け花へ
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生け花に関してもう少し詳しく知ろうとしていくうちに、生け花を生ける華道家の方々の視点が素晴らしいことに気がつき感服した。私は小さな片田舎で育ち、専ら木々に囲まれて遊んでいたし、家の庭でも植物を育てていたので、いつだって木々や花々は私の好奇心を奮わせる。最近、私はできるだけ頻繁に公園を訪れるよう心がけているため、東京に住みながらにして自然を感じることができている。また、私が実際に生け花を目の当たりにする機会は滅多にないため、日頃バラを見つけては花の香りを嗅ぐため立ち止まり、想いを巡らせている。生け花は職人の域に達しなければ想像し得ないほど常人には成し得ない美しさがある。日本語を使うことのできない訪日旅行者にも歓迎的で、アットホームな空気感の中、生け花を生ける経験ができる「いけばな小原流教室」の存在が私はすごく嬉しかったし、同時にこういった生け花体験ができる開かれた環境があることに感銘を受けた。
盛花と一風変わった生け花
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私はいけばな小原流教室を訪れ、英語で開催される授業を受講することにした。同教室開催の朝、いけばなの先生は広々として部屋に私を通してくれた。簡潔な生け花の説明から始まり、広口の浅い花器を使ってコンパクトに盛り合わせる形態の生け花「盛花」について教えて頂いた。水を活かした形に、斜めに傾いた形、直立した形と、盛花の中にも三種類あるようで、このいずれかを用いることを基盤として盛花は形作られ、各々の感性に沿った盛花が生けられるのだ。
私たちの創作する盛花は、最も一般的な、直立した形。実際に授業を受講するまで、生け花に使用されている花々が、生け花用に組み合わせ構成されたものであるとは知る由もなかった。もう一点、盛花を構成する要素として興味深いものがあるのだが、盛花は、三つの茎を元に作られるということだ。それらは、「しゅし」「ふくし」「きゃくし」と呼ばれる。
春の花々といけばなの関連性
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盛花を創作するに際しての特徴のひとつ、セラミックで広口の浅い花器が私の前に置かれた。続いて生け花用のはさみ、ボウルに注がれたお水と、生け花には欠かせない剣山が置かれた。
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剣山とは、金属の台に針を上向きに植えたもので、生け花用の花留めとして用いられる。
盛花はテーマに沿って表現する必要がある。先生は「春」とテーマを定め、そして春にぴったりな桜の木の枝葉とアヤメの花が配布された。
幹を選ぶ
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いよいよ実際に花を生ける時がやってきた。私はまず初めに桜の木の枝を手に取り、他と組み合わせやすいように適当な大きさに裁断した。生け花は創作者によって創り方も考え方も異なると認識しているが、「創作者自身の直感のまま、創り進めてゆくことが大事である」と先生は教えてくれた。その後、剣山を最下部に配置できるよう考慮しながら創っていくよう指示を頂いた。
創造的なアレンジを
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自分の直感に基づきながら探り探りに桜の配置を終えた後、先生から少し桜の配分を減らすように言われた。四苦八苦しながら盛り合わせた枝葉を排除していくことは私にとって容易ではなかったが、生け花には何も配置しない「空間」を利用することが重要なのである。続けて、色や見た目に美しい生け花になるようアヤメを配置、裁断した枝葉を生かすため水を注いだ。先生は、花々や木々を創造性豊かに見せる角度と、斜めに傾けて綺麗に見せる方法を見せてくれた。
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今までに使ったことのない神経を使って慎重に二つのアヤメの花びらを開き分けた。すると花を咲かせる中心部分が顔を出した。三つめのアヤメの花はつぼみのままであったが、また異なる味わいと美しさを醸し出していた。
仕上げもあなたらしく
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これにて私の初めての生け花体験が終了。「春」をテーマにした美しく、ユニークな私だけの盛花ができた!あなたもぜひ「いけばな小原流教室」で世界にひとつだけの生け花を創作してみては?ホームページには教室の内容が英語と日本語で掲載されているので、ぜひチェックしてみてください。
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いけばな 小原流
- 住所 〒107-0062 東京都港区南青山5丁目14−7 17
アメリカのマサチューセッツで育ち、新たな冒険と、おいしい緑茶を探しに日本へやってきました。様々なことを追求し、そして書くことを通じて、大都市・東京で私だけの生き方をみつけることができました。
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