![[MOVIE] お酒とおつまみと仏教をどうぞ。坊主バーに行ってみた!](https://rimage.gnst.jp/livejapan.com/public/article/detail/a/00/00/a0000668/img/basic/a0000668_main.jpg?20191226172404&q=80)
東京の主要なビジネス拠点として知られている新宿は、高層ビルが描く街並みも有名。そんなコンクリートジャングルの中に、スピリチュアルな癒しを提供するオアシスがある。新宿からすぐの四ツ谷というエリアに、そのオアシスのひとつである坊主バーがある。同バーは、仏教僧によって運営されているのだ。「また面白いテーマのバーが東京にできたんだね。」そんな風に思うかもしれない。
しかし友よ。あなどるなかれ。坊主バーはアルコール、ノンアルコール、手作りの食事を出すバーではあるものの、スタッフである仏教僧らから話を聞くことができるのだ。趣がバーなだけで、ここは本当に、日本の仏教道の学びを得られる空間なのだ。
仏教僧兼バーオーナー:藤岡氏

日本らしい小さなビルの狭い階段を2階へと上がると、そこに坊主バーはあった。タバコの煙と強いアルコールの匂いを覚悟して扉を開けると、そこは全くの異世界。空気はきれいで、お香のかおりさえ感じた。すぐに緊張はほぐれ、この宗教的な空間に迷いなく入り込んだ自分を感じた。
頭を剃り袈裟を身に着けた男性が、すぐに温かな笑顔で私を迎え入れてくれた。開業してから16年経つという坊主バーのオーナー、藤岡氏だ。私を席へと案内するとアイスティーとお通しを持ってきてくれた。畳でできた椅子と、店内の角に置かれた仏壇。私は氏に尋ねたいことで、頭がいっぱいになった。
小さな出会いの場を創造

まず聞きたいことは、そう。なぜ僧侶が突然、バーを開こうと思ったのか。
「日本の仏教を知らしめるにはどうしたら良いのか。人々は、お葬式以外、何もぴんと来ない。そんな現実のなかにあって、ならば、仏教と出会える場所を提供すれば良いのだと気がついた。」と説明してくれた。バーはとても小さかったが、雰囲気は確かに非常にアットホームで落ち着いていた。お寺でお坊さんに話を聞いてもらうのは難しいが、ここでならそんなこともない。「まさに私はそんな場を造りたかったのです。」と藤岡氏。
あま~い天国、危険で美味しい地獄

周りを見回すと、やはり僧侶らはお客さんと談笑しながらカクテルを作っていた。ところで、ここ坊主バーで供されるカクテルは、全てスタッフである僧侶が作る。さらにドリンクの名前は、仏教に関連する言葉で命名されたものが多数ある。「極楽浄土」800円やクランベリーとブラックウォッカで作った「無間地獄」800円といった具合だ。藤岡氏は学生時代にバーで働いた経験があり、その後もカクテルの作り方を独学でマスターした。なんて多才な僧侶なんだ!
お酒越しの宗教は、寺でのそれを越える

坊主バーは本来、美味しいアルコールを提供する場所なのか、宗教的な癒しを提供する場所なのか?藤岡氏は躊躇することなくすぐに答えた。「もちろん、宗教的な癒しですよ。お酒を飲みながら、仏教の教えを伝えているのです。」
ところでスタッフである僧侶らに、宗教上、お酒の量の制限や問題はないという点に、私は驚いた。仏教は非常に厳しい戒律があると信じていたからだ。藤岡氏の坊主バーは、その偏見とは裏腹に、多くの笑いと温かな歓迎ムードにあふれていた。
僧侶兼マスターへの無料相談

坊主バーは、スタッフである僧侶からの精神的な癒しやアドバイスが得られる場として有名だが、実際にお客さんはどんな相談をしてくるのだろうか。「冗談ばっかり言っているけど、やっぱり相談に乗って欲しいというお客様もいらっしゃいます。たいていは、仕事や恋愛、人間関係の悩みでしょうかね。」さらに氏は続けた。「多くのお客様は女性です。男性は恥かしがりやさんで、心を開くまでに時間がかかります。プライドですよ。でも女性は、非常にたくさんの質問をしてきますね。」そしてやはり想像通りの答えが続いた。「お寺ですと、人は、自由に自分の思っていることを口にしません。でもバーですと、全く異なります。人は非常に素直な気持ちになるのです。」
東京で一番リラックスできるお説法

前述の通り、ここはただのテーマバーではない。真の日本の仏教の空間だ。それを次第に理解し始めた頃、説法が始まるというのだ。そう。お寺で僧侶が人々に教えを説くのと同様、ここでもお説法の時間があるのだ。祈りの文句が書かれた紙を渡されたが、ほとんどが漢字で私には読むことはできなかった。インタビューの間、私のドリンクを作ってくれていた僧侶は、おもむろに仏壇の前へと移動し、座った。そして突然、沈黙が訪れた。
お説法を聞きながらの瞑想

その僧侶は非常にリラックスしたムードでお説法を始めた。そして次の瞬間、坊主バーは東京中で一番好きな場所となった。年齢も性別も国籍も気にせず、一人ひとりのお客様が喜びのなかで、お経を口にしていたのだ。お経の深みや複雑な意味が分からなくとも、信じられないくらいリラックスした気分になった。いや、認めよう。確かに多少はブラックウォッカのせいとも言える。
藤岡さんのお説法とお代わりを堪能

祈りが終わると、藤岡さんはバーの真ん中に立ち、短いお説法を始めた。先のお経の意味を説明し、その内容と日々の生活との関わりを説いた。終始リラックスした雰囲気のなか、僧侶のありがたい話を聞くのも、自分の他愛ない話を聞いてもらうのも無料。坊主バーが成功している理由が分かった気がした。宗教的でスピリチュアルな空間でありながら、アットホームで美味しいカクテルやスナックが楽しめる場所。他にこれより良い所があるだろうか。
あなたのペースで日本の仏教を知る

藤岡氏の説法やインタビューを通して、常に私が耳にした言葉は「自分のペースで」というフレーズ。祈りを強いない、話すことを強いない、説法を聞くことを強いない。祈りたいときに祈ればよい、話したいときに話せばよい、聞きたいときに聞けばよいのだ。でももし、恥ずかしくて祈ることも話すこともできなかったら?それについても安心してほしい。ただカウンターに座ってドリンクをオーダーすればよいのだ。後は藤岡氏に任せればよい。「日本の仏教は、あなたが思っているものとは全然違うかもしれません。坊主バーでは、一歩一歩、あなたのペースで、仏教を知るお手伝いをさせていただきます。」
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