フランスに本社のある世界的タイヤメーカー、ミシュラン。このフランス本社で長く活躍し『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』の日本視察も担当した森田哲史さん。長いフランス暮らしを経て、欧米人の視点や考え方を知るようになった森田さんと外国人が魅力を感じる日本のスポットをめぐる「ぶらりもりた」。
- 目次
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- ■国立公園制定に尽力した芸術家の魅力に触れる「小杉放菴記念日光美術館」
- ■明治時代に日光発展の礎を築いた金谷ホテルの原点「金谷ホテル歴史館」
- ■1873年創業、現存する日本最古のクラシックホテル「金谷ホテル」
- ■日光の名の由来ともなった日光山岳信仰の中心地「日光二荒山神社」
- ■大正天皇が夏の静養地として過ごした「日光田母沢御用邸記念公園」
- ■温泉とクロスカントリースキーを楽しめる「日光アストリアホテル」
- ■クロスカントリースキーで日光の自然を全身で体感!
- ■奥日光の源泉地。地中から湧き出る温泉が見られる湯元温泉 「源泉小屋」
- ■地元出身のシェフが腕を振るう「欧州浪漫館 シェ・ホシノ」
- ■関東圏に存在する、特色溢れる国立公園
この記事で紹介する日光への訪問は、実はこれで二回目。今回は国立公園に指定されている日光の魅力という観点でめぐります。東京からほぼ真北に位置する栃木県日光市を中心に、男体山、女峰山といった日光連山、中禅寺湖、そして温泉が湧出する日光湯元といった自然を有する日光国立公園を紹介していきます。
今回の旅のパートナーも、ニューヨーク出身のアメリカ人・ティモシー。東京・浅草から特急で約2時間の場所にある東武日光駅で森田さんと合流です。
森田:「ティモシー、おはよう。今回は日光国立公園をめぐろう。その中で、日光が明治の頃からイギリス人を中心とした欧米人に人気の避暑リゾート地になった歴史を紹介していくよ」
ティモシー:「国立公園。つまり、自然保護区ということですよね」
森田:「国立公園というと、欧米の人にとっては自然保護区を意味することが多いよね。でも、日本の国立公園は単なる自然保護区ではないんだ。その土地の歴史・文化・伝統・そしてこの土地で暮らす人々の営みまで含めて、国立公園なんだ。つまり、多くの人々が国立公園の中で暮らし、それぞれの生活を送っているんだよ。今回は一泊二日で日光国立公園の歴史や文化を辿っていこう」
ティモシー:「日光というと、やっぱり日光東照宮を中心に発展した観光地というイメージがありますね」
森田:「やっぱりそう思うよね…。でもね、日光は明治時代に日本にやって来た欧米人が避暑地として利用するようになって人気が出て、発展してきた場所といえるんだよね。というのも江戸時代の庶民は、将軍様のお墓になんて恐れ多くて参拝できないからね。実は庶民の観光地として人気が出たのはずっと後になってからなんだ」
ティモシー:「東照宮、輪王寺、日光二荒山神社は世界遺産に指定されていますが、日光の魅力はそれだけではないんですね」
森田:「そうなんだ。今日はその日光の歴史をたどっていこう」
■国立公園制定に尽力した芸術家の魅力に触れる「小杉放菴記念日光美術館」
最初に二人が訪れたのは「小杉放菴記念日光美術館」。学芸員の清水さんに館内を案内していただきました。
森田:「今回のテーマは“国立公園”だけれど、この小杉放菴記念日光美術館は国立公園に大きな関係のある美術館なんだよ。1911年に当時の日光町が『日光山を大日本帝国公園となすの請願』を出したことが日本に国立公園が制定される大きなきっかけとなったんだ。1931年に国立公園法が制定されたんだけど、国立公園の制度づくりや周知を進めていた国立公園協会により、国立公園の候補地となった各地の景勝地を絵画によって周知する『国立公園洋画展覧会』が1932年に実施され、当時の著名な洋画家たちが参加したんだ。この『国立公園洋画展覧会』の企画などに日光出身の小杉放菴が関わっていたとも言われている。やがて、1934年に日光が国立公園に指定されたんだんだよ」
清水さん:「当館は国立公園内に位置する数少ない公立美術館の一つです。その『国立公園洋画展覧会』のために制作された11点の作品をはじめ、国立公園の普及啓発のために、国立公園協会の依頼によって、昭和の洋画界を代表する画家たちが描いた全80点の『国立公園絵画コレクション』を所蔵しています」
ティモシー:「このコレクションの作品は常に見ることができるんですか?」
清水さん:「常設はしておりませんが、年に何点か展示しています。放菴の作品は、約1200点の素描を中心に、油彩画や日本画などをあわせて約1400点ほど所蔵しています。その時の企画展のテーマに沿った放菴の作品を、常に10点前後展示しています」
ティモシー:「どこかユーモラスな作品もありますね」
清水さん:「1881年生まれの放菴は、もともと洋画を学んでいるんですが、日本画や漫画、挿絵など、様々なジャンルの作品を手がけているんです。放菴の父親・富三郎はもともと二荒山神社の神官だったこともあり、国学の素養もあり、和歌や書の才能もありました。そんな才能も引き継いでいるのかもしれませんね」
森田:「併設のカフェも落ち着きますね。東照宮などの二社一寺を訪れた後に、この美術館で芸術作品を楽しんで、このカフェでゆったり一日の感想を話し合うのもいいだろうね」
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小杉放菴記念日光美術館
- 住所 栃木県日光市山内2388-3
- 電話 0288-50-1200
開館時間:午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日:毎週月曜日
■明治時代に日光発展の礎を築いた金谷ホテルの原点「金谷ホテル歴史館」
その後、「金谷ホテル歴史館」へ向かいます。
森田:「ここが、日光が観光地として開けることとなったきっかけの地だよ。もともとは日光東照宮の雅楽師だった金谷善一郎の家だったんだ。明治維新を経て、徳川家康を祭神とする日光東照宮に仕える雅楽師の仕事はどんどん減っていき、家計は困窮していたそうだよ。そんな時、善一郎はヘボン博士というアメリカ人医師に出会ったんだ。
幕末から明治にかけて、多くの欧米人が日本にやってきて横浜に住み始めていたからね。日光を訪れたヘボンは、この日光の地をすっかり気に入ってしまったみたい。そしてヘボンは善一郎に『横浜に住む外国人たちが、きっとこの日光に観光にやってくる。だから彼らが泊まれるホテルをやったらどうか』と提案したんだね。それで1873年、善一郎は自分の家を『金谷カテッジイン』という外国人向けの民宿にした。その建物が今も残っている、この『金谷ホテル歴史館』なんだよ」
ティモシー:「イギリス人女性旅行家のイザベラ・バードも1878年にここに泊まってるんですよね。彼女の旅行記 “Unbeaten Tracks in Japan(日本奥地紀行)” を読みました」
森田:「この『金谷カテッジイン』が評判になって、多くの欧米人達が日光に避暑にやってくるようになったんだ。そして、英国人アーネスト・サトウらは日光を気に入って、中禅寺湖畔に別荘を建てるようになったんだよ。イザベラ・バードはこの部屋に泊まっていたんだよ」
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金谷ホテル歴史館
- 住所 栃木県日光市本町1-25
- 電話 0288-50-1873
開館時間
3月~11月 9:30~16:30(最終入館16:00)
12月~2月 10:00~15:00(最終入館14:30)
休館日
3月~11月 無休
12月~2月 月2~3回 不定休
■1873年創業、現存する日本最古のクラシックホテル「金谷ホテル」
金谷ホテル歴史館の流れで二人は「金谷ホテル」へ。ここは1873年のホテル創業から20年後の1893年に建築された純洋式建築のクラシックホテル。建造から130年近くの時を経て、今なおその美しさで訪問者を引きつけています。
建築様式は純洋式ですが、中の装飾は和のテイストを感じさせる和洋折衷のスタイル。壁などには栃木県産の大谷石がふんだんに利用されています。
日光彫りの彫刻や、エントランス上に配置された欄間、神橋をイメージした通路の欄干、神社仏閣にあるような装飾品がモチーフとなったライトなど、当時の日本の職人の技巧を各所で見ることができます。
ティモシー:「このダイニングルームには日本を訪れた外国人貴賓客が集ったんでしょうね」
森田:「格天井の中に描かれた天井画も美しいよ」
森田:「この金谷ホテルには多くの貴賓客が宿泊しているんだ。英国のロイヤル・ファミリーやアメリカ大統領、アインシュタイン博士にヘレン・ケラー、チャールス・チャプリン…」
ティモシー:「宿帳のサインや写真が残っているんですね!」
ティモシー:「客室となっている3階部分の手すりは白いんですね」
森田:「太平洋戦争後にはアメリカ進駐軍の保養所として接収されていたんだ。アメリカ軍が好きな色として、白く塗られたそうだよ」
1921年に建設された竜宮(ドラゴンパレス)には観覧邸が設置されており、ここから四季折々の日光の風景を見下ろすことができます。
2019-2020年の冬は、暖冬で氷は張りませんでしたが、例年の冬はアイススケートリンク、夏は温水プールを楽しむことも可能です。
森田:「第二新館には、1964年の東京オリンピックの際にはアメリカ人の観光客が多く宿泊したそうだよ」
ティモシー:「55年前のアメリカ人もこの風景を楽しんでいたんですね」
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金谷ホテル
- 住所 栃木県日光市上鉢石町1300
- 電話 0288-54-0001
■日光の名の由来ともなった日光山岳信仰の中心地「日光二荒山神社」
次に、「日光の社寺」の一つとして1999年世界遺産に登録された「日光二荒山神社」へ向かいます。
森田:「日光は山岳信仰の地だったと、前回話したよね。この日光二荒山神社は古来より修験道の霊場として信仰されていた男体山をご神体としているんだ。今は男体山と呼ばれているけれど、この山はかつて二荒山(ふたらさん)と呼ばれていたんだ。日本語で別の読み方をすると“にこう”となるだろう?この“にこう”が今の地名“にっこう”の元になったと言われているよ」
ティモシー:「二荒山というのは、まさに日光の起源なんですね。その起源をご神体とするのが、この二荒山神社」
森田:「有名な日光東照宮は、初代徳川将軍家康を祀った霊廟だというのは知ってるよね。この東照宮が創建されたのは1617年。でも、二荒山神社はそのはるか前、8世紀の767年に創建されたんだ。ヨーロッパではヴァイキングが活躍し始める頃だね」
二人は“日光の二社一寺”と呼ばれる日光東照宮、日光山輪王寺を横目に見ながら最奥に位置する二荒山神社本社を目指し、参道を登っていきます。
二荒山神社では、権禰宜の稲葉さんに案内していただきました。
稲葉さん:「二荒山神社は大己貴命(おおなむちのみこと)を主祭神としています。大国主神(おおくにぬしのかみ)としても知られていますね」
ティモシー:「このネズミの像はなんですか?」
稲葉さん:「今年は子年というのもありますが、大国主神はネズミと深い縁があるんです。大国主神は須世理毘売(すせりひめ)という須佐之男命(すさのおのみこと)の娘と恋に落ちたんですが、彼女と結婚するためにスサノオから3つの試練を与えられるんです。その最後の一つが、『野原に放たれた鏑矢を取ってくる』というもの。それを取りに大国主神が野原に入ったところ、スサノオが野原に火をつけてしまった。その時、大国主神をネズミが火から逃れる場所へ導いてくれ、さらには鏑矢まで取ってきてくれたと言います」
森田:「なるほど!大国主神はネズミに大きな恩があるんですね」
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日光二荒山神社
- 住所 栃木県日光市山内2307
- 電話 0288-54-0535
■大正天皇が夏の静養地として過ごした「日光田母沢御用邸記念公園」
二荒山神社を訪ねた後、二人は「日光田母沢御用邸記念公園」へ。ここは1899年に当時皇太子だった大正天皇のご静養地となったところです。今は栃木県立の都市公園として、歴史ある建物と風光明媚な庭園が公開されています。
森田:「ご幼少の頃からご病弱でいらっしゃった大正天皇が、夏の静養所として避暑に来られていたんだ。夏には各国の大使が避暑のために日光にやってくるところから『夏の日光は外務省のロビーのようだった』と言われていたけれど、天皇陛下も夏には日光にいらしたんだね。明治・大正時代の夏の日光は、外交や国政にとっても重要な土地だったんだよ」
所長の福田さんに案内していただきました。
福田さん:「この広大な建物は、江戸・明治・大正という3つの時代の建築物が一つになっているんです。もともと、明治時代の実業家・小林年保が別邸を建て、この別邸が皇室に献上され御用邸の一部として使用されることになりました。そこに江戸時代の旧紀州徳川家江戸中屋敷の一部を移築し、さらに当時の宮内省が新築した建物を集合させ、御用邸としました。やがて大正時代に大増改築が行われ、今のような大きな建築物となりました。部屋の数は全部で106部屋です」
ティモシー:「純日本建築でありながら、カーペットやシャンデリア、ビリヤード台などの当時の西洋でのハイソサエティー生活様式が取り入れられているんですね」
福田さん:「畳の縁一つとっても、当時の職人の最高の技術が詰め込まれています。いろいろな職人の方が訪れては『すごい技術だ』と長時間見ていらっしゃいますよ」
森田:「家の造りや調度も素晴らしく、じっくり見ていると時間がいくらあっても足りませんね。庭園も美しいです」
福田さん:「春のしだれ桜や夏の新緑、秋の紅葉と、四季折々のすばらしい自然が楽しめます」
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日光田母沢御用邸記念公園
- 住所 栃木県日光市本町8-27
- 電話 0288-53-6767
開園時間
4月~10月:9:00~17:00(受付は16:00まで)
11月~3月:9:00~16:30(受付は16:00まで)
休園日:毎週火曜日(祝日の場合はその翌日)/年末年始(12月29日~1月1日)
■温泉とクロスカントリースキーを楽しめる「日光アストリアホテル」
さて、朝から日光国立公園内をめぐった森田さんとティモシー、今日は奥日光にある「日光アストリアホテル」へ宿泊します。
日光市街から車で約40分、標高1400メートル、中禅寺湖から戦場ヶ原を越えたところにあり、周囲には広大な自然が広がり、夏はサイクリングやハイキング、冬はクロスカントリースキーを楽しむことができます。
近くの日光湯元温泉を源泉とする露天風呂もあり、天然の硫黄泉が旅で疲れた体を癒してくれます。
食事は、栃木の食材を使った和食のコースです。生湯波と八汐鱒のお造り、山女の竜田揚げ、霧降高原牛のしゃぶしゃぶなど、日光ならではの美味がたっぷり。
日本酒好きなティモシーは、今回も栃木の酒蔵「辻善兵衛商店」が作る日本酒「PREMIUM S(プレミアム エス)」を飲んでご満悦。何度も盃を重ねていました。
■クロスカントリースキーで日光の自然を全身で体感!
一夜明けて、朝。ホテルの前には一面の雪景色が広がっています。
今日のメインイベントは、クロスカントリースキー。日光アストリアホテルのすぐ裏には、光徳クロスカントリースキー場があるのです。クロスカントリースキーとは、斜面をすべり降りるのではなく、平坦な雪原を歩くスキーのこと。子どもからお年を召した方まで、気軽に楽しむことができます。
ギアはレンタル可能なので、ウェアや手袋、帽子などの装備を持って来れば、気軽にクロスカントリースキーを楽しむことができます。スキーに自信のない人にはスノーシューのレンタルも。
広いスキー場には、初心者も楽しめる1キロ、3キロコースから、カラマツの林を抜けて日光の自然をたっぷりと楽しめる5キロコース、10キロコース、競技会の開催も可能な全日本スキー連盟A級公認コースまで揃っており、初心者からエキスパートまで楽しむことができます。
今回森田さんとティモシーは、光徳牧場を中心に光徳沼の周囲をたどるコースを選択しました。
少し慣れてきたら、起伏の少ない林の中に入って、林間コースを楽しみます。
森田:「僕は初めてだけど、本当に楽しいね。初心者でもこんなに楽しめるんだね」
ティモシー:「東京からわずか2時間半で来られる場所に、こんなに自然を堪能できる場所があるなんて。日光の新たな魅力を知りました」
森田:「このコースからだと、男体山を裏側から見ることができるんだね。今年は雪が少ないそうだけど、一面銀世界の日光も美しいだろうね」
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日光アストリアホテル
- 住所 栃木県日光市光徳温泉
- 電話 0288-55-0585
■奥日光の源泉地。地中から湧き出る温泉が見られる湯元温泉 「源泉小屋」
スキーを楽しんだ後は、奥日光のさらに奥、湯ノ湖付近にある湯元温泉の源泉を訪ねました。この湯元温泉には1878年にイザベラ・バードも訪れたということです。
湿原の中にある木製の遊歩道を通って行くと、背の低い源泉小屋が見えてきました。
源泉には硫化水素の匂いが立ち込め、あちこちで蒸気が立ち昇っています。地中からは湯が湧き出ており、まさに地球の動きや熱を感じることができます。
森田:「ここが温泉の源泉なんだね。ここから湧きだした温泉が、パイプを通って昨日泊まったアストリアホテルなどへ送られているんだ」
ティモシー:「湯元って、まさにここが奥日光温泉の『ルーツ』なんですね」
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源泉小屋
- 住所 栃木県日光市湯元
■地元出身のシェフが腕を振るう「欧州浪漫館 シェ・ホシノ」
源泉小屋の後は、中禅寺湖のほとりへ戻り、ランチをいただきます。
今回訪れたのは、「欧州浪漫館 シェ・ホシノ」。目の前に中禅寺湖を望むという最高のロケーションです。
オーナーシェフの星野仁志さんは、まさにここ、奥日光のご出身。1991年に故郷であるこの地にこのお店をオープンし、地産地消をテーマに栃木の材料で本格フランス料理を提供しています。
星野シェフ:「この奥日光は、明治から太平洋戦争の前まで、外国人の別荘地として賑わっていたと父や祖父から聞いています。その頃のような奥日光の雰囲気を味わっていただきたいと、店名に“欧州浪漫館”という言葉を入れました」
森田:「中禅寺湖の向こうには、英国大使館別邸やイタリア大使館別邸がありましたしね」
星野シェフ:「ベルギー大使館別荘やフランス大使館別荘は今も現役で活躍していますよ。ベルギー大使館の方は、よくいらっしゃいますよ」
森田さんは「ヤシオマスの低温のローストサラダ仕立て」、ティモシーは「栃木県産銘柄豚ロースのポワレ リンゴのコンポート添え」をチョイス。
森田:「ヤシオマスも大ぶりで火の加減も最高ですね。一皿のポーションも大きいので、満足感があります。それから、ゴマや湯波などをメニューに取り入れているんですね」
星野シェフ:「特製のゴマ風味のプリンや温泉卵の生湯葉添えもとても人気がありますよ。地元の素材をフランス料理に活かすにはどうすればよいか試行錯誤した甲斐がありました」
この土地に生まれ育ったという星野シェフは、まさに日光の歴史や文化、地元の味などを知り尽くした人物。そんな彼にお話を聞いて、まさに日光の地が日本在住のヨーロッパ人に人気の避暑地だったことを実感することができました。
日光の名産を活かしたフランス料理を味わいながら、日光の地の歴史に思いを馳せ、地元の出身のシェフとの会話も楽しめる、そんな素敵なレストランでした。
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欧州浪漫館 シェ・ホシノ
- 住所 栃木県日光市中宮祠2478
- 電話 0288-55-0212
営業時間:
ランチ 11:30~15:00
ディナー 18:00~20:00
定休日:不定休
■関東圏に存在する、特色溢れる国立公園
日本には、今回訪れた日光国立公園以外にも、合計34もの国立公園があります。
森田:「ティモシー、日本の国立公園はどうだった?単なる自然保護区ではないということがわかってもらえたかな」
ティモシー:「この間行った阿蘇・くじゅうもそうでしたが、自然とその土地土地の文化が本当に大切にされていると感じますね。他の国立公園も気になります」
森田:「富士箱根伊豆国立公園や秩父多摩甲斐国立公園、三陸復興国立公園なんかにも行ってみたいよね。名前のとおり、富士山を中心としているのが神奈川県、静岡県、東京都、山梨県にまたがる富士箱根伊豆国立公園だね。ここには、達磨山という山があるんだけど、日本画家の代表的な存在・横山大観がこの達磨山からの富士山の眺めを絶賛したんだ。伊豆半島・太平洋(駿河湾)越しに眺める富士山は、まさに19世紀、日本を船で訪れた欧米人旅行客が甲板の手すり越しに競い合って眺めた『FUJI-YAMA!』の形に一番近いかも知れないよ。ここはおすすめだね」
ティモシー:「日本画のような富士山、ぜひ見てみたいです!」
森田:「奥秩父山塊を中心とする、埼玉、山梨、長野、東京にまたがる秩父多摩甲斐国立公園には、三峯神社という神社があるんだ。ここは狼を祀っているんだけど、日本では狼(おおかみ)は“大神(おおかみ)”に通じている。その昔、東日本の農民たちはこの三峯神社の護符・狼の護符を毎年貰うことで一年の豊作を願ったんだ。その伝統はまだ続いているんだよ」
森田:「青森県南部から宮城県の牡鹿半島までに位置する三陸復興国立公園は、まさに3.11で津波に襲われたところだね。このあたりの東北地方は縄文人(狩猟採集民)たちの故郷だった。高温多湿に適した稲作文化が寒冷地の東北まで到達するには何百年もの時間がかかったからね。ここは種差海岸のトレッキング、是川縄文館、神仏混交の霊地などなどの日本古層の雰囲気を味わえるエリアだと思うよ」
日光国立公園をめぐる一泊二日の旅。日本の自然を満喫し、歴史や文化、美術に触れてゆったりとした時間を過ごせる、素晴らしい旅となりました。
東京から2時間、新幹線を使わなくても訪れることのできる日光は、夏は避暑、冬は温泉やウィンタースポーツも楽しめる、素晴らしい観光地です。
単なる自然保護区ではない、人の営みと歴史、文化と伝統が共存する、日本らしい国立公園の姿を感じに、ぜひ日光を訪れてみてください。
※価格やメニュー内容は変更になる場合があります。
※特記以外すべて税込み価格です。
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