日本では一年を通して全国各地でさまざまなお祭りが開催されていますが、京都の「祇園祭」、飛騨の「高山祭」、秩父の「秩父夜祭」は、日本三大曳山祭に数えられ、毎年多くの観光客で賑わう、日本を代表するお祭りです。
今回は、東京のお隣・埼玉県に位置し、都心からのアクセスも良好な秩父エリアで例年12月2、3日に行われる「秩父夜祭」の見どころをご紹介します。2016年には「秩父祭の屋台行事と神楽」としてユネスコ無形文化遺産に登録され、国の重要無形民俗文化財に指定されている、由緒正しき「秩父夜祭」。日本最大級のお祭りの魅力に迫ります。
■古い歴史をもつ「秩父夜祭」
「秩父夜祭」は、埼玉県秩父市にある秩父神社の例大祭。江戸時代の享保年間(1716~36)に山車が創建されたという記録があり、300年余りの歴史があります。江戸時代にはお祭りとともに秩父絹の市「絹大市」(きぬのたかまち)が立ち、秩父の経済を大いに潤したといわれ、「お蚕祭り」とも呼ばれています。
また、古代にこの地を治めた知知夫彦命(ちちぶひこのみこと)が大神(秩父神社の神様)を祀ったとされる時代か、それより前から武甲山への信仰として行われてきたものが起源ではないかとも言われています。秩父で盛んな養蚕や機織りは、この知知夫彦命から教えられたという言い伝えもあるそう。
例年12月2日、3日に山車の曳き廻しや花火の打ち上げなど諸行事が華やかに行われる「秩父夜祭」は、秩父の人々にとって、蚕の世話や農作業を終えて一年を締めくくる総決算ともいえるお祭り。「夜祭」や「冬まつり」などと呼ばれ、親しまれています。もちろん秩父以外からの観光客も多く訪れます。
■豪華絢爛な「山車」の曳き廻し
12月2日は「宵宮」と呼ばれ朝から山車4基(宮地、上町、中町、本町)の曳きまわしが始まり、市内中心部の大通りを巡ります。屋台同士がぶつかりそうになりながら進む“すれ違い”は迫力満点!
「秩父夜祭」の山車は、大きく分けると“笠鉾(かさぼこ)”と“屋台(やたい)”という2つの形式があります。笠鉾は、屋根の上に無数の飾り花で作られた大きな傘を取り付けた、秩父地方独自の山車大正3年に笠鉾の順路に電線が設置され、笠鉾本来の姿での曳行はできなくなったため、現在は屋形のみの姿で曳いています。屋台は、水引幕や後幕をあしらった舞台式の山車で、歌舞伎を上演するための張り出し舞台を取り付けることができます。
12月3日は「本宮」や「大祭」と呼ばれ、朝から山車の曳き廻しが行われます。「動く陽明門(日光東照宮)」と言われるほど豪華絢爛な2台の笠鉾と、4台の屋台が、秩父屋台囃子を響かせながら、まちなかを巡行します。国の有形民俗文化財にも指定されている山車は、一見の価値あり!
夜になると、笠鉾や屋台に灯りがともり、さらにきらびやかになります。屋台の上から身を乗り出した「囃子手(はやして)」と呼ばれる祭の主役が、より一層大きな囃し声をあげながら賑やかに練り歩く姿は圧巻。御神幸行列や各山車が秩父神社周辺を出発するのは午後7時過頃。目的地である御旅所(おたびしょ)に到着するまでの午後10時頃までにかけて、お祭りは最高潮を迎えます。
秩父夜祭にまつわる最も有名な伝説に、武甲山の男神(蛇神・蔵王権現)と秩父神社の女神(妙見菩薩)が年に一度の逢瀬を楽しむというものがあります。御旅所は、その2神が出会う場所と言われています。
男神には正妻がおり、諏訪神社の八坂刀売命であるとされています。その正妻の女神を怒らせないように、各町会の山車が諏訪神社付近の大通りを通り過ぎる際は屋台囃子の演奏を止めて進む風習があり、“諏訪渡り”と呼ばれているそうです。
■独特のスタイルが珍しい「屋台歌舞伎」
秩父夜祭では、長唄を奉納する「曳き踊り」や「屋台歌舞伎」などが披露されます。「屋台歌舞伎」は、宮地・上町・中町・本町の4基の屋台が、当番形式で上演します。上演する際には、屋台本体の左右に張り出し舞台という舞台を付けて間口を広げ、芸座・仮芸座や花道などが設けられます。
演じられるのは江戸歌舞伎。江戸歌舞伎は、豪放、淡泊でゆったりしており、庶民生活を題材とした写実的・大衆的な演出が特徴の歌舞伎。屋台に張り出しを付け、芸座を組み立てて上演するスタイルは全国でも珍しく、舞台準備から撤収までの手際の良さも必見です。
■お祭りの夜を彩る大輪の花火
夜空を染める花火と、提灯の灯りが揺れる笠鉾や屋台の彩りの共演は、秩父夜祭の醍醐味のひとつ。日本では数少ない冬の花火大会としても有名で、国内でも屈指の大規模花火大会です。
近年ではその豪華さが増し、オープニングスターマインや大輪の花を咲かせる尺玉、黄金の滝など、鮮やかな花火と山車の取り合わせは必見です!
小高い場所から打ちあがるので、秩父市内の建物の高いところや、西武秩父駅前など空が広い場所からは比較的よく見えるそうです。
■東京からの行き方
秩父夜祭は秩父市内で行われます。電車で行く場合は、西武鉄道 西武秩父線の西武秩父駅が最寄駅になります。池袋駅から直通の特急ラビュー・特急レッドアロー号を使用すると、西武秩父駅までは最短約77分で行くことができます。
東京駅や新宿駅から行く場合も、まずはJR等で池袋駅へ行き、西武鉄道池袋駅から特急に乗るのがオススメです。
※本記事は2019年8月公開記事を、2024年11月に更新したものです。最新の情報は公式サイト等をご確認ください。
編集・ライター歴トータル17年以上。マンガ、小説、雑誌等の編集を経てフリーライターに転向後、グルメ、観光、ドラマレビューを中心に取材・執筆の傍ら、飲食企業のWEB戦略コンサルティングも行う。そのため、日本グルメの新商品やトレンドのキャッチアップが早く、LIVE JAPANでは幅広い年齢層や国籍の方にわかりやすく伝えている。
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