日本といえば着物、夏といえば浴衣ですよね!着物や浴衣は日本が誇る伝統衣装です。実際に着物や浴衣で街歩きしたいという外国の方も多く、観光客には人気のアクティビティです。ただ、実は浴衣とはそもそも何か、日本ではどんな風に楽しむものなのか、基本的なことが気になりますよね?
そこで、今回は着物ブランド「ふりふ」に、浴衣で気になる疑問のアレコレについて聞いてみました。外国の方が着物を着る際に不安や心配なく着られるように、プロの目線で解説してもらいます。
浴衣を快適に、きれいに着こなして楽しむために知っておきたいポイントも必見です!
取材したのは、着物ブランド「ふりふ」
「ふりふ」は、創業90年を迎える着物・アパレルの老舗、株式会社三松が展開する着物ブランド。レトロモダンな着物・浴衣に加え、洋服、アクセサリー、小物と、現代のファッションに「和のスタイル」を取り入れて楽しめるコーディネートを提案しています。
他の着物会社にはないオリジナルのテキスタイル(生地)を使った着物は、伝統を守りながらも個性的で、思わず目を惹くおしゃれなものばかり。現代のライフスタイルやニーズに合わせた新しい着物スタイルが人気で、若者からコアな着物好きまで幅広く愛されています。
お話をうかがったのは「ふりふ」川崎店の店長、中井川さん
今回、浴衣について詳しく教えてくれたのは、ふりふ川崎店の店長、中井川さん。親戚が着物店で働いていたり、書道教室を開いていたり、ご自身も幼い頃に和太鼓を習っていたりと、もともと日本の伝統文化に馴染みがあったのだそう。
「昔から和の文化には興味があって、着物もとても関心があったんです。大学では民族衣装としての着物を学んでいました。外国の方にもより深く着物や和の文化を知っていただいて、ぜひ楽しんで欲しいなと思っています」
日本人でも意外と知らない!浴衣のルーツや着物との違い
―そもそも浴衣とは、どういうものなのですか?
「もともと、浴衣はお風呂に入る時の肌着でした。昔は(日本の平安時代、9~12世紀)、お風呂といってもお湯に入るのではなく、蒸気で汗をかいて肌に浮いてきた汚れを拭き取るというスタイルでした。今のサウナに近い形です。その時に、熱い蒸気で肌を傷つけないようにと着ていたのが浴衣だったんです。
肌に直接触れるのでいい素材を使っていて、水気もよく吸い取るので、寝間着(パジャマ)として重宝されるようになりました」
「そのため、浴衣は家の中だけで着るもので、外に着ていくようになったのは日本で銭湯が発展してからなんです。今のような色柄がたくさん出てきたのは、歌舞伎役者さんが着るようになってからだと言われています」
―着物と浴衣は同じもの?何が違うのでしょうか?
「『着物』と『浴衣』と言葉を分けて使うことが多いのですが、実は浴衣は着物の中の一部。着物には、いくつか種類があります。例えば、最もフォーマルな「黒紋付(くろもんつき)」、成人式に着る「振袖(ふりそで)」、普段着として着る「小紋(こもん)」などです。浴衣は一枚織の布で作られた夏用の着物。着物は2枚のものが多く布も厚め、浴衣は1枚で布も薄い、そんな違いがあります」
浴衣についての素朴なギモン、着方や男女の違いとは?
―今の日本では、浴衣はどんなタイミングで着るのが一般的なんですか?
「夏に、花火大会やお祭りで着る方が多いです。着物自体がもう普段着ではなくなっているので、今では『浴衣は夏の特別なイベントの時にだけ着る』という人が多いですね。他の着物は着ないけれど、浴衣だけは着るという方がほとんど。昔から、夏の特別なイベントとして花火文化があったので、花火=浴衣というのが今も風物詩のように残っているのだと思います。また、旅館の寝間着として用意されているのもよく目にしますよね」
―浴衣は、年齢、性別関係なく着られるものですか?
「もちろんです!特に最近はSNSの流行で、浴衣の写真を投稿するために着るという若い人が増えています。やはり着物はきれいで注目されますし、よりかわいくなりますよね。少し前は、『女性は浴衣、男性は洋服』というコーディネートが多かったのですが、最近は男性も浴衣で「カップル2人で着たい」という方も。ファッション誌でも、デートコーディネートとして男女で浴衣を着るという企画が増えているんですよ」
―浴衣(着物)は、なぜ左前にするのですか?
「これは昔から、着物の着方のルールとして決まっています。理由は諸説あるのですが、よく言われるのが右手で扱いやすいようにということです。一般的に多くの人は右利きの人なので、着物も右利きの人が動きやすいようにできています。着物を左前にすると、右手がスキマにスッとに入りますよね。このスキマは懐(ふところ)といって、お財布など大事なものを入れる習慣もあったので、それが取り出しやすいように左前になったともいわれています。亡くなった人に着付けるときは右前に合わせるので、間違えないように気を付けてくださいね」
浴衣を着る時期や合わせる柄はどうすればいい?
―浴衣は着る時期が決まっていると聞いたことがあります。
「そうなんです。浴衣は7月と8月の夏、6月の初夏と9月の初秋は布が一枚の単衣の着物、それ以外の時期は裏表で布を合わせた袷(あわせ)の着物を着るのが基本的なルールなんです。なぜ?と思うかもしれませんが、夏服・冬服の違いはもちろんのこと、昔から日本人は四季を大切にしていたので、その季節にあった着物を楽しむという風習があったからなんですよね」
「ただ、昔とは日本の気候も変わっていて、6月や9月でもまだまだ暑いですよね。ですので、今はそこまで厳密でなくていいと思います。浴衣であれば、下に長襦袢(ながじゅばん)という着物用のインナーを着れば、夏の時期の着物としても着られます。特にふりふの浴衣は、色柄、素材的にも、着物風に着ることができるものなんです。外国の方ならなおさら、あまり時期は気にせずに着たいものを着て楽しんでもらうのが一番だと思います」
―男性用と女性用の浴衣の違いを教えてください。
「着物のそのものだと縦の長さと構造、そして着方が違います。男性は着るときに丈を調節したりせずにオンサイズで着ますが、女性の場合はウエストのところを折り曲げて長さを調節して「おはしょり」という部分を作ります。そのため、女性もののほうが、身長に対して長いんです。また脇の部分にも穴が開いているなど、構造も少し違うんですよ。合わせる帯の幅も、男性は細め、女性は太めと大きく違いますね」
―甚平は違うものですか?
「そうですね。浴衣の女性と一緒に甚平を着ている男性もよく見かけます。甚平は本来、子どもや男性の部屋着として生まれたもので、外に着ていく服ではないとされていたそうです。男性も、お出かけする際は浴衣の方がおすすめです。」
―外国人が日本で浴衣を着ていても大丈夫ですか?
「ぜひ着てください。外国の方は骨格的に正座がしづらかったり、脚を閉じにくかったりと、着物だとちょっと不自由なところがあるかもしれませんが、日本ならではの着物を着て楽しんでほしいですね」
―どんな柄の浴衣を選べばいいのか、迷ってしまいます。
「これはもう好きな柄を選ぶ、というのが一番です。不思議なもので、洋服では絶対に選ばない色や柄が、着物だと案外似合うということもよくあるんです。浴衣は特別だからこそ、いつもと違う自分を演出してみてもいいですし、なじみのある安心できる色柄にするのもOK。ちなみに、ふりふの店頭ではスタッフがその方に合ったものを選んでご提案しているので、ぜひ着物のプロのアドバイスも参考にしてみてください」
―最近の浴衣のトレンドを教えてください。
「洋服ほど大きなトレンドの動きはないのですが、椿のお花など分かりやすく日本のお花、柄というものが人気です。SNSなどにアップするのが目的であれば、写真映えする豪華な色柄ものがいいと思います」
「着物には、夏には紫陽花、冬は椿など、季節にあった柄があるのですが、それもあまり気にしなくていいと思います。Tシャツとジーンズのような感覚で好きなものを選んでください。小物の合わせ方でも雰囲気はずいぶん変わりますよ」
外国人が浴衣をきれいに着こなすために知っておきたい5つのポイント!
ここで、浴衣を快適に楽しんで、きれいに着こなすために知っておきたいポイントを5つ教えてもらいました。
①浴衣の下にはインナーを着る
これは外国の方に限らず日本の若い方にもお伝えしたいのですが、浴衣の下には、必ずタンクトップやTシャツなどインナーを一枚着てください。下着だけつけて素肌に浴衣という方がとても多いのですが、胸元がはだけてしまった場合に下着が見えてしまいます。
インナーを着ると汗も吸い取ってくれるので、快適に着られますよ。下着もできれば、和装専用のブラジャーを使ってもらうと見た目もきれいで着崩れにくく、より快適です。
②いつもより小股で歩く
浴衣の時は、いつもよりも小さな歩幅で、さらに小股で歩くようにしてみてください。洋服の時と同じように大股で歩くと、どんどん着崩れてしまいます。
もしどうしても難しいようであれば、前見頃(前の布)を抑えながら歩くと開きづらくなります。また、歩きやすさという点では、着付けるときに丈を少し短めにするのもコツです。私も外国の方の着付けをする時は、歩きやすいように少し短めにしています。
③できるだけ腕まくりをしない
浴衣は洋服に比べて袖の布が多いので、暑かったり邪魔だったりでつい腕まくりをしてしまいがちなのですが、着崩れる原因に。できるだけ、腕まくりをしないように気を付けてください。
④腰ひもはしっかり締める
浴衣を着るときは、腰ひもという紐を2~3本、伊達締めというベルトのようなものを使って着付けていきます。はじめは少しキツイと感じるかもしれませんが、しっかりしめるとコルセットのように安定して、姿勢も良くなります。歩くときもできるだけ猫背にならないように、背筋を伸ばしておくととてもきれいに見えますよ。
⑤無理して下駄をはかない
浴衣に合わせる下駄で痛くなってしまうという方が多いんです。足裏は思った以上に汗をかくので、滑って負担がかかります。そういう場合は、無理して下駄をはかなくても問題ありません、ビーチサンダルなど、ご自身が歩きやすいもので調整してみてください。
下駄の時は、レースの足袋をはくのもおすすめです。また、安い下駄ほど底が薄くて足が痛くなりがちなので、それなりに値段が高いものを選んでもらうのもポイントですね。
浴衣の着方を知りたい!
自分一人で着るのは難しいけれど、大まかな手順を知っていると、着せてもらう時にもスムーズです。
①裾の長さを合わせる
自分から見て左側が上になるように合わせ、下の着物が出ないように少し持ち上げます。丈の長さは、くるぶしくらいが目安。歩きやすさを考えて少し短めがおすすめです。
②ウエストで腰ひもを結ぶ
ウエストの位置で腰ひもを締めます。
③襟元、背中を整える
前のしわを伸ばして襟元を整えて、コーリンベルトで留めます。
さらに胸下あたりを、もう一度、腰ひもで締めます。
背中のしわを伸ばします。
④おはしょり(着物の折り返し)を作る
おはしょりを作ります。
上から伊達締めを締めます。
⑤帯板を付ける
帯板を巻き付けます。
⑥帯を締める
肩幅より少し広めの長さを半分に折ります。
自分の左肩にかけて、残りの帯を自分の腰に巻き付けます。
二周回したら、左肩にかけていた部分を外して結びます。
長い部分を織り込んで、リボンを作ります。
リボンの形が完成しました。
リボンを背中側にくるっと一周回せば着付けは完了です。
▼【ふりふ公式】
浴衣の着付けの手順を動画で分かりやすく説明!(英語字幕あり)
▼【ふりふ公式】
ふりふ・オリジナル帯結びの手順を動画で分かりやすく説明!(英語字幕あり)
浴衣を着るときに必要なもの&あると便利なグッズは?
浴衣と帯、下駄以外で、浴衣を着るときに必要なもの、あると便利なグッズはこちらです。
【女性】
腰ひも2~3本、伊達締め、コーリンベルト、帯板
※あると便利なもの:着物用インナー、和装ブラジャー
【男性】
腰ひも1本
※あると便利なもの:肌着、ステテコ
浴衣のコーディネートを華やかにしてくれる小物
浴衣や帯だけでなく、他の小物でアレンジできるのも和装の楽しみの一つ。
圧底の下駄は足首にリボンを巻くようなデザインになっています。毎年個数限定で制作されている人気の下駄です。
帯留めとは、帯に巻く帯締めという紐につけるアクセサリーのこと。浴衣の基本の帯結びで帯締めは使いませんが、あえておしゃれ感を出すために取り入れるのもおすすめ。
猫にサバ缶なんていうユニークなものも。
帯からチラっと垂らすとおしゃれな根付け。金魚が揺れて泳いでいるような涼しげな演出ができます。
豪華でかわいい髪飾り。浴衣コーディネートには必須のヘアアクセサリーです。
浴衣のアクセサリーとしては扇子がつきもの。こんなかわいい、オリジナリティのある扇子を開いたら注目の的ですね。
形がしっかりしていて収納力もある籠製のバッグ。洋服にもぴったりなのがうれしいデザインです。
実際に浴衣を着られる場所は?
最近では、浅草、鎌倉、京都など、多くの有名観光地で「着物・浴衣レンタル」サービスが多く見られます。準備をしなくてもすぐにその場で着られて、短時間の街歩きができるのでおすすめです。
より本格的で個性的なものを着たい、自分の浴衣が欲しいという方は、お店で買って一式そろえてみてはいかがでしょうか?購入店や観光案内所などでは、自分の浴衣を持ち込むと、有料、無料ともに着付けのサービスを行っているところがあります。また、たいていの美容院では着付けをしてくれるので、ヘアメイクと合わせて利用してみるのもいいですよ。
難しく考えず、着たいものを楽しんで!
今回の記事で、浴衣についての知識は深まったでしょうか?日本の和装は昔からのルールがいろいろあって難しく考えがちですが、時代は大きく変わっています。伝統やマナーは大事にしながらも、「着たいものを着て、好きなコーディネートで楽しんでもらうのが一番!」とプロのお墨付きもいただいたので、ぜひ日本ならではの浴衣を着て、この夏を楽しんでくださいね。
【取材店舗】
-
ふりふ川崎店
- 住所 〒210-0007 神奈川県川崎市川崎区駅前本町26−1 アトレ川崎2階
- 電話 044-222-1555
<営業時間>
10:00~21:00
<定休日>
館に準ずる
旅ライター×海外ツアーコンダクター。社会人向け教育コンテンツの企画開発・編集担当として11年従事。プライベートでは学生時代から旅に魅了され、これまで世界約50カ国150都市以上をめぐってきた大の旅好き。世界中、日本中のグルメを味わい、自然を感じ、世界遺産や歴史的建築を見て、温泉めぐりをするのが生きがい。そんな旅好きが高じて、会社員から旅ライター×海外添乗員へと転身。現在は、年間100日以上海外を飛び回りながら、旅ライターとしても活動。旅の楽しさ、日本の魅力、世界の多様な価値観をより多くの人に広めるべく、インバウンドの添乗や旅ライターの取材等で、日本各地を訪れて情報発信をしている。
※価格やメニュー内容は変更になる場合があります。
※特記以外すべて税込み価格です。
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