日本酒造りに欠かせないおいしい米と水。日本有数の米どころ・東北地方は、日本酒のコンクールで1位を獲る蔵元や全国でも人気の酒を造る有名酒蔵などが集まるエリアです。そんな東北地方最大の都市・仙台市には、地酒が楽しめるレストランもいっぱい。今回は、日本酒ソムリエこと「唎酒師(ききさけし)」の資格を持つ「旅籠(はたご)」オーナーの青屋宰(あおやつかさ)さんに、日本酒の基礎知識とおすすめの酒と日本酒ワークショップについて教えていただきました。
日本全国から選りすぐりの日本酒が味わえるレストラン「旅籠」
JR仙台駅から地下鉄南北線で3分。勾当台公園駅で下車し、「南出口1」を出て左に約2分直進したビルの3階にある「旅籠」。仙台の観光スポットとしても知られる定禅寺通(じょうぜんじどおり)沿いにあり、店内にあるカウンターからは美しいケヤキ並木が眺められます。「旅籠」では、東北の地酒を中心に、全国各地から厳選した50~60種類の日本酒を常時用意。和食ベースの料理とのペアリングを楽しめます。
「東北のおいしい地酒が飲みたいけれど、何を飲めば良いか分からない」という旅行者や、お酒を味わいはじめたばかりの20代の人など、“日本酒ビギナー”が多く訪れる「旅籠」。オーナーの青屋さんは、「日本酒のおいしさを知るきっかけの店になれば」と話します。日本語を話せない人には、英語と中国語で記載したアンケート用紙を渡し、簡単に酒と食の好みを聞き出して提供。外国人旅行者が訪れても安心ですよ。
日本酒ってどうやって造られるの?
日本酒は米と水が原料ということは知っていても、実際、どのような工程で造られるのかなどビギナーには分からないことだらけ。青屋さんに日本酒の基礎知識を教えてもらいました。
「基本的な酒造工程を簡単に説明すると、雑味につながる米の不要な部分を削る“精米”、米を洗い吸水させる“洗米(せんまい)・浸漬(しんし)”、米を蒸気で加熱する“蒸し”、米を発酵させるために麹菌を繁殖させる“製麹(せいきく)”などがあり、ほかに日本酒の元となる酒母(しゅぼ)を造る“酒母造り”、仕込みタンクに酒母を入れ発酵を行う“醪(もろみ)造り”を経て、醪と酒、酒粕に分ける“搾り”、貯蔵…。と大まかに言うとこのような流れです。しかし、現在は機械化が進んだことや酒蔵独自の手法もあり、商品によっても違いが出てきています」
なるほど…。味や香りに個性を出すためにも、各蔵元で研究し工夫しているのですね。
大吟醸や吟醸と書かれているのはどういう意味?
さまざまな過程を踏んでできあがった酒。レストランでメニューを見ると、酒名に“大吟醸”や“吟醸”と書かれていますが、これは何を表わしているのでしょうか? また、日本酒の度数も気になるところです。
「一般的には、精米歩合(せいまいぶあい)という米を削った割合が違うことで、“大吟醸”、“吟醸”なととグレードが分かれます。ただ、醸造の技術は革新的に進んでいるので、私はグレードで選ばすに様々な味を楽しむことが大事だと思います。日本酒は見た目は似ていますが、味わいは使う材料によって全く異なるんですよ。アルコール度数は平均16度前後。少し、アルコールが強く感じたり、ゆっくり長く味わったりしたいときは、洋酒のチェイサーと同じく水を合間に挟みながら楽しむのがおすすめです」
日本酒を味わう前に基礎知識を頭に入れておくことで、より興味が深まってきました。
東北の日本酒の特徴とおすすめの1本
日本酒は酒蔵がある土地の米と水を使うことが多いため、地域によって風味に違いが出ると言われています。また、杜氏(とうじ)と呼ばれる酒造りの責任者によっても味に変化があるとか。
日本の本州最北部にある東北地方で造られる酒は、どのような特徴があるのでしょうか? また、おすすめの1本を教えてください。
「一般的に、雑味が少ないクリアな酒質で、喉ごしがスムースと言われています。東北地方が寒冷地にあたることから、発酵する過程で余計な菌が繁殖しないということにつながるのかと思います。ただ、今は麹菌の開発も進んでいて、風味も多彩なんです。東北地方にある蔵元は約240。仙台がある宮城県は、東北6県の中で3番目に少ないものの、コンクール受賞銘柄がある優秀な蔵が多いことでも知られています。
その宮城県仙台市の蔵元・勝山酒造(かつやましゅぞう)の「戦勝政宗」は、おすすめの1本。勝山酒造は320年以上続く仙台を代表する蔵元で、仙台藩初代藩主・伊達政宗公ともゆかりがあります。米は最高級の国産米、水は地元の泉ヶ岳から湧き出る硬度35度の軟水を使用。芳醇な香りとスムースな口あたりが楽しめます」
仙台の老舗酒蔵の酒なら、観光で訪れた人にも思い出の1本となりそう。きらりと光るゴールドのラベルも華やかで、ギフトにも良いですね。
利き酒ワークショップで日本酒を知る
ふらっと店を訪れて日本酒を楽しむのも良いですが、唎酒師の青屋さんから説明を聞きたい人はワークショップに参加してみるのがおすすめ。東北の地酒を含む6種類の日本酒と付き出し(アペタイザー)4種類がのったワンプレートを、青屋さんの話を聞きながら楽しめます。
この日用意してもらったのは、青森県「陸奥 八仙(むつ はっせん)」(特別純米酒・新酒にごり酒)、秋田県「雪の茅舎(ゆきのぼうしゃ)」(純米吟醸酒)、山形県「上喜元(じょうきげん)」(特別純米酒)、宮城県「戦勝政宗」(純米吟醸酒)、宮城県「一ノ蔵(いちのくら)」(本醸造酒)、宮城県「田林(でんりん)」(山廃仕込み・特別純米酒)と、すべて東北の地酒。
「知識を入れてから味わうのも良いですが、はじめに味わって自分の好きな風味を見つけるのが大事だと思います。インバウンドの参加者で多く聞かれる声が、自国で飲んだ日本酒がおいしくなかったというネガティブなもの。飲んだ日本酒がたまたま口に合わなかっただけなのかも知れません。日本酒の銘柄は多彩で、味わいもそれぞれ個性があります。まずは“おいしい!”と感じて、そこから興味を広げていくのが良いのではないかと。このワークショップでは、6種類をグラス1杯ずつ試せるので、好みに出合う確率も高いですよ」と青屋さん。
頭で考えるより、先に“おいしい”を体感すれば、一気に日本酒の魅力にはまっていきそうです。
付き出しと呼ばれるアペタイザーに用意されたのは、野菜の煮物、旬の白身の刺身、仙台味噌で漬けたチーズ、茹でた青菜のおひたしの4種類。
「今回、紹介した酒に合わせるなら、煮物にはスッキリとした辛口の一ノ蔵。白身魚の刺身には、あっさりとした料理に合う香り豊かな戦勝政宗。味噌漬けチーズはどの日本酒でも合いやすいのですが、軽やかな口あたりの雪の茅舎。おひたしは辛口の爽やかな感じが良いと思うので、上喜元が良いかと思います。比較的、日本酒は合わせられる料理の幅が広いので、付き出しを少しずつ味わって6種類の酒と楽しんでみてください」
付き出しのなかで、仙台味噌で漬けたチーズは青屋さんいちおしです。チーズと相性が良い酒と言えば、ワインが思い浮かびますが、日本酒も同じ発酵食品。酒とチーズが互いの旨味を引き立てて、絶妙にペアリングします。
日本を訪れたならその土地ならではの地酒を楽しみたいもの。旅籠のワークショップに参加すれば、より深く日本酒や東北の地酒について知ることができますよ。
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旅籠
- 住所 〒980-0811 仙台市青葉区一番町4-10-11 FRK3F
- 電話 022-797-4490
営業時間:17:00~24:00(金・土曜は~翌1:00)
定休日:日曜
Text by:株式会社シュープレス
※本記事の情報は2020年12月時点のものです。最新の情報は公式サイト等でご確認ください。
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