朝夕の寒暖の差が大きい青森県の内陸部は、奥入瀬渓流や十和田湖など国内屈指の紅葉名所が点在しています。場所によって違いはありますが、例年10月中旬から11月上旬にかけ、広葉樹が赤や黄色に色づき、風景に鮮やかなグラデーションを描きます。温泉宿から、そうした紅葉の景観をひとり占めしながら眺められるのも、この時期ならではの楽しみでしょう。混雑を避けて、ゆったり青森の紅葉を楽しめる宿泊施設を3つご紹介します。
1.街の喧騒から離れて紅葉を楽しめる「ランプの宿 青荷温泉」(黒石市青荷温泉)
青森県黒石市の青荷渓谷にある一軒宿で、秘湯の宿として有名な「ランプの宿 青荷温泉(らんぷのやど あおにおんせん)」。弘前駅から弘南鉄道に乗り30分ほどで黒石駅まで行き、そこからさらに弘南バスを利用して30分、虹の湖公園で下車します。虹の湖からは専用のシャトルバスが運行していて約20分で宿に着きます。
創業は1929年、電気は通っておらず、それゆえ館内の照明はすべてランプ。街の喧騒から隔絶された静かな場所で、温泉に浸かりながらゆっくりと自然を楽しむ、そんな過ごし方がぴったりの湯宿です。館内には総ヒバ造りの健六の湯、開放感たっぷりの露天風呂、木の温もりあふれる本館内湯、さらには内湯と露天がある滝見の湯という、4つの湯船があります。
本館から吊り橋を渡って行く混浴の露天風呂は、木々に囲まれた青荷川を見晴らす場所にあります。ゴツゴツとした大きな岩が組まれた湯船に、しっとりと肌になじむ単純泉の湯が掛け流しであふれています。ほどよい湯温、顔をなでる秋風が気持ちよく、ついつい長湯してしまいそう。
湯船の周囲には、屋根と囲いもあるので開放感の中に落ち着きもあり、じっくり湯に浸かりたい人にもおすすめ。なにより、日々、色を変えていく錦秋の鮮やかさを眺めながらの入浴は、至福の時間です。紅葉の見頃は年によって異なりますが、10月中旬から下旬。夜はランプの灯りだけでの入浴となり、とても幻想的で、午前と夕方の1日2回、女性専用時間があります。
本館近くの別棟にある健六の湯は、1階に男女別の浴室があり、2階が客室になっています。山のロッジ風の建物の中にある湯船は、男女とも総ヒバ造り。爽やかな木の香りとしっとりとした湯、そして大きな窓から紅葉を眺めながら入る温泉は格別です。露天風呂に比べると湯温はやや熱めですが、それがまた肌の奥まで泉質が伝わるようで気持ちがいい。女湯には、釜でできた小さなひとり用露天風呂があり、プライベート感があり人気。
客室は全部で35部屋あり、いずれも畳み敷きのシンプルな和室になっています。また朝夕とも、大広間で味わう食事は、川魚や季節ごとの山の幸がお膳をにぎわします。ほんのり灯るランプの下で食べる食事も、また風情があります。
宿泊した外国人客からは「雰囲気のあるランプの照明、おいしい夕食と朝食、見事な風呂とロケーション。客室に川の心地よい音が聞こえゆっくり眠れました」という感想も寄せられています。館内の案内やメニューなどはおおむね英語対応されています。多くの外国人は不便なく滞在できているようです。
2.大きなもみじが美しい庭園を眺められる「花禅の庄」(黒石市落合温泉)
青森県黒石市にある落合温泉は、浅瀬石川沿いに湯煙を上げる小さな温泉地です。「花禅の庄(かぜんのしょう)」は、弘前駅から約30分の弘南鉄道黒石駅で、弘南バスに乗車し約30分、津軽伝承工芸館前で下車。徒歩2分で着きます。弘前駅東口から送迎バスも出ています(要予約)。
中野もみじ山、八甲田山といった青森きっての紅葉名所に近く、10月中旬から11月上旬にかけての紅葉の見頃の時期が、1年でもっとも賑わいます。また、宿の日本庭園にも、大きなもみじがあり、全ての客室から、美しい紅葉が眺められます。
「花と畳」を愛する宿というコンセプトを掲げ、館内をすべて畳み敷きにしているのも大きな特徴。畳みならではの温もりと清々しさを感じてもらおうという姿勢は、日本人のみならず外国人客にも好評です。客室だけでなく、廊下もエレベーター内もすべて畳みという宿に憧れを抱き、来館する外国人客もいるそうです。
落合温泉の泉質は単純温泉で無色透明。しっとりとした湯は美肌効果もあるとされ、女性にも人気が高い温泉です。香りのいい青森ヒバを使った大浴場、十和田石を配した眺めのいい露天風呂に、日頃の疲れも癒されることでしょう。
客室のタイプは、12.5畳の和室に板の間が付いたタイプがスタンダード。どの部屋からも自慢の日本庭園が望めるようにレイアウトされています。また、各部屋でWi-Fiの利用が可能なのも宿泊客に好評です。
外国語対応はあまりされていないものの外国人からも人気の宿で、宿泊した外国人客からは「和の文化を強く感じられました。畳を素足で歩くことのすばらしさを感じられよかったです」といった声も寄せられています。
3.紅葉の名所・十和田湖畔に佇む「十和田プリンスホテル」(小坂町十和田湖西湖畔温泉)
東北屈指の紅葉スポットとして知られる、青森県と秋田県の県境に位置する十和田湖。その湖西岸に位置する「十和田プリンスホテル」は、静寂の中にたたずむ大人の隠れ家的なリゾートホテルです。
東北自動車道小坂ICから約40分で着く十和田湖西岸は、遊覧船やみやげ物店などが並ぶ東岸の喧噪とは離れた場所に位置しています。公共交通の場合は、JR八戸駅か十和田湖駅(休屋)から、宿のシャトルバスが発着しています(要予約での運行)。
美しくも神秘的な湖の姿、そして凜とした晩秋の冷たい空気、風に吹かれ揺れる赤や黄に染まった広葉樹、静かな休日を過ごすのにこれ以上ない環境がここにはあります。客室は、レイクビュー、マウンテンビューとありますが、いずれからも周囲の豊かな木々の紅葉が楽しめることでしょう。
「湖畔のオーベルジュ」をコンセプトにしたホテルでは、地元の食材を味わえる十和田湖フレンチともいうべき、ディナーをレストランで楽しむことができます。また、食事をするメインのダイニングルームからは、十和田湖を一望に見渡せるように設計。美しく雄大な景色を存分に楽しむことができるでしょう。
温泉には、開放感たっぷりの露天風呂があり、樹木の向こうに十和田湖の姿が見え隠れしています。湯船には大きな屋根が架けられていて、雨や雪の日でもゆったりと温泉を楽しむことができるのも魅力。
宿泊した外国人客からは「十和田湖の絶景を望むフレンチディナーが素晴らしいです。温泉も素晴らしく、部屋と朝食は完璧でした。湖に沿って素敵なトレイルがあり、山に向かういくつかのトレイルもあります」とそのロケーション含め、好評なようです。館内の案内など英語を中心に外国人対応はしっかりしています。
十和田湖や奥入瀬渓流、中野もみじ山など紅葉名所いっぱいの青森。その周辺の素敵な宿に泊まりながら、
錦秋に染まる、晩秋の青森旅を楽しんでみてはいかがでしょう。
Text by:株式会社シュープレス
※本記事の情報は2021年10月時点のものです。最新の情報は公式サイト等でご確認ください。
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