日本の伝統食である「精進料理」は、仏教の戒律のもと殺生や煩悩への刺激を避けることを目的とした料理です。動物性の食材や、ニンニクのような刺激の強い野菜は避けるべきとされています。
高野山の精進料理は、弘法大師が高野山を開かれて以来、「五味(甘・酸・辛・苦・鹹)」「五色(白・黄・赤・青・黒)」「五法(生・煮る・焼く・揚げる・蒸す)」という調理法が現在まで引き継がれています。見た目も美しくしっかりした味付けの精進料理は、誰もがおいしくいただけます。
では、高野山・一山境内地の中にある精進料理を味わえるお店をご紹介しましょう。
1.伝統の味を継承する「中央食堂さんぼう」
「中央食堂さんぼう」では、弘法大師の教え「生かせいのち」を料理に生かしており、金剛峯寺の振舞(ふれまい)料理も手掛けています。振舞料理とは、僧侶の儀式・催事の後に振る舞われる宴席料理のことで、いただくもの全てに感謝する心が込められています。その教えを伝承している精進料理がここで味わえるのです。
料理の要となる出汁は、昆布・大豆・椎茸・干瓢から12~14時間かけてとります。出汁をとった後の食材も無駄なく生かし、昆布はつくだ煮に、大豆は麦大豆ご飯といった具合に、いただくもの全てを最後まで調理して提供されます。
生麩は高野山の精進料理には欠かせない食材です。煮ても揚げても美味しくいただけますが、色も形もさまざまなので精進料理のアクセントにもなる万能選手。
粟麩田楽は、米油で揚げた粟麩のもっちりとした食感と、みその風味のハーモニーが最高においしい一品。何個も食べたくなりますが、精進料理は翌日の命を生かす分だけいただく料理、目の前にある分を大切に味わいましょう。
どの器にも、五色の食材が盛り込まれています。全てをいただくことによって自然と栄養バランスの良い食事となるのです。海藻や野菜から時間をかけて丁寧にとられた味わい深い出汁がベースとなっている中央食堂さんぼうの精進料理は、誰もが満足できるお料理となっています。
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中央食堂さんぼう
- 住所 〒648-0211 和歌山県伊都郡高野町高野山722
- 電話 0736-56-2345
営業時間:11:00~16:00 ※売り切れ次第終了
定休日:不定休
その他:英語メニューあり
アクセス:南海りんかんバス「千手院橋」15下車、徒歩約1分(一乗院様手前)
2.ニーズにあった内容でご提供する「み山」
「み山」では、旬の野菜を使った精進料理を「応量器」で提供します。応量器は、主に禅宗の修行僧が使用する個人用の食器で、軽くて扱いやすく収納性に優れています。
一般には黒塗りの漆器ですが、朱塗りのものは主に儀式に用います。応量器を用いた食事は厳格な作法が定められていますが、料理店や家庭で使う分には自由に使えます。
残さず食べていただきたいという思いから、外国人観光客に苦手な方が多い漬物とごま豆腐(わさび風味)を、それぞれピクルスとごま豆腐(スイーツ風)にチェンジできるという嬉しいサービスを行っています。無くなり次第終了となりますが、注文時に対応してくれるのでお声掛けをしてみてください。
温かいご飯が苦手な方は、2日前までに予約すると米粉パンとのチェンジもできますよ。
「精進料理では物足らないな」と思ったら、えびの天ぷらも入った「天ぷら蕎麦膳」はいかがでしょう。蕎麦は温かいものと冷たいものの2種類が用意されているので、気候や体調に合わせてどちらか1つを選んでくださいね。
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み山
- 住所 〒648-0211 和歌山県伊都郡高野町高野山529
電話番号:0736-56-2917(日本語のみ対応)※日本語以外での予約は、ご来店時のみ可(当日分の予約も可)
営業時間:11:00~15:30
定休日:不定休
その他:英語メニューあり
アクセス:南海りんかんバス「高野山駅前」方面から①「玉川通り」13下車、徒歩約1分(バスの進行方向に進みすぐに合流した右側の道を鋭角に少し戻る)②「玉川通り」12下車、徒歩すぐ(バスの進行方向とは逆に戻る)
南海りんかんバス「奥の院前」方面から③「玉川通り」12下車、徒歩約1分(三差路の左側の道を進むと右手)
3.伝統に新しいエッセンスが加わった「SHOJIN Dining桐宝珠」
花かごスタイルで提供される「精進花づくし」は、従来の精進料理にプラス、椎茸を鯖に見立てた柿の葉寿司や高野精進つくね等、目新しい精進料理の数々が並ぶ人気の料理です。
デザートには、植物性生クリームに高野豆腐の粉末を練り込み、求肥でくるんだオリジナル精進スイーツ「高野ムゥ」も。真白でまんまるなやわらか大福は、一口食べると心穏やかになりますよ。
精進料理も食べたいけれど、もっとガッツリ食べたい方には、「熊野牛すき焼き御膳」(春、秋、冬期限定)はいかがでしょうか。和歌山県のブランド牛・熊野牛のすき焼きと精進料理が一度に味わえてとってもお得。こちらにも精進スイーツ・高野ムゥがついてきます。
いずれも2日前までに予約が必要です(当日予約の場合は、一部食材が変更になる可能性もあります)。外国人の方が2日前までに予約すると、料理内容を英語に訳したカードを添えていただけるという嬉しいサービスを受けられます。
高野町観光協会プロデュースの精進カレーは、中辛でグルテンフリーの欧風カレー。このようにアラカルトメニューも充実しているので予約なしでも、色々と食べられます。店内は400席もあるので、事前に予約をしておけば、大人数でも大丈夫。
1Fのセレクトショップ「Koya Souvenir 天風」では、料理で出された一部の食材も買えるので美味しかったものはお土産にチョイスしましょう。
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SHOJIN Dining 桐宝珠 Produced by 一の橋観光センター
- 住所 〒648-0211 和歌山県伊都郡高野町高野山737 一の橋観光センター2・3F
電話番号:0736-56-2631 ※英語でのお問い合わせは、メール(web@ichinohashi.co.jp)をご利用ください
営業時間:10:00~16:00 ※2019年12月9日~2020年2月29日の間は、レストランリニューアル工事のため、レストランのみ本店から徒歩約3分の玉川別邸(和歌山県伊都郡高野町高野山53)での営業となります
定休日:不定休
その他:英語メニューあり
URL:https://www.ichinohashi.co.jp/
アクセス:南海りんかんバス「高野山駅前」方面から①「奥の院口」11下車、徒歩約1分(バスの進行方向と逆に戻る)②「一の橋口」10下車、徒歩約3分(バスの進行方向とは逆に戻り)合流点で右側へ鋭角に折れて進むと右手)
いかがでしたか? 精進料理と一口に言っても、お店によって何通りにも変化します。高野山の精進料理は、宿坊に宿泊しなければいただけないと思っている方も多いはず。今回ご紹介した以外のお店でも様々な精進料理がいただけるので、あちこち食べ比べをしてみるのも楽しいかもしれませんね。
Text by:株式会社ウエストプラン
※価格やメニュー内容は変更になる場合があります。
※特記以外すべて税込み価格です。