グルメなお店がたくさんで、思わず目移りしてしまう食い倒れの街・大阪。何を食べるか迷った時に、頼りになるのがグルメガイドブックですよね。『ミシュランガイド京都・大阪+和歌山 2022』で、満足感が味わえるコストパフォーマンスの高いお店として、ビブグルマンの評価を受けた、Osaka Metro梅田駅の隣、中津駅が最寄りの名店「かんさいだき 本家 常夜燈(じょうやとう)」。日本で大人気のグルメ漫画「美味しんぼ」に、2回も登場しているという同店の魅力をご紹介します。
唯一無二の「おでん」
「かんさいだき 本家 常夜燈」は、Osaka Metro中津駅から徒歩約5分。阪急電鉄大阪梅田駅の茶屋町口からも、徒歩15分ほどでアクセスが可能です。御堂筋から少し入った静かな場所にあり、入り口に下げられているのれんが目印。「かんさいだき」とは「関西のおでん」という意味。関西風の煮込み料理「おでん」が楽しめるお店です。
店内は4人掛けのテーブル席が3つ。カウンター席は現在使用しておらず、席数が多くないため、訪れる際は電話にて予約が必要。対応は日本語のみとなっていますので、ご注意を。席にはアクリル板、カウンターには飛沫防止のビニールシートなど、新型コロナ感染症対策もしっかりとされています。予約した旨を伝え、店内入り口で手指を消毒してから、案内された席に着席しましょう。
こちらをひとりで切り盛りしているのが気さくな雰囲気の店長、松尾圭司さんです。お店はオーナーである店主の池永伸さんの自宅の1階にあります。池永伸さんは現在90歳と高齢のため、おでんの味を確かめたり、お客さんとおしゃべりするためにたまにお店に顔を出すのだそうです。
同店は、第二次世界大戦後に焼け野原となったお初天神の境内で、店主のお父さんがはじめたお店がルーツ。こちらの店名にもある「かんさいだき」は、日本で俳優や歌手として活躍した、森繁久彌さんが名付けたのだそうです。戦争で家を失い、友人の家に身を寄せていた森繁さんはお店の常連でした。
ちなみに店名の常夜燈とは、神社仏閣に安置されている石灯籠のこと。お初天神のお店は神社の境内に建てられたため、店内に常夜燈があったことが店名の由来となっています。
すべてが味わえる「かんさいだきセット」
おでんとは煮物の一種で、そのルーツは日本の室町時代(1336年から1573年頃)に流行した豆腐田楽だと言われています。全国的に「おでん」と呼称されていますが、関西地方で関東のおでんを指す、独特の呼称が「関東煮(かんとうだき)」です。
関東煮(かんとうだき)は、濃い口しょうゆを使ったやや塩辛い味付け。店主の母親が京都出身で、おでんも上品な薄味だったことから、関東煮を食べたことがある森繁さんが「これは、関東煮ではない」と言って「かんさいだき」という名前を付けてくれたのだそうです。
席に座ると、まず突き出しの卵豆腐が出てきます。突き出しとは、注文せずとも席に座ると出てくる料理で、料理ができるまでに、小腹を満たしてもらう意味合いがあります。
人気のメニューは、13種類すべてのおでんが楽しめる「かんさいだきセット」(3,960円)。注文はテーブルでとるスタイルで、おでんは単品でも注文が可能です。メニューは日本語のみですが、カウンターの向こう側におでん鍋があり、指さしでも注文することができます。
タネは自家製、こだわりの「おでん」
おでんの具材である「タネ」は、豆腐を除いてすべて自家製。煮汁となるダシは、鶏ガラスープに鶏の足であるモミジを加えて煮込み、鍋の底には鯛の頭と羅臼昆布を敷いて、上品な味わいに仕上げています。残ったダシも無駄にせず、継ぎ足していくことで、味に深みが加わっています。
おでんは鍋に入れて提供。テーブルに備え付けのコンロがあるため、最後まで熱々のおでんを楽しむことができます。「うちは会社の接待で使われることも多く、お皿で提供すると話をしている間に、せっかくのおでんが冷めてしまうんです。熱々をおいしく食べてもらうために、鍋で提供しています」と、松尾さん。さらに「全種類が入ったセットなら、いちいち注文する必要もないでしょう?」と、話してくれました。
一番人気は「えび天」。食感が残るように粗くつぶしたむきえびに、ショウガで風味を付け、卵と植物からとったデンプンのわらび粉を加えて、団子にしたもの。えびの旨みとプリプリとした食感が楽しい一品です。
もう一つ人気なのが「たまご」。選りすぐった地鶏のたまごは、黄身が大きめ。ダシがしっかりとしみて、やさしい味に仕上がっています。
こちらでしか食べられないオリジナルが「すまき」。高級魚であるハモのすり身に、卵白とわらび粉を加えて蒸し上げたもので、しっかりした歯ごたえとハモの風味がダシによく合います。そして「がんもどき」。他店では既製品が多い中、コチラは自家製でしっかりとダシが染み込んでます。
そしてぜひ味わって欲しいのが「ロールキャベツ」。神戸牛と淡路島産のたまねぎを使っていて、口に含むとあふれる神戸牛の旨みと、ほどよくとろけたたまねぎがたまりません。もはや、おでんダネでは定番になっている「ロールキャベツ」ですが、店主の母親考案によって、ロールキャベツをおでんダネとして最初に加えたのは同店なのです。
ほかにも、変わり種の「シュウマイ」や、油揚げの巾着にごぼうやにんじん、シイタケが入ったヘルシーな「ふくろ」など、色々なタネがあります。気に入ったタネがあれば、単品でオーダーすることも可能です。
「うちのダシは、飲み放題なんですよ」と、松尾さん。お客さんにダシだけ販売して欲しいと言われるほど人気のダシは、減ってきたら無料で足してもらえます。
少し刺激が欲しくなった時は、薬味を加えて味の変化を楽しむのもオススメ。ピリリと辛い和の調味料「カラシ」と京都・祇園の老舗「原了郭(はらりょうかく)」の黒七味が用意されています。黒七味の豊かな香りと唐辛子のピリ辛さは、おでんにもよく合いますよ。
シメに味わいたい「茶飯」
おでんのシメに食べたいのが、ダシで炊いたという「茶飯(ちゃめし)」(400円)です。「茶色いから茶飯。そのままのネーミングですよね」と、松尾さん。上にかかっているのはゴマと、焼いた海苔を細かくほぐした、もみ海苔。もみ海苔は、わざわざ名古屋から取り寄せたもの。香り高く、上品な茶飯ともよく合います。
やわらかいご飯がしっかりとダシを吸った茶飯は、やさしい味わいで、お腹を落ち着かせるのにピッタリ。口直しのアクセントになる甘辛い昆布の佃煮は、ダシをとった後の昆布を使った自家製です。
なお、おでんに合うお酒は、ビールのほかに芋・麦焼酎、純米酒がそろっていますが、ソフトドリンクはウーロン茶のみ。
「うちは店主の趣味でやっているような部分もあるので、材料にも仕込みにも手間をかけて凝っているんです」と、松尾さん。落ち着いた和の空間の中で味わうおでんは、ひと味違います。「せっかく手間暇をかけたおでんですので、しっかりと味わっていただけるとうれしいですね」とも、話してくれました。
同店は、有名グルメ漫画「美味しんぼ」で、2回も紹介されている名店。79巻にはお初天神の店舗が、106巻には現在の店舗が掲載されているので、読んでみてから訪れても楽しいかもしれません。店主の池永さんは「美味しんぼ」コミックスの表紙にもなっています。店内には原作者からプレゼントされた原画も展示されているので、ぜひ見てくださいね。
●実施中の新型コロナウイルス感染症対策
館内や設備等の消毒・除菌・洗浄/除菌・消毒液の設置/お客様入れ替わり都度の消毒/店舗・館内換気の実施/コイントレイの利用/仕切り板の設置/スタッフのマスク着用・手洗い・消毒・うがい・検温の実施/入場制限、予約制の実施/体調不良のお客様の入店お断り/お客様へのマスク着用のお願い
●インバウンド対応
クレジットカード決済対応/車いす・ベビーカー可(ただしトイレは和式のみ)
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かんさいだき 常夜燈 豊崎本家
- 住所 〒531-0072 大阪府大阪市北区豊崎2-8-14 池永ビル
- 電話 06-6371-1115
営業時間:(月~土)18:00~21:00 ※要予約
定休日:日曜・祝日
Text by:二木繁美
※本記事の情報は2022年4月時点のものです。最新の情報は公式サイト等でご確認ください。
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