兵庫県の中東部にある丹波篠山市は、山に囲まれた静かなまちです。慶長14年(1609年)に篠山城が築かれてから400年以上、城下町として武家の文化が受け継がれてきました。城の石垣や町家など武士がいた時代の景色が今も残り、伝統文化を伝える史料館などもあり、見どころが多いまちです。また、農業がさかんで、おいしい米や野菜が作られています。春は山菜、夏は夏野菜、秋には黒豆、栗、山の芋、そして冬のぼたん鍋など、丹波篠山ならではの料理を味わうことができます。大阪からJRの快速電車で約70分、1年を通して楽しめる「丹波篠山」のおすすめグルメを紹介しましょう。
丹波篠山の特産品とは?
■黒豆/黒枝豆
丹波篠山は山に囲まれた盆地のため、昼夜の気温の差が激しく、よい作物が育ちます。特産品として有名なのは黒枝豆です。一般的な枝豆は大豆が熟す前の豆で、完熟すると大豆になります。黒枝豆は豆の種類が違って、完熟すると黒豆になります。黒枝豆は、枝豆より大きく味も濃厚です。丹波篠山では10月初旬に黒枝豆の解禁日があり、そこから2週間は町じゅうに出店が出て枝付きの黒枝豆が販売されます。この期間は、観光バス等で多くの人が訪れ、丹波篠山の秋の風物詩となっています。黒枝豆の実は大きく、湯がいて軽く塩をして食べると、甘みと旨みが抜群に良いのです。
黒枝豆を刈り取らずに畑でそのまま乾燥させると乾物の黒豆になり、日本ではお正月に必ずといっていいほど食卓にのぼります。黒豆を甘く煮たものが瓶や真空パックで販売されているのでお土産におすすめです。また、黒豆の甘煮を練り込んだ黒豆パンは、この地方のパン屋さんで年中販売しているので、見かけたらおやつ用に買っておきましょう。
■丹波栗
実が大きくて味が濃い丹波栗は日本で高級な栗として知られています。秋に収穫されると、家庭では米と一緒に炊いて栗ごはんにして楽しみます。また、渋皮煮と呼ばれる甘い保存食を作る家庭もあります。菓子店では栗を使った和菓子や洋菓子が販売されるので、ぜひ味わってみましょう。
■山の芋
山の芋は、丹波篠山では霧が深い秋に収穫されることから霧芋ともいわれ、強い粘りが特徴です。すりおろしたものをそのまま味噌汁に入れると、つなぎなしでも団子になります。すりおろしてダシで伸ばしたものを麦ごはんにかけて食べる「とろろごはん」も絶品です。
■ぼたん鍋
11月から3月は猟期で、猟師が山に入って猪を仕留めます。そのため新鮮な生の猪肉を野菜とともに味噌のダシで煮込むぼたん鍋が冬のごちそうです。猪肉の脂は独特の旨みがあり、煮込むほどに肉がやわらかくなり、よいダシが出て味もよく、体も温まります。
では、これらの特産品を使ったおすすめメニューとお店をご紹介しましょう。
1. 黒豆の専門店で味わう「黒豆スイーツ」(小田垣商店/小田垣豆堂)
特産品の黒豆を中心にさまざまな豆を扱う小田垣商店にあるカフェ小田垣豆堂では、侘び寂びを感じられる石庭を眺めながら、ランチやスイーツが楽しめます。
「コーヒーゼリーと丹波篠山茶のガナッシュ」は、小田垣ブレンドの浅炒りコーヒーを使ったコーヒーゼリーに、ほろ苦くて濃厚な丹波篠山茶のガナッシュ、そして黒豆の煮豆を散らしたスイーツです。葉っぱの形のラングドシャも地元丹波篠山のお茶で、この上に振りかけられた朝倉山椒(兵庫県養父市)の風味が絶妙なアクセントに。
※朝倉山椒は時期によっては他地域の国産品になることもあります。
黒豆きなこのソフトクリームパフェは、特産品の黒豆をふんだんに使ったパフェ。カップの中に、カスタードや黒豆茶ゼリー、黒豆きなこのラングドシャクッキーと一緒に煎り黒豆が入っています。その上に濃厚な黒豆きなこのソフトクリームをたっぷりと。さらに甘い煮豆や塩味の蒸し黒豆、煎り黒大豆が入ったメレンゲが添えられています。見た目以上にボリュームがあって、食べごたえを感じる定番人気のスイーツです。
小田垣豆堂の特等席は、庭に面したカウンター席で、目の前に石庭が広がります。テーブル席もゆったりと配置され、和モダンな店内の雰囲気が素敵です。
ショップでは黒豆や小豆のヘルシーなお菓子が買えます。昔ながらのしぼり豆、煎り豆に加えて、黒豆ショコラ、抹茶しぼり豆など、味のバラエティが豊富。少量パックが多いので、いろいろな味を楽しめるお土産としてもおすすめです。レトルトパックのぜんざい、黒豆茶が外国人に人気だそうです。
黒豆、大豆、小豆、花豆など、乾物の豆も各種販売。保存がきくので遠方へのお土産にも重宝します。
小田垣商店は、JR篠山口駅2番バス乗り場からウイング神姫篠山営業所方面行きで「本篠山」バス停下車すぐ、江戸時代からの伝統的な建物が残る河原町妻入商家群(かわらまちつまいりしょうかぐん)の近くにあります。
創業から280年以上の歴史を持つ商家で、敷地内の建物のうち10棟が国の有形文化財に登録され、5棟がショップやギャラリー、カフェとして公開されています。古い時代の雰囲気を残した店内で、黒豆スイーツを味わったり、黒豆のお菓子を購入したり、ゆっくり楽しめます。ホームページ、パンフレット、メニューは英語対応あり。
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小田垣商店本店/小田垣豆堂
- 住所 〒669-2323 兵庫県丹波篠山市立町19
- 電話 079-552-0011
営業時間:カフェ小田垣豆堂 11:00~17:00(L.O.16:00)/本店ショップ 9:30~17:30
定休日:カフェ小田垣豆堂 木曜(祝日の場合は翌平日)、年末年始 /本店ショップ 年末年始のみ
アクセス:JR「篠山口」駅から神姫バス篠山営業所行き「上立町」下車、南へ徒歩2分
2. 改築した古民家で炭火焼き料理と味わう「山の芋とろろごはん」(りょうり舎やまゆ)
「りょうり舎やまゆ」は、山の芋を中心とする丹波の特産品の卸会社「河南勇商店(かんなんいさむしょうてん)」の直営店で、山の芋や栗など、地元の食材を使った料理が味わえます。おすすめは、「丹波地鶏旬菜添えとろろ膳」です。
はじめに出てくる山の芋チップスは、薄切りにした山の芋をカラッと揚げて山椒塩をまぶしたもの。やわらかな刺激のある香りが食欲をそそります。お皿にのった五味五菜は旬の野菜を使ったオードブル、炭火焼き料理は地鶏のほかに魚や牛肉から選べます。
とろろ膳のお楽しみは、自家製とろろ汁。減農薬栽培の丹波篠山産の米に麦を加えてふっくら炊きあげ、山の芋をすりおろしてダシでのばしたとろろをかけていただきます。ダシの風味と山の芋のねばりに包まれたご飯は、するりとおなかに入ります。
「りょうり舎やまゆ」は、築400年の古民家をリノベーションしたレストランで、2年前に葺き替えたばかりのきれいな茅葺屋根の建物です。店内は靴を脱いで上がり、床の間などで季節ごとの和の設えも楽しめます。目の前の小さな畑に実る野菜も時おりメニューに登場し、季節を感じさせてくれます。
敷地内にある五節舎(ごせちや)やまゆは、伝統食やお菓子のショップです。ダシをたっぷり含ませた薄揚げの中に酢飯がぎっしり詰まったいなり寿司はボリューム満点。古くから祭事の時に作られてきた伝統料理の「おこわ」を、やまゆ流に豆や山菜を加えて竹皮で包み、香ばしく蒸した「丹波おこわ」はテイクアウトにおすすめです。
他にも丹波栗や黒豆を使ったお菓子も並んでいます。やまゆへは、JR篠山口駅から東へ約2キロメートル、篠山口東出口からレンタサイクルでも行けます。英語メニューはありませんが、メニューには写真がのっているものもあるので指差しでチャレンジしてみてください。
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五節舎やまゆ
- 住所 〒669-2205 兵庫県丹波篠山市網掛81
- 電話 079-590-1261
営業時間: 【ランチ】11:00~15:00( LO) ※予約優先
【ディナー】18:00~21:30(LO)※前日までに要予約
定休日:火曜(祝日の場合は翌平日)
3. 冬季に味わえる人気和食店の名物「ぼたん鍋」(活魚割烹 宝魚園)
地域密着の料理店である、創業から50年の「活魚割烹 宝魚園」は、ぼたん鍋が名物。新鮮な生肉を手切りし、ロース・肩ロース・バラ・腕・ももなど、あらゆる部位を使うため、部位による味の違いも楽しめます。また、煮込むにつれ、味噌ダシに猪肉の旨みが溶け出て濃厚な味に変化していきます。
シメは、このダシに生玉子を入れて 半熟の状態で、ご飯にかけて食べます。冬季は、ぼたん鍋のほかにフグや鴨の鍋も楽しめます。(鍋は事前に要予約)
ほかのおすすめとして「篭盛り会席」があります。篭(かご)に入れた小鉢には、色とりどりの季節の味。華やかな「篭盛り会席 花」は、そのほかに茶碗蒸し、天婦羅、御飯、赤出汁、デザートが付くカジュアルな会席料理で、前日までに予約が必要です。宝魚園(ほうぎょえん)の野菜は新鮮な丹波篠山産が中心、魚は毎朝2カ所の中央市場から入荷。厳選した素材で、料理人が作る和食が楽しめます。
※ 雪は、花に小鍋、または陶板焼きが付きます
ランチメニューも豊富で、蒸し穴子の天ぷらをのせたどんぶりは、甘辛いタレがたっぷりかかって、ご飯が進みます。お米は自家農場で作られたコシヒカリのみでふっくらもっちりとした食感と旨みが味わえます。新鮮な刺身と、炊合せ小鉢、汁物のセットです。
宝魚園はJR篠山口駅から北東へタクシーで7分ほどの場所にあります。和の風情が感じられる内装ですべて個室、椅子席と掘りごたつ席でゆっくりと食事ができます。料理によっては予約が必要なものもありますが、ランチ、ディナーともに予約なしでもオーダーできるメニューがたくさんあります。英語のメニューはありませんが、写真がのっているので、食べたいものを指差して注文しましょう。
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活魚割烹 宝魚園
- 住所 〒669-2725 兵庫県丹波篠山市川北新田52
- 電話 079-593-1341
営業時間: 【ランチ】11:30~14:00
【ディナー】17:00~21:00
定休日:火曜
4. 老舗和菓子店の職人が手作りする「ささやまタルト」(梅角堂)
「梅角堂(ばいかくどう)」は、特産品の丹波黒大豆を日本で初めて甘納豆に加工した老舗の和菓子店です。黒大豆の産地ならではの知識と技術を生かして職人が手作りするお菓子が、ショーケースに並んでいます。秋には希少な丹波栗を使ったもの、その他の季節も国産の栗にこだわった、もなか、まんじゅう、ようかんがずらり。日持ちするお菓子も多いので、遠方へのお土産にも適しています。
なかでもおすすめなのが、アーモンドの風味が香ばしい「ささやまタルト」。栗や黒豆、抹茶、きんつばなどの定番の種類のほかに季節の味もあります。栗や黒豆が入ったタルトをパイ皮で包んだ贅沢なお菓子は、洋菓子のテイストを加えた和菓子で、とても上品な味。日本茶、コーヒー、紅茶、それぞれに合います。賞味期限は30日です。
「どらやき」は梅角堂で人気の逸品。皮は、米粉を加えてもっちりとした食感で、たっぷり入った蜂蜜の甘みがとても上品です。中身はまるごと一個の栗の甘露煮、そして高級な丹波産の大納言小豆で作ったつぶあん。それぞれに甘みを加えているのに、あっさりとして、2個3個と食べたくなります。季節限定の抹茶、桜など、もちもちの求肥をはさんだものもあるので、タイミングが合えばぜひ食べてみましょう。賞味期限は14日です(一部例外あり)。
梅角堂は篠山城の東側の商店街にあります。JR篠山口駅からウイング神姫篠山営業所方面行きで「上立町」バス停下車すぐですが、いったん篠山城を見物して、城下町を散策しながら行くのがおすすめです。英語表示はありませんが、お店の人も親切なのでショーケースを指さして選べばOKです。
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梅角堂
- 住所 〒669-2323兵庫県丹波篠山市立町78-1
- 電話 079-552-0267
営業時間:10:00〜18:00
定休日:木曜(祝日の場合は営業)
丹波篠山の観光シーズンは秋ですが、1年を通しておいしいものがあるまちです。JRの快速急行は急行料金がかからず普通運賃で行けます。大阪方面から車だと高速道路で丹南篠山口ICまで約1時間。城下町には飲食店も多いので、特産品の黒豆や栗などを楽しみに出かけてみませんか。
※本記事の情報は2023年5月時点のものです。最新の情報は公式サイト等でご確認ください。
松田きこ、木村桂子、都志リサほか、関西に精通した女性ライターチーム。食べること、飲むこと、旅することが大好き! 自ら体験した楽しい情報を発信しています
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