日本のことを、単なる観光地としてではなく、仕事や結婚を機に住む場所として選ぶ外国人も少なくありません。しかし、旅行で訪れるのと住むのとでは、きっと日本に抱く印象も違うはず。仕事をして生活をして、日本で暮らす外国人は、この国のことをどう思っているのでしょうか。
そんな疑問に迫るべく、2年ほど前に来日し、現在都内の企業で働いているアメリカ人に日本の率直な印象を聞いてみました(以下はアンケートに応じてくださった方の個人的な意見です)。
タテマエって何?本当は何を考えているのかわからない
「本音と建前」これは私たち日本人にとって、周囲との関係を良好に保つために使い分けているような感覚。仕事でもプライベートでも、会話の中で自然と意識していますよね。しかし、アメリカ人にとってはそれが気持ち悪く感じるのだそう。
「建前って、他人への配慮ではなくて、自分を周りに良く見せたいだけじゃないですか? 愛想笑いで相手を褒めて、その場だけ自分の印象を良く見せることになんの意味があるんでしょうか。ビジネスでの付き合いなら仕事が成功することだけを考え、プライベートの人間関係なら信頼できる人と本音で会話できる関係性を気付くべきだし、どちらにしても建前は必要ないと思います。
また、アメリカではビジネスとプライベートを完全に分けて考えるので、会社の人にどう思われようとプライベートには影響しません。これも楽だなあと思いますね」
打ち合わせ・ミーティング・定例会…会議、多くない?
ビジネスシーンにおいて、「打ち合わせ」「会議」「定例会」「ミーティング」「ブリーフィング」など、さまざまな呼び方の会議体で人と話すことは多いですよね。「今日は朝から晩まで打ち合わせ。」そんな打ち合わせがメインの業務になっているような人も見かけます。アメリカの人にとっては、これもすごく不思議なのだそう。
「日本の企業は会議が多すぎます。そんなに毎日みんなで話すことなんてありませんよね?だから一回一回の内容がとても薄くて、時には議題もないのに先に予定を押さえてとりあえず集まるなんてこともありますよね。アメリカの企業で働いていた時、全員でのミーティングは月に一回だけでした」
ランチを食べながら仕事…ショックでした
これは思い当たる人も多いのでは? 仕事のランチタイム、お昼ご飯を食べながらパソコンでメールをチェックしたり、資料を作成したり。そんな光景もアメリカ人の彼にとっては驚きだったそうです。
「アメリカ人からすると、お昼ご飯を食べながら仕事をするという感覚は本当に信じられません。『仕事が終わらないから仕方がなく』という気持ちかもしれませんが、僕は逆に、仕事に追われてしまう時ほど、無理矢理頭と身体を休めるために外に出てランチで気分転換するという発想です」
仕事しすぎ!その責任感、おかしくない?
悲観的な意見が続きます!辛いですが、引き続き耳を傾けましょう。
「日本人は働きすぎ!残業もたくさんしますよね。アメリカなら、例えば銀行の手続き中でも、銀行員は自分の勤務時間を過ぎたら『退社時間なので今日はここまでで』と帰ってしまいます。そして、もし会社でどうしても残業をしなければいけない場合、従業員の判断ではなく、上司が『いつまでにコレを終わらせないといけないから、あと2時間だけ働いてもらえないかな』と頼んできます。
残業は従業員の仕事が遅いのではなく、定時の時間内で終わらない仕事を従業員に課した上司の管理不足。本来従業員は変な責任を感じる必要はなく、勤務時間を過ぎたら帰ってもいいんです」
ホウレンソウって何?上下関係って必要?
日本人が重んじる、目上の人を敬う気持ち。特にビジネスシーンでは、上司への報告・連絡・相談、いわゆる“ホウレンソウ”が大切と言われていますが、これにも疑問の声が上がりました。
「日本人は上下関係が厳し過ぎて、言いたいことを言い合える関係が築けません。年が上でも下でも、キャリアが上でも下でも対等であるべきだと思います。僕は上司への『ホウレンソウ』という日本の言葉も、あまり好きではありません。
ビジネスはプロジェクトの目標があり、それを達成するためにそれぞれのミッションがあるので、個人はそのミッションをクリアしていけばいいわけです。要は結果が大切。上司へ途中経過を報告する必要はないと思います。しかも、ホウレンソウも多くの人は本当に必要な時にしているのではなく、上司への“仕事してますアピール”に見えてしまいます」
通勤の交通費を会社が出してくれるなんて最高!
最初からネガティブな意見が続きましたが、ここで突然彼の表情が一変!日本では通勤にかかる費用を企業が一部もしくは全部負担してくれることが多いですが、アメリカでは珍しいそうです。
「仕事の報酬以外で通勤や家賃の手当てが出るというのは驚きました。これはすごく嬉しいです! 日本の企業は福利厚生が充実しているのでとても守られているという感じがします。それに、一度就職したらそう簡単にクビにならないというのもアメリカとは違いますね。アメリカは実力主義でとてもシビアなので、成果を出せなければある日突然上司から解雇を宣告されるということも少なくありません」
繊細な仕事ぶりはアッパレ。アメリカ人は真似できません
さらに、ロボット開発の分野における技術も素晴らしいと彼は語ります。
「世界におけるロボット開発の技術は、繊細なものづくりを得意とする日本がリードしていると思います。他業種に目を向けても、トヨタやユニクロなど、世界で活躍する日本の企業は本当に素晴らしいです!特にユニクロは、何度も海外進出に挑戦し、世界でもトップの企業に昇りつめました。今ではユニクロの評価は、もしかすると日本国内よりも海外の方が高いかもしれません」
プライベートが楽しすぎる!!
出てきましたね、日本のいいところ!ビジネスに関しては悲観的な意見が多かった彼ですが、プライベートタイムでは大きな魅力を感じているようです。
「日本は、観光、グルメ、アミューズメントなどが充実しているのが最大の魅力です! 24時間やっている店もあったり、治安も良いので仕事が終わった後のナイトライフも楽しめます。特に食事は何を食べても美味しく感じます。よく日本人に『日本の食べ物で何が好き?』と聞かれますが、本当に何を食べてもすべて美味しいので、答えに困るほど。
さらに接客やサービスも素晴らしいです!アメリカは美味しくない料理と良くないサービスでもチップを渡さないといけないですから、全然違いますね。(笑)それに、期間限定のイベントやグルメが楽しめるのもすごいと思います。アメリカは、例えばスターバックスやディズニーランドといった大手でも、季節ごとのメニューやイベントというのはあまりありません。日本はただでさえ質が高いうえに、そういった企画もあり、毎日新鮮に生活を楽しんでいます」
人間味っていい言葉。ご飯だけでなく“人も美味しい”
洗練された料理の味やサービスには、日本人の国民性が表れているのでしょうか。日本人ならではの人柄も好きだと彼は続けます。
「日本には『人間味』という言葉がありますよね。人と人の関係を大切にして、その人と深く仲良くなろうとする姿勢は、ドライなアメリカ人とは違った大きな魅力だと思います。ビジネスではそれが邪魔になって働きづらいと感じることもありますが、お店で接客などのサービスを受ける立場になった時は、それがとても心地よく感じます」
日本の女性って魅力的!
いろいろな話をしてくれた彼が最後にポツリと語ったのが、日本人女性のことでした。
「最後に、これはオマケで…日本の女性は世界の女性の中でも魅力的だと思います。『三歩後ろに下がって』という言葉がありますが、アメリカでは考えられない発想ですね。アメリカの女性は自己主張が強く、気が強い人が多いと思います。日本の既婚男性は『家に帰って奥さんに癒やされる』みたいなことを言いますが、そういう感覚、アメリカの男性はあまりないような…少なくとも私はありません(笑)。
日本の女性はとても優しくて、それに背が小さいところも可愛らしいです。日本人の彼女が欲しいという目的で日本に住んでいる外国人は、きっと少なくないと思います。私の周りでも、日本人の女性が魅力的だと話す外国人はとても多いです」
というわけで、いろいろなお話を聞くことができました!
前半はどうなることかと思いましたが、最後に彼に日本の総合的なイメージを聞いたところ「ビジネスではマイナスに感じることが多いけど、そんなことは忘れてしまうほどプライベートが充実できるので、日本は大好きな国!」とのことでした。
ちなみに今回話を聞いたアメリカ人の男性は、来日する前から日本に興味があり、アメリカ人と日本人の意識の違いを自分で確かめたかったのだそう。そして、今まさに日々その違いを感じているようです。文化の違いに戸惑うこともあるようですが、そんな時は日本の美しい空に癒されていると、インタビューの後に話してくれました。
ビジネスシーンでの独特な文化も、もしかすると日本人の魅力の裏返しなのかもしれません。
これからも多くの海外の人に、日本のグルメや文化、そして人々と巡り合ってもらいたいものです!
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