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百貨店やスーパーマーケットでも多く見かけるようになった「日本ワイン」ですが、海外でも見かけたことや飲んだことがある人もいるかと思います。日本各地のワイナリーで醸造されている赤・白・ロゼ・スパークリングワインは、それぞれに生産地の特徴を生かした味わいです。
高級ワインから安いけれど美味しいものまで、種類は様々。原材料となるぶどうも甲州やマスカット・ベーリーAのように日本を原産地とするものや、ヨーロッパ原産のものまで幅広く使われています。
今回は、株式会社依田酒店 代表取締役社長で(一社)日本ソムリエ協会認定ソムリエ、SSI認定 唎酒師でもある依田浩毅(よだこうき)さんにお話しを伺い、日本ワインの基礎知識や、たくさんある日本ワインの中から、手に入りやすくて美味しいワインをセレクトして紹介します。
1. 日本ワインの最近の評価と人気
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かつて日本で造られてきたワインは、日本固有のぶどうである甲州や身近なフルーツのデラウェアが原料でした。1980年以降は、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、シャルドネのようなヨーロッパ原産の品種が栽培されるようになり、日本で造られるワインの味が格段に向上しました。
近年では、出荷量・輸出量ともに増加しており、その繊細な口当たりで海外にもファンを増やしています。さらに、2018年からは「日本ワイナリーアワード」が開催され、日本ワインを造るワイナリーを星の数でランキング付け。ワイン好きに話題を広げています。
2. 日本ワインと国産ワインの違い

ワインは造られる土地の気候、文化などを表現している、とても表情豊かなお酒です。そのため、フランス、イタリア、スペイン、アメリカ、ドイツを始めとする、世界の多くの国で産地をとても大切にし、「ワイン法」で産地やブドウ品種などの表記を厳しく規定して個性と価値を守っています。
一方で日本では「国産ワイン」という表記が長年用いられ、なかには海外から輸入されたブドウ果汁を日本国内で発酵させてワインに仕上げたものや、大型の容器(150リットル以上の容器。バルクワインと呼ばれる)に入れて海外から輸入されたワインを日本国内で瓶詰しただけのものですら、国産ワインと表記されることがありました。
その表記のために多くの誤解を生んだことから、2015年10月に制定され、3年後の2018年の10月から施行されたのが「果実酒等の製法品質表示基準」というワインのラベル表示のルールです。国際規定にならった厳格な日本のワイン法で、これにより「日本ワイン」という表記が生まれました。
現在「日本ワイン」と表記されているものには、日本国内で収穫・醸造されたことを示すほか、条件を満たせばブドウの収穫年度、地名、品種などが表記され、ワイン選びをする際にとても有用な情報となります。これはワイナリー、醸造家、栽培農家にとっても誇りと責任を感じることのできるルールといえます。
3. 日本ワインの主な産地(山梨・長野・新潟・山形・北海道)と日本固有の主要ぶどう品種
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日本で生産されているワイン用のぶどうに、どんなものがあるのか、その主な産地と共に紹介しましょう。
■甲州(山梨)
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「甲州」は、日本ワインとして海外でも評価が高まっている白ワイン用の品種です。DNA鑑定の結果、欧州系品種と中国の山ブドウ系品種が交雑した東洋系欧州種だとわかっています。
甲州ブドウから造られるワインは、柑橘の香りに心地よい酸味と果実味、そしてアフターにわずかに感じる苦みがあり、日本食との親和性には高い評価があります。海外での和食人気と相まって甲州種は世界から注目度が高まっています。
■竜眼(長野)
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「竜眼」は、中国大陸を経由した東ヨーロッパ系品種です。長野県善光寺周辺で古くから栽培されていた白ワイン用品種で、「善光寺ブドウ」とも呼ばれ、親しまれています。軽快な果実味に柑橘を思わせる酸味があり、辛口に仕上げるととても美味しいワインになり、和食におすすめです。
■マスカット・ベーリーA(新潟)

「マスカット・ベーリーA」は1927年、「岩の原ワイナリー」創業者であり「日本ワインの父」と呼ばれる川上善兵衛(かわかみぜんべえ)が、アメリカ系のベーリー種と欧州系のマスカット・ハンブルグ種を交配して作り出した品種で、赤ワイン用品種では日本一の生産量です。
日本各地の醸造家により、シンプルでジューシー、チャーミングな味わいの早飲みのものからオーク樽で熟成させた長期熟成型のものまで、幅広い味の表現がなされています。
■山ソービニヨン(山形)
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山形で醸造されているワインのブドウ品種と言えば、白なら甲州やシャルドネ、赤ならマスカット・ベーリーAやカベルネソービニヨンがすぐ思いだされます。
しかし注目すべきは山ブドウとカベルネソービニヨンを交配させた赤ワイン用品種、「山ソービニヨン」です。濃い色と山ブドウ由来の野性味を感じられる力強いボディの赤ワインとなります。
■山幸(北海道)

「山幸(Yamasachi)」は北海道池田町で独自に開発された赤ワイン醸造用の品種で、「甲州」「マスカット・ベーリーA」に続いてOIV(国際ブドウ・ワイン機構)に登録された日本固有品種です。
強い耐寒性や耐凍性を備えるため栽培農家の労力を軽減することができ、草木を連想させる野趣あるタンニンなど複雑な味わいを持ち、シャープな酸味が寒冷な北海道の気候風土を伝えてくれます。
4.産地別ワインとペアリング料理、人気ワイナリー紹介
ここからは、主な産地の人気ワイナリーとそのワイン、おすすめのペアリング料理をご紹介します。
①北海道エリア

北海道では、白ワイン用の品種であるケルナー、ナイアガラ、赤ワイン用の品種である山幸、ピノ・ノワールが栽培されています。
「北海道中央葡萄酒・千歳ワイナリー」の北ワインケルナー(白)は、辛口でフレッシュな果実味が感じられ、新鮮な魚貝類のお造りや海鮮焼きに合います。
「北海道池田町 十勝ワイン」の山幸(赤)は、山ブドウ由来の個性的な渋み、引き締まった果実味と酸味があります。
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
北海道で人気の高い羊肉を焼く料理「ジンギスカン」、醤油ベースで甘辛く煮た豚肉をご飯の上にのせた十勝名物の「豚丼」は理屈抜きによく合います。
【人気のワイナリー】
②東北エリア

岩手県や山形県などの東北エリアでは、白は甲州やリースリング・リオン、赤はツヴァイゲルトレーベ、カベルネソービニヨンが上げられます。
「エーデルワイン」(岩手)のゼーレオオハサマ ツヴァイゲルトレーベ(赤)は、ほのかな甘い樽香とブラックベリーを思わせる果実香、硬いタンニンと酸味で味わいのある赤ワインで、肉料理やチーズ料理に合います。

「高畠ワイナリー」(山形)の高畠バリックHATAKKIメルロー・カベルネ樫樽熟成(赤)は、熟したプラムを思わせる果実味に、オーク樽で23カ月熟成させたことによる、スパイスやバニラ香、長い余韻が魅力のフルボディです。ハンバーグやビーフシチューのように深みのある味に合います。
【人気のワイナリー】
③新潟・北陸エリア
新潟県や富山県などの北陸エリアでは白はシャルドネ、赤はマスカット・ベーリーAなどが栽培されています。
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マスカット・ベーリーA生みの親で、日本のワインぶどうの父と呼ばれる川上善兵衛が興した、「岩の原葡萄園」(新潟)のマスカット・ベーリーAという名の赤ワインは、有機栽培のものを使った逸品。柔らかなアタックと赤い果実を思わせる可愛らしい香りと果実味が特徴で、醤油ベースのタレをつけて焼いた焼き鳥のような強い味にも合います。

「やまふじぶどう園・ホーライサンワイナリー」は1933年に創業したワイナリーで、手間をかけた少量生産の各種ワインがそろっています。
【人気のワイナリー】
④関東エリア
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栃木県や茨城県などの関東エリアでは、白は甲州、赤はタナ、カベルネソービニヨンなどが栽培されています。
「ココ・ファーム・ワイナリー」(栃木)の甲州F.O.Sは、赤ワインと同様に果皮とともに仕込まれためずらしい白ワイン。オレンジがかった色調と複雑な香り、渋みが織りなす深みのある味わいで、鴨やウズラなどの鳥肉のローストと一緒に食べるのがおすすめ。

茨城県・筑波山のふもとにある、「つくばワイナリー」は、無濾過ワイン「ツクバプリモ」で知られています。やさしい味わいが、洋食にも和食にも合います。
【人気のワイナリー】
⑤甲信エリア
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山梨県と長野県は甲信地方と呼ばれる地域で、白ワイン用の日本固有のぶどうである甲州、赤ワイン用のマスカット・ベーリーA、メルローが栽培されています。
「シャトーメルシャン」(山梨)の甲州きいろ香は、完熟の少し前、香り成分が最大になる瞬間に収穫された甲州で仕込まれたもので、柑橘の香りを持つ辛口白ワインです。
グリーンサラダ、白身魚の刺身、筍とワカメのあっさり煮、フキノトウの天ぷらなどによく合います。

「勝沼醸造」(山梨)のアルガブランカ・ブリリャンテは、甲州を使い瓶内二次発酵させることによって、発泡させた白のスパークリング。甲州のやさしい香りと弾ける爽やかさが楽しめます。

「中央葡萄酒」の白ワイン、グレイス・キュベ三澤(ミサワ)・明野(アケノ)・甲州は、自社農園で垣根仕立てという手法で栽培された希少な甲州を使ったもの。エレガントでやさしい味わいで、グレープフルーツとハムのマリネ、平目のカルパッチョ、懐石料理のすまし汁などにも合います。

【人気のワイナリー】
5. まとめ
日本ではまだ歴史が浅い日本ワインですが、ぶどう生産農家やワイナリーの努力によって、どんどん美味しくなっています。洋食はもちろん、繊細な日本料理にも合う日本ワイン。機会があればワイナリーを訪れて、その土地の空気を感じながら飲んでみるのもいいですね。
【お話を伺った人】
依田浩毅(よだこうき)
株式会社依田酒店、代表取締役社長
(一社)日本ソムリエ協会認定ソムリエ、SSI認定 唎酒師
松田きこ、木村桂子、都志リサほか、関西に精通した女性ライターチーム。食べること、飲むこと、旅することが大好き! 自ら体験した楽しい情報を発信しています
※価格やメニュー内容は変更になる場合があります。
※特記以外すべて税込み価格です。
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