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日本の牛乳はなぜおいしい?

日本の牛乳はなぜおいしい?

更新日: 2020/08/26

「日本の牛乳はおいしくて高品質」と台湾など海外で人気が高まっていると聞きます。どんな努力を重ねて、日本の牛乳ができあがっているのか、そのおいしさの秘密に迫るべく、日本の牛乳メーカーを直撃! どんな努力を重ねているのか、日本で市場シェア1位を誇る牛乳「明治おいしい牛乳」を製造する、株式会社 明治の市乳マーケティング部の守屋孝さんに聞きました。

台湾の牛乳との違い:殺菌秒数で差は出る?

台湾の人が日本の牛乳をおいしいと思う理由を知りたくて、両国の牛乳のパッケージの表示などをよく確認してみたところ、違いを発見! 加熱殺菌は牛乳の製造にあたって義務づけられていますが、その加熱の秒数や、含まれる乳脂肪量が違います。

台湾の牛乳では、たとえば統一鮮乳が130度で±3℃殺菌時間5秒など、超高温殺菌法で125度〜135度で3~5秒間くらい殺菌し、脂肪量が3~3.8%が多いようです。
日本の多くの牛乳は、殺菌温度は同じ程度でも、時間は2秒程度が多く、脂肪量が3.8%程度です。これで味に差は出るのでしょうか。

「『明治おいしい牛乳』の殺菌時間は130度で2秒ですね。5秒までいくと、少々風味が変わることもあるかもしれません。一般的に言われているのは、60度ぐらいの熱をかけると、牛乳に含まれるたんぱく質に影響があり、多少なりとも味が変わってくると言われています。でも、これは好みなので、一概にはまずくなるとはいえません」
日本の牛乳がおいしいという台湾の人は、その微妙な違いに気がついているのかもしれません。

「加熱時間が長いと、乳成分が変化して、牛乳独特の乳臭さ(酸化臭)”が出ます。それが好きな人もいるし、嫌いな人もいます。牛乳嫌いの子どもが『おいしくない』と言うのは、この風味が苦手なことが多いようです。『明治おいしい牛乳』は、そういった酸化臭が出ないように、特別な製法を使っています」

ちなみに、日本では、牛乳には加熱殺菌が義務付けられており、その殺菌方法については「乳等省令」で規定されています。ほかにも容器に使用していい材質など、牛乳の製造について細かく定められています。
脂肪量に関しては、季節によっても幅があるので何ともいえませんが、もし台湾の牛乳が3%前半に近いとしたら、日本の脂肪量3.8%程度の牛乳の味が濃くておいしく感じられるのでしょう。

おいしさの秘密は「酸素を抜く」

「さきほどいった酸化臭ですが、生乳中には酸素が含まれており、その酸素が乳成分を酸化させることで、牛乳の風味が損なわれてしまうんです。製造の過程で酸素を追い出すことで、「生乳本来のおいしさや、すっきりしたあと味」を味わうことができるのです。」
その技術で明治は特許を取得し、2018年の春からは以前より脱酸素の回数を増やして、おいしさを高める工夫をしているそうです。
「以前は加熱殺菌時だけでしたが、今は生乳を工場に受け入れた直後にも酸素を抜いています。加熱する前でも、酸素は味に悪影響を与えるのです」

加熱殺菌時のみのプロセスだった「脱酸素」を、工場受け入れ直後にも行うことで、さらに新鮮さが際立つ風味を実現
加熱殺菌時のみのプロセスだった「脱酸素」を、工場受け入れ直後にも行うことで、さらに新鮮さが際立つ風味を実現

本当においしい牛乳を作りたい、牛乳嫌いの人も飲める牛乳はないか?という研究の結果、いきついたこの製法は“ナチュラルテイスト製法”と呼ばれ、新鮮な香りとすっきりとした後味がとくに好評を集めているそうです。

パッケージでもおいしさをキープ

「光に当たると、牛乳の味が損なわれていってしまいます。そのために、パッケージに使う紙を厚く、遮光性を高めて光劣化を防ぐようにしています。また、従来の手で開く注ぎ口ではなくて、プラスティックのキャップを採用して、衛生性を高めています」

プラスティックのキャップで、さらに注ぎやすくなったパッケージ
プラスティックのキャップで、さらに注ぎやすくなったパッケージ

ちなみに、プラスティックのキャップがついているパッケージは、リサイクル時にハサミが不要で、かんたんに手で開けるようになっているところも好評だそうです。

ハサミを使わずに開ける新しいパッケージ
ハサミを使わずに開ける新しいパッケージ

牛乳メーカーに直撃!「北海道の牛乳はやっぱりおいしいの?」

「牛乳は基本、農産物と一緒なので、じつは季節によって味が違います。場所によっても違って、牛が食べているえさによっても違いますから、正直、一概には言えないですね」
「明治おいしい牛乳」ではそのおいしさを守るため、厳しい検査に合格したこだわりの生乳しか使っていないそうです。そのため1年中安定した味の「明治おいしい牛乳」が飲めるのだそうです。
なお、日本乳業協会のサイトによると、北海道は生乳の53%を生産していますが、チーズやバターといった乳製品に使われることが多いそうです。飲料としての牛乳はパッケージでそう言っていない限り、北海道産でないことが多そうです。

「おいしい牛乳」誕生までに10年

完成まで約10年、2018年にさらにおいしさUPの改良がされた「明治おいしい牛乳」
完成まで約10年、2018年にさらにおいしさUPの改良がされた「明治おいしい牛乳」

2002年に「明治おいしい牛乳」が発売されるまで、紆余曲折があったといいます。たとえば名前についてはさまざまな候補が検討され、中には笑ってしまうような名前もあったとか。
「始まりは、当時の社長の『本当においしい牛乳を作ろう』という一言。そこから酸素を抜いたりする“ナチュラルテイスト製法”の開発を経て、発売に至るまでには10年以上かかったと聞いています。もともと牛乳は差別化することが難しく、産地や脂肪分といった特長でしか、区別をすることができませんでした。そこで、当社は独自の製法でおいしさといった付加価値をつけた新しい牛乳を発売したのです。」

「明治おいしい牛乳」が発売された2002年ごろは、牛乳はそこにあって当たり前の商品で、テレビCMも考えられなかったのだとか。今でも他のメーカーはほとんどやっていないそうです。現在の「明治おいしい牛乳」のマーケットシェアは1位で20%以上。テレビCMも効果もあって着々とシェアは伸びているそうです。
なお、現在のCMは2020年のオリンピックに向けて、スポーツをする若者にエールを送る内容で、栄養価の高い牛乳のイメージが健康的に打ち出されています。「おいしいエール篇」では、体操の練習に励む少女が主人公。牛乳を飲んで、チャレンジをする姿が描かれています。

名前のバッティングで市場が生まれた

牛乳市場のトップシェアを走る「明治おいしい牛乳」ですが、じつは森永乳業でも「おいしい牛乳」という、まったく同じネーミングの牛乳があります。それはなぜ?
中村さん「商標の話になりますが、『おいしい』という単語は一般用語なので、オリジナリティに対して認められる商標登録ができません。でもこれは想定内で、商標が取れないということはわかったうえで、中身を表すのにベストなネーミングはこれしかないとそう名付けたのです。」
守屋さん「でも、よかったこともたくさんあるのです。数ある牛乳のなかでも『おいしい牛乳』というジャンルができて、そういう新しい市場ができました。相乗効果があって、市場が広がったのです」

健康志向の人には「おいしい低脂肪乳」を

飲み比べても普通の牛乳と変わらず、水っぽくありませんが、乳脂肪分は1.2%
飲み比べても普通の牛乳と変わらず、水っぽくありませんが、乳脂肪分は1.2%

「低脂肪牛乳のなかでは『明治おいしい低脂肪乳』が、圧倒的においしいと思います。牛乳の成分は、乳脂肪分と無脂乳固形分がありますが、この商品は無脂乳固形分が高くて、味にコクがあるのです。普通は低脂肪乳はコクが減ってしまうのですが、無脂乳固形分を増やしているのでコクが味わえます。」

他のメーカーでおいしいと思う牛乳は?

「どこも競っておいしくなっていると思いますが、やはり製法の差はあると思います。明治がいちばんおいしいと思いますよ。ナチュラルテイスト製法は明治だけの製法で、ほかでやっているところはなく、味に差が出ていると思います」

お話をうかがった明治の守屋さん
お話をうかがった明治の守屋さん

台湾の牛乳との味の差を聞くと「あくまで仮説ですが」ということで、次のようなことを教えてくださいました。
「気候が温かいと、乳牛が元気に育ちません。日本も沖縄では酪農業があまり盛んではないのは、それが理由です。台湾も気候が温かいので、乳牛が元気に育ちにくく、脂肪分が低くなっているのかもしれないですね。そこが日本の牛乳と味が違うように感じられるのかもしれません」

骨を作るカルシウムや塩分を排出するミネラル、複数のビタミンや豊富なたんぱく質など、栄養いっぱいの牛乳。牛乳メーカーがそのおいしさや栄養を届けるために、さまざまな努力をしていることを、お話を聞いて知ることができました。
「要冷蔵」表示のある、常温で保存できない牛乳は、残念ながら台湾に持ち帰ることはできないかもしれません。日本に来たら、ぜひ飲んで、味わってみてくださいね!

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