台風や地震などの自然災害や、急な体調不良・怪我などにより、念入りに立てていた旅行計画を変更しなければならないことがあります。日本滞在中、もしこのような不測の事態でホテルや旅館などの宿泊施設をキャンセルしなければならない時、どのように対応すればよいのでしょうか?予約のキャンセルについては、公式ガイドラインがあるわけではありません。キャンセル料が発生するタイミングや金額、自然災害時の対応については、宿泊施設ごとに異なります。あくまでも日本でよくあるケースとして、ご紹介いたします。
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「キャンセル料」の基本情報
「キャンセル料」とは、宿泊予約をしていたにも関わらず、予約を取り消したり、宿泊しなかったりした場合に、ホテルが宿泊予定者に請求する費用のことです。宿泊施設や予約プラン、予約方法などによって異なりますが、一般的には「宿泊予定日の前々日キャンセルは宿泊代金の10%、前日キャンセルの場合は20%」といったように、宿泊予定日の何日前でキャンセルするかに応じたキャンセル料が設定されているケースが多いです。
ホテル予約に「キャンセル料」が設定されている理由
ホテルや旅館などの宿泊施設では、宿泊予約が入った時点から、予約者のために部屋を確保して待っています。それが突然キャンセルになると、確保していた客室が空室となり、本来なら得られるはずだった売り上げがゼロとなります。これは施設側にとっては、経営上の損失となります。
宿泊プランによって夕食や朝食の予約をしている場合は、予約が成立した時点で、食材の仕入れなどもすでに手配している場合も多いです。これがキャンセルになることで材料が無駄になりますし、本来得られるははずだった売上を失うばかりか、経営上の「マイナス」となってしまいます。
こうした事態による損失を防ぐためにも、ホテル予約には「キャンセル料」が設定されているのです。
予約時に「キャンセルポリシー」を確認しておくことが重要
「キャンセルポリシー」とは、予約をキャンセルする時のルールや条件などを定めたものです。宿泊施設側がこれを明示し、予約者がこれを確認して同意の上で予約することによって、予約をキャンセルする必要が生じた場合の条件や必要な手続きなどが両者にとって明確になります。
キャンセルポリシーは、全国一律で公式に決まっているというわけではありません。宿泊施設が独自に定めているものであり、予約内容や予約方法、予約時期によっても異なる場合があります。例えば、通常は宿泊予定日の前日以降のみキャンセル料金を請求するホテルであっても、宿泊プランによっては、宿泊料金を低く設定する代わりに予約したその日からキャンセル料が発生する(=キャンセル不可)といったケースもあります。
こうしたことは通常、予約者が内容をしっかり確認し同意の上で予約確定できるように、確定前に提示されるようになっています。例えばオンラインで予約する場合は、キャンセルポリシーを含む規約が表示され、これに同意のチェックを入れないと予約に進めないといった形が多いです。不測の事態に遭遇した時のトラブルを避けるためにも、予約時に、キャンセルポリシーをしっかりと確認してから同意することが重要です。
キャンセルポリシーは、宿泊施設の種類により異なる?繁忙期の場合は?
前述の通り、大前提として、キャンセルポリシーは宿泊施設や予約方法などにより異なります。しかし、「高級ホテル」と「ビジネスホテルの間」では、キャンセルポリシーの傾向に違いがあるほか、日本の伝統的な宿泊施設「旅館」のキャンセルポリシーには特に注意すべきポイントがあります。以下で詳しくご説明します。
高級ホテルの場合
詳細なキャンセルポリシーはホテルや宿泊プランによって異なりますが、大まかな傾向は下記の通りです。
・宿泊予定日の2日前から20%~100%のキャンセル料が発生
・当日キャンセルの場合は100%(全額支払い)のキャンセル料が発生
施設によっては、「2日前の15時~」というように、キャンセル料が発生し始める時間の設定がある場合もあります。
また、ホテルにとって影響の大きい無連絡のキャンセル(宿泊なし)は、全額支払いとなる施設が大半です。
- コンラッド東京:
- 前日の場合は無料、当日の場合は100%(全額支払い)
- ホテルニューオータニ東京:
- 前々日の場合は10%、前日の場合は20%、当日の場合は80%
- 帝国ホテル:
- 前日の場合は20%、当日の場合は80%
- 東京ステーションホテル:
- 前日15時以降100%(全額支払い)、当日の場合も100%(全額支払い)
ビジネスホテルの場合
ビジネスホテルの場合も高級ホテルと同様に、詳細なキャンセルポリシーはホテルや宿泊プランによって異なりますが、大まかな傾向は下記の通りです。
・宿泊予定日の前日キャンセルの場合は無料
・当日キャンセルの場合は100%(全額支払い)のキャンセル料が発生
中には、「当日12時以降のキャンセルの場合は100%のキャンセル料金」というように、時間設定をしているビジネスホテルもあります。高級ホテルと同様、連絡なしでキャンセルした場合(宿泊なし)は、全額請求となります。
- スーパーホテル:
- 前日の場合は無料、当日の場合は100%(全額支払い)
- アパホテル:
- 前日の場合は無料、当日の場合は100%(全額支払い)
- 東横イン:
- 前日の場合は無料、当日16時以降の場合は100%(全額支払い)
- ダイワロイネットホテルズ:
- 前日の場合は20%、当日の場合は80%
日本の「旅館」は特に注意が必要
日本には、ホテルに加えて「旅館」があります。以前は「旅館業法」という法律において「旅館」と「ホテル」が区別されていましたが、2018年にこの法律が改正されたことにより「旅館・ホテル営業」として統合され、現在では明確な区別は定められていません。しかし、今でも日本の人々の間では「旅館」はホテルと区別して認識されることが多く、施設や宿泊プランによって異なるものの、一般的には「日本古来の和風の宿泊施設で、温泉があり、部屋などでの豪華な食事も提供される施設」であることが多いです。
この「旅館」は、ホテルと比べてキャンセルポリシーが厳格であることが多くあります。理由は、旅館の場合は手の込んだ夕食が付くことが多く、ビュッフェスタイルであることが多いホテルの食事よりも、より正確に食材の種類や量などを管理しているからです。そのため、旅館のキャンセルポリシーとしては、以下のようなものが多く見られます。
・宿泊予定日2~3日前のキャンセルの場合は20~30%
・前日の場合は50%
・当日キャンセルの場合は100%(全額支払い)
また、キャンセルだけでなく、一部の旅館では宿泊する人数変更をした場合にもキャンセル料が発生するケースもあります。
- 加賀屋:
- 2~3日前の場合は30%、前日の場合は50%、当日の場合は100%(全額支払い)
- 箱根吟遊:
- 2~3日前の場合は30%、前日の場合は50%、当日の場合は100%(全額支払い)
- 扉温泉 明神館:
- 2~3日前の場合は30%、前日21時までの場合は50%、前日21時以降~当日の場合は100%(全額支払い)
- 指宿白水館:
- 2~3日前の場合は30%、前日の場合は50%、当日の場合は100%(全額支払い)
繁忙期やイベント時期のキャンセルポリシーにも要注意
年末年始、4月末~5月上旬のゴールデンウイーク、8月中旬のお盆休み期間、9月のシルバーウィークなど、日本には多くの人が旅行に出かける大型連休がいくつかあります。こうした時期は、キャンセルポリシーが通常と異なるケースもあるので注意が必要です。。また、花火大会や大型の野外コンサートなどが開催される場合も、近隣エリアのホテルでは別途キャンセル料金が設定されていることがあります。いずれも、予約時に確認しておきましょう。
キャンセルポリシーの確認方法
予約時に必ず確認しておくべきキャンセルポリシーは、どのようにして確認することができるのでしょうか?これは予約方法によって異なるので注意が必要です。
まず行うべきなのは、予約をしたホテルの規約確認
どの予約方法で予約をしたとしても、宿泊施設と予約者の間で締結される「宿泊約款」があります。宿泊約款には、客室の使用時間、料金の支払方法、施設側が宿泊を拒否する条件などが記載されており、キャンセルポリシーについてもこの中で明記されている場合があります。「違約金」の欄に記載されていることが多く、宿泊施設によっては、多言語で記載されている場合もあります。
「宿泊約款」という名称が使われていないとしても、特にキャンセルに関する規定は、予約時に明確に分かるよう表示されていることがほとんどです。そのため、予約時に同意した内容をしっかり確認することが大切です。
ホテルへの直接予約の場合
宿泊施設の公式ホームページや電話で予約した場合は、キャンセルポリシーも公式ホームページに明記されていることが多いです。予約プランによって異なる場合もあるので、予約時に登録したメールアドレス宛などに届く「予約確認の案内」を確認するのが最も確実です。
オンライントラベルエージェントを通した予約の場合
楽天トラベル、Booking.comなどのオンライントラベルエージェント(OTA)を利用して予約した場合、これらのウェブサイト上で「キャンセル操作」が可能なケースは多いです。ただし、「キャンセルポリシー」は予約した宿泊施設によって異なるため、こうしたオンライントラベルエージェントでは詳細についての個別対応はしていません。キャンセルポリシーは、各宿泊施設の宿泊プラン紹介ページに記載されていることが多いですが、予約後にに届く「予約確認の案内」のメールも確認しておくと安心です。
直前のキャンセルなどの場合、オンライントラベルエージェントを通した予約であっても、ホテルに直接問い合わせをした方が良いケースもあります。しかし同じ宿泊施設であっても、オンライントラベルエージェントを通した予約のキャンセルポリシーは、その宿泊施設の公式ホームページから直接予約した場合とは異なることがあります。問い合わせ時に、どこから予約したかを確認されることもあるため、正確に伝えるようにしましょう。
ツアーで予約した場合
旅行会社が催行するツアープランで予約している場合は、契約がツアーを催行する「旅行会社」と「予約者本人」の間で結ばれることになります。そのため、宿泊予定の施設ではなく、まずはツアー催行会社に確認をしましょう。
ホテルのキャンセルには、理由にかかわらず「キャンセル料がかかる」が基本
キャンセルをする理由が、自然災害などの不測の事態である場合は、キャンセル料金はどうなるのでしょうか?このような場合にはキャンセル料金が不要と考える人も多くいますが、どんな理由であっても、キャンセルポリシーに従って「キャンセル料が発生する」のが基本です。それを念頭に置いた上で、速やかに宿泊施設に連絡するようにしましょう。
台風や地震などの災害時にやるべきこと
台風が近づいているため飛行機が飛びそうにない、地震が発生して移動に不安があるなどの理由から、旅行自体を見送りたい場合は、予約先の宿泊施設に連絡を入れましょう。その際に、キャンセル料金の扱いがどのようになるか確認する必要があるため、予約時に届いたメールなどキャンセルポリシーを確認できるものを手元に用意しておきましょう。
特に台風の場合は、数日前からある程度進路を予測することができます。ギリギリまで判断に迷うケースもありますが、キャンセル料金の金額にも関わってくるため、キャンセルの可能性が出てきた段階で早めに相談しておくことをおすすめします。
不測の事態でキャンセル料が免除になるケースは、施設の「ご厚意」であることを忘れない
先述の通り、どんな理由であってもキャンセル料金が発生することが基本ですが、台風や地震で交通機関が止まってしまうなどの不測の事態では、キャンセル料金が免除となるケースもあります。しかしそれは「ご厚意」なのであり、宿泊施設にとっては利益につながらなかったり、場合によっては損失になったりすることを忘れないようにしましょう。
突発的な事態にも対応できるよう、予約時に「キャンセルポリシー」を確認しておこう
ホテルをキャンセルする必要が発生したら、すぐに連絡を入れるようにしましょう。急な体調不良や自然災害など、不測の事態でもスムーズに対応できるよう、予約時点で「キャンセルポリシー」を確認し、その内容に合わせて誠意をもって対応するようにしましょう。
※記載している情報や各施設のキャンセルポリシーは、2024年11月時点のものです。最新の情報は公式サイト等をご確認ください。
約20年、旅行ガイドの編集・出版に携わってきた日本人トラベルライター。大学卒業後、出版社にて約10年、旅行ガイドの編集・出版に従事。パリ、台湾、などの海外取材、国内は北海道、九州などの取材も数多くこなす。その後、中国・広州に2年ほど駐在妻として暮らし、現地メディアにて経済・旅行ガイド記事で執筆等を担当。帰国後は、ウェブメディアにて編集・執筆を経験。インバウンド、アウトバウンド両方の旅行ガイドの記事制作に携わってきたことが強み。中国政府認定の中国語能力試験HSK6級(最高級)、実用フランス語技能検定試験準1級、英語検定準1級取得。
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