2019年には4年に一度の世界大会が日本で開催されたラグビー。2015年の世界選手権で日本代表チームが強豪・南アフリカ代表チームに勝利して以来、国内リーグの観戦者数も好調を維持していますが、まだまだスタジアムで観戦したことがないという方がたくさんいるはず。
そこで、ここでは、ラグビー観戦が大好き&経験もある筆者が、ラグビー観戦がちょっと面白くなる小ネタを紹介します。ニュージーランドに有名なあのダンスや試合後の選手の過ごし方、観戦時に気を付けるといいことなど……これを知っておけば観戦時、もっとラグビーを楽しめるはずですよ。
ラグビーは「紳士のスポーツ」
肉体が激しくぶつかり合う見た目からすると意外かもしれませんが、ラグビーは「紳士のスポーツ」といわれます。19世紀にイギリスで発祥したラグビーは、ケンブリッジ大学やオックスフォード大学など名門校で普及したスポーツだったのです。そういえばマンガの「ジョジョの奇妙な冒険」の中でも、イギリスの名門家庭に育ったジョナサン・ジョースターとディオが青春時代にラグビーをしているシーンがありましたね。
ラグビーのルールやマナーには、そうした紳士のスポーツとしての伝統が随所に見られます。
紳士のスポーツを象徴する「ラグビー憲章」
ラグビーには「ラグビー憲章」というものがあります。これは世界中のラグビー選手、そしてラグビーファンが共有している普遍的な価値観です。
ラグビー憲章の柱になっているのが、品位、情熱、結束、規律、尊重という5つの言葉です。このうち、品位については「品位とはゲームの核をなすものであり、誠実さとフェアプレーによって生み出される」と定義しています。5つの言葉に優先順位はありませんが、何より先に「品位」が来ているところにラグビーが紳士のスポーツたる所以のようなものを感じます。
ラグビーに息づく「ノーサイドの精神」
ラグビー憲章の価値観に通じているのが「ノーサイドの精神」です。ノーサイド(英語ではfull timeともいう)とは試合終了を告げる笛のことをいい、試合以外の場では敵も味方も区別しないということを意味しています。競技場では両チームで同じシャワー室を使う、応援チームによって観客席を区別しないなど、この精神が形として現れている部分もあります。
試合後は「アフターマッチ・ファンクション」
そしてノーサイドの精神が色濃く表れているのが「アフターマッチ・ファンクション」です。これは試合終了後に両チームの選手や関係者、試合を担当したレフェリーが集まって行う交流の場です。ついさっきまで激しく争っていた選手たちが、一緒に食事をしてお互いの健闘を讃え合うのです。
ファンも「ノーサイドの精神」を共有
ファンもノーサイドの精神を持つことが大切です。敵チームでも良いプレーには拍手を贈る、ヤジを飛ばさない、ゴールキックやコンバージョンキックの時には選手が集中できるように静寂を保つといったことなどが挙げられます。
熱狂的ファンといえばサッカーのフーリガンを思い浮かべるかもしれません。街で別のチームのファン同士が出会ったら一触即発……と思うかもしれませんが、両者が一緒に盛り上がれるというのもラグビーファンのいいところ。試合後のスポーツバーなどでは、対戦チームのファンが肩を並べて楽しくビールを飲み交わす姿が普通に見られます。ファンの間でも「アフターマッチ・ファンクション」が行われているということですね。
なぜヘッドコーチはベンチにいない?
ラグビーでは、ヘッドコーチが指揮を執ります。現在の日本代表チームでは、ニュージーランド人のジェイミー・ジョセフが2016年からヘッドコーチとしてチームを率いています。そしてテレビ中継などを見ていて、おそらく多くの人が疑問に思うことが「なぜラグビーのヘッドコーチはベンチにいないのか」ということです。
これはラグビーには試合中の指示はキャプテンが責任を持って行うものであって、外からはアドバイスしないという暗黙の決まりがあるからです。もちろんヘッドコーチはただ見ているだけでなく、観客席からトランシーバーなどを使ってコーチなどに指示を送っています。
個性が光る各国代表の強豪たち
2019年4月現在、ラグビー世界ランキングのトップ10は、1位のニュージーランドを筆頭に、ウェールズ、アイルランド、イングランド、南アフリカ、オーストラリア、スコットランド、フランス、フィジー、アルゼンチンと続き、その後に続くのが11位の日本です。
これら強豪国の中には、伝統的な特徴を持っている国があります。
各国代表チームの愛称
強豪国の代表チームには、それぞれのお国柄などによって付けられた愛称があります。例えば、日本代表チームには「ブレイブ・ブロッサムズ」という桜をモチーフにした愛称が付けられています。そのほか、よく知られている愛称として下記が挙げられます。
・オールブラックス(ニュージーランド代表)
・レッドドラゴンズ(ウェールズ代表)
・レッドローズ(イングランド代表)
・スプリングボクス(南アフリカ代表)
・ワラビーズ(オーストラリア代表)
・レ・ブルー(フランス代表)
・フライング・フィジアンズ(フィジー代表)
・ロス・プーマス(アルゼンチン代表)
・べアーズ(ロシア代表)
・マヌ・サモア(サモア代表)
ニュージーランド代表の愛称は日本でも広く浸透していて、来日した際などはスポーツ紙に「オールブラックス」という文字が大きく踊ります。
己を鼓舞する踊り「ウォークライ」
世界最強集団・ニュージーランド代表がラグビーファンを魅了しているのは華麗なプレーだけではありません。試合開始前に陣形を組んで行う踊り「ハカ」がとにかくかっこいいんです。
ハカは、同国の先住民族・マオリ族がかつて部族間の戦いの前に戦意を高めるために行っていた踊りがモチーフ。「カ・マテ(私は死ぬ)」「カ・オラ(私は生きる)」などと雄叫びを挙げながら足で地面を叩きつける踊りは迫力満点。それでいて相手チームの眼前で行われるハカは、これから始まる試合への緊張感を一気に高めます。
ハカのような踊りは「ウォークライ」といい、フィジー(シビ)、トンガ(シピ・タウ)、サモア(シヴァ・タウ)にも独自のウォークライがあります。
イングランド代表に捧げられる応援歌「スウィングロウ」の大合唱
イングランド代表の応援歌「スウィングロウ」もラグビーファンの中では有名です。この歌は原題を「Swing low, sweet chariot」といい、もともとは19世紀にアメリカで広まった黒人の歌です。なぜ、この歌がラグビー・イングランド代表の応援歌になったかには諸説がありますが、代表戦の試合中にはどこからともなく観衆の大合唱が始まり、選手の士気を盛り立てます。
初観戦の持ち物&服装はどうしたらいい?
今年、日本で世界大会が行われるのは9~11月。試合開始の1時間前に到着するとなると、試合時間と合わせて3時間ほどを会場で過ごすことになります。ラグビーの競技場は基本的に屋外です。なかには屋根のある会場もありますが、雨&防寒対策をしっかり準備していくことが大切です。
具体的には、レインウェア、風を通さない上着、マフラー、手袋など。ずっと座っていると膝周りが冷たくなってくるので、特に女性はブランケットの持参をおすすめします。
また、スタジアムの椅子は硬いので、折りたたみ型の座布団やクッションも用意しておくといいでしょう。そのほか、ラグビーは選手が密集する局面が多いスポーツなのでオペラグラスも活用度高し。ビスケットや栄養補助食のような最低限の行動食、飲み物を持っていくこともお忘れなく。
トップ画像(c)Marco Iacobucci EPP / Shutterstock.com
※本記事は2019年4月公開時の情報です
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