2015年の世界選手権で日本代表チームが強豪・南アフリカ代表チームに勝利し、一躍沸き起こった日本のラグビー熱。筆者もそれ以来、すっかりラグビーにはまっています。2015-2016シーズンの国内リーグ観戦者数は過去最多を更新し、その後も高い人気を維持しています。2019年には4年に一度の世界大会が日本で開催されました。
ラグビーは、野球やサッカーと並んで歴史と人気のある球技。プロリーグや大学競技を中心に熱狂的なファンがたくさんいます。
ここでは、ラグビー観戦が大好き&経験もある筆者が、競技の歴史、聖地、ラグビー日本代表、注目選手の紹介に加え、ルールやポジション、ゴールなど……初心者でも観戦時に知っておきたいルールとマナーについても簡単に解説します。
百年以上の道のりを歩んできた日本ラグビー
まだプロや企業スポーツがなかった時代、日本の運動競技で高い人気を集めたのは大学スポーツでした。明治時代に欧米から招いた教師や技術者やその子息たちによってもたらされた西洋のスポーツが、大学の中で盛んになったのです。ラグビーもそうしたスポーツのひとつで、1899年に慶應義塾大学で英語講師を務めていたクラークというイギリス人によって学生たちに伝えられました。それは現在の日本ラグビー協会が誕生するよりも27年も前のことです。
太平洋戦争の終戦後、日本の戦後復興において光明になったのがスポーツの発展でした。とりわけラグビーは他の先陣を切って再開され、終戦の翌月にはもう試合が行われていたほど重要な位置付けにあったスポーツだったのです。
東京の慶應義塾大学、早稲田大学、明治大学、京都の同志社大学は古くから大学ラグビーの強豪として知られており、日本を代表する名選手の多くもこれらの大学の出身です。この4校が対戦する伝統の一戦は、昔も今も日本のラグビーファンの注目を集める試合になっています。
現在の日本ラグビーの最高峰であるジャパンラグビートップリーグは、それまでの社会人リーグや地域リーグを統合する形で2003年にスタートしました。現在は全国各地の計16チームが在籍しています。
秩父宮、花園、そして…、日本ラグビーの聖地
日本には長い歴史を持ち、「日本ラグビーの聖地」と呼ばれる2つの競技場があります。ひとつは1947年に作られた東京の秩父宮ラグビー場。もうひとつは1929年に作られた大阪の花園ラグビー場です。どちらも日本では珍しいラグビー専用の競技場で、数々の名試合がここで生まれました。
また、今後、新たな「聖地」になりそうな競技場が、2018年にオープンした釜石鵜住居復興スタジアムです。岩手県釜石市は名門チームが本拠地を置く「ラグビーのまち」として知られ、2011年の東日本大震災で大きな被害を受けた地域でもあります。新しいスタジアムは震災で全壊した小中学校の跡地に建てられ、震災の歴史を伝える施設ともいえます。
世界と戦う「日本代表チーム」
他国の代表チームと国の威信をかけて国際試合を戦うのが、男子日本代表チームです。トップリーグで活躍するメンバーなどから毎回30名超のメンバー(スコッド)が集められ、その中から選ばれた23人が試合に出場します。
世界ランキングはアジア最上位の11位(2019年4月現在)。チームの相性は「ブレイブブロッサムズ」で、赤と白の横縞のユニフォームには、桜をモチーフにしたエンブレムが付いています。現在は日本代表で活躍した経歴もあるニュージーランド人、ジェイミー・ジョセフがヘッドコーチとしてチームを率いています。
4年に一度開催される世界選手権には、1987年の第1回大会から8大会連続で出場しており、通算成績は4勝22敗2分。そのうち3勝は「五郎丸ブーム」に日本中が沸いた2015年大会に挙げたもので、特に「史上最大の番狂わせ」と呼ばれた南アフリカ戦の勝利は、多くの人の記憶に強く残っているはずです。
日本代表チームのプレースタイル
ラグビーの強豪国は、ニュージーランド、ウェールズ、イングランド、南アフリカなど体格的に日本より優位に立つ国々ばかりです。そして世界ランキング10位以上の壁を突破することは、あらゆるスポーツの中でも特に難しいチャレンジといわれています。その上で「高さでも重さでも勝る相手にどうやって勝つか」というのは、日本代表チームの永遠のテーマとなっています。
戦術や戦略はその時々のヘッドコーチの考え方によって大きく変わります。例えば、2015年まで日本代表を率いたエディー・ジョーンズ前ヘッドコーチは豊富な運動量をベースに多くのパスをつなぎ、多くの手数をかけてジリジリと前に出ていくスタイル。それに対して現在のジョセフヘッドコーチになってからは、長いキックを多く使って相手の裏を突き、ボディコンタクトをできるだけ避けるというスタイルに変わっています。
日本代表の魂を背負う「碧き目の勇者」
ラグビーの国際団体は外国籍選手の代表チームへの選出を認めています。ラグビーを見慣れていない方には珍しく感じられるようですが、イングランドやオーストラリアのような強豪国でも外国籍選手が代表入りしているケースは少なくありません。
ラグビーではその国での滞在経験や他国での代表経験がないことなどを条件に、外国籍選手の代表チーム入りが可能です。ニュージーランドから23歳で来日し、代表選64試合に出場して日本代表のレジェンドになった選手もいます。今の日本代表には彼らの強さと経験が欠かせません。
日本人選手も外国人選手も背負っているものは共通。何よりラグビーという過酷なスポーツにおいて、スクラムの先頭で相手と対峙し、猪突猛進してくる大男たちに対して鉄壁のディフェンスでぶつかる彼らの姿は観衆の胸を強く打ちます。
日本代表チーム、注目のイケメン選手
ラグビー界のイケメンといえば、古くは平尾誠二、近年では五郎丸歩。そして今の日本代表も「史上最高」といわれるほどイケメン揃いのメンバーです。
とりわけ人気が高いのが、福岡堅樹、田村優、中村亮土、姫野和樹、松田力也の5選手。また、サモア出身のラファエレ・ティモシー選手もキアヌ・リーブスを彷彿とさせる超イケメンです。
観戦前に知っておきたい12の超基本的ルール
最後にラグビー初心者が観戦を楽しむために知っておきたい12のルールを紹介します。
《基本》
1.ラグビーは1チーム15人でやるスポーツです。15人のポジションは、フォワードと呼ばれる前線の8人とバックスと呼ばれる後方の7人とに大きく分かれます。
2.試合は2つのチームが向かい合う形で行われ、両チームが敵に陣地に向かってボールを持ち込みます。
3.ボールは抱えたまま走ってOK。
4.1試合は前半40分、後半40分による計80分で行われます。
《得点》
5.得点を得るには、下記のトライ、ゴール、ペナルティゴール、ドロップゴールという4つの方法があります。
6.相手陣地の一番奥のラインまでボールを持ち込むと5点がもらえます(トライ)。
7.さらにトライの後に与えられるキックをゴールの間に通すと2点がもらえます(ゴール)。
8.また、危険なタックルなどの反則があった場合は、反則された側にキックが与えられ、これに成功しても3点がもらえます(ペナルティゴール)。
9.そのほか、ドリブル中にボールを地面にバウンドさせ、それをキックしてゴールの間に通すと3点がもらえます(ドロップゴール)。
《反則》
10.持っているボールを前に落とすと反則です(ノックオン)。
11.前にいる仲間に投げてパスするのも反則です(スローフォワード)。
12.スローフォワードやノックオンのような軽い反則の際にはスクラムの機会が与えられます。スクラムでは両チームのフォワード同士が正面で組み合いボールを取り合うところから試合が再開されます。
とりあえずこれらのルールを知っておけば、初めての観戦も楽しくなるはず。皆で日本ラグビーを応援しましょう。
main image(c)Mitch Gunn / Shutterstock.com
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