「茶柱が立つと縁起がよい」「雛人形を早く片付けないと晩婚になる」などなど、日本には古くから言い伝えられている『迷信』がたくさんありますよね。その根拠は定かではありませんが、何となく気になっちゃうなんてことありませんか?同様に、「お正月にはお餅を食べる」「節分には豆まきをする」などなど、それぞれの季節や土地に根付く『風習』も数多く存在します。
それでは、世界に目を向けてみるとどうなんでしょうか?それぞれの国や地域に「風習」が存在するのは想像に難くありません。しかし、「迷信」となるとどうなんでしょう…。その答えを探るべく、日本に住む外国人に調査をしてきました!
迷信は、欧米よりもアジアに根付いている!?
今回インタビューをしたのは、アメリカ、オーストラリア、イタリア、カナダ、中国、韓国、台湾出身の外国人。まず、迷信について質問をした時、欧米人とアジア人の反応の違いを感じました。アジア人は「あります!あります!」とすんなりと答えてくれたのに対して、欧米人は「あるにはあるけれど、何だったかなぁ…」と絞り出すような受け答えだったのです。迷信は、欧米よりもアジアに根付いている考え方なのかもしれません。
リアクションの違いはあれど、アメリカ、オーストラリア、イタリア人が共通して教えてくれたのは二つの迷信でした。欧米諸国では、かなり広く知られた迷信のようですよ。せっかくなので、由来についても調査してみました。
はしごの下を通ると、縁起が悪い(アメリカ/オーストラリア/イタリア)
街中を歩いていると、補修工事などのために建物にはしごが立てかけられている光景を見かけることがありますよね。欧米諸国では、そのはしごの下を歩くと縁起が悪いと言われているのだそうです
その理由は、はしごを建物などに立てかけるときにできる「三角形」の空間にあるようです。三角はキリスト教の三位一体や人生の象徴なのだそう。その中を通ることは、神聖な空間のバランスを崩してしまうといわれていることから、このような迷信があるそうです。もちろん、単純に上から物が落ちてきたら危ないということもあるかもしれませんが…。
部屋の中で傘を開くと、不幸が起こる(アメリカ/オーストラリア/イタリア)
そもそも部屋の中で傘を開くことはあまりありませんが、濡れた傘を玄関に広げて乾かしたことのある人はいるのではないでしょうか。この行為、不幸をもたらすと言われているのだそうです。
この迷信の由来は、古代エジプトにまで遡る説が有力のようです。日差しのない部屋の中で傘を開くことは光を遮断することになり、太陽の神を侮辱する行為に当たるのだそう。そのため、太陽の神はその腹いせとして、傘を広げた人に災いをもたらすと言われているそうです。欧米の人は、雨の日でもあまり傘をさす習慣がないといいます。日傘に関しては、そもそも売られていないとか。この迷信との関係は、あるのでしょうか…?
次にご紹介するのは、インドに伝わるちょっとユニークな迷信。お祖父さんとお祖母さんが半世紀程前にインドから移民してきたという、オーストラリア人の男性が教えてくれました。
美しい女性と結婚できるかどうかは、「手相」の形にあり!?(インド)
「美しい女性と結婚したい!」そんな人は、左右の手のひらを広げた時につながる感情線の形を見てみてください。インドでは、半月のように丸みを帯びていると、その願いが叶うと言われているそうです。因みに、その場で試してみたイタリア人の男性は「私はなっていない〜!」と言っていましたが、彼の友人曰く、とっても素敵な奥さまと結婚しているそうです。「インドの出身ではないからかな…?」とのことでした。
お金持ちになれるかどうかは、手のひらの「ホクロ」の位置にあり!?(インド)
お金持ちになれるかどうかは、手のひらのホクロが握っているようですよ。右手で握りこぶしをつくった時に、その中にホクロがあればお金が入ってくる印。逆に、左手の握りごぶしの中にホクロがあると、お金が出ていってしまうと言われているそうです。幸いにも、筆者の右手の握りこぶしの中には、ホクロがありました!真相やいかに…。
中国、韓国、台湾に伝わる迷信も聞いてみました。同じアジア圏だからでしょうか。日本に伝わる迷信と近しいものがあがったのが印象的でした。
夜に外で口笛を吹くと、お化けが出てくる(台湾)
この迷信は、旧暦の7月に亡くなった人たちの霊が舞い戻ってくる、台湾の「鬼月(おにづき)」と関係があるようです。この鬼月は地獄の扉も開くため、先祖の霊だけではなく、悪い霊も一緒に戻ってきてしまうのだそうです。そのため、人間が一番弱くなると言われている夜に口笛を吹くと、悪い霊を招きやすくなるという考えから、このような言い伝えが生まれたようです。
蛇の夢を見るとお金持ちになる(中国)
この迷信、日本でも聞いたことがありますよね。こちらの由来は、日本も中国も共通しているようです。蛇は、風水において「財」を表す繁栄の象徴なのだそうです。また、年に数回脱皮を繰り返す様子が「生まれ変わるように見える」ことから、命や生命を象徴するとも言われているそうです。中国では、蛇は無限の生命力の象徴といわれ、お金を無限に増やす力があるとも言い伝えられているそうですよ。
貧乏ゆすりは、福がなくなる(韓国)
韓国では、よく知られた迷信のようです。同様に、「ため息をすると福がなくなる」「ご飯を残すと福がなくなる」という迷信もあるそうです。
因みに、日本でも「貧乏ゆすりはいけない」と言われていますよね。なぜだか知っていますか?これは、貧富の差が大きかった時代に物乞いをして生活をしていた人たちが、栄養不足を理由に体を震わせていた様を連想させるからだそうで、「出世できない」とも言われているそうです。残念ながら、韓国に伝わるこの迷信の由来を確認することはできませんでしたが、一説には日本と同じような理由でこのような言い伝えが生まれたようですよ。
左瞼がピクピク動くとお金持ちになる。右瞼がピクピク動くと不幸が起こる(中国)
確かに目が疲れている時など、目が痙攣してピクピク動く時ありますよね。中国では、これが吉凶の暗示となっているようなのです。地域によっては、「左瞼が腫れるとお金持ちに、右瞼腫れると不幸が起こる」とも言われているそうです。この迷信を知っておくと、万が一左目に何か支障が起きても「これは、良いことの暗示!」と前向きに捉えられそうですね。逆に、右目には何も起こらないことを願うばかりです…。
出かけた時に忘れ物を取りに帰ってはいけない。一日不幸になる(中国)
なぜでしょうか…。忘れ物を取りに帰った方が安心して一日を過ごせるような気もしますが…。どうやら、同じような迷信はロシアにもあるようです。ロシアでは、災いが起きるのを防ぐため、自分で取りに帰るのではなく、代わりに人に持ってきてもらうのだそうです。残念ながら、由来を確認することはできませんでした。
ここまでご紹介してきた迷信、いかがだったでしょうか?今回インタビューをした外国人のほとんどは、「迷信は信じない」という回答でした。そもそも根拠が定かではないですし、国によっても異なるので、信じるかどうかはその人次第ですよね。でも、その由来を知ることで、それぞれの国や地域に根付く文化や考え方を垣間見ることができて、なかなか奥の深いもののように思います。
続いて、風習についてもご紹介していきましょう。風習に関しては、アジア人よりも欧米人の方が積極的に語ってくれたのが印象的でした。
歯の妖精「TOOTH FAIRY」が枕元にやってくる(アメリカ/オーストラリア)
「『TOOTH FAIRY』って知ってますか?」と言って話してくれたのは、アメリカ人の女性。アメリカでは、乳歯が抜けるとそれを枕の下に置いて眠るのだそうです。すると、夜中に歯の妖精『TOOTH FAIRY』がこっそりと歯をもらいに来て、そのお礼にコインを置いて帰る風習があるといいます。これは欧米に広く伝わる風習のようで、『生え変わる永久歯が丈夫でありますように』という願いが込められているそうです。歯の妖精だなんて、夢がありますよね!
「因みに、いくらぐらい?」という現金な質問に対しては、「お金持ちの家は100ドルぐらいだと思うけど、私の家は1ドルぐらいだったかな(笑)」とアメリカンジョークで返してくれました。さらに、「妖精は、歯が抜ける度に来るの?」と聞くと、「う〜ん。最初の4〜5回かな」とのこと。さすがの妖精も毎回は大変なようです…。子供たちは、これをとっても楽しみにしているようで、オーストラリア人の男性は「そのお金で、普段のおやつにプラスして、アイスクリームやピザを買うのが嬉しかったです!」と話してくれました。
お菓子やお金の詰まった卵を探す「イースターエッグハント」(アメリカ/オーストラリア/イタリア/カナダ)
「後は、イースター・バニー(うさぎ)かな」続いて、イースターのイベントについてアメリカ人の女性が教えてくれました。「イースターの時、親が卵の中にお菓子やお金を詰めて、家の色々な所に隠します。それを子供たちが探し出すんです」とのこと。イタリア人の男性は、「私は、卵の形をした大きなチョコレートを一人で食べちゃう!」とも語ってくれました。この時期、子供たちがとても楽しみにしているイベントのようです。
イースターは、十字架に掛けられて亡くなったイエス・キリストが3日後に復活したとされることに由来する復活祭。卵は生命の誕生を意味しています。また、卵の殻の中にいる時間を経て生まれてくる様子が、キリストの復活を象徴しているのだそうです。さらに、うさぎ(バニー)は多産であることから、こちらも復活祭のシンボルになっています。
「私は、イースターが一年の中で一番大切な行事だと思います」。別のアメリカ人の女性が、神妙な面持ちで発した言葉が印象的でした。「クリスマスはイベント的にやる人が多いけれど、イースターはキリスト教をより大切にしている人だけが行う行事だからです。最近は、それぞれの行事の本当の意味が分からなくなってしまっているように思います」そんな彼女の言葉に、イタリア人の男性も深く同調していました。人によっても異なるようですが、キリスト教では、一般的にクリスマスよりもイースターの方が重んじられているようです。彼女の言葉は、何でもイベント化してしまう日本人こそが、深く受け止めなければいけないように思いました。
クリスマスは、家族と過ごす大切な日(アメリカ/イタリア/カナダ/オーストラリア)
クリスマスは、イエス・キリストの誕生を祝う日。欧米では、クリスマスは家族と共に食卓を囲むのが一般的といいます。アメリカ人の女性の家庭では、2日間に渡ってクリスマスを祝うといいます。「25日は、家族とおばあちゃんの家に行ってご飯を食べます。26日はプレゼントを贈り合う日です。クリスマスは、なかなか大変…(苦笑)」とのことでした。因みに、オーストラリアのクリスマスは夏真っ盛り。「家族とご飯を食べたりもするけれど、友だちと海に行って過ごしたりもしますよ!」と、ちょっと変わったクリスマスの過ごし方を教えてくれました。
バレンタインは、お互いにプレゼントを贈り合う(アメリカ/イタリア)
日本では、女性が男性にチョコレートを贈るのが恒例となっているバレンタイン。欧米では、「恋人がお互いにチョコレートを贈り合います」とのことでした。「友だち同士で贈り合うことはある?」という質問に対しては、「学生の頃はあったけれど、勘違いされてしまうと困るから、あまりしないかな」とのこと。義理チョコなんて、もってのほかでしょうね…。因みに、筆者が通っていたカナダの高校にはおもしろいシステムがありました。バレンタインデーは、男子が想いを寄せている女子のロッカーに薔薇の花を一本贈るのですが、それを生徒会の人が代行するのです。人気の女子のロッカーには、おさまりきれない程の薔薇が置かれていましたよ!
中国、台湾、韓国出身の外国人は、お正月にまつわる風習を教えてくれました。
お正月には、ドアの両脇に『春聯』を貼る(中国/台湾)
「春聯(しゅんれん)」とは、赤い紙に縁起の良い言葉が書かれているもので、日本の門松のような存在のようです。「春聯をドアの両脇に貼るのがお正月の風習です」と中国出身の女性が話すと、台湾の男性も「台湾でも同じです」とのことでした。しかし、話を聞く中で、前年に身内に不幸があった場合に、中国と台湾では違いがあることが判明しました。「中国では家族の誰かが亡くなった場合、赤ではなく緑の紙を貼ります」というのに対して、「台湾では何も貼らないです」とのことでした。因みに、中国のお正月は日本の旧正月。今年は、2月16日がお正月だそうですよ。
タイ族の暦の正月を祝う『水かけ祭り』(中国・雲南省)
広大な面積を誇る中国だけに、地域に根付いたお正月があるようです。教えてくれたのは、中国の雲南省最南端に位置するタイ(傣)族自治州のお正月。年によって異なるようですが、タイ族の暦では、4月の中旬がお正月に当たるそうです。その時期に、お正月を祝う「水かけ祭り」があるといいます。災いや病魔を追い払い、一年を健康に過ごせるように、お互いに水を掛けあって身体を清めるのだそう。一番ずぶ濡れになった人に福がもたらされると言われているそうです。
お月見をする『正月テボルム』(韓国)
「月を見ながらお祈りをします」という韓国人の女性。この風習は、「正月テボルム」(小正月)と呼ばれ、お正月の約2週間後にあたる旧暦の1月15日に行うのだそうです。この日は一年で最初の満月で、最も大きく丸い月であることから、一年の安泰と豊穣を祈願するのだそうです。この日は、小さな子供にも寝ないように言い聞かせるのだそう。その際、「寝ちゃうと眉毛が白くなっちゃうよ〜」と伝え、寝てしまった子供には眉をこっそり小麦粉などで塗ったりする習慣があるそうですよ。
<番外編>サンタクロースがやってくるのは世界共通?何歳まで信じていた?
筆者がどうしても聞いてみたかった、サンタクロースに関する質問!今回取材に応じてくれた、アメリカ、オーストラリア、イタリア、カナダ、中国、韓国、台湾出身の外国人の下にも、クリスマスの日にはサンタクロースが来ていたそうです。「何歳まで信じていた?」という質問に対しても、「8歳〜10歳ぐらいまで」と共通していました。また、ハートブレイクの理由も、「友だちの間で、サンタクロースは親なんじゃないかという疑惑が出てきて、感づいてしまった」「親がプレゼントを置く現場を目撃してしまった」という、どちらかの理由でした。子供たちの夢や希望とも言えるサンタクロース。世界の子供たちの下にやってくるのか、他の国の人たちにもぜひ聞いてみたいと思います!
さて、風習についてはいかがだったでしょうか。国や地域によって、本当にそれぞれですよね。でも、大事なのはアメリカ人の女性が語っていたように、その背景にある意味をきちんと理解することではないでしょうか。それを知ることで、より尊敬の念を持って、他の国や地域の人たちと接することができるように思います。同時に、数多くある日本の素敵な風習についても理解を深めることで、日本の文化を海外の人に知ってもらう機会になるのではないでしょうか。先日終えたばかりの「桃の節句」では、艶やかな雛人形に、華やかな雛菓子が並び一気に春の到来を感じましたよね。さらに、5月5日には「端午の節句」が控えています。どちらも日本の大切な行事です。なかなか深い意味が込められているようですよ!
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学校法人 新井学園 赤門会日本語学校 本校
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116-0014 東京都荒川区東日暮里6-39-12
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京都生まれ。幼少期をオーストリア、高校時代をカナダで過ごした帰国子女。海外生活から日本の良さを再発見。最近特に注目しているのは、農業、焼き物、染物など「日本の伝統文化」。Webデザイナー兼ライターとして、日本の魅力を発信することを目指しています!
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