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渋谷に“透明トイレ”が出現!? 世界的クリエイターが手掛ける「THE TOKYO TOILET」プロジェクトとは

渋谷に“透明トイレ”が出現!? 世界的クリエイターが手掛ける「THE TOKYO TOILET」プロジェクトとは

更新日: 2021/02/22

東京都渋谷区に、スケルトンの公共トイレが設置されたらしい――。日本のSNSで最近、とある透明なトイレが話題になりました。

代々木深町小公園の公共トイレ(提供:日本財団、撮影:永禮賢)。外壁のガラスは鍵を締めると不透明になります
代々木深町小公園の公共トイレ(提供:日本財団、撮影:永禮賢)。外壁のガラスは鍵を締めると不透明になります

これは日本財団が2020年8月に始動した、誰もが快適に使用できる公共トイレを設置するプロジェクト「THE TOKYO TOILET」によるもの。8月5日には東京渋谷区の恵比寿公園、代々木深町小公園、はるのおがわコミュニティパークに、7日には恵比寿東公園、東三丁目公衆トイレに新しい公共トイレが設置されました。

「多様性を受け入れる社会の実現」を目的に、誰もが快適に利用できるトイレを

代々木深町小公園のトイレ内(提供:日本財団)
代々木深町小公園のトイレ内(提供:日本財団)

同プロジェクトは、日本財団が渋谷区の協力を得て、性別、年齢、障害を問わず、誰もが快適に使用できるトイレを設置するもの。「多様性を受け入れる社会の実現」を目的に、世界的な建築家やデザイナーが手掛けたトイレを渋谷区内の計17カ所に順次設置予定です。

参画するクリエイターは安藤忠雄氏、伊東豊雄氏、隈研吾氏、槇文彦氏、片山正通氏、坂茂氏、田村奈穂氏、坂倉竹之助氏、藤本壮介氏、マーク・ニューソン氏、NIGO(R)氏、佐藤カズー氏、佐藤可士和氏、後智仁氏、マイルス・ペニントン氏、小林純子氏の16名。

トイレは日本が世界に誇る「おもてなし」文化の象徴ですが、多くの公共トイレが「暗い」「汚い」「臭い」「怖い」といった理由で利用者が限られている状態にあります。本プロジェクトによりデザインとクリエイティブの力で多様性を受け入れる社会のあり方を提案するとしています。加えて、従来に比べ清掃をはじめとしたトイレの維持管理を強化することで、訪れた人々に気持ちよく利用してもらい、さらに利用者自身が次の人のためを思う「おもてなし」の心の醸成も目指しています。

対象トイレ一覧マップ。日本財団と渋谷区はソーシャルイノベーションに関する包括連携協定書を2017年10月31日に締結しており、本事業について日本財団より打診、渋谷区が快諾したことで実現しました。日本財団は「本プロジェクトを世界に発信する上でも、日本のカルチャーの発信拠点として海外でも高い認知度を誇る渋谷区で実施することが適当だと考えたため」としています
対象トイレ一覧マップ。日本財団と渋谷区はソーシャルイノベーションに関する包括連携協定書を2017年10月31日に締結しており、本事業について日本財団より打診、渋谷区が快諾したことで実現しました。日本財団は「本プロジェクトを世界に発信する上でも、日本のカルチャーの発信拠点として海外でも高い認知度を誇る渋谷区で実施することが適当だと考えたため」としています

「THE TOKYO TOILET」は2021年夏までに17カ所全てのトイレの設置を終える予定で、8月7日までに5カ所が設置済み。8月31日には西原一丁目公園トイレ、9月7日には神宮通公園のトイレが竣工予定です。

完成&設置済みの公共トイレはどんなもの?

ここからは8月7日時点で設置済の5つの公共トイレを紹介します。

恵比寿公園(片山正通氏)

恵比寿公園のトイレ(提供:日本財団、撮影:永禮賢)
恵比寿公園のトイレ(提供:日本財団、撮影:永禮賢)

恵比寿公園のトイレを手掛けたのは、インテリアデザイナーの片山正通氏。念頭に置いたのは、建築的なものから距離をもち、遊具やベンチや樹木のように何気なく公園に佇むオブジェクトとしての在り方だそう。

ライトアップされた様子(提供:日本財団、撮影:永禮賢)
ライトアップされた様子(提供:日本財団、撮影:永禮賢)

このトイレは日本におけるトイレの起源(川に直接用便する「川屋」)をイメージしながらコンクリートでできた壁を15枚いたずらに組み合わせ、トイレでありオブジェクトでもある“曖昧な領域ー現代の川屋(厠の語源)”を構築。壁と壁の間を男性用/女性用/だれでもトイレという3つの空間への導入とするなど、人々が不思議な遊具と戯れるような、ユニークな関係性をデザインしたといいます。

恵比寿公園のトイレ内の様子(提供:日本財団)
恵比寿公園のトイレ内の様子(提供:日本財団)
恵比寿公園のトイレ内の様子(提供:日本財団)
恵比寿公園のトイレ内の様子(提供:日本財団)

●代々木深町小公園(坂茂氏)

代々木深町小公園のトイレ(提供:日本財団、撮影:永禮賢)
代々木深町小公園のトイレ(提供:日本財団、撮影:永禮賢)

はるのおがわコミュニティパークのトイレと、代々木深町小公園のトイレ。スケルトンの2つのトイレを手掛けたのは、建築家の坂茂(ばん・しげる)氏。

外壁のガラスは鍵を締めると不透明になります(提供:日本財団、撮影:永禮賢)
外壁のガラスは鍵を締めると不透明になります(提供:日本財団、撮影:永禮賢)

両トイレは調光フィルムを貼ったガラス張りの建物で、利用者がいないときはフィルムに電気を流すことでガラスが透明となり、中が見えている状態に。トイレ内に入り鍵を閉めることで電気が流れなくなりガラスが不透明になる仕組みだそう。

代々木深町小公園のトイレ昼間の様子(提供:日本財団)
代々木深町小公園のトイレ昼間の様子(提供:日本財団)

「トイレの中はきれいか」「中には誰も入っていないか」といった公共トイレの不安を払拭するとともに、夜にはまるで美しい行灯のように公園を照らします。

●はるのおがわコミュニティパーク(坂茂氏)

はるのおがわコミュニティパークのトイレ(提供:日本財団、撮影:永禮賢)
はるのおがわコミュニティパークのトイレ(提供:日本財団、撮影:永禮賢)
こちらのトイレも、外壁のガラスは鍵を締めると不透明になります(提供:日本財団、撮影:永禮賢)
こちらのトイレも、外壁のガラスは鍵を締めると不透明になります(提供:日本財団、撮影:永禮賢)
(提供:日本財団)
(提供:日本財団)

恵比寿東公園トイレ(槇 文彦)

恵比寿東公園のトイレ(提供:日本財団)
恵比寿東公園のトイレ(提供:日本財団)

タコの遊具によって「タコ公園」と呼ばれる恵比寿東公園。建築家の槇 文彦氏が手掛けたこの公園の新しい公共トイレは、単なる公共トイレとしてだけでなく、休憩所を備えた公園内のパビリオンとして機能する公共空間を意識しています。

タコ公園の「イカのトイレ」として親しまれることを期待して建てられました(提供:日本財団)
タコ公園の「イカのトイレ」として親しまれることを期待して建てられました(提供:日本財団)

子どもたちから通勤中の人々まで多様な利用者に配慮し、施設ボリュームの分散配置によって視線を制御しながら、安全で快適な空間の創出。ボリュームを統合する軽快な屋根は、通風を促し自然光を呼び込む形態とし、明るく清潔な環境と同時に、公園内の遊具のようなユニークな姿を生み出すことを意図しています。

恵比寿東公園のトイレ内の様子(提供:日本財団)
恵比寿東公園のトイレ内の様子(提供:日本財団)

●東三丁目公衆トイレ(田村 奈穂)

東三丁目公衆トイレ(提供:日本財団)
東三丁目公衆トイレ(提供:日本財団)

東三丁目公衆トイレを手掛けたのは、ニューヨークを拠点に活動しているデザイナーの田村奈穂氏。「私の住むニューヨークの街ではLGBTQ+の人々が、自分の認識する性に正直に生きています。渋谷の片隅の小さな三角の土地にトイレをデザインするにあたり、彼らが、ありのままの『自分』を生きる姿を、ありのままを受け入れる社会を想像しながら突き詰めて考えてみた結果、トイレを利用する誰もが、快適な気持ちを同じように得られるために大切なのは、プライバシーと安全。それを念頭に、個人の空間を再定義して3つの空間をデザインしました」とコメントしています。

東三丁目公衆トイレ(提供:日本財団)
東三丁目公衆トイレ(提供:日本財団)

造形のインスピレーションは、国際都市渋谷にやってくる人々へのもてなしの気持ちをこめて、また、利用する人々を包み込む安全な場所にしたいという願いを込めて、日本の贈り物文化のシンボルである折形から得たといいます。社会に属するすべての人たちが、安全に、ハッピーに生活を営める社会に。そんな思いをデザインに込めたトイレとなっています。

東三丁目公衆トイレ内の様子(提供:日本財団)
東三丁目公衆トイレ内の様子(提供:日本財団)
(提供:日本財団)
(提供:日本財団)
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