「ハチ公」という名の犬の伝説は、日本のみならず世界中で有名だ。飼い主への揺るぎない忠誠心のエピソードから、その愛らしい秋田犬は「忠犬ハチ公」という呼び名で知られている。
犬と博士の友情物語

ハチ公の物語は、1924年に始まる。当時、東京大学農学部の教授だった上野英三郎博士が1匹の秋田犬を譲り受け、ハチ公と名付けた。1人と1匹はたちまち友情を築き、やがて東京大学からもほど近い渋谷駅で上野博士の仕事の帰りを待つことがハチ公の日課となった。
ところが悲劇は突然、訪れた。1925年、上野博士が講義の途中に脳出血のため、亡くなってしまったのだ。しかし何も知らないハチ公は、その後も実に9年9か月15日もの間、主人の帰りを渋谷駅で待ち続けた。
ハチ公伝説の始まり

当初、渋谷駅を通る人々は、犬が駅前に寝そべっているだけだと考えた。しかしやがてハチ公が主人の帰りを待っていることが知れ渡ると、人々はエサや水を与えるようになった。
なかにはハチ公が駅に来るのは、単にエサをもらえるからだと揶揄する人もいた。しかしハチ公がやってくるのは夕方の、まさに上野博士が利用していた電車が駅に到着する時間のこと。上野博士の教え子の一人は”誤解”を解くため、ハチ公がいかに正確な時間に駅にやってくるかを文章にまとめた。
今なお愛されるハチ公伝説

その学生が大手新聞に投稿したことをきっかけに、ハチ公のエピソードは広く知られることとなった。以後、ハチ公の物語は小説やコミック、そしてハリウッド映画化もされ、時代を超えて愛されている。
1934年、ハチ公の献身ぶりを讃えて、渋谷駅前に銅像が建てられた。ハチ公の銅像は今もなお、渋谷の名所で、東京で最も有名な待ち合わせスポットとなっている。2015年2月には、東京大学農学部にハチ公と上野博士の銅像が建てられた。時を経て、1人と1匹はついに再会したのだ。

1935年にハチ公はこの世を去り、東京の青山墓地に埋葬された。安らかで静謐な空気感の漂う青山墓地には、ハチ公の最愛の友だった上野博士の墓もある。
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