六本木がある港区で地域に暮らす人、遊びに来る人、働く人の協働を推進する港区麻布地区総合支所協働推進課長 池端隼人氏は、「六本木はもともと夜の経済で栄えた街」だと話す。六本木は1960年代頃から宴会やパーティーをする街として栄えたが、時代の変遷とともに街は変化を続けている。池端氏と、六本木の新たな方向性について対談するのは、先進マーケティング企業でクリエイティブ・ディレクターを勤めるサミュエル・トーマス氏。海外へ日本をPRしているトーマス氏は、いまの六本木を“アートの街”と表現する。六本木には森美術館や国立新美術館のような注目すべき美術館があり、その建築自体も訪れる価値のあるものだ。また、ショッピングやグルメなど観光コンテンツは豊富にそろっている。
この世代交代によって新しい六本木と古い六本木がミックスされ、より魅力的な街になってきているのだが、その魅力をキープしていくには「六本木を訪れる旅行者の協力も大切だ」と池端氏は言う。それはどんなことだろうか。
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新しい六本木とは?
東京都心に位置する六本木は、渋谷や新宿、お台場といった観光地から近距離にある。そして大使館や国際的なコミュニティが集まる会場が多くあることから、「六本木はあらゆる国籍の人を受け入れ、常に多国籍の人が集まっている街」と池端氏は話す。多様な人が集まる六本木だけに、街は観光客や地元住民に影響する歩道の清潔度や安全対策、迷惑営業などの問題にも取り組んでいる。六本木では、地域住民も来街者も皆が気持ちよく過ごせるよう、すべての人に働きかけることが重要だと考えている。
街を歩くと地域ぐるみの清掃活動が進んでいることが見えるものの、まだ完全とはいえない。街の美化を達成するには、街で過ごすすべての人が自分の行動に気を配る必要がある。「誰もが六本木を楽しめるよう、住みやすくて訪れやすいまちづくりを進めていきたい」と池端氏は付け加える。池端氏はトーマス氏を六本木の街に連れ出し、改善が必要なエリアや、取り組みが成功した例など、六本木で実際に起こっていることを具体的に説明して歩いた。
そして二人は、ガイドウォークを通して気づいた改善点や六本木を進化させ続けるための方法を話し合った。
まちのルール「六本木安全安心憲章」を活用し、一丸となって地域の改善を図る
街を歩きながら池端氏が紹介した取り組みが、まちのルール「六本木安全安心憲章」を広めていく「六本木安全安心プロジェクト」だ。「六本木安全安心憲章」は六本木を楽しく安全で快適な街にするために次の5つの約束ごとを掲げるもので、「六本木安全安心プロジェクト」では六本木に慣れ親しんだ地元の人から観光客にまで広く協力を呼びかけている。トーマス氏はこれらの5つの目標について実際に歩いて確認した。
1.犯罪の防止
六本木では、街頭パトロールや安全対策を通じて、誰もが楽しく過ごせるまちづくりをめざしている。また、道路上の放置自転車をなくすため、自転車の放置禁止区域を定め、自転車駐車場の利用を促している。
六本木3丁目で港区がすすめる新しい公衆トイレの整備。めざすのは女性・子ども・高齢者を含めたすべての人が「安心して気持ちよく利用できるトイレ」で、設備には様々な工夫が施される。 港区が2023年度に策定した公衆トイレの整備方針に基づく先駆的な取組に期待したい。
2.喫煙ルールの遵守
日本では、特に都市部において歩きたばこが問題となっている。港区では受動喫煙と吸い殻のポイ捨てを防ぐため、指定された喫煙所を利用するよう呼びかけている。港区の喫煙場所マップはこちらから見ることができる。
3.美しいまちづくり
街で過ごす多くの人が清潔で美しい環境を望んでいるため、六本木では店舗などから出たゴミの路上放置を防ぐことが課題となっている。路上のゴミは通行人に迷惑なだけでなく、治安を悪化させる原因にもなっている。東京都全体で見ると公共のゴミ箱は不足しており、ゴミを適切に処理することは個人の責任に委ねられている。六本木はこの問題に積極的に取り組み、ゴミのないまちづくりへの協力を呼びかけている。
4. 安全で安心できる道づくり
路上でたむろすることはゴミを出すだけでなく他人への迷惑行為にもつながる。日本では屋外での飲酒は合法とはいえ、「六本木など都市部の路上ではなく、ピクニックなどでお酒を楽しむべきだ」と池端氏は考えている。路上たむろは飲酒や暴力、ゴミのポイ捨てを誘発する可能性があり、港区では地域住民や観光客にとってより安全で快適な環境を作るため、この問題の解決に来街者の協力が欠かせないと考えている。
5. 近隣に配慮した営業
日本の繁華街では、飲食店やバー、クラブの従業員などが路上で客引きをすることが多く、時には客に過剰な料金を請求することもある。港区は、外国人観光客も狙われる客引き行為を防止するため、港区生活安全パトロール隊や警察と連携して巡回指導などを行っている。「以前と比べて客引き行為は減少した」と池端氏は感じているそうだ。「まちのルールに協力したい」「客引きや迷惑行為はしない」という思いをもつ六本木の事業者も多く「六本木安全安心憲章賛同事業所」として登録されているので要チェックだ。
「六本木安全安心プロジェクト」が注力するのは、犯罪防止、喫煙ルールの遵守、清潔なまちづくり、安全な道づくり、節度をもった営業の実現だ。街の安全性や清潔さを高め、同時に地域住民と来街者が共に楽しめる環境をキープするため、地域で過ごす全員が自分のためにもまちのルールを守ることが六本木安全安心プロジェクトのコンセプトだ。
心地よく調和のとれた六本木の未来を築き上げる
六本木はナイトライフの中心地という側面を残しつつ、活気あるアートと文化の中心地へと進化を続けている。六本木安全安心プロジェクトは東京の象徴のひとつともいえる六本木に関わるすべての人が快適で楽しく過ごせる環境を育み、国際的な魅力を維持しようとする取組だ。あなたが六本木での時間を安全に楽しむためにも、先に挙げた5つの項目を知り、守り、安全・安心なまちづくりのための六本木のコンセプトへの協力をお願いしたい。
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