日本人にもっとも好まれる色、青。古くから和服の色として親しまれ、2020年東京オリンピックのエンブレムにも濃い青である藍色が使用されています。「藍染め」は「蓼(たで)」という植物による染色法で、日本には奈良時代(710年~794年)に伝来。その配合や生成の加減で、青色が実に48色にも分かれるといいます。
浅草にある『和なり屋』では、その藍染めと日本で昔から親しまれてきた絞り染め技法の体験ができます。Tシャツ、トートバッグなど、さまざまなものが染められますが、今回は大学生28人が、手ぬぐい染めにチャレンジ!
藍染めの原料は、発酵させた植物
「浅草に藍染めの店がないなんて、粋じゃないから」という理由で『和なり屋』を開いたという店長の菊地正人さんは、祖父の代から染物に関わってきた家の3代目。この店が日本文化の入口となることをコンセプトにし、広く国内外からのお客さんを受け入れています。
体験は、藍染めの歴史についてのレクチャーで始まります。「蓼(たで)」という植物を発酵させると「スクモ」という藍染めの原料となること、防虫・防臭・日焼け防止があり、アレルギーも起こしにくいため健康面の効果も注目されていることなど、みんな興味津々で聞き入ります。
3種類の絞り染めの方法から、デザインを決める
続いては絞り染めの方法の説明です。紹介されるのは伝統的な「ストライプ」「麻柄模様」や、お店の屋号がついた「和なり屋絞り」の3種類。布の折り方や、輪ゴムの止め方、染色されない部分のためにラップをかけたりと工夫することで、自分オリジナルの柄に染め上げることができます。
「可愛いのにしたいけど、どうすればいいのかわからないなぁ」
お手本が目の前にあっても、真っ白い布にゴムを巻くだけでは、どんなふうに染め上がるのか想像するのは至難の技。きちんと折りたたんで几帳面に巻く人あり、考えたうえでさまざまな絞りを取り交ぜる人あり、サプライズを期待してかグルグルと丸めて輪ゴムを四方八方に巻く人ありと、個性豊かに作業が進みます。
樽に3回浸けて染色する
絞りのパターンが決まったら、いよいよ染色に入ります。染料の入った樽の前へ移動します。
「今回染める色は、48色中でも『渋藍』というとても高貴な色です。匂いを嗅いでみてください。ちょっと魚っぽい匂いだと言われていますが、花粉症にも効くそうですよ」
店長の菊地さんの説明に、いっせいに匂いを嗅ぐ学生たち。
「この中にはバクテリアが今も生きていて、上に浮いているものはその反応で生まれているもの。『藍の花』といわれています」
その藍の花の中に、布を握ったまま入れてしばらく浸けたら、上げて空気に触れさせて、もう一度ドボン。浸けたときに布をよくもむことで、染め具合が決まるといいます。
2回目に浸けるときが特に重要で「染まるように」という思いが伝わるとよく染まるそう。さらにもう1回浸けると、手ぬぐいがかなり黒々としてきます。
合計3度浸けたあとの布は洗濯機で水洗いして余分な染料を落とし、脱水をかけます。さて、どんなふうに仕上がっているか、輪ゴムを外して開いてみましょう……!
想像以上の仕上がりに大満足
「うわぁぁぁーーー」
「すごい!きれい!」
あちこちで歓声が上がります。一緒に染めたのに、深い紺色になっているものや、浅めのブルーのものまで。雲のような柄になっているものあり、可愛い花柄のようになっているものあり。開いたときのうれしい驚きにみんな興奮状態で、出来上がりを見せあいます。どの顔も仕上がりに満足げです。
「とても楽しかったです。藍染めといえば、藍色にしか染まらないと思っていたのですが、実際は48色もあるなんて!」(国籍:日本)
「手ぬぐいを染めるなんてつまらないと思うかもしれませんが、やってみてびっくり! 色の深さやデザインもいろいろなものができます。今の時代から見ると古い色かもしれませんが、本当にカッコいいものができます」(国籍:中国)
「和なり屋絞りで染めましたが、藍と白の濃淡がはっきり出て、とてもいい仕上がりになりました。同じ和なり屋絞りで染めた人も、人それぞれ違う模様になったので驚き。誰一人同じ染まり方の人はいなくて面白かったです」(国籍:日本)
「染めている最初は浅黄色ですが、空気に触れて酸化するとどんどん濃くなっていきます。その行程の色の変化が本当に美しい」(国籍:日本)
「一番印象に残っていることは、職人さんたちの手。彼らの両手、爪は染料で真っ青になっていました。その手を写真で撮りたいと言ったら、自慢げに手を差し出してくれました。私はその手を見て、働いている人たちの仕事の大変さに感動し、仕事への情熱を深く感じました。今の若者にこういう仕事をしたい人はほとんどいないと思いますが、日本の長い歴史を感じる技術なので、続けていけばいいなと思いました」(国籍:中国)
「空気に触れさせるところと触れさせないところを利用して柄を作っていくことが興味深かったです。柄をどう工夫してお客様に満足してもらうかが藍染め師の仕事だと聞いて、改めて職人技なんだと実感することができました」(国籍:日本)
「私は伝統や技術に興味を持たないほうですが、『失敗を恐れない心』というのが、今回の体験の最も大きい成果です。失敗したらどうしようと思ったときに、『藍染めに失敗はない』『考えていたものとデザインが違うのは、染料の中の微生物も、染めようとする私たちも生きているからこそ』と励ましてもらいました。完成したものは想像以上に仕上がっていて、非常に満足しました。
先人の知恵を受けいれ、藍を世界に発信することを『和なり屋』の職人たちから感じました。彼らは伝統とファッションを融合して、人々の好みに合うよう工夫しています。時代が変わっても、その職人精神が受け継がれていくといいなと思います」(国籍:中国)
「楽しい体験です。最初はどんな形になるのか予想できませんが、最後は驚きやうれしい気持ちになります」(国籍:マレーシア)
「職人のもとで藍染めの体験ができ、作品を持って帰ることができます。日本の伝統的な文化がよりわかって好きになりました。私にとって素晴らしい体験でした」(国籍:ベトナム)
「作品を作る工程で失敗はつきものだと思いますが、自分で失敗と感じたものでさえ、藍染めでは味として出てきます。そのような体験を、浅草という風情の感じられる場所ですることができ、作品作りだけでなく日本らしさをより感じてもらえるのではないかと思います」(国籍:日本)
制作は終始にぎやかに楽しく進みましたが、みんなその奥にある職人魂に深い感銘を受けたようです。浅草寺の喧噪から一歩離れた住宅街にあるこちらの工房で、クリエイティブかつ日本の伝統、職人の心に触れられる藍染めで、世界にひとつのアイテムを作ってみませんか?
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和なり屋
- 住所 1-8-10 Senzoku, Taito-ku, Tokyo-to 111-0031
10時~19時 不定休
予約制・英語化化
・手ぬぐい染め(35cm×90cnm)1920円(税込) 45分※ハンケチ染めも同料金
・ストール染め(30㎝×135㎝ 綿&シルク)4280円(税込)
・エコトートバッグ
・Tシャツ(S~XL) 3600円(税込)
・問い合わせ・予約
TEL・FAX : 03-5603-9169
メール:mail@wanariya.jp
ホームページ:http://wanariya.jp/
※価格やメニュー内容は変更になる場合があります。
※特記以外すべて税込み価格です。
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