フランスのタイヤメーカー「ミシュラン」に長年勤務し、『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』制作の際においては日本各地を視察して回った森田哲史氏。日本の観光資源、海外視点を熟知した森田氏が、訪日観光者のリアルニーズを捉えて提案していくこの企画。今回は、世界有数の巨大カルデラにそびえる阿蘇山や火山群、そして雄大な草原が広がる九州、阿蘇くじゅう国立公園をめぐります。
まさに、いま開催中であるラグビー世界大会の試合会場「大分スポーツ公園総合競技場」、「熊本県民総合運動公園陸上競技場」からのアクセスも比較的容易。九州の旅をより満足してもらうため提案をします。
阿蘇くじゅう国立公園とは?どんな特徴がある!?
訪日観光者にとって九州観光のメインエアポート・福岡空港からはレンタカーで約2時間。阿蘇くじゅう国立公園内にあるくじゅう連山の登山口のひとつ「長者原ビジターセンター」から、今回の旅はスタート。
森田:「今日はこれからこの長者原登山口からトレッキングをしよう。火山地帯の山だから、湿地帯、草原地帯、岩をよじ登るクライミング、地面から噴気が上がる、石だらけでまるで火星のような荒地など、一日で多くの特徴的な自然を味わえるコースを選んでみたよ。トレッキング慣れしている人にも満足してもらえるコースだと思う」
ティモシー:「ここは国立公園なんですよね」
森田:「そう。日本を代表する優れた自然の風景地を保護するために、環境省が管理している国立公園だよ。ここ阿蘇くじゅう国立公園は、熊本県と大分県にまたがる阿蘇山とくじゅう連山を中心とした国立公園で、総面積は7万ヘクタール以上にも及んでいるんだよ」
ティモシー:「このあたり一帯がすべて国立公園に指定されているんですね。特徴はなんですか?」
森田:「何と言っても、火山地帯の山々を実感できることだろうね。特に、阿蘇山の噴火でできたカルデラは東西18キロ、南北25キロに及ぶ規模で世界有数の大きさとも言われているよ。阿蘇山の噴火した際に降り積もった火山灰などの火山噴出物の部分が陥没し、中央火口丘群を中心に巨大な凹地ができたんだ。これがカルデラだね。このカルデラを外輪山が取り囲んだ、独特の地形となっているんだよ。阿蘇山上地域の、噴煙の上がる中央火口や草千里などは特筆すべき光景だね」
ティモシー:「このカルデラには牛が放牧されていると聞きました」
森田:「あか牛という茶色っぽい牛が放牧されているんだよ。阿蘇の高原部は草原になっているんだけど、このあか牛はその草原の草をエサにして育てられているんだ。阿蘇の草原が維持されているひとつの要因が、このあか牛たちの放牧だね」
トレッキングに必要な情報が手に入る長者原ビジターセンター
今回、二人が待ち合わせた「長者原ビジターセンター」は、トレッキングの前にぜひ立ち寄りたい施設のひとつ。2015年にリニューアルされた建物はとても明るく清潔です。
スタッフが常駐しているインフォメーションコーナーでは、登山道などの情報を入手することができます。また、季節に合わせて山の情報の展示や野焼き映像の上映なども行われていたり、タデ原と三俣(みまた)山が眺められるスペースもあるので、景色を見るだけでも楽しめます。
森田:「火山地帯だけど、周りの山の緑は深くて、この辺りのタデ原は湿地帯。高温多湿のモンスーン気候の森林の景色と、火山様相のコントラストが素晴らしいだろう。山の上は乾燥しているようだけど、実は太平洋、東シナ海がもたらす大量の雨が降り注ぐ場所でもあって、それがこの緑豊かな湿地と広葉樹の大木を育てる森にも繋がっているんだよ」
長者原ビジターセンター
〒879-4911
大分県玖珠郡九重町大字田野255-33
TEL:0973-79-2154
開館時間:9:00~16:00(5~10月は17時閉館)
休館日:12/29~1/3
■湿原、温泉、森林、石の山、多彩な山の魅力を堪能できるトレッキングコース
森田:「さあ、出発しよう。三つのピークがある三俣山が前方に見えるだろう。今日はタデ原湿原を横切って、指山斜面にある森の中を登り雨ケ池に抜けるよ。そこを下ると坊ガツル湿原がある。ここはタデ原湿原と共にラムサール条約に登録された湿原なんだ。その湿原の奥に法華院山荘温泉があるから、そこで一休みしよう。法華院山荘温泉で休憩した後に、今日一番の急な岩道の登りがある。登り終えるとそこがスガモリ峠。硫黄山の近くだよ。そしてここに下って来る、5時間から6時間のコースだね」
まずは、タデ原湿原を山の方へ向かいます。木道が整備されているので、このタデ原湿原だけであれば、軽装でも楽しむことができます。
湿原を抜けて、湿地帯の森の中に入ります。ちょっと沢登りの感もあり。このコースを歩くには、トレッキングシューズは必須ですね。約1時間、森の中をひたすら上へ上へと登っていきます。
森を抜けると、雨ケ池に出ます。ここは雨が降ると一面水が溜まって池ができるところ。木道が整備されています。約5分、この雨ケ池を歩きます。
雨ケ池を抜けて坊ガツルに出ました。ここはずっと遠くまで見渡せる草原地帯。20分程度歩きます。周囲は山に囲まれていて、地盤が雨などで削られた山肌は、雨の多い日本ならではの山岳地帯の迫力を感じさせます。
■温泉で一休みして登山の疲れを癒す「法華院温泉山荘」
さて、草原を抜けて法華院温泉山荘に着きました。ここは昔、仏教寺院があったところ。明治の神仏分離・廃仏毀釈運動の中で廃寺になってしまいましたが、本堂にあった観音像は今でも片隅に祀られています。現在は山荘として、登山客たちの疲れた体を癒す山小屋として、休憩や宿泊に利用されています。
この山荘には名前の通り温泉があり、大船山、平治岳、立中山を眺めながらの入浴を楽しむことができます。宿泊もできますが、500円で温泉のみ利用することも可能。森田さんとティモシーは、さっそく温泉へ向かいます。
森田:「素晴らしい眺望を見ながらの温泉、疲れが吹き飛ぶ気がするね。単純温泉で、神経痛や疲労回復にいいらしいよ。ここに宿泊して、湯船に併設されたウッドデッキから満天の星空なんかを眺めるのも最高だよね」
ティモシー:「この山小屋は清潔なのもいいですね。トイレが水洗で洋式なのもうれしいな」
森田:「日本でこれだけ清潔で整理整頓されている山小屋は珍しいと思うよ。今回は休憩するだけだけど、宿泊もできるから、ここに数泊してくじゅう連山の山登りをしてもいいよね。中岳、大船山、平治岳などいろいろなコースがあるくじゅう連山だから、たっぷりトレッキングが楽しめると思うよ」
法華院温泉山荘
大分県竹田市久住町大字有氏1783番地
TEL:090-4980-2810
(宿泊の場合は、事前に電話で予約が必要です)
■今回のコース最大の難関!岩をよじ登ってスガモリ峠を越え、硫黄山を眺める
法華院山荘で疲れを癒したら、今回のコースで最大の難関“スガモリ越え”に挑みます。スガモリ越えはゴツゴツした岩の中をよじ登っていくコース。黄色い目印に従って、体全体を使ってよじ登ります。
そして、最後の岩を乗り越えるとまるで火星に着陸したような岩地にたどりつきました。これこそが火山地帯ならではの風景。あちこちの山肌から噴気が上がっている光景を眺めながら歩いていきます。
スガモリ峠からは左手に硫黄山を望みながら下りていくことになります。昔はこの硫黄山からは硫黄を採掘していたそうですが、今は立ち入り禁止になっています。今回はそうでもなかったですが、火山活動の状況によっては水蒸気がもうもうと吹き出しているそう。
森田:「日本にはいろいろと活火山があるんだけど、アクティブな活火山の中を歩けるのは、この阿蘇くじゅう国立公園の素晴らしい魅力だよね」
ティモシー:「外国人には日本は島国だと云うイメージが強いと思うけど、実は山国なんですよね」
森田:「そう。そのことが阿蘇くじゅう国立公園を歩くと良くわかると思うよ。日本列島は太平洋からのプレートとユーラシア大陸からのプレートがぶつかり合っている、まさにその上にあるんだ。太平洋からのプレートがユーラシアからのプレートの下に潜り込むから、ユーラシアからのプレートが隆起する。そこに太平洋、南シナ海から大量の水分を含んだ雲が南東から季節風によって北上してくる」
ティモシー:「その雲が山肌に当たって大量の雨を降らせるわけですね」
森田:「大量の雨は急流となって山肌の柔らかい部分を削ぎ落として流れ落ちる。あの山なんか、まさにそうだね」
森田:「プレートとプレートがぶつかればそこに巨大な地殻エネルギーが生まれ、火山活動に繋がる。恐ろしい地震の原因にもなるけど、温泉という恵も与えてくれるわけなんだよ。古代の人々はこの山に何か神聖な存在を感じ、それが山岳信仰や火山信仰に繋がるんだ」
森田:「このくじゅう連山にはさまざまなトレッキングコースがあるから、連泊してあちこち足を延ばすのも楽しいよね。さっき行った法華院温泉山荘の他にも、山を下りて30分くらいのところにあるB・B・C長湯というロングステイに向いたプチホテルなんかもあるから、こういうところに泊まってトレッキングを楽しむのもいいんじゃないかな」
B・B・C長湯
大分県竹田市直入町長湯7788-2
TEL:0974-75-2841
■景観や星空も最高な高原のリゾートホテルで最高のリラックスを
6時間にも及ぶトレッキングを終えた二人は、一路今日の宿へ向かいます。
大分県と熊本県を結ぶやまなみハイウェイを通れば、そこはもう熊本県。1時間足らずのドライブで「三愛高原ホテル」に到着しました。阿蘇郡南小国町にあるこのホテルは、阿蘇五岳やくじゅう連山を見ることができる標高920メートル、大草原地帯に位置しています。
今回はこの「三愛高原ホテル」の新館に宿泊させていただきました。この新館の特別室には客室露天風呂があり、リラックスして露天風呂に入りながら阿蘇の自然を楽しむことができます。
温泉も充実しており、西黒川の天然温泉を引湯した大展望浴場、そして阿蘇五山を眺めることができる露天風呂、要予約の貸切風呂などを楽しむことができます。さえぎるものが何一つなく、空いっぱいに星が広がる夜空を眺めながらの夜の露天風呂も最高だとか。
新館の宿泊客は「西館ダイニング大観」で食事をいただくことができます。「大観」という名のとおり、大きな窓から阿蘇五山のパノラマを心ゆくまで眺めることができます。
夏は草原、秋はすすき、冬は雪景色と、季節ごとにそれぞれの魅力あふれる風景を楽しむことができるそう。
食事は、九州の新鮮な食材を使った和食のコースです。阿蘇の野菜や大分や福岡で取れた魚介、阿蘇美豚(あそびとん)、地元産の七福醤油をベースにしたタレなど、阿蘇を中心に九州の味を楽しむことができます。
日本酒が大好きなティモシー、今日も阿蘇の日本酒「れいざん」をいただいてご機嫌です。
三愛高原ホテル
〒869-2402
熊本県阿蘇郡南小国町大字満願寺5644
TEL:0967-44-0121
FAX:0967-44-0521
■くじゅうの自然の中で生まれた抽象画の世界にひたる「坂本善三美術館」
さて、阿蘇くじゅう国立公園をめぐる旅、翌日は「三愛高原ホテル」から車で30分程度の距離、小国町にある「坂本善三美術館」からスタート。
この「坂本善三美術館」は小国町出身の画家・坂本善三の美術館です。「小国の自然から生まれた坂本善三芸術は小国の生活の中にあるのが最も似合う」というコンセプトで、明治5年に小国町に建てられた古民家を移築した世界で唯一の畳敷きの美術館です。学芸員の山下さんにお話をうかがいながら、じっくりと作品を鑑賞してきました。
森田:「坂本善三は1911年生まれの小国町出身の画家だよ。1957年、40代後半になってパリへ行くんだ。パリの町並み、建物の壁、質感などに大きく魅了され、帰国してから抽象画に取り組むようになる」
山下さん(学芸員):「パリから帰国した善三は故郷に戻って、自分が生まれ育ったくじゅう・阿蘇の自然と真剣に向き合いはじめます」
森田:「そこで彼独特の線と色を見つけ出していくんですね。この絵に描かれた線は、昨日、スガモリ峠から下って来たところにあった岩の表面のようじゃない?昨日、くじゅうの自然を体感してきたことで、坂本善三作品をより身近に感じることができるね」
「坂本善三美術館」の隣には「鉾納宮(ほこのみや)」という神社があります。境内には樹齢700年といわれる大きな夫婦杉がそびえています。奥には土俵も開放されていました。
坂本善三美術館
開館時間:9:00~17:00 (入館は30分前まで)
休館日:毎週月曜日(休日にあたるときは翌日休館)
※その他、展示替えの際には休館となりますので、お問合せください。
〒869-2502
熊本県阿蘇郡小国町黒渕2877
TEL:0967-46-5732
FAX:0967-46-2647
■火山が作り出した奇跡の自然。マイナスイオンで心も洗われる「鍋ヶ滝」
次は、「坂本善三美術館」と「鉾納宮」から2キロの距離にある「鍋ヶ滝」へ向かいます。
この「鍋ヶ滝」、幅約20メートル、落差約10メートルの滝ですが、滝壺の裏側に入って裏から滝を眺めることができます。
森田:「ティモシー、この滝は裏側からも見ることができるんだよ。9万年前の阿蘇山の巨大噴火によって流れた火砕流が、川だった砂レキ層の上に堆積し、熱と圧力で一枚の固い岩となったんだ。固い岩の下の柔らかい層が水の流れで浸食されて、この滝の裏側にスペースができたんだ」
鍋ヶ滝公園
〒869-2502 熊本県阿蘇郡小国町黒渕
TEL:0967-46-2113
料金:高校生以上 300円・小中学生 150円・小学生未満 無料
時間:9:00 - 17:00 (最終入園16:30)
休日:年末年始12月28日 - 1月3日
■阿蘇を一望するテラスでシェフこだわりのあか牛を堪能「キュイジーヌ駱駝」
「坂本善三美術館」、「鉾納宮」、「鍋ヶ滝」で小国町の自然から生まれた美を堪能した森田さんとティモシー。南阿蘇村にあるフレンチレストラン「キュイジーヌ駱駝」へランチに向かいます。「ミシュランガイド熊本・大分 2018 特別版」に掲載されたお店ということもあり、出発前からティモシーはとても楽しみにしていた様子。行きの道中、そんなティモシーに森田さんから、阿蘇の外輪山を眺めながらのあか牛についてのレクチャーが始まりました。
森田:「ここ、阿蘇ではあか牛が有名だけれど、このあか牛はカルデラがあったから生まれた牛なんだよ。阿蘇のカルデラを取り囲む外輪山の上の方は草原になっているだろう。この草原の草をカルデラの盆地に運ぶために使われていたのが、あか牛の先祖なんだ」
ティモシー:「最初は農耕牛だったんですか?」
森田:「そう。阿蘇のカルデラ盆地は火山灰が溜まった土壌だから米作りには適していなかった。その土壌改良のために、外輪山の草原の草を牛に盆地に運ばせたんだ。その草を堆肥にして土に混ぜて土壌改良を行っていったんだね」
ティモシー:「その牛たちを、今こうやって食べられるようになったんですね」
森田:「まあ、農耕牛そのままでは食用には向いていないから、スイスのシンメンタール種という種類の牛と掛け合わせ、改良して今の阿蘇のあか牛が誕生したんだよ」
あか牛について話すうち、車は「キュイジーヌ駱駝」へ到着。国道28号線からちょっと奥に入ったところにあるこのレストラン、まるで隠れ家のような雰囲気。
ステンドグラスなど、古民家の建材を利用して作られた建物も、モダンでありながら懐かしさを感じさせます。カウンターの正面には巨大な窓があり、カウンターからは阿蘇の山々を見渡すことができます。
今回は、テラス席をご用意いただき、あか牛のステーキセットをいただくことにしました。オードブル、サラダ、スープ、デザート、コーヒーがついて2600円という、とってもお得なセットになっています。
ステーキが大好きなティモシー、さっそくいただきます!
ティモシー:「とてもおいしい!弾力があるけど固くはないし柔らか過ぎてもいない。この赤身肉は素晴らしいです。アメリカ人好みだと思います」
森田:「肉の切り方にも気を使っているのがわかるし、火入れも素晴らしい。シェフのこだわりが伝わってきます。それから、マダムの熊本弁もいいですね。フランスの田舎にはこんな感じの素敵なレストランがたくさんあるから、懐かしいな」
キュイジーヌ駱駝
熊本県阿蘇郡南阿蘇村大字河陰3972-2
TEL:0967-67-4567
営業時間:11:30~15:00(OS14:30)
定休日:火曜・水曜
■在日フランス人が日本の文化や阿蘇の魅力を紹介してくれる「道の駅 阿蘇」
次にきたのは阿蘇市にある「道の駅 阿蘇」。こちらは季節の野菜や果物、乳製品やスイーツ、お弁当など阿蘇の特産品がそろった、阿蘇の味覚が堪能できる場所。自由に使える休憩室もあり、ここで買ったお弁当やスイーツを食べることもできます。
インフォメーション・コーナーでは、フランス人のフランク・リモージュさんがガイドとして勤務しています。フランス語、英語、日本語が堪能なフランクさん、熊本出身の女性と結婚して、ここで働くことになったのだとか。森田さんとティモシーは、さっそくフランクさんにインタビューを始めました。
森田:「フランクさんは阿蘇の情報をフランス語と英語でSNSを通して伝えているんだよね。ここで仕事をするうえで、一番のテーマは何ですか?」
フランク:「阿蘇の知名度を上げることです。ぼく自身も実は熊本に来るまでは阿蘇という名前すら知りませんでした。これだけユニークな自然があるのにね。いつも噴火している火山とそれを囲むカルデラ。阿蘇盆地の田んぼの風景と阿蘇神社。それを取り囲んで生活をしているやさしい人々、ここではとてもユニークな経験が出来ると思いますよ」
森田:「英語、フランス語、日本語を話し、欧米文化も日本文化も知っているフランクさんが案内してくれるのは心強いよね。どういう質問が多いですか?」
フランク:「一般的な観光情報だけではなくて、文化的なことを訊かれることも多いかな。この間はフランス人夫婦から、日本人に挨拶をするとみんなにギョッとされるけど、自分たちは何か失礼なことをしているのか、って聞かれたり。だから『心配ないですよ。日本人は基本的にシャイな人達だから、外国人に挨拶されるとどうして良いのか戸惑っているんです』って説明しました」
森田:「フランクさんみたいな人がいるということを発信していくことで、阿蘇くじゅう国立公園に行ってみたいと考えている人の背中を押すことができるはずだね」
道の駅 阿蘇
〒869-2225 熊本県阿蘇市黒川1440-1
TEL:0967-35-5088
FAX:0967-35-5085
■復旧工事中の「阿蘇神社」で狩猟採集民族の歴史と火山信仰に思いをはせる
いよいよ阿蘇・くじゅう旅も大詰め。最後の目的地、阿蘇神社に向かいます。
肥後国一の宮とされ、肥後の総鎮守であるこの阿蘇神社、2016年4月に発生した熊本地震により、楼門と拝殿が全壊。現在、復旧工事が行われています。それまで拝殿に隠れて表からは見えなかった一の神殿、二の神殿、三の神殿が、今は参拝客の前に姿を現しています。
森田:「阿蘇神社は十三の神様を祀っているんだけど、ご神体は阿蘇中岳の噴火口なんだよ。火山信仰だね」
ティモ:「興味深いですね。欧米社会でもHunting & Gathering People(狩猟民族)の考え方が注目されて久しいけど、ますます興味が湧いてきます」
森田:「1万3千年も続いたと言われる縄文時代はまさに狩猟採集民の時代。神道をはじめ日本にはその影響がとても色濃く残っているよね。大陸から日本に稲作文化が徐々に普及し、やがて小国家的な組織を持つ集団が出来つつあった時代、この阿蘇地方は痩せた火山灰の土地だったから水田開発が出来なかった。しかしながら阿蘇の人達は、稲作に頼らなくても、外輪山の草原を定期的に焼いて作ってきた豊かな狩場を管理維持する文化を持っていて、狩猟採集だけで小国家並みの集団を構えることができた。それは一大勢力だっただろうと思うんだ。それでも、やがては稲作文化を持った小国家が合併吸収を繰り返し大国家になって、ここの勢力もその支配下に置かれる」
ティモシー:「ヤマトによる国家成立ですね」
森田:「そう。でも、そう云う時、日本では勝った方が負けた方を一方的に奴隷化して従属化することはしないんだ。負けた側の神々のお社を建立したりして融和政策を取る」
ティモシー:「それがこの阿蘇神社とも言えるわけですね」
ティモシー:「阿蘇神社の紋はどうして鳥の羽なんでしょう?」
森田:「弓矢の矢の羽を現しているんだよ。源頼朝が鎌倉幕府を開いた後、富士の裾野で大規模な『巻き狩り』という狩りの行事を催したんだ。その時に、頼朝からその狩りの運営を任された武将が、しばらく阿蘇に滞在して、この阿蘇神社で『巻き狩り』について教えを乞うたというよ」
ティモシー:「阿蘇の人達は『狩りの達人』だったわけですね。まさに狩猟採集民族。Top of Hunting & Gathering People !!」
森田:「Yes !! 狩猟採集民族ならではの、狩りの知恵や技術が伝わっていたんだろうね」
阿蘇神社
〒869-2612
熊本県阿蘇市一の宮町宮地3083-1
TEL:0967-22-0064 社務所(9:00-17:00)
FAX:0967-22-3463
火山によって作られた大地、阿蘇・くじゅうをめぐったぶらり旅。9万年前の火山噴火によってできたこの阿蘇くじゅうの雄大な自然は、まさにここでしか出会えないもの。ぜひとも多くの訪日観光客にこの地を訪れ、この自然の魅力を知ってほしいと思います。
※価格やメニュー内容は変更になる場合があります。
※特記以外すべて税込み価格です。
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