「芦ノ湖畔 蛸川温泉 龍宮殿（以下、龍宮殿）」がある芦ノ湖は、箱根エリアでも標高の高い奥まった場所にあります。

そのため、箱根の玄関口である「箱根湯本駅」から路線バス、または登山電車と路線バスを乗り継いで山を登る必要があります。

アクセスに少し時間はかかりますが、登りきればリゾートらしい湖畔の景色を楽しめるのが魅力。富士山が見えた瞬間の感動はひとしおです。

龍宮殿には、宿泊棟である「龍宮殿別館」と、日帰り温泉棟である「龍宮殿本館」があり、館内の連絡通路で繋がっています。別館に宿泊すれば、無料で本館のお風呂（温泉）を利用可能です。まずは客室のある龍宮殿別館の魅力を紹介します。

龍宮殿別館は1990年に建てられました。全24室で、晴れた日にはすべての客室の窓から芦ノ湖と富士山が見えます。ベッドを設置した洋室もありますが、客室は日本らしさを存分に味わえる和室（畳に布団を敷くお部屋）が中心です。

外国から来たお客様には、洋室よりも和室のほうが人気があるのだそうです。目の前に広がる芦ノ湖と富士山の絶景には、心が安らぎます。

せっかく和室に泊まるのであれば、座布団に座りながら日本茶を飲み、窓から富士山を眺めて日本らしさを満喫するのもおすすめです。

隣接する温泉棟の龍宮殿本館だけでなく、宿泊棟である龍宮殿別館にも温泉大浴場があります。

こちらは内湯のみですが、宿泊者専用なので混雑せず落ち着いた雰囲気の中で温泉を楽しめます。広い窓からは、石灯籠などを設置した日本らしい「坪庭」（小さな庭園）を眺められるのもポイント。

日本に旅行に来たら、和食を楽しみにしている人も多いでしょう。龍宮殿の夕食はヘルシーな和食が中心ですが、ステーキや「カツレツ」（フランス料理のコートレットをアレンジしたもの）など、洋風の肉料理もテーブルに並びます。

外国人のお客様に人気のメニューについて伺うと、とくにマグロのお刺身を楽しみにしている方が多いのだそうです。

料理には地元の旬の食材を使用。「箱根西麓野菜」や「箱根西麓牛」と呼ばれる野菜・牛肉は特においしいと評判です。箱根は山地のリゾートですが、西麓の三島市は農業が盛んであり、近くには新鮮な魚が水揚げされる漁港もあります。つまり、箱根にはおいしい食材が集まっているのです。

なお、龍宮殿の食事にはヴィーガン・ベジタリアン対応のメニューはありませんが、隣接する同系列の「ザ・プリンス 箱根芦ノ湖」の「レストラン レイクサイドグリル」には、ヴィーガン・ベジタリアン向けのメニューがあります。

事前に希望すれば、食事時のみ隣接するホテルに移動することも可能なので、必要な方は泊まる前に龍宮殿のスタッフに相談してみてください。

朝食には、富士山のふもとで育った鶏肉を使った「茶碗蒸し」（具材を卵と出汁で蒸した料理）や、近隣の小田原の名産品である「さつま揚げ」（魚肉のすり身を揚げた料理）などが卓上に並びます。特にさつま揚げは瓦（日本家屋の屋根に用いる陶器）の上で焼く「瓦焼き」で提供されます。和の趣を楽しみつつ、アツアツの状態で食べられます。

実は龍宮殿は、箱根のパワースポットといわれる3つの神社の間に位置しています。神社の名前はそれぞれ「箱根神社」「箱根元宮」「九頭龍神社」。

また芦ノ湖には、「龍神」の伝説も伝わっています。龍は東洋では神聖な存在であり、神様としてあがめられることも多い存在。そんな縁起の良さから、龍宮殿のお土産で訪日観光客に人気なのは、硝子球にレーザーで龍を彫刻した「硝子水晶玉」なのだそうです。オリエンタルな雰囲気で神秘的なグッズなので、日本の思い出にぴったりですね。

軽くて小さいお土産なら、寄木細工のキーホルダーもおすすめ。寄木細工とは、色の違う木材を組み合わせて模様を作る伝統工芸品で、箱根は代表的な産地です。

お菓子では、温泉のマークが焼き印された「あんこ」（小豆を原料とする和菓子の材料）入りの「箱根まんじゅう」が人気があります。

龍宮殿の宿泊者は、チェックイン時間から19:00まで、翌朝6:00からチェックアウト時間までの間、龍宮殿の本館と別館を自由に行き来できます。龍宮殿本館は日帰り温泉施設でもありますが、宿泊者は滞在中なら何度でも本館のお風呂を利用できます。

龍宮殿本館は別館よりも古い建物で、1938年に箱根ではなく静岡県の「浜名湖」に建てられました。当時の名称は「浜名湖ホテル」といい、京都の平等院鳳凰堂（日本の10円玉にデザインされた有名な寺院）を模していて、とても豪華で贅沢なホテルだったといわれています。

しかし高級すぎたこともあり、浜名湖ホテルとして運営されたのはわずか1年半。その後に解体されて箱根に運ばれ、芦ノ湖畔で組み立てられて1957年に龍宮殿として生まれ変わりました。

龍宮殿本館は、まず外観からして素晴らしい姿です。モデルとなった平等院鳳凰堂は、平安時代後期（1053年）に建てられた仏教施設のため、本館もその時代を思わせるデザインとなっています。

龍宮殿本館は2017年に国の登録有形文化財に指定され、その歴史的・文化的な価値が正式に認められたのです。

館内の最大の見どころは、中央の階段と吹き抜けのロビー。現在は2階に上がることはできませんが、重厚できらびやかなこの階段の前で、記念撮影をしてみてはいかがでしょう。

このほかにも、廊下や柱などは贅沢を極めた浜名湖ホテル当時の名残と、日本の古い木造建築ならではの趣があり、館内を歩いているだけでも楽しめるでしょう。

絶景温泉として知られる龍宮殿本館のお風呂。龍宮殿に泊まるなら、別館の大浴場だけでなく、ぜひ本館のお風呂にも足を運んでください。本館のお風呂のお湯も別館と同じ天然温泉です。

本館のお風呂には、洗い場、内湯、露天風呂、サウナがあります。男湯と女湯に少し違いがあり、露天風呂の数は男湯が2つ（そのうち1つは屋根付きの半露天風呂）で、女湯が1つです。サウナ設備は男湯がフィンランドサウナと水風呂、女湯はスチームサウナで水風呂はありません。

ただし、富士山と芦ノ湖は男湯・女湯のどちらからも見えるのでご安心ください。

雄大な富士山を見ながらお風呂に入っていると、まるで湖の中から富士山を見ているような素敵な体験ができるでしょう。

龍宮殿本館の営業時間は、冬は朝9:00から、夏は朝8:00からですが、なんと宿泊者は朝6:00から利用可能！　早朝の朝風呂は人も少なく快適に過ごせるので、ぜひ足を運んでみてください。

芦ノ湖からの富士山が最も綺麗に見えるのは、早朝が多いと言われています。この一番綺麗な時間帯に絶景露天風呂を利用できるのは宿泊者の特権です。美しい景色だけでなく、朝は鳥の声も聞こえて楽園のような雰囲気が楽しめますよ。

龍宮殿は、レジャー・グルメ・ショッピングを楽しめる「箱根園」というレジャー施設に隣接しており、さまざまな観光スポットにアクセスしやすいのが特徴です。

2025年4月にリニューアルオープンする予定の「箱根 駒ヶ岳ロープウェー」では絶景を楽しめるほか、春の箱根のシンボルともいえる樹齢100年の「湖畔の一本桜」、水陸両用バスで芦ノ湖を巡る「ニンジャバス」、富士山と湖に浮かぶ箱根神社の鳥居を見られる「芦ノ湖遊覧船」など、多くの名所を巡ってみてくださいね。

宿泊に関するよくある質問について、ホテルの方に回答していただきました。

箱根にホテルはたくさんありますが、芦ノ湖と富士山が見えるホテルはそこまで多くありません。龍宮殿は、窓から見渡す絶景や和の雰囲気を満喫できる建築、そして箱根自慢の温泉をたっぷりと楽しめる素晴らしい旅館です。箱根の観光に便利な立地から、家族で長期滞在される方も多いのだそうです。興味がある方はぜひ宿泊して、充実した箱根の旅を体験してみてください。

※この情報は2025年3月の記事執筆時のものです。最新の情報は公式サイト等をご確認ください。