豊かな海で獲れる魚、大自然で育った野菜や肉。福島県は日本国内でも有数の「食材の宝庫」です。
その魅力をもっと広く知ってもらおうと、世界中の食通をうならせてきた「和食」の達人を中心に料理人たちが力を合わせました。福島県産食材が持つ可能性を存分に引き出すべく、京料理などの知恵と技を結集させた懐石メニューが完成しました。
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◆懐石メニューに感嘆 「口の中でヒラメが泳いでいるみたい」
「味が深い」「とても洗練されている」
令和6年(2024年)2月18日、福島市の土湯温泉「YUMORI ONSEN HOSTEL」で懐石メニューのお披露目イベントが開かれ、料理を堪能した約100人の参加者から感嘆の声が漏れました。
常磐もののトラフグの麹漬けやアカムツの蒸し物、会津地鶏のつみれ、伊達市産あんぽ柿と矢祭町産ユズの巻柿……。振る舞われた10品には、いずれも福島自慢の食材がふんだんに使われました。
イベントには地元の漁業、農業関係者や観光に携わる団体、企業の代表のほか、政府の代表も参加しました。 土屋品子復興大臣は、福島県がブランド魚として力を入れる「福とら」(天然トラフグ)の糀漬けについて「独特の柔らかさで口に含むと深い味がした。今までに食べたフグとは別の料理のような感じがした」と絶賛。
福島県の内堀雅雄知事はヒラメの昆布締めのおいしさを、こう表現しました。
「味が何層にも重なり、口の中でヒラメが泳いでいるようで感動した」
◆事前訪問で福島に学ぶ 老舗料亭の技と知恵が結集
この懐石メニュー開発の中心になったのはNPO「日本料理アカデミー」に所属する京都の老舗料亭の店主らです。このNPOは「和食」のユネスコ無形文化遺産登録に尽力するなど日本が誇る食文化を世界に伝え、海外の料理人の技術指導も行っています。
今回は、復興庁の事業「福島を味わう 食文化の結び PROJECT in 福島」として福島食材の安全性や魅力の発信に取り組みました。
1月に「京料理たん熊北店」主人の栗栖正博理事長らが福島県相馬市などを訪問。漁業関係者から水産物の現状を聞き、地元の食文化、旬の素材の特徴を知り尽くした福島の料理人に協力を依頼し、一緒に献立を練り上げました。
京都で450年続く「山ばな平八茶屋」主人の園部晋吾副理事長は「福島には実に多種多様な食材があり、その魅力ある食材を私たちの料理にしたら、どうなるのだろうかとワクワクした」と振り返ります。
◆特製弁当商品化 トラフグ普及に期待 「食べて福島を元気に」
福島の料理人や生産者にとっても、郷土の食材が持つ可能性を再発見する機会になりました。
イベント当日は京都に加え、東京、名古屋、茨城、岐阜、宮城などから駆けつけた料理人と地元の料理人が総勢20人で調理にあたりました。
食材の選定、調達も担当したのは福島県郡山市の「ホテル華の湯」の丸山賢治総料理長です。「地元の料理人が知らない魅力を引き出してもらった」と刺激を受けた様子で、丸山さんのホテルでも今回の懐石が食べられる宿泊プランの提供などを検討するそうです。
また「福とら」の展開は、福島県沖で近年、漁獲量が急増しているのを好機ととらえた動きで、相馬エリアを中心とした地域振興の起爆剤として期待が高まっています。相馬市の漁師、石橋正裕さんは「福とらの新しい食べ方に感銘を受けた。全国に普及させる起爆剤になる」と期待を語りました。
日本料理アカデミーは、今回の懐石メニューをもとにした特製弁当のメニューも福島県の料理人と共同で開発し、発表する予定です。お弁当が商品化され、福島を訪れた人が楽しめる日が近いかもしれません。
現在、市場に流通している福島食材は、放射性物質に関して世界で最も厳しい基準に基づき検査を通過した、安全な食材ばかりです。イベントの最後には、岐阜市から参加した料亭「萬松館」主人の五百木健次さんが、プロジェクトに関わった全料理人を代表し、こう呼びかけました。
「福島の食材は安全で安心。全国の皆さんが食べて、情報を発信し、福島を元気にしてほしい」
※価格やメニュー内容は変更になる場合があります。
※特記以外すべて税込み価格です。