小さな島国でありながら、エリアや季節によって、さまざまな自然の豊かさを感じられるのも日本の魅力。都会の喧騒から離れて、大自然の魅力を体験したいという人におすすめしたいエリアのひとつが、東北地方・青森県の奥入瀬です。
かく言う私、本記事のライター・現役の海外添乗員で、プライベートでは国内をめぐっている島田みゆも、以前訪れてから奥入瀬渓流の魅力にすっかり心を奪われてしまったうちの一人。ここ奥入瀬は、特に外国の方に訪れてほしい日本のスポットのひとつでもあります。
そこで今回は、四季や時間で異なるいろいろな魅力を持つ奥入瀬でやるべきことをご紹介。奥入瀬の魅力や楽しみ方について解説します。
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奥入瀬渓流とはどんな場所?
まずは奥入瀬の基本情報から。奥入瀬渓流(おいらせけいりゅう)は、日本の本州の最北端の県・青森県十和田市にある青森県屈指の名所。
青森県と秋田県の2つの県にまたがる十和田湖から流れる奥入瀬川の十和田湖畔子ノ口(ねのくち)~焼山(やけやま)まで全長約14kmの渓谷を「奥入瀬渓流」といい、十和田八幡平国立公園内にあり、国の特別名勝及び天然記念物として保護されています。
旅のプロが、奥入瀬渓流をおすすめしたい理由
日本全国を旅している私が、外国の方に奥入瀬をぜひおすすめしたい理由は、3つあります。
アクセスがシンプルで、JAPAN RAIL PASSで行ける!
奥入瀬には、東京都心からは新幹線+バスで向かいます。バスが出ている青森県・八戸駅までは、東京駅から新幹線で約2時間50分。そして八戸駅西口のロータリーからバスに乗ってさらに約90分。時間はある程度かかりますが、アクセスはシンプルなので初めてでも迷うことはありません。
そして何と言っても、訪日外国人専用のお得な切符「JAPAN RAIL PASS」が、新幹線、バスともに使えること。訪日外国人の方だけの特権なので、使わない手はありません。
奥入瀬渓流の玄関口にあるバス停(奥入瀬渓流館)に着くと、渓流を囲む大自然はもう目の前!通常、これだけ自然豊かな場所に行くには、「バス停から1時間以上歩く」、「車両は立ち入れない」ところが多いのですが、奥入瀬渓流には国道が走っているので、車、徒歩、自転車、どんな交通手段でも簡単に行くことができます。
自然保護のため、ゆくゆくは車両の進入には制限がかかる可能性があるとのことですが、現状は誰でも通ることができる道です。
さらに渓流沿いには歩行者専用の遊歩道が整備されているので、車や自転車は苦手…という人でも間近に渓流の美しさと迫力、自然の造形美を堪能できます。
四季ごとに全く違った景色!いつでも楽しめる
奥入瀬渓流は、いつ訪れてもシーズンごとに違った景色を見せてくれる場所で、その季節ならではの体験が楽しめます。特に、季節によって全く違う色彩豊かな景観が広がります。
渓流の大自然を歩くネイチャーウォーク、森林浴、サイクリング、紅葉鑑賞、スノーシューで冬の森散歩、水源である十和田湖畔ではキャンプやカヌーなどのアウトドア体験など、季節ごとのアクティビティも充実しています。
特に人気なのは秋の紅葉シーズン(10月中旬~11月上旬頃)ですが、いつ行っても奥入瀬らしい景色や自然を満喫するアクティビティが体験できます。そのため、「おすすめの時季は一年中!」と言ってもいいくらいです。
雨が降ったら台無し…にならないのも、奥入瀬のいいところです。雨が降って濡れている草木はより一層美しく、まさに恵みの雨。特に、雨が降った後の苔は色も鮮やかで、光り輝いています。
温泉×自然×グルメと、日本の癒し旅の要素が揃っている
日本の旅で体験したいもののひとつは温泉です。奥入瀬エリアにある奥入瀬渓流温泉には、温泉を楽しめる宿が数軒あります。渓流を楽しみながらゆったりとお湯に浸かるのは極上のひと時。宿をはじめ、周辺のレストランやカフェでは、青森の名産品をたっぷり使ったご当地グルメが楽しめます。
季節ごとに体験したい、奥入瀬渓流バケットリスト
そんな奥入瀬で季節ごとにぜひ体験しておきたい「奥入瀬渓流バケットリスト」をご紹介します。
①苔をたっぷり楽しみながら歩く“苔さんぽ”
「苔さんぽ」は、専門ガイドさんの案内で奥入瀬渓流に欠かせない「苔」をたっぷり存分に楽しむツアーです。ルーペを使って、生息するさまざまな苔をじっくり観察していきます。
今回は、星野リゾート 奥入瀬渓流ホテルの「苔さんぽ」ツアーに参加しました。ネイチャーガイド・伊藤さんの案内で、バスで「雲井の滝」まで移動し、そこから約2時間、ゆっくりじっくり苔を観察しながら散歩します。
苔さんぽに欠かせないルーペは、無料で貸してくれました。
また、今回はスマートフォン用のマクロレンズも貸していただき、被写体に近づいて大きく写すことができるので、いつもは撮れない水滴がついた細かい様子も撮影できました。
奥入瀬渓流には300種類以上の苔が生息しているそうで、まさに苔の聖地!土の上だけでなく、石や木の幹、ロープや看板などあらゆるところに苔が生えている自然環境の生命力に圧倒されます。
一見すべて同じように見えますが、大間違い!一つひとつ全く違っていて、色々な種類の苔が生えています。また同じ種類でも、生えている場所によっても色味や質感がまったく違っていて、とても奥深い世界なのです。
コケと木々が織りなす奥入瀬の景色は、まさに天然のアート作品のよう。
「私たちは、奥入瀬渓流全体を『野外ミュージアム』と捉えているんです。今ある植物や見えている景色も1週間来ないだけでなくなってしまうものもあり、ガラっと変わります。大きな木々も数年あるいは数ヶ月で朽ちてしまうので、いつ来ても違う姿が見られるんですよ」とガイドの伊藤さん。
渓流を楽しみながら、2時間程たっぷりと苔と向き合いながら歩きます。
- おすすめの季節<春、夏、秋>
日本の5月末~7月初旬はちょうど「梅雨」で雨が降りやすい時季で、奥入瀬のある青森県は例年6月中旬からの約1か月間が梅雨にあたります。ただし雨が降ると、むしろ生き生きして、水滴できらめく美しい姿が見られるのが苔の醍醐味。雨でも楽しめるツアーです。 - 参加方法
「苔さんぽ」ツアーを催行している団体はいくつかあり、時間や内容は異なります。
▶株式会社ESARIO(NPO法人奥入瀬自然観光資源研究会 内)
▶星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル ※宿泊者のみ
②自然の中を駆け抜けるE-BIKEでのサイクリング
自分で歩く散歩も良いですが、奥入瀬渓流の自然を間近に感じながら、自力で移動しながら楽しめるのが、サイクリングです。全長14kmの渓流沿いは、滝や水の流れが特に美しいポイントなど所々に立ち止まりたいスポットがあります。
また、渓流のスタート地点である十和田湖畔の子ノ口(ねのくち)からゴール地点にあたる焼山地区までは、約200mの標高差があります。途中に坂のアップダウンもあるので、パワフルで急こう配も走行しやすい電動アシスト付きのスポーツバイクの「E-BIKE」がおすすめです。
今回利用したのは、星野リゾート 奥入瀬渓流ホテルの「E-BIKE」レンタルの2時間コース。基本的な使い方、乗る際の注意事項をしっかり聞いておきましょう。
星野リゾート 奥入瀬渓流ホテルは奥入瀬渓流館の隣にあり、そこから約2時間のサイクリングでは、渓流のほぼ中間地点の「雲井の滝」あたりまで往復できます。
大型トラックやバスが頻繁に通る国道(車道)を走るので、運転には十分注意が必要です。ヘルメットを装着の上、必ず車道の左側に寄って走行し、スピードは出し過ぎないよう進んでいきます。
そこさえしっかり守れば、自転車で風を切りながら走る爽快感は抜群!特に初夏の時季は、「本当に気持ちが良い!」のひと言です。好きなタイミングで自転車を停めて渓流沿いに降りて、写真を撮ったりすることもできます。
適宜、途中の休憩所で休んで、少し自転車を停めて歩いて散策するなど、自分のペースで回れるのは身軽な自転車だからこそ。
奥入瀬渓流は、上流域が滝のエリア、中流域が渓流のエリア、下流域が森のエリアと、水の流れや自然の雰囲気、景観が変化に豊んでいます。そんな景色の変化を肌で感じられるのもE-BIKEの魅力です。
- おすすめの季節<春、夏、秋>
春、夏は生命力にあふれた緑がいっぱいで、エネルギーチャージができます。暑い夏に風を切って水の音を聞きながら走れば、最高にリフレッシュできます。秋は黄色や赤に色づいた木々に囲まれながら、場所によって微妙に移り変わる紅葉を見ながら走ることができます。絵画の中に飛び込んでしまったかのような没入感も味わえるはずです。ただし、青森の秋は早く、さらに自転車で走っていると体感温度はより寒く感じられます。風を通さない服装で、防寒はしっかりしておきましょう。 - 参加方法
「E-BIKE」などのレンタサイクルを取り扱っている団体はいくつかあり、時間や料金、内容は異なります。
▶奥入瀬湧水館
▶星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル ※宿泊者のみ
③絶景を見ながら味わうローカルグルメ
旅先で欠かせないのは、現地の名産品やその土地限定のメニューを味わうグルメです。
奥入瀬渓流散策のスタート地点、奥入瀬渓流館には、青森のご当地グルメをはじめ、奥入瀬でしか味わえないものが販売されています。
青森の名産品と言えば、まずはリンゴ。日本では約2000種類のリンゴが栽培されており、そのうち青森では約40種類が市場に出回っています。
奥入瀬渓流館にある青森りんごの専門店「à la ringo(あら、りんご。)」(青森奥入瀬渓流店)には、アップルパイやフィナンシェ、ジェラートなどのスイーツや、リンゴの品種ごとのジュースなど、珍しいものがたくさんあります。
こちらにはイートインのカフェも併設されています。
りんごパイ(380円/税込)は、りんごそのものの味がしっかりわかる甘すぎない味が特徴。口当たりが軽く、朝ごはん後のデザートとして、散策のスタートにぴったりです。
一緒に合わせたいのが、「奥入瀬サイダー(480円/税込)」※夏季限定です。青森県産100%のりんごゼリーと鮮やかできれいなブルーが目を引くサイダーにたっぷりのホイップクリームが入った、オリジナルメニューです。
そして散策中の水分補給におすすめしたいのが、リンゴジュース。「あら、りんご。」の「青森りんごの品種別ジュース」は種類ごとに甘みや酸味のバランスがまったく違うので、ぜひ飲み比べてみてください。すっぱい味が大好きな私としては、「紅の夢」がイチオシです。
そして焼き菓子も欠かせません。品種別アップルパイのひとつ「紅玉」(480円/税込)はアップルパイにぴったりの品種を使って、りんごの風味や食感がしっかりして甘みと酸味のバランスが良く、渓流散策の休憩にぴったりです。
形がかわいらしいりんごパウンドケーキは、りんごとバターがたっぷり。夏季限定のカシス味です(380円/税込)。おいしい空気とともにペロっといただきました。
その他、奥入瀬渓流館内には、奥入瀬ビールや奥入瀬ビールカレーなど、お土産にしたいグルメが販売されています。
お隣の奥入瀬湧水館では、奥入瀬の苔をイメージした見た目がユニークな「こけソフト」もあります。こちらも散策前にぴったりです。
※商品のラインナップ、金額は2024年6月現在の情報です。
- おすすめの季節 <春、夏、秋、冬>
散策やツアーの休憩中、エネルギー&水分補給にぴったりのりんごグルメを用意しておきましょう。またゴミは必ず持ち帰ってくるのが鉄則です。 - 購入できる場所
▶奥入瀬渓流館
▶あら、りんご。青森奥入瀬渓流店(奥入瀬渓流館内)
▶奥入瀬湧水館
④<春・夏・秋・冬>自然の醍醐味を味わうネイチャーウォーク
四季折々に姿を変えて違った魅力を見せてくる奥入瀬。その真骨頂はやはり、専門ガイドさんに案内してもらいながら、その時々の見どころを散策するネイチャーウォークです。
ただ眺めて歩くだけ…でも素晴らしいですが、せっかくならもう一歩踏み込んだ体験をしたいところ。奥入瀬独特の植物や地形など、専門知識のあるガイドさんに説明してもらいながら歩いてみると、また違った面白さや発見があります。
春は鮮やかな若々しい萌黄色に染まった奥入瀬が魅力。
この時季は苔の花が咲くタイミングで、お花見ならぬ「お苔見」を楽しめるのも春ならではの体験です。
夏は太陽の強い日差しに照らされたコントラストの強い深い緑が美しい季節。
秋は何と言っても紅葉。10月中旬〜11月上旬が見頃で、奥入瀬全体が赤や黄色に染まった様子は圧巻です。
冬は一面に雪が降り積もった幻想的な雪景色。12月〜3月中旬は、奥入瀬渓流の滝や崖を伝う水が凍る「氷瀑」を見ることができます。
特に冬は、スノーシューをはいて、動物の足跡や普段は歩けない遊歩道以外の場所を散策する、雪の中のネイチャーウォークがおすすめ。土地勘がなく、自然の厳しさを知らない自分たちだけで散策するのは少し不安ですが、現場の様子を見ながらガイドさんが安全なルートを案内してくれるので安心です。
- 参加方法
「ネイチャーウォーク」を主催している団体はいくつかあり、時期によって様々なプランを企画しています。また、時間や料金も異なるため、最新情報は各団体の情報を確認してください。
▶株式会社ESARIO(NPO法人奥入瀬自然観光資源研究会 内)
▶星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル ※宿泊者のみ
▶NPO法人十和田奥入瀬郷づくり大学
四季ごとに魅力が尽きない、奥入瀬渓流
日本の渓谷の中でも、独自の魅力と美しさを持つ奥入瀬渓流。散策しやすさ、どの季節、どんな天候でも楽しめて、また違った景色を見せてくれるので、何度でも訪れる価値があります。日本に来たら、ぜひ奥入瀬に行って、日本の自然の豊かさを感じ取ってみてくださいね。
【取材協力】星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル
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住所
034-0301 青森県 十和田市奥瀬栃久保231
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最寄駅
七戸十和田 駅 (東北新幹線 / 北海道新幹線)
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住所
034-0301 青森県 十和田市奥瀬栃久保231
旅ライター×海外ツアーコンダクター。社会人向け教育コンテンツの企画開発・編集担当として11年従事。プライベートでは学生時代から旅に魅了され、これまで世界約50カ国150都市以上をめぐってきた大の旅好き。世界中、日本中のグルメを味わい、自然を感じ、世界遺産や歴史的建築を見て、温泉めぐりをするのが生きがい。そんな旅好きが高じて、会社員から旅ライター×海外添乗員へと転身。現在は、年間100日以上海外を飛び回りながら、旅ライターとしても活動。旅の楽しさ、日本の魅力、世界の多様な価値観をより多くの人に広めるべく、インバウンドの添乗や旅ライターの取材等で、日本各地を訪れて情報発信をしている。
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