紀淡海峡に面し、美しい海岸線が続く和歌山市。なかでも、和歌山市の中心を流れる一級河川・紀の川の北側、大阪との境にある漁師町・加太は、古く万葉の時代から歌に詠まれてきた景勝地です。今回は、加太の魅力を味わいつくすべく、街歩きを楽しみ、漁港のポップアップレストランでイタリアンシェフによる加太の海の幸BBQを味わう旅へ。休日を楽しむファミリーに密着し、新しい加太の魅力を探りました。
加太満喫の旅は、「めでたい電車」が人気の駅からスタート
さまざまな愛らしい魚のデザインがラッピングされた「めでたい電車」が走る、加太さかな線(南海電鉄加太線)。その終着駅、加太駅から旅は始まります。
子どもたちに今日の楽しみを尋ねると、すかさず「BBQ!」と元気な答え。ご両親は「ポップアップレストランのBBQは想像がつかないので楽しみ」と期待で心を躍らせている様子です。
街歩きのガイド役、「加太語り部くらぶ」の語り部さんと合流し、加太の街の説明を受けます。加太は万葉の時代から「潟見の浦(かたみのうら)」と呼ばれてきた景勝地。修験道の開祖・役行者(えんのぎょうじゃ)が修行を積んだ地でもあり、たくさんの寺院や神社が残る、漁業と観光が両立している街です。
それでは、加太駅からポップアップレストランが出店している「加太おさかな創庫」まで、のんびり歩いて散策しましょう。
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加太語り部くらぶ
- 住所 和歌山市加太2201-134
- 電話 090-4277-7578
寺社が並ぶ古い街並みを抜けて海へ向かう
駅から歩き出した一行が最初に足を止めたのは、外観がモダンな「旧加太警察」。
警察署として使われていましたが、警察が移転後は民宿などに活用され、現在は個人所有の住宅のため外観のみ見学できます。
昔の面影を残す路地を海に向かって歩きます。和歌山市出身の参加者も「加太には来たことがあったけれど、こんな小道を歩くのは初めて」と驚いた様子です。車で加太を訪れるとこのような路地は通らないため、歩いて散策するからこそ見られる風景です。
駅からほど近い「加太春日神社」に到着。国指定の重要文化財である本殿は、ほとんど霧囲いで覆われているので中から見せていただきました。
本殿の構造を始め各所に施された彫刻が雄大豪壮で、これらは桃山時代の特徴をよく表しているものだと教えていただきました。
向拝(こうはい)の彫刻は表と裏で文様が違う透かし彫りだそうです。こちらは雲に龍。伊勢エビがよく獲れたことから漁師町らしくエビの文様がある面もあります。その謂れから5月の第3土曜日に行われる「例大祭渡御祭」は「えび祭り」と呼ばれ、氏子総出で大漁と海の安全を祈願するそうです。古くからの漁師町の伝統を今も引き継いでいます。
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加太春日神社
- 住所 和歌山県和歌山市加太1343
- 電話 073-459-0368
[社務所]9:00~17:00
路地を抜けると、加太の海沿いにある「淡嶋(あわしま)神社」に到着です。この神社は毎年3月3日に、お雛様を白木の船に乗せて海に流す「雛流し」の神事で知られる場所。
この神社までくれば海は目前。神社からはジブリの世界観が感じられると有名になった無人島・友ヶ島が一望できます。
淡嶋神社は薬の神様とされる「少彦名命(すくなひこなのみこと)」を祭神としており、特に女性の病気回復や安産・子授けに霊験あらたかな神社として、信仰を集めています。
境内のそばには売店があり、干物や貝、ひじきなど、加太の海の幸がずらり。お土産を求めて、多くの人が立ち寄ります。この日は加太の海苔を購入しました。
駅から淡嶋神社まではゆっくり歩いて約1時間。語り部さんのお話を聞いているとあっという間でした。「海の街らしい雰囲気を感じられる散策で良かったです。港に多くの船があり、漁師さんが海に出て漁をされていらっしゃるのを見て、自然の恵みのありがたみをより感じました。」とお父さんがにこやかに話してくれました。
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淡嶋神社
- 住所 和歌山県和歌山市加太118
- 電話 073-459-0043
[社務所]9:00~17:00
イタリアン・フュージョンの息吹薫る海鮮BBQコース
語り部さんと別れ、淡嶋神社向かいにある「加太おさかな創庫」へ。ポップアップレストランが開店し、シェフが到着を待ってくれていました。
海に面している「加太おさかな創庫」。普段はイベント会場として地元の方々に愛されている場所です。
海風を受けながら歩いてお腹を空かせたファミリーを迎えてくれたのは、山田直良(ただよし)シェフとソムリエの旅田裕士さんです。
大阪市内でイタリアンレストラン「RiVi(リヴィ)」を営む山田シェフが腕によりをかけて、加太の海の幸を使った海鮮BBQでコースを仕立ててくれます。
漁港の倉庫の中に突然現れたポップアップレストラン。シェフの背後には大漁旗が飾られ、BBQコンロや焚火がワイルドさを演出しています。一方、クロスで美しくしつらえられたテーブルや、整然と並ぶワイングラスは本当にレストランにいるかのよう。
まずはフュージョンの新風が感じられる、凝った前菜からコースがスタート。
流木のような繊細なオブジェにあしらわれて登場したのは「生ウニとシブレットのチップ」です。「加太は生ウニもおいしいのでそのまま1口でどうぞ」とシェフの説明に、「贅沢~!」と声が揃います。
〆サバは魚醤を効かせたマリネに。周囲には大根のピクルスを型抜きし、カラフルな魚影をあしらって遊び心を表現しています。シェフの心意気でここが海のそばであることを思い出します。
加太で獲れたばかりのひじきはフォンドボーと一緒に煮込み、ペースト状にしてパテ型に。クリームチーズを挟むことで、なめらかに味のバランスをとった1品です。ひじきが発酵したフルーツのような濃厚な味わいに仕上がっています。
こちらは、加太で水揚げされた舌ビラメにベシャメルソースとマカロニを合わせ、香草を効かせたパン粉をふって。グラタンが冷めないよう、ヒノキの葉を入れたお湯で湯煎して保温しています。愛らしくあしらわれた花は食べられるエディブルフラワーです。
和歌山市産のシラスをすり身にして焼き上げたクネルは「フランスのさつま揚げのようなもの」とシェフ。ふんわりと燻製の香をまとうよう、器の中にスモークを焚き込めてある、マジックのような1皿です。
ひじきやシラスなどの日常的な素材が、美しく芸術的な一皿となる様子を目の当たりにし、新鮮な驚きに酔いしれた一行。次は何が出てくるのだろう、とメニュー表とシェフの手元を見比べ、ワクワクした気持ちが止まりません。
ここからが本番!味わったことのないBBQメニューが目白押し
いよいよメインのBBQ。思い浮かべていたみんなで囲うスタイルとは一線を画した、スペシャルなBBQです!グリルでは着々と海の幸が焼き上げられ、香ばしい匂いが前菜で整った胃袋をさらに刺激してきます。
メインのBBQは、イタリアンなソースでいただきます。真ん中の黄色のソースは、ノイリー酒と生クリームなどを煮詰めた「ソースノイリープラット」。まろやかで魚介類との相性抜群です。緑色のソースはイタリアンパセリとアンチョビなどで作った「サルサヴェルデ」で、味に爽やかな変化を付けてくれます。
「エビが香ばしいね」「剥いてくれているから、そのまま食べられる」と、いつにない優雅なBBQに感心しきりのファミリー。「BBQといっても今日はビールではなくワインだね」と、イタリアンなソースでいただくBBQに、ソムリエの旅田さんのおすすめの和歌山産白ワインがすすみます。
加太と目と鼻の先にある友ヶ島周辺ではマダイがよく獲れ、年間を通して水揚げされます。この日は新鮮な大ぶりのマダイがテーブルに登場。さばいたタイを豪快に串焼きにし、イタリアンのエッセンスを効かせた温かい鍋メニューに仕上げてくれました。
タイと野菜のだしが優しく深いハーモニーを奏でるイタリアン鍋が完成。野菜はイタリアのサヴォイキャベツやシイタケ、ジャガイモなど。タイの串焼きには塩とわさびが添えられ、味わい方は自由自在。ふっくらとした身に上品な脂がのっていて、どんどんお箸が進みます。
〆にはクリーミーなタイだしのリゾットを。こちらにも生ウニをたっぷり載せていただきました。こんなに海の幸を贅沢に味わえるのは、漁港町ならではですね。
ここまでのコース料理でお腹はいっぱいです。それでもデザートは別腹!デザートは和歌山の「ゆらわせみかん」を使ったパウンドケーキ。BBQの場にふさわしく、ワイルドにいこった炭を押し当てて、キャラメリゼしていきます。甘い香りの煙があがる瞬間を見届けようと、皆がシェフの周りに集まりました。
爽やかな由良早生ミカンの香りとほろ苦いキャラメリゼの風味が、華やかに広がるパウンドケーキ。幸せな一口です。
山田シェフの感性と加太の食材が出会い、作り上げられたイノベーティブなコースに、こんな新しいBBQの形があったとはと、感嘆と満足のため息をつくファミリーでした。
メニュー表を持ち帰るための封筒にはその日の消印が入っていて、クッキーが入れられているのはRiVi特製の巾着袋。一つひとつの心配りから特別な日を感じます。家に帰ってもおいしく楽しかった思い出話に花が咲きそうです。
スペシャルな1日を終え、「和歌山市の魅力、特に加太の魅力をしっかり味わえて感動した」と振り返ります。「訪れたその土地のことを知ってから、土地ならではのグルメをいただくのは、こんなに愛着がわくものなのだなと思いました」と皆で顔を合わせてしみじみ。
「手の込んだコースをいただいて非日常を堪能しましたし、いい食育の機会になりました」と大満喫した様子のお母さんは眩しい笑顔です。子どもたちは「タイが大きかった!」と、海辺のBBQの豪快さが印象に残った様子です。「今日はせっかくだから温泉に入って帰ろうか」「次は釣りをしてみたいな」と、続く和歌山旅への期待が膨らんでいました。
街歩きと特別なグルメで加太を味わいつくした今回の旅。素材を活かしながらも斬新さを感じさせた料理のスタイルと同じく、新しい加太の魅力に触れた1日となりました。
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RiVi(リヴィ)
- 住所 大阪府大阪市西区京町堀1-16-28 W京町堀 1F
[営業時間] 12:00~15:00, 17:00~23:00 ※完全予約制(ご予約は必ず前日までにご連絡ください)
[定休日] 不定休
[電話]050-5870-4434(予約専用)、06-6136-6830(問い合わせ)
本ツアーは「令和3年度 観光庁 地域の観光資源の磨き上げを通じた域内連携促進に向けた実証事業」の一環として実施されたモニターツアーになります。
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。
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※価格やメニュー内容は変更になる場合があります。
※特記以外すべて税込み価格です。
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