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世界的ネイチャーガイドが語る、北海道旅行で自然や文化体験がおすすめの理由

世界的ネイチャーガイドが語る、北海道旅行で自然や文化体験がおすすめの理由

更新日: 2021/05/11

世界中の観光客を魅了してやまない北海道。札幌小樽などでメジャーな観光スポットを巡ったり、トレンドのグルメを食べ歩いたりするのが、北海道旅行の定番ではないでしょうか。しかし、実は北海道には、自然文化体験ができる「アドベンチャートラベル」が目当ての観光客も毎年たくさん訪れています。北海道が世界に誇る豊かな自然環境やアイヌ文化について、その魅力や楽しみ方をネイチャーガイドとして世界で活躍するマーク・ブラジル博士に聞いてきましたのでご紹介します。

目次
  1. 北海道を訪れたら、豊かな自然や文化に触れてみよう
  2. イギリス出身のネイチャーガイド 、マーク・ブラジル博士にインタビュー
  3. マーク・ブラジル博士が考える、北海道の自然の魅力は?
  4. マーク・ブラジル博士が思う北海道の文化的な魅力は?
  5. 北海道はアドベンチャートラベルに最適の場所!その理由は?
  6. 北海道ではどんな体験がおすすめ?
  7. 北海道のアドベンチャートラベル推進の取り組み
  8. 北海道でこんな体験ができる!おすすめのアクティビティ&ツアー6選

北海道を訪れたら、豊かな自然や文化に触れてみよう

北海道を訪れたら、豊かな自然や文化に触れてみよう

自然の中でアクティビティを楽しんだり、異文化に触れたりする体験型の旅行は「アドベンチャートラベル」と呼ばれています。

日本政府観光局によれば、「自然とのふれあい」「文化交流」「フィジカルなアクティビティ」のうち2つ以上の要素を持つ旅行がアドベンチャートラベルと定義されています。レジャーとしての楽しみの要素が多いこと、また旅行者自身が内面の変化や視野の拡大を求めるため長期滞在する傾向にあるのが特徴です。

都市観光に比べて、地域への経済効果も大きいことから世界中の観光関連事業が注目しており、北海道においてもアドベンチャートラベルを楽しめる環境が整いつつあります。北海道の自然や文化が具体的にどう魅力的なのか、そして実際にどんな体験ができるのかについて、イギリス出身で、現在は北海道で暮らす世界的なネイチャーガイドの、マーク・ブラジル博士にお話を聞きました。

イギリス出身のネイチャーガイド 、マーク・ブラジル博士にインタビュー

オフィスで本を並べるマーク (c) Mark Brazil
オフィスで本を並べるマーク (c) Mark Brazil

道東・弟子屈町在住のマーク・ブラジル博士は、数々の出版実績のある鳥類学者であり、また世界各地でエコツアーを率いるエクスペディション・リーダーでもあります。母国イギリスで、生物学、英文学、心理学の学位を取得し、自然をテーマにしたテレビ番組のアドバイザー、大学教授として活動。その後、フリーランスのレクチャラー、作家として活動を続けています。

また、自身の科学的興味をもとに、自然に関する著述もしています。1970年代から雑誌や新聞などへの寄稿を始め、現在までに数えきれない数の記事と10冊以上の本を出版しています。

ブラジル博士は1980年にエコツアーのリーダーとしてキャリアをスタートさせ、1998年からエクスぺディションクルーズの業界に関わるようになりました。2007年以降は特に自然探検型ツアーを企画する旅行会社のコンサルタント、ネイチャーガイド、レクチャラーとして活動しています。また、その経験を生かし、アドベンチャートラベルのアクティビティの評価者としても活躍しています。

今回は、こうした豊富なご経験をもとに、北海道の自然や文化の魅力を語っていただきました。

マーク・ブラジル博士が考える、北海道の自然の魅力は?

「北海道は四季折々のすばらしい景観や、野生生物の多様さが魅力です。私は1980年に初来日して以降、東北から南西諸島の端まで日本中のあらゆる地を巡りましたが、中でも北海道は野生的な自然に溢れていて、自然が好きな人には理想的な場所といえます」

支笏湖の近くでバードウォッチング (c) Mark Brazil
支笏湖の近くでバードウォッチング (c) Mark Brazil

「北海道では、比較的簡単に野生生物に出合うことができます。私が住む道東には、冬になるとオオハクチョウやオオワシが越冬のためにシベリアからやってきます。それらの素晴らしい姿が大群で見られる場所は世界的にも限られているため、冬の道東はとても貴重な場所なのです。また、タンチョウやシマフクロウのように、日本では北海道だけに生息する野生生物もいます。世界各国を旅してきましたが、北海道の生物の多様性は、スイスやニュージーランドをも越えていると感じます」

知床半島で流氷をバックにゲストと記念撮影 (c) Mark Brazil
知床半島で流氷をバックにゲストと記念撮影 (c) Mark Brazil

「さらに、流氷などの珍しい自然現象が見られることも北海道の魅力です。ほとんどの国では流氷を見ることができないため、初めて見る人はそのダイナミックさに圧倒されることでしょう。実際に英国から来た私もその一人でした。北海道は自然に恵まれた、すばらしい場所なのです」

マーク・ブラジル博士が思う北海道の文化的な魅力は?

「やはりアイヌでしょう。アイヌは北海道の歴史、ひいては日本の歴史を語る上で欠かせない存在です。私が来日した1998年にはアイヌについて語られることはほとんどなく、学ぶこともできませんでした。しかし、ここ20年ほどの間に情報が増え、文化に触れられる機会や施設も多くなりました。アイヌ固有の文化はとても魅力的です。なかでも外国人が受け入れやすく、魅力を感じやすいのは、音楽と踊りでしょう。

私はアイヌ文化の専門家ではありませんが、バードウォッチングがメインのツアーを率いる際には、充実したアイヌ文化の展示がある、釧路市立博物館に皆さまをお連れしています。鳥の観察とアイヌ文化は全く別物のように思われるかもしれませんが、北海道の自然とアイヌとの関わりについて学ぶことは、双方についてより深く知るための良い機会になると思います」

北海道はアドベンチャートラベルに最適の場所!その理由は?

「活火山も含めた山々、川や湖、そして海。北海道にはこれらの全てがあり、アクセスも比較的容易です。そのため、体験できるアクティビティも驚くほど多様です」

釧路川でカヌー体験 (c) Mark Brazil
釧路川でカヌー体験 (c) Mark Brazil

「暖かい季節には、川や湖などでカヌーやカヤック、フィッシングなどが体験できます。小型飛行機やヘリコプター、熱気球に乗って空からの大パノラマを楽しむのもおすすめです。冬季のアクティビティは、スキーやスノーボードなどが代表的ですが、流氷の上で遊べるオプションがあるというのは北海道ならでは。イギリスやニュージーランドでもいくつかのアクティビティは体験できますが、全てが体験できる北海道は、世界的に見ても稀有な場所といえるでしょう。

私が暮らす弟子屈町は、その行政面積の約65%が国立公園に指定され、美しい山々と湖がすぐそばにあります。水の透明度が世界2位の摩周湖は、冬になるとより一層神秘的な雰囲気に。スノーシューを付けての湖周りの散策は、最高に楽しいですよ」

冬の摩周湖
冬の摩周湖

「また、都市と自然の距離が近いことも、北海道のアドベンチャートラベルの質を高める要素です。北海道で最も大きな都市、札幌であっても、市街地から車で1時間も走れば、山や畑が広がるエリアに到達できます。また北海道には12の空港があり、秘境や離島にも行きやすい環境が整っています。都市と自然間のアクセスの良さは、大きな魅力です」

「欧米人、特にヨーロッパの人々は、年に1〜2回の長期休暇を取ることが多いのですが、希望の時期に休暇を取れるとは限らないため、季節を狙った旅行は難しいといえます。しかし、北海道には春夏秋冬それぞれに楽しみがあります。一度訪れたら“次は違う季節に来てみたい”と思うはずです。実際、冬に訪れた多くのお客様は“夏の風景も見てみたい”と言っていました。どのシーズンに来ても、その時々に楽しめる風景やアクティビティがあることが、北海道の強みだと思います」

北海道ではどんな体験がおすすめ?

鶴居村でバードウォッチングとデジスコを楽しむ (c) Mark Brazil
鶴居村でバードウォッチングとデジスコを楽しむ (c) Mark Brazil

自然体験であれば、ネイチャーウォッチングでしょう。冬はオオワシなどのかなり稀少な鳥が見られます。オオワシはロシアで繁殖していますが、広大なロシアでは見ることが非常に難しい。高い確率で出合える冬の北海道は、絶好の機会であるため、世界中から観光客がやってきます。もちろん鳥以外の野生生物もたくさんいます。羅臼や網走の近海を走るネイチャークルーズでは、クジラやイルカに出合えます。

ちなみに最近の私のお気に入りは、阿寒摩周国立公園内にある“白湯山(はくとうさん)”への登山です。白湯山は地熱が高く、アイヌ語で“ボッケ”といわれる泥火山や、地面から湯気が立ち上る光景が見られます。頂上からの景色もすばらしいです」

白湯山から立ち昇る湯気 (c) Mark Brazil
白湯山から立ち昇る湯気 (c) Mark Brazil

「文化に興味のある方は、博物館や資料館などに行くのがおすすめです。網走の北方民族博物館には、アイヌと他の民族を比較した、充実した展示があります。旭川にある川村カ子ト(かねと)アイヌ記念館や、昨年オープンした白老町のウポポイへ行くのも良いでしょう。

近年のトレンドは、マウンテンバイクやファットバイクで楽しむサイクリングツーリズムです。特に道東エリアは、サイクリングをしている旅行者が多いと感じます。車よりも小回りがきくことや自然環境にやさしいこと、そして何より風を切る爽快感を味わえることが、人気の理由です。また、初心者でも気軽に楽しめるSUP(Stand Up Paddleboard)も人気が出てきています。

北海道を訪れたら、ぜひたくさんの自然文化体験を楽しんでください」

北海道のアドベンチャートラベル推進の取り組み

北海道のアドベンチャートラベル推進の取り組み

北海道では、さまざまな自然体験やそれに付随する有意義な文化体験を通じて、観光客の方々にもっと北海道を満喫してもらうための取り組みも、行われています。

2021年9月には、世界各国のアドベンチャーツーリズムに関わる業界の方々が集結するアドベンチャートラベルワールドサミット(以下、ATWS)が北海道・札幌市で開催される予定です。ATWSはアドベンチャートラベルにおける世界最大の商談会で、年に一度、世界各地で開催されています。アジア初の開催ということもあり、先行して取り組んできた北海道、長野県沖縄県をはじめ、日本各地でアドベンチャートラベルに対する機運が高まっています。

ATWSでは、開催に先駆けて、参加者が開催地のアドベンチャートラベルを実際に楽しむための、プレサミットアドベンチャーと呼ばれる4〜5泊程度の体験型コースが準備されることが通例です。今回は日本全国にコースが設定されますが、もちろん北海道でもその大きな役割を担う予定です。

また、ATWSの公式ツアー造成やアドベンチャートラベル・ガイド育成事業などを通して、世界基準のアドベンチャートラベルの基盤づくりに取り組んで来た、公益社団法人 北海道観光振興機構は、北海道内のアドベンチャー観光情報を発信するポータルサイト「Best of Hokkaido NATURE GUIDE」を運営しています。

ウェブサイトには、アクセス情報や道内の交通機関情報、アクティビティ、グルメ、温泉情報などが満載。旅行日程の組み立てに役立ちます。言語は日本語、英語、ドイツ語に切り替えることが可能です。SNSでの情報発信にも力を入れており、YouTube、Instagram、Facebookでは、北海道の美しい風景を写真や動画で楽しむことができます。さまざまな体験に出合うきっかけが見つかることでしょう。

北海道でこんな体験ができる!おすすめのアクティビティ&ツアー6選

(1)然別湖シーカヤック&東雲湖トレッキング(然別ネイチャーセンター)

北海道中央部・大雪山国立公園内にある然別湖(しかりべつこ)は、然別火山群の活動によって誕生した、北海道の湖の中で最も標高の高い自然湖です。ここではシーカヤック(カナディアンカヌー)を体験できます。シーカヤックとは2人1組となって湖の上へ漕ぎ出すアクティビティ。岸沿いを進みながら湖を泳ぐ魚や、周囲の植物・動物たちを楽しむことができます。

さらにこのツアーでは、東雲湖(しののめこ)周辺トレッキングも楽しめます。東雲湖は、同じく大雪山国立公園内にある、北海道三大秘湖のひとつに数えられている周囲約0.8キロメートルの小さな湖です。東雲湖へは歩いてしか行くことができず、また現在湿原化が進み将来なくなってしまうかもしれないといわれている貴重な場所。そんな秘境を目指して、起伏の少ない片道4キロメートルの登山道を歩く体験です。

所要時間:然別湖シーカヤック1時間30分、東雲湖トレッキング4時間
定員:然別湖シーカヤック1回10~50名、東雲湖トレッキング1回10~50名、
お問い合わせ:(電話番号)0156-69-8181(メールアドレス)lake804m@gmail.com

(2)白雲山ハイキング(然別ネイチャーセンター)

同じく大雪山国立公園内にある、大自然に囲まれた幻想的な然別湖を見渡せるのが白雲山ハイキングです。白雲山は然別湖のなかでも一番の展望台。頂上からは、然別湖のみならず、十勝平野、日高山脈、大雪山の山並みなどの絶景を望むことができます。

所要時間:4時間
定員: 1回10~50名、
お問い合わせ:(電話番号)0156-69-8181(メールアドレス)lake804m@gmail.com

(3)MTBサイクリング支笏湖1日ツアー(Giro21)

サイクリングで北海道の大自然を満喫したいなら、支笏湖1日ツアーはいかがでしょう? 千歳~支笏湖コースは約45~55km(高低差約300m)の距離を走るロングコースです。上りは清流千歳川沿いや白樺の森の中を通り、支笏湖へ。下りは紋別川沿い、あるいはママチ川沿いのオフロードの林道を走ります。体力に自信のある方はぜひチャレンジしてみてください!

もっと気軽にサイクリングを楽しみたい方には、走行距離約20~30km(高低差約100m)の休暇村~モーラップ湖畔~樽前山山麓コースもおすすめ。休暇村をスタートし、緑のトンネルを抜け湖畔のモーラップキャンプ場へ向かいます。途中で立ち寄る、樽前山や千歳川のビューポイントも見どころ。自然を楽しみながらゆったり走りたい方にぴったりです。

所要時間:(千歳~支笏湖コース)走行時間約5時間 (休暇村~モーラップ湖畔~樽前山山麓コース)走行時間約3時間
お問い合わせ:(電話番号)011-833-0199(メールアドレス)info@giro21.com

その他お問い合せは日本旅行北海道(011-208-0182)までご連絡ください。

(4)旭川嵐山&アイヌツアー(Adventure Hokkaido)

旭川にある川村カ子トアイヌ記念館と自然公園「嵐山」を巡るツアーです。日本遺産に認定された上川アイヌの歴史を、川村カ子トアイヌ記念館で学べるほか、伝統的なアイヌ料理のランチをいただきながら、ホストとの会話を通じてアイヌ文化を体験します。

また、アイヌの聖地である自然豊かな嵐山をハイキングしながら、アイヌの人々がどのように自然を崇拝していたかをガイドとともに学ぶことができます。新しい場所に訪れるだけでなく、その地域の文化や歴史的背景を深く学びたい旅行者にぴったりです。

所要時間:1日(昼食付)
最少催行人数:2人
お問い合わせ:info@adventure-hokkaido.com (Adventure Hokkaido)

(5)旭岳1日スノーシューツアー(Adventure Hokkaido)

標高2,291m、北海道で最も高い山として知られる冬の旭岳を1日かけて、スノーシューでハイキングするツアーです。12月下旬から5月上旬まで開催されています。

当日は旭岳ロープウェーに乗って姿見駅まで行き、経験豊富な地元ガイドとともにスノーシューを身に着けて雪の中をハイキングします。気温-20℃の白銀の世界に足を踏み入れたい好奇心の強い方はぜひチャレンジしてみて!

期間:1日(昼食付)
最少催行人数:2人
お問い合わせ:info@adventure-hokkaido.com (Adventure Hokkaido)

(6)道東8日間の野生生物とアドベンチャーツアー(Adventure Hokkaido)

釧路湿原、阿寒・摩周湖、知床の3つの国立公園がある道東エリアを巡り、豊かな大自然の中で生息する北海道のユニークな動植物を観察できる8日間のツアーです。

体験内容は、羅臼沖でクルーズに乗り、ヒグマ、海鳥などの動物を探索したり、屈斜路湖や釧路川をカヌーで下り、湿原の生態系を間近で観察したりと、盛りだくさん。また地元の漁師などその地域で暮らす人たちの料理を味わえます。

北海道でしか見られない野生生物に出合えるだけなく、自然とともに暮らす地域の人々の生活も体験できるのが魅力です。

期間:8日(朝食7回、昼食4回、夕食7回)
最少催行人数:4人
お問い合わせ:info@adventure-hokkaido.com (Adventure Hokkaido)

世界も注目する北海道のアドベンチャートラベル、その魅力が伝わりましたか? ぜひ実際に自然や文化など様々な体験に触れてみてくださいね。

Text by:みんなのことば舎
※本記事の情報は2021年3月時点のものです。最新の情報は公式サイト等でご確認ください。

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