
北海道でのドライブ旅行を計画しているのであれば、本ガイドは必読である。本稿は、日本全国47都道府県を自らの運転で旅してきた経験を持つ、旅行ライター兼フォトグラファーのヒデによって執筆されたものであり、北海道を車で巡るための専門的な知見、実用的な助言、旅程の例などを網羅している。
日本の最北に位置する北海道は、広大な大地、手つかずの自然、豊かな郷土料理、そして癒やしの温泉が織りなす魅力に満ちた地である。公共交通機関や観光客の混雑に縛られず、自由にその魅力を堪能する手段としては、レンタカーによる移動が最適である。
札幌(新千歳空港)、旭川、函館といった主要都市を起点とすれば、都市的利便性と人里離れた自然美との絶妙なバランスを味わうことができる。
長年にわたり数々のドライブ旅行を重ねてきたヒデの視点からは、車がなければアクセス困難な秘境や絶景ルートなども紹介されている。本ガイドでは、レンタカーの借り方、運転ルール、必見の観光地に至るまで、車旅に必要な情報が包括的に解説されており、初めての訪問者でも自信を持って旅に出発できる構成となっている。
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なぜ北海道はレンタカー旅に向いているのか

北海道の最大の特長は、圧倒的なスケール感にある。都市間の距離は長く、鉄道網も本州ほど発達していないため、自由な移動手段としてレンタカーは非常に有効だ。
直線が続く道を走るだけで、心が洗われるような感覚に包まれる。どこまでも広がる牧草地や、季節ごとに表情を変える山々、小さな漁港や地元の野菜直売所、ふと目に入る風景写真のような景色——それらすべてが、北海道ドライブの醍醐味である。
北海道は、海外での運転に慣れていない旅行者や、右ハンドル(左側通行)での運転に不安を感じている人にも理想的な場所である。北海道の道路は比較的広く、交通量も大都市に比べて少ない傾向にあり、市街地であっても駐車がしやすいのが特徴である。狭い道や混雑した状況でストレスを感じやすい東京や大阪とは異なり、北海道はより落ち着いた、初心者にも優しい運転環境を提供している。
さらに、車があれば有名観光地にとどまらず、自分だけの「発見」にも出会える。都市と自然、名所と知られざる風景が次々につながっていく。これこそが、北海道を自由に巡る旅の真髄である。
費用を抑えた旅:レンタカー利用が賢い選択である理由

札幌から函館までの往復は約18,000円、稚内までならおよそ23,000円と、個別に鉄道切符を購入すると高額になることがある。一方、5日間有効のJR北海道レールパスであれば、大人22,000円、子ども11,000円で利用できる。
しかし、カップルや少人数のグループであれば、レンタカーの方がよりコストパフォーマンスに優れる場合もある。コンパクトカーを5日間レンタルした場合、相場はおおよそ29,600円から46,000円程度である。
北海道ドライブ旅行の計画

北海道は東西に約500km、南北に約400kmと、旅行者の想像以上に広大である。限られた日程の中では、予定を詰め込みすぎてしまいがちだが、訪れるエリアを絞ることが、充実したドライブ旅行の鍵となる。
1回の旅では1つの地域に集中することで、毎日の長距離運転を避け、旅の質を高めることができる。
また、宿泊場所についても考慮が必要だ。札幌や函館のような都市部には宿泊施設が豊富にあるが、小さな町では選択肢が限られている場合があるため、事前の予約をおすすめする。
- 神威岬(積丹半島)
- ドライブ時間:約2時間(105km)。ドラマチックな海食崖と「積丹ブルー」の海のパノラマビュー。
- ニセコ
- ドライブ時間:約2時間(100km)。冬のパウダースノーと夏の多彩なアウトドアアクティビティで世界的に有名。
- 富良野
- 車で約2時間(115km)。夏は鮮やかなラベンダー畑で有名、冬はスキーが楽しめる。
- 美瑛
- 車で約2時間25分(165km)。魅惑的なパッチワークのような丘陵地帯と広大な草原は、写真家の楽園。
- 旭川
- 車で約1時間50分(140km)。北海道北部と中部地方の観光拠点として、北海道で2番目に大きな都市 として知られる。
- 網走
- 車で約4時間30分(335km)。冬季の流氷クルーズと歴史的な刑務所で知られる沿岸都市。

北海道ドライブ旅行のベストな時期

雄大な山々、鏡のように静かな湖、原始のままの森、そして壮大な海岸線。北海道には、人の手が加えられていない本物の自然との出会いが待っている。夏は爽やかな高原と涼風に包まれ、冬は雪景色の中を静かに走るドライブが可能だ。春は草花が芽吹き、秋は紅葉が山を彩る。四季折々の自然が、旅に深みを与えてくれる。

道沿いで美味しい地元料理を楽しむ

北海道は日本有数のグルメの宝庫であり、新鮮な魚介類、高品質な乳製品や農産物、和牛、ジンギスカン(ラム肉の焼き料理)、ラーメン、スイーツなどで知られている。沿岸部の小樽、函館、釧路、知床は魚介類の宝庫だ。一方、内陸部の十勝、帯広、富良野、美瑛は野菜、果物、乳製品で知られている。
道端のレストランや市場にふらっと立ち寄ってみれば、忘れられない驚きの料理に出会えるかもしれない。
温泉を楽しむ

登別、湯の川、定山渓、十勝川、ニセコなど、北海道には多様な泉質を持つ温泉地が点在する。
運転の疲れを癒すには、途中で立ち寄る日帰り湯や温泉宿での宿泊が最適だ。自然と一体となる露天風呂に身を委ねれば、心も体もリセットされる至福のひとときを過ごせる。
北海道でレンタカーを借りる:予約から出発まで

新千歳空港や函館空港などの主要空港では、複数のレンタカー会社が営業しているが、女満別空港のような小規模な空港では、選択肢が限られている場合がある。
北海道観光の拠点となる主要空港は、札幌近郊の新千歳空港、函館市郊外にある函館空港、そして美瑛や旭川に近い旭川空港の3つである。それぞれの空港から市街地へのアクセス方法もあらかじめ確認しておくとよい。
事前予約が基本

繁忙期には空港や駅の営業所でのレンタカーの空きが限られるため、レンタカー会社の公式ウェブサイトからのオンライン予約がおすすめだ。
オンライン予約では、レンタル期間や出発・返却場所、車種、保険オプションを選択でき、料金も事前に確認できる。主要なサイトの多くは英語、中国語(台湾)、韓国語に対応している。
北海道の主要レンタカー会社
・ニッポンレンタカー
・日産レンタカー
・ホンダレンタカー
・トヨタレンタカー
・タイムズカーレンタル
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北海道のレンタカー平均予算
北海道でコンパクトカーを24時間レンタルする場合の平均価格は9,900円から12,100円で、一般的な平均価格は約10,700円である。料金は会社によって若干異なり、繁忙期には値上がりする場合がある。SUVやバンなどの大型車は、1日あたり18,000円から30,000円以上かかるのが一般的だ。
必要な書類
日本で自動車を運転するには、18歳以上で、発行日から1年以内の国際運転免許証を所持し、かつ入国1年以内である必要がある
- 国際運転免許証(1949ジュネーブ条約加盟国発行のもの)
- 有効なパスポート
- クレジットカード(保証金・支払い用)
- 自国で有効な運転免許証(ドイツ、フランス、スイス、ベルギー、台湾、スロベニア、モナコのいずれかの国の有効な運転免許証を所持し、その日本語翻訳文を添えている場合は、国際運転免許証は不要である。翻訳文は、日本国内の各国大使館・領事館、または日本自動車連盟(JAF)で発行を受けることができる。)
保険とオプション

基本的な任意保険はレンタル料に含まれていることが多いが、免責補償(CDW)や営業補償(NOC)などの追加オプションにも加入しておくと安心だ。高速道路を多用する場合は、ETCカードの貸出を活用すると通行料金の支払いがスムーズになる。ETCカードを利用しない場合は、必ず係員のいる「一般」レーンを利用すること。
多くの車両にはカーナビが装備されているが、オプション扱いのケースもあるため事前に確認が必要である。外国語対応のナビが用意されていることを、予約時に問い合わせておくとよい。
ガソリン給油と返却

ほとんどのレンタカーでは、返却時に燃料タンクを満タンにしておく必要がある。近隣のガソリンスタンドの場所を出発前に把握しておくとスムーズだ。レンタカー会社は、最後に給油した時のレシートを求めることが多いので、保管しすぐに示せるようにしておこう。
また、市街地を離れるとガソリンスタンドの数は減少する傾向がある。北海道の長距離ドライブ旅行を始める際は、ガソリンを満タンにし、道中でも給油のチャンスがあればこまめに補給しておくべきである。
- 1. Mantan de onegai shimasu. / 満タンでお願いします。
- “Fill it up, please.”
— Use this when asking the attendant to fill the gas tank completely.
- 2. Regyurā de onegai shimasu. / レギュラーでお願いします。
- “Regular (gasoline), please.”
— Most rental cars use regular gasoline (レギュラー). Ask if unsure.
- 3. Ryōshūsho o kudasai. / 領収書をください。
- “Please give me a receipt.”
— Request this after refueling to show to the rental car company.
- 日本のガソリンスタンドでは、給油ノズルの色はおおむね統一されている。赤はレギュラーガソリン、黄はハイオク、緑は軽油を表す。給油の際は必ず表示を確認すること。
どの燃料を入れるべきか分からない場合は、レンタカー契約の書類フォルダーを確認するとよい。通常、正しい燃料の種類が明記されている。
ワンウェイシステムの活用
「ワンウェイシステム(乗り捨て)」を利用すれば、借りた営業所に戻る必要がなく別の場所に返却できるので、移動時間を節約できる。追加料金が発生するが、広大な北海道では非常に有効だ。
北海道での運転:安全な旅のための基本ルール

日本で運転する際、特に外国人旅行者は以下の点に留意する必要がある。
- 左側通行:日本では車両は左側を走行し、ハンドルは右側に付いている。特に曲がる際には注意が必要である。運転席が右側にあるため、中央分離帯も自分の右側に位置することになる。
- 路側帯は走行禁止:路側帯(歩道がない道路に設けられる白線の外側)は、歩行者や自転車用で車両は通行できない。
- 歩行者優先:横断歩道では歩行者を必ず優先する。信号のない場合も同様である。
- 安全運転の徹底:北海道には長く直線的な道路が多く、ついスピードを出したくなるが、速度取り締まりが頻繁に行われており、シカやキツネなどの野生動物が突然飛び出してくることによる事故も少なくない。常に制限速度を守り、注意を怠らず、動物注意の標識がある場所、特に郊外の地域では一層の警戒が必要である。
- 踏切での一時停止:踏切では必ず一時停止すること。これは厳格に取り締まられており、地元警察によって頻繁に監視されている。
- 飲酒運転の厳罰化:少量でも飲酒運転は法律で禁止されており、厳しく罰せられる。
- 携帯電話の使用禁止:運転中の通話やスマホ操作は厳しく禁止されており、ハンズフリー機器の使用がおすすめだ。
- 冬季運転の注意:雪や氷道には特に注意が必要。スノータイヤや4WD車の利用が望ましく、急ブレーキや急ハンドルは厳禁だ。雪道での運転に慣れていない場合は、旅行前に駐車場で車の運転を練習すること。
- 標識の意味は必ず理解:標識の意味を理解せずに運転する外国人ドライバーによる事故が増加中。標識の形や色は国によって異なるため、三角形・ひし形は警戒、赤枠の丸形は規制や禁止など、日本の道路標識の意味を事前に理解することが重要だ。詳しくはJapanese road signage hereを参照のこと。

道の駅とマップコード:スムーズな旅のための独特な仕組み
道の駅

北海道では長距離運転が一般的であるため、数時間ごとに休憩を取ることが重要である。道の駅はその休憩場所として最適であり、2025年6月時点で北海道内には129カ所が存在する。すべての道の駅で24時間利用可能な無料駐車場とトイレが整備されており、そのうち128カ所では無料Wi-Fiも利用可能である。
多くの道の駅には、地元の食材を使ったレストランや土産物店、観光案内所が併設されており、温泉施設や小規模な博物館が併設されているところもある。実際、84カ所の道の駅にはスタッフが常駐する案内所があり、旅のアドバイスや飲食店のおすすめ情報なども提供されている。
道の駅は、旅の途中でリフレッシュするだけでなく、その土地ならではの魅力を発見する良い機会となる。
マップコード
日本のカーナビで活躍する「マップコード」は、特定地点に割り当てられた数値情報である。住所が分かりづらい自然地や施設でも、マップコードを入力するだけで簡単に目的地を設定できる。
多くのレンタカー車両にこの機能が標準搭載されているため、言語の壁に煩わされることなく、安全で快適なドライブが実現できる。ただ、マップコードは数字で表現するので、誤って入力すると目的地とは全く別の場所へ誘導されてしまう可能性がある。
カーナビ上で目的地を指定したら必ず指定した目的地に誤りがないかを確認しよう。私は最近新しいところに行く場合、必ずマップコードを使用して行先を設定している。
緊急時の対応:必須の連絡先と手順

綿密な計画を立てていても、緊急事態は起こり得る。正しい手順と連絡先を知っておくことは、北海道で安全で安心なドライブ旅行をするために不可欠だ。
緊急サービス
緊急事態に備えて、日本には明確で効率的な緊急ダイヤル番号がある。
・警察: 事故、強盗、紛争など、警察の援助が必要な状況の場合は110番にダイヤルする。
・救急車、救助、または消防: 医療上の緊急事態、救助活動、または火災の場合は119番にダイヤルする。
外国人観光客にとって重要なサポート体制として、110番と119番の両方で利用できる多言語翻訳サービスがある。このサービスにより、発信者、通信指令員(または救急隊員/消防士)、通訳の間で三者通話が可能になり、危機的状況における正確なコミュニケーションが確保される。英語、中国語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語は24時間365日対応しており、平日の営業時間中にはその他の言語も利用できる。
ロードサイドアシスタンス(JAF)
車の故障や機械トラブルが発生した場合は、日本自動車連盟(JAF)ロードサービスが主な連絡先だ。電話番号は03-5730-0111(通話料がかかる)。JAFは14言語に対応した24時間365日無料の電話通訳サービスも提供している。オペレーターに必要な言語を伝えれば、通訳との三者間通話が確立される。
FIA(国際自動車連盟)、AIT(国際観光連盟)、AAA(アメリカ自動車協会)、CAA(カナダ自動車協会)など、JAFに加盟している海外の自動車クラブの会員である旅行者は、日本滞在中にJAFの特定のサービスを受けられる場合がある。サポートを依頼する際は、必ず会員証を提示すること。
旅行者がJAF提携の自動車保険に加入している場合は、保険会社にJAF会員であることを伝えること。JAF会員であることで、追加の優待サービスを受けられる場合がある。
北海道のおすすめドライブコース

北海道の多様な景観、地元の味覚、隠れた名所を自分のペースで巡るのに役立つ、おすすめのドライブコースをいくつか紹介する。
自分だけの北海道旅行を企画しよう

レンタカーで巡る北海道の旅は、単なる移動手段ではなく、「自由そのもの」である。自分の感性に従って行き先を決め、風景や人との出会いを重ねながら、自分だけの物語を紡いでいく旅となる。
決まったルートや時間に縛られることなく、都市と自然、食と温泉、過去と現在が交差するこの大地を、五感で堪能してほしい。それこそが、レンタカーだからこそ叶う、北海道旅の本質である。
ぜひ一度、自らのハンドルで、北の大地の扉を開いてみてほしい。
車で旅することが好きなWebライター&フォトグラファー。車で日本全国を2周し、47都道府県の主な観光地には実際に行ったことがある。得意分野は車旅の紹介で、実体験にもとづく旅程や観光地の紹介。車利用が前提なので、一般的にアクセスの難しい穴場も紹介する。Webライター歴は約6年で、TOEIC860点。
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