日本には、数多くのブランド肉があり、おいしい海の幸があり、高い食のクオリティを持つことは世界的に知られているが、お肉と魚の知名度に相反してなかなか認知されていないのが、それらに勝るとも劣らず優れた野菜だ。サラダなど副菜としてはもちろん、スープやお味噌汁の具材に、メインディッシュとして、デザートとして汎用されることも。日本料理になくてはならない10種の野菜を厳選してご紹介。
ネギ
恐らく日本の野菜で最も幅広く様々な料理に汎用されている野菜といえばネギだろう。ニラネギや他の海外産のネギと見た目も味も似通っているため混同しがちだが、日本のネギとはどれも別物。日本産のネギは長ネギや白ネギなど、味噌汁や麺料理等の薬味として用いられるほか、鍋料理などに欠かせない食材のひとつ。冬は鍋など煮込み料理の需要が高まるため、特に人気が集まるが、基本的には季節を問わず、料理に一花添える縁の下の力持ちとして重宝される野菜と言って過言ではない。
かぼちゃ
英語に訳すと「パンプキン」となるが、アメリカでハロウィンに使用されるパンプキンとは異なり、味わいも少しかぼちゃの方が甘みが強い。皮が固く深緑の色合いが特徴的で。中を開けると鮮やかなオレンジ色が姿を見せる。しょうゆと砂糖で煮付けて食べるのが家庭でのかぼちゃの楽しみ方の定番。調理すれば皮まで全部食べることができるので、初めて調理するときに誤って捨ててしまわないように注意が必要だ。天ぷらの具材としても広く愛される食材であるほか、すり潰してスイーツに、一口大にしてサラダに使用されることもある。ベータカロテンに鉄分、ビタミンA、ビタミンCなど栄養素が豊富に含まれていると言われる。
大根
生のままだと固く、調理すると柔らかくなる大根。日本の大根は、海外で採れる大根よりも甘みを多く含むと言われている。スープや味噌汁、おでんの具材としてお馴染みの野菜であるほか、生では大根おろしとして焼き魚やうどん、天ぷらなどの付け合わせや薬味として、さらには刺身のつまとしてもしばしば汎用される。また、ビタミンB群やビタミンC、カルシウム・カリウム・鉄分などのミネラルを幅広く含んでいる野菜としても知られる。
しそ
ミネラルやビタミンなどの栄養価が豊富で、食欲を刺激する香りがクセになるしそ。料理の付け合わせや薬味として利用されることが多く、葉が緑色をした青じそと、紫色をした赤じそに分けられる。漢字では「紫蘇」と書くしそは、本来の種は赤じそで、青じそはその変種である。青じそはサラダのドレッシングなどによく使用され、赤じそは梅干しの味付けに使われたり、ごはんのお供として使用されることが多い。
長芋
すり潰して「とろろ」としてご飯にかけて麦とろご飯で、または蕎麦に絡めてとろろ蕎麦として用いられることが多い長芋。独特の粘り気と芳醇な味わいが特徴で、たんぱく質やカリウム・マグネシウムが豊富なため、滋養強壮や脂肪代謝のアップ、運動機能の増加に効果があるとされている。また、焼き上がりをよくするため、お好み焼きの生地に混ぜられることもある。近年は炒め物や煮物、サラダの食材のひとつとして楽しむ人も多い。
れんこん
穴の開いた特徴的な見た目にほどよい堅さで歯ごたえのある食感が印象的なれんこん。ピンク色がかった色鮮やかな花弁が印象的な「蓮の花」としての方が世界的にはよく知られているだろう。きんぴら、油炒め、天ぷらに、煮物まで広く重宝される。酢との相性もよく、ピクルス、マリネなど洋風料理にしても美味しく、食物繊維とビタミンCを多分に含有している。
たけのこ
春に日本で人気の高まる食材と言えばたけのこ。白米と一緒に炊いて柔らかく香ばしいたけのこご飯として親しまれる。お肉や野菜と一緒に煮たりしても美味しい。ラーメンの具材としてお馴染みのメンマは筍を乳酸発酵させたものである。食物繊維が豊富で、コレステロールなどを吸着し生活習慣病の予防に効果があるとされ、ミネラルのカリウムが多いため高血圧の予防にも有効であると言われる。
わさび
日本原産の香辛料として世界でも有名なわさび。何といってもその特徴は刺激性の強いその独特の香味。世界を代表するお寿司にも使用されていることから多くの訪日外国人からも認知度が高い。ただ、いわゆる香辛料としてのわさびがどういう風に作られているか知らない人も多いだろう。地下茎をすりおろして出来上がるすりわさびが一般的に知られるわさびで、市販のわさびは、日本のわさびとセイヨウワサビを練り合わせて作られていることが多い。なぜ一般的なわさびがセイヨウワサビと混ぜ合わせられているかと言えば、わさびは日本でも限られた場所でしか栽培できない非常に繊細なものであることが要因で、混じり気のない本わさびは、辛味は当然のこと、後味に甘みがあり、香りが強いのだという。
ごぼう
きんぴらや、天ぷらのかき揚げ、煮物や味噌汁、サラダにも使われるごぼう。食物繊維にオリゴ糖、ポリフェノールなどを多く含むごぼうは、便秘の解消、むくみの改善、冷え性の緩和、美肌効果があるとされ、単に料理にだけでなく「ごぼう茶」としても知られる。加熱調理をすると柔らかくなるが、しっかり芯のある歯ごたえが特徴的で、他の食材と混ざっても料理の食材としては一つ異なる輝きを放つ
さつまいも
さつまいもは世界中で収穫される野菜であるが、日本ほどさつまいもを多種多様な方法で味わう国は恐らく他にないだろう。最もポピュラーなさつまいも料理のひとつが、油で揚げたさつまいもに糖蜜を絡めて作る大学いもだ。野菜でありながら多分な甘みを持つことから、ケーキやパイ、アイスクリームなど多くのデザートの材料としても使われているほか、煮物に炒め物にサラダ、天ぷら、パンにまで汎用されている。低カロリーでヘルシーな上、ビタミンやミネラルが豊富に含まれているのも、素材の美味しさとは別に、ここまで多様な料理に用いられているひとつの要因かもしれない。
最後に
こうして日本原産のものを中心に10種の野菜を紹介したが、当然これらは数多ある野菜のごく一部である。これら以外にも日本原産の野菜は豊富にあり、他国から見ると日本ならではの少し特異な方法で調理されるものもたくさんある。四季がはっきり存在する日本だからこそ栽培できる食材もあるだろう。世界でも有数の新鮮な食材が手頃に揃い、料理の見た目や作法など様々な形の美にこだわる、食に対して非常に関心の高い日本。そんなにお国柄もあって日本には、他国にはないバリエーションやアレンジの利いた料理があるのではないだろうか。
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