
道央エリアに位置する登別市は、日本有数の温泉地として知られています。その温泉の源が、「登別地獄谷」。地獄谷には遊歩道が整備されており、自由に散策することが可能です。実際に散策し、その魅力をレポートします。登別のグルメやお土産もあわせてご紹介。ぜひチェックしてみてくださいね。
登別地獄谷とは?アクセスは?
登別地獄谷は、クッタラ火山の噴火活動によってできた爆裂火口跡です。直径は約450m、面積は約11haあり、たくさんの湧出口や噴気孔があります。ここには多泉質の源泉があり、1日に1万トンもの温泉が湧出され、登別温泉街の旅館やホテルへ供給されています。
「地獄谷」の名前の由来は、湧き出るお湯の泡を立てて煮えたぎる様子が「鬼の棲む地獄」のように見えるからだといわれています。次世代へ引き継ぎたい北海道の財産を選定する「北海道遺産」にも選ばれている、北海道民に広く親しまれている観光スポットです。

地獄谷へは、JR登別駅から道南バスの登別温泉行きに乗り、バス停「登別温泉」で下車。そこから登別温泉街を通り、硫黄の香りを感じながら緩やかな坂をのぼっていくと、真っ白な湯気が立ち上る地獄谷が見えてきます。有料駐車場があり、車でも行くことができます。
散策を始める前に
地獄谷の手前にあるパークサービスセンターがスタート地点。到着したら、案内板や、パンフレットで散策コースを確認しましょう。パンフレットは、日本語、英語、韓国語、中国語(簡体字)の4種あります。遊歩道は木製ですが、場所によって、砂利や泥で道が滑りやすくなっていることもあるため、スニーカーなど歩きやすい靴がベストです。
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ボランティアガイドと一緒に散策を楽しもう
散策の所要時間はコース次第。地獄谷のみなら約30分、周辺の足湯などを楽しむなら約90分になります。地獄谷の歴史や周辺情報を学びながら散策したい方は、プロのガイドによる有料ガイド(要予約)か、ボランティアガイドによる無料ガイドを利用しましょう。
ボランティアガイドは、5月〜10月の期間限定で、10:00〜15:00のみ活動しています。パークサービスセンターから近い地獄谷展望台に数名が常駐しており、お願いすると散策コースに沿ってガイドをしてくれます。ガイドは翻訳器を用いての外国語対応もしてくれます。少人数の場合予約は不要ですが、団体の場合は事前に予約が必要です。
取材した日は、ベテランのボランティアガイド・石神(いしがみ)さんがガイドを担当してくれました。

散策スタート!地獄谷展望台〜鉄泉池
今回の散策コースは、「地獄谷展望台→鉄泉池(てっせんいけ)→地獄谷張出展望台→大湯沼展望台→奥の湯→大湯沼→大湯沼川天然足湯」を巡る約2時間のコースです。
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まずは地獄谷展望台から間欠泉の鉄泉池まで向かいます。遊歩道のすぐそばには噴気孔や湧出口があり、そこから蒸気があがっているのが見えます。遊歩道の外は、大変危険なので、絶対に柵を越えないようにしましょう。
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遊歩道を歩いていくと途中に分かれ道があり階段があります。この階段を降りていくと「薬師如来堂」があります。この御堂の下から湧く温泉で目を洗った者の眼病が治ったという言い伝えがあり、堂内には、病の治癒のお礼に寄進した石碑が安置されています。

「鉄泉池」は地獄谷のほぼ中央に位置しています。遊歩道が池ギリギリのところにあるので間近で見ることができます。近づいて見られる間欠泉は、地獄谷ではここだけです。鉄泉池の温度は約80℃にもなります。
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遊歩道の下に流れる川は「三途の川」と名付けられています。日本ではこの世とあの世の境目にある川といわれる「三途の川」ですが、石神さんによれば、「地獄谷では川を渡ると長生きするといわれているんだよ」とのこと。
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大湯沼遊歩道〜大湯沼
ここからは「大湯沼遊歩道」に入ります。徐々に勾配がきつくなるので、足下に注意しましょう。遊歩道周囲の森は国指定天然記念物である「登別原始林」で、高山植物のイソツツジやシラタマノキなど約60種類の樹木と約110種類の草木を観察することができます。運が良ければシカやクマゲラなどに会えることも。
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大湯沼へ到着するまでの道中には、大湯沼に関するクイズが書かれた看板があります。クイズは全部で7問。看板には英語も併記されているので、一つずつ挑戦して大湯沼について学びましょう。
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約20分歩くと、やがて「奥の湯」と「大湯沼」が見えてきます。大湯沼は周囲約1kmのひょうたん型の湯沼で、沼底からは約130℃の硫黄泉が噴出しています。

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
大湯沼〜大湯沼川天然足湯
大湯沼から「大湯沼川探勝歩道」を通り、次のポイントである足湯を目指します。階段の段差が高いので気をつけて降りましょう。
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歩道のそばを流れる大湯沼川は、大湯沼の湯が流れこんでいるため、白く濁り湯気が立ち上っています。「このように白く濁った川は、アイヌ語で『ヌプルペッ(白く濁った川、色の濃い川)』といい、登別の地名の語源になっているといわれていますよ」と石神さんが教えてくれました。
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歩道を進むと登場するのが「大湯沼川天然足湯」です。名前の通り、川が自然の足湯になっていて癒し効果は抜群! 座るときにお尻が濡れないように敷くマットがあり、自由に使用することができます。タオルは置いていないので、足湯を利用したい場合は自分で用意していきましょう。

足湯を堪能したら、大湯沼第2遊歩道を通って、パークサービスセンターのある入り口まで戻ります。大湯沼第2遊歩道には、クッタラ火山の噴火の火砕流でできた溶結凝灰岩がいくつも点在しているので注目してみましょう。
地獄谷の季節の見どころ
秋冬も美しい景色を楽しめる地獄谷。秋は周囲の山々や、原始林が紅葉して華やかな眺めになります。たくさんのナナカマドが真っ赤に染まる様は見事の一言です。冬は、雪が降り積もった地獄谷から蒸気が立ち上ります。まさに大地が呼吸しているような、迫力満点の景色です。
※冬季は積雪に伴い、地獄谷遊歩道以外の遊歩道が閉鎖します。
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登別地獄谷
- 住所 〒059-0551 北海道登別市登別温泉町無番地
電話番号:0143-84-3311(一般社団法人 登別国際観光コンベンション協会)
「温泉市場」で味わう登別グルメ
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登別温泉街にある「温泉市場」は、地獄谷から徒歩5分ほどの場所にあります。登別の漁港や道内各地で水揚げされた新鮮な海産物を使った料理が名物の飲食店です。ビールや日本酒、梅酒などお酒のメニューも充実しています。地獄谷の散策の後は、ここでひと休みして乾杯するのもおすすめです。

人気のメニューは、「10色前浜丼(税込2,270円)」。エビやイカなど10種類の海鮮物がのった贅沢な一品です。
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
登別には名物グルメがあります。その名も「閻魔(えんま)やきそば(単品 税込1,030円)」。登別市内の約30店舗で提供されており、温泉市場でも食べることができます。ちなみに閻魔とは、死者の生前の罪を裁く地獄の王のこと。
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閻魔やきそばには、「北海道産小麦の平麺」「閻魔大王指定の秘密のタレ」「登別産または登別近郊の食材」を使用するという3つの決まりがあります。温泉市場では、具材にホタテ、タコ、エビ(時期により具材に変動あり)を使用。生七味、ヤンニョムジャンを使った旨辛な味付けです。一度食べたらやみつきになるやきそばをぜひ味わってみてください。

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温泉市場
- 住所 〒059-0551 北海道登別市登別温泉町50
- 電話 0143-84-2560
営業時間: 月〜木/11:30〜17:00(ラストオーダー16:30)、金土日祝/11:30〜20:30(ラストオーダー21:00)
※主要食材が品切れした場合、定刻より早く閉店する場合があります
※現在、新型コロナウィルスの影響により月〜木曜日は時短営業中。詳細は、お店のホームページをご確認ください。温泉市場ホームページ:http://www.onsenichiba.com/
定休日:不定休
駐車場:なし
1915年創業の老舗店「藤崎わさび園」でおみやげ選び

温泉市場の並びにある「藤崎わさび園」では、北海道では珍しい自家生産の本わさびを使用した商品を販売しています。
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塩漬けした本わさびを熟成した酒粕で和えた「わさび漬」は、本わさびの香りや辛さとともに酒粕のコクとまろやかさも味わえる商品です。ご飯にのせて食べるほか、ハンバーグ、トーストなどにつけて食べるのもおすすめです。

「わさび味噌」は、北海道産の大豆と米を100%使用した味噌に、本わさびの茎と根茎を混ぜ合わせており、味噌の深い味わいと本わさびの辛みがくせになります。カリカリに焼いた豚バラ肉や鶏モモ肉につけて食べるとよりおいしくいただけます。

お店では、スマホの通訳アプリを使って外国語対応もしています。また、手指消毒用のスプレーや、スタッフとの間にパーテーションが設置されており、新型コロナウィルス感染防止対策もしっかりとされています。
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藤崎わさび園
- 住所 〒059-0551 北海道登別市登別温泉町49
- 電話 0143-84-2017
営業時間: 9:00〜22:00(冬季は天候次第で21:00)
定休日:なし
駐車場:なし
登別の地ビール「鬼伝説」も外せない!
「鬼伝説」は、登別の地ビールです。北海道の銘菓「わかさいも」を製造している“わかさいも本舗”が製造しています。工場は、わかさいも本舗登別東店の施設内にあり、併設されたレストランでも味わうことができます。また、地獄谷の周辺では登別温泉街のコンビニなどで購入できます。

写真左の「金鬼ペールエール(税込495円)は、強い苦味と柑橘系の香りが特徴のアメリカンタイプ。写真中央の「青鬼ピルスナー(税込385円)」は、少し苦めですっきりとした軽い味わいです。写真右の「赤鬼レッドエール(税込385円)」は、苦味が少なく飲みやすい味わいで、キャラメルモルトの香ばしさが感じられるブラウンエールです。
湯気が立ち上る迫力ある景色のほかにも、原始林の自然や、天然の足湯など見どころ、楽しみどころがたくさんある登別地獄谷。札幌から足を伸ばして半日、1日楽しむこともできるエリアなので、旅行の際にはプランにプラスしてみてはいかがでしょうか。
Text by:みんなのことば舎
※本記事の情報は2020年9月時点のものです。
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