北海道函館市の北約30kmに位置する大沼国定公園は、1903年から整備された、日本で最も歴史ある自然公園の一つ。美しい活火山・北海道駒ヶ岳と、その噴火でできた3つの湖の周辺一帯が国定公園となっています。園内には雄大な自然を堪能できるビュースポットが多々あり、自然に親しむアクティビティの数々も楽しめます。広大な大沼国定公園の中でぜひ訪れてほしいポイントについて、北海道在住のライターがご紹介します。
大沼国定公園とは?
大沼国定公園は、七飯町・鹿部町・森町の3町にまたがる、総面積9,083haの広大な自然公園です。約3〜5万年前に北海道駒ヶ岳(以下駒ヶ岳)が噴火した際に大沼の原型ができ、その後の噴火活動で大沼・小沼・蓴菜(じゅんさい)沼の3つの堰止湖が形成されました。複雑な湖岸線や、同じく火山活動でできた多くの小島が、日本庭園のような景観を生み出しています。また、白鳥をはじめとした水鳥の飛来地でもあり、2012年にラムサール条約の登録湿地ともなりました。
大沼周辺は江戸時代から名高い景勝地でした。1879年にはドイツ皇弟ハインリッヒ殿下が、1881年には明治天皇がこの地を訪れ、景観を楽しんだという記録も残ります。1922年に道立公園となり、1958年には国定公園の指定を受けました。国際交流拠点として国から指定を受ける大沼は、自然や文化、歴史、産業などを世界に紹介する役割を持っており、さまざまな参加・体験型観光が活発に行われています。
大沼国定公園へのアクセス
函館市中心部からのアクセス
【車】
約40分(国道5号経由)
※函館空港からは約30分
【公共交通機関】
JR:特急北斗で約25分、普通列車で約45分、「大沼公園」駅下車
バス:函館駅前から函館バス「大沼公園経由鹿部行き」乗車で約70分、大沼公園下車
札幌からのアクセス
【車】
札幌市内から約3時間30分(道央自動車道経由、大沼公園ICから国道5号経由)
【公共交通機関】
JR:特急北斗で約3時間20分、「大沼公園」駅下車
大沼国定公園でやるべきこと
島巡りをする
大沼の3湖には、大小126もの島が浮かんでいます。この島のいくつかは橋で結ばれており、散策することができます。公園広場から、右手の西大島橋を渡って2つの島を歩ける「大島の路」(所要時間約15分)と、左手の後楽橋を渡って7つの島を歩ける「島巡りの路」(所要時間約50分)の、2つの散策コースがあります。
「島巡りの路」は、小島の間を風情のある太鼓橋が結ぶ散策コースです。5月ごろは散策路にエゾヤマツツジが、7〜8月には水面にスイレンやコウホネが咲き、秋には美しい紅葉が眺められます。
大沼・小沼をクルーズする
大沼国定公園の魅力を水上から楽しめる、遊覧クルーズもあります。今回は、大沼湖と小沼湖を遊覧船で巡る約30分のコースを体験してきました!
まずは広場の右手にあるチケット売り場で乗船チケットを購入します。5月1日〜10月31日の定期運航期間は、9:00〜16:20までの間、40分間隔で運航しています。4月、11月は不定期運航になるので、売り場で運行予定を確認しましょう。
なお、チケット売り場の横には小さなお土産コーナーがあり、オリジナルブレンドのドリップコーヒー(1個220円)などを販売しています。乗船の記念にぜひゲットしてみては。
船は屋根付きなので、雨の日でも安心。出航すると、船長による見どころ解説が始まります(日本語のみ)。船は島々の間を抜け、大沼湖の中心部を目指して進みます。
船の後ろには小さなデッキがあるので、外に出て景色を眺めることもできます。この日はあいにくの空模様でしたが、雲の中なから駒ヶ岳が勇壮な姿を見せてくれました!
出港後15分ほどすると、大沼湖と小沼湖を隔てる月見橋に。この橋をくぐって小沼湖に入ります。折り返しのタイミングでは、運が良ければ、駒ヶ岳をバックに橋を通る特急電車の姿が見られることもあるのだとか。ちなみに、この日は惜しくも電車とのタイミングが十数秒ズレてしまいました。残念!
駒ヶ岳を眺めるベストポイントはここ!
陸上にも、水上にもフォトジェニックな駒ヶ岳が撮れるポイントがあります。
●遊覧船上
乗船して10分程度すると、大沼湖の中心部付近で船が旋回します。周りに遮るものがないので、湖上に浮かぶような駒ヶ岳の姿が楽しめます。
●袴腰橋の上
「島巡りの路」コースを行くと6番目にある袴腰橋の上からは、島と島の緑に挟まれた山景を見ることができます。
●公魚島
「島巡りの路」コースの2番目の橋「公魚橋」を渡った先にある小島が公魚島。散策路から北側の岸辺に降りていくと、小島が浮かぶ背景に駒ヶ岳がそびえる、絵葉書のような風景が楽しめます。
●西大島
最もアクセスしやすいビューポイントがここ。「大島の路」コースの最初の橋・西大島橋を渡って左手の岸に降りたところから、真正面に駒ヶ岳がよく見えます。
●湖畔の木道
公園の中心部から少し距離はありますが、東側に10分ほどドライブしたところにとっておきのビューポイントがあります。ただし、駐車場からはやや歩くことになるので、最もおすすめのアクセス方法はレンタサイクルなどの自転車。写真の駐輪場がビューポイントへの入り口です。
「湖畔の木道」の名の通り、森の中を50m程度の木道が通っているので、ここからは歩いてアクセスします。木々で湖の姿は隠れていますが……
突き当たりまで来るとこの通り!一気に視界が開けて、遮るものなく駒ヶ岳の姿が眺められます。船がほとんど通らない湖東側は穏やかに凪いでいることが多く、鏡のような湖面に映る山景も美しいです。
徒歩では巡りきれないほど広大な大沼国定公園には、まだまだビュースポットがたくさんあります。レンタサイクルのほかにもセグウェイのツアーなどもあるので、うまく活用しながらいろいろなポイントを訪れてみましょう。
カヌー体験をする
大沼湖や小沼湖では、カヌー体験をすることができます。湖を渡る風を感じながら、植物や水鳥を観察したり、橋の渡されていない島に近づいてみたり。カヌーツアーに参加すると、初心者でもしっかりレクチャーしてもらえるので安心です。
「夕日の路」で美しい夕景を見る
大沼湖の西側に位置する小沼湖には、美しい夕日が見られるポイントがあり、そこまでの散策路が「夕日の道」として整備されています。駐車場から線路を渡って、2〜3分歩くと散策路の入口に。ここからは緑が深いので、向かう際は足元はスニーカーで、服装は夏でも長袖がおすすめです。
散策路入り口から4〜5分程度歩くと、お目当てのポイントに到着します。季節によって夕日が沈む方角は異なりますが、湖畔まで降りられるので、見やすい場所を探せるはず。夕日は水面の向こうの山に沈んでいくので、各季節の日没時間より少し早めの時間に行くのがおすすめです。
夕日の道沿いは、スイレンの群生地。白やピンクの花に混じって、珍しい黄色いスイレンも見られます。例年6月下旬〜8月下旬にかけて開花し、7月中旬〜下旬が特に見頃です。
夕日の道にはあちこちにベンチが整備されています。その周辺が、景色の良い場所。ベンチを目印にビュースポットを探してみましょう。
季節ごとの見どころを楽しむ
四季折々、いつ訪れても異なる魅力のある大沼国定公園。春はさまざまなアクティビティがスタートし、花の季節も始まります。園内のあちこちに植えられたツツジは5月中旬から咲き始め、例年5月下旬ごろに見頃を迎えます。緑と赤のカラフルな風景が楽しめます。
夏、スイレンが咲き誇る7月下旬の週末には、100年以上続くイベント「大沼湖水まつり」が開催されます。1906年に水難者供養の法要として始まり、現在も初日には慰霊祭と供養灯ろう流しが行われます。多数の灯籠が湖面に浮かべられる夕暮れ時の光景は、厳かで幻想的。期間中には音楽ライブや大道芸、花火大会などの楽しい催しも行われ、多数の来場者で賑わいます。
大沼国定公園が最も美しい季節が、駒ヶ岳と湖畔一体が錦に染まる秋。イタヤカエデ、ブナ、ナラなど、落葉広葉樹が鮮やかに紅葉します。見頃は10月中旬〜11月上旬ごろまで。園内だけでなく、周辺でのドライブも楽しい季節です。
最深部でも約12mと浅い湖である大沼3湖は、12月下旬に結氷し、寒さが厳しくなる1月頃には人が乗れる厚さにまでなります。例年2月上旬の週末に開催される「大沼函館雪と氷の祭典」は、湖の氷を生かしたイベント。大沼から切り出した天然氷で大きな滑り台がつくられ、氷像も展示されます。
大沼湖と小沼湖の境目の狭まったところ(セバット)には、冬でも結氷しにくい一角があります。そこは渡り鳥の休憩地になっており、オオハクチョウやカモなどの野鳥が飛来することから「白鳥台セバット」と名付けられています。
冬もアクティビティを満喫!
冬、結氷した大沼3湖の上で、冬ならではのアクティビティを楽しむことができます。スノーモービルやバナナボートなどスリルたっぷりのエキサイティングな体験から、スノーシューを履いて自然観察ツアーなど、さまざまな形で雪や氷に親しむことができます。
冬ならではのおいしい体験も。結氷前の12月には桟橋から、結氷後は氷上で、ワカサギ釣りを楽しむことができます。道具はすべて貸し出ししてもらえるので、防寒対策して行けば手ぶらでOK。釣ったワカサギは、別料金で天ぷらや唐揚げにして食べることができます。
冬のアクティビティを楽しむ時は、スキーウェアなどの雪にまみれても大丈夫な防寒着を用意し、足元もスノーブーツをはくなど、滑らない対策をして体験しましょう。
- 電話番号:0138-65-2517(七飯町役場 商工労働観光課)
- 営業時間:24時間 開放
- 料金:入場無料、遊覧船や各種アクティビティは有料
- 定休日:なし
大沼エリアをもっと楽しむ
大沼公園駅から大沼公園広場にかけては、土産物やグルメの店が集まったエリアです。地元特産の「はこだて大沼牛」や、地ビール「大沼ビール」など、チェックしたいものがたくさん。特に大沼の定番として人気があるのが「大沼だんご」。小豆あん・ゴマあん・みたらしあんなどを湖に見立てて、その中に沈んだ小指の先ほどのサイズの団子を串ですくって食べるユニークな一品で、観光客だけでなく地元の人にも愛されています。
どこに行くか迷ったら、駅の隣にある「大沼国際交流プラザ(大沼観光案内所)」へ。英語・中国語など各種言語の観光パンフレットも揃っています。無料の休憩所もあるので、ここでじっくり旅の作戦を立ててから出かけるのもいいでしょう。
大沼国際交流プラザの中では、お土産や特産品の販売を行っています。9月ごろからは七飯町はリンゴの季節。七飯町は日本で最初に西洋リンゴの栽培が始められた地で、現在もさまざまな品種のリンゴが栽培されています。自慢のりんご、見つけたらぜひ味わってみてください。
道南周遊の拠点にもおすすめ。訪れるほど魅力が増える場所
1916年、旅行ガイドブックの投票で「日本新三景」に選ばれたほど、大沼の景観は古くから愛されてきました。その魅力は今も変わることなく、園内を歩けばさまざまな所で心を捉える風景に出合えました。船で湖水に親しんだり、緑の中をドライブやサイクリングしたり、雪や氷の中で遊んだりと、さまざまなアクティビティをあちこち移動せず1か所で楽しめるというのも、北海道の中では珍しい場所。大沼国定公園は、まさしく100年以上前から続く「リゾート」なのです。
大沼は交通の要所としての面も持っています。大沼ICは、北海道各地から道南へのアクセスの入口。南に行けば函館、東に行けば世界遺産の遺跡がある函館市南茅部地区、北に行けば海産物の豊富な森町や八雲町に行くことができます。北海道最古の祭りが行われる江差町など檜山エリアに向かう国道227号にもアクセス良好です。大沼エリアにはホテルやオーベルジュもあり、宿泊の面でも魅力があります。「道南といえば函館」と思い込みすぎず、拠点を大沼に置くのもおすすめです!
撮影=宮澤修一 原稿・編集=みんなのことば舎
札幌の地元タウン誌の編集に長年携わった編集者が設立。設立以降、20年以上にわたり、札幌を中心に北海道全域での取材・記事執筆を行い、観光ガイドや情報誌、北海道の景色を収めた写真集など多様な本も制作。スタッフは全員女性で、旅好き、スイーツ好き、お酒好きと趣向は様々。飲食店紹介からイベントレポート、レジャー体験記まで、発信の守備範囲は広い。
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