農業王国として知られるデンマークでは、じゃがいもをはじめとした根菜類の栽培や酪農、養豚が盛んです。脂肪分がたっぷりの豚肉やチーズなどが好まれる一方で、健康志向のオーガニック食品やベジタリアンに配慮されたレストランも多くあります。
また、全体的に物価が高く、特にレストランでの食事はかなりコストがかさむという一面も。そんなデンマークで暮らす現地の人たちは、普段どんな食生活を送っているのでしょうか?
今回は、デンマークで留学生活を送っている筆者が、首都コペンハーゲンでピアニストをしながら日本食レストラン(居酒屋)で働いている25歳のラウリツさんに「デンマークでの食生活」を聞きました。(各コメントは回答者個人の意見です)
カフェ天国・デンマークで定番の「朝食」は?
日本に比べるとカフェの数が多く、パンやコーヒーが好まれている印象のあるデンマーク。北欧らしい洗練されたインテリアの店が多く、ゆったりと居心地が良い時間を過ごせます。現地では、どんな朝食が人気なのでしょうか?
「僕たちの世代では、アメリカ風やイギリス風の朝食が親しまれている印象がありますね。スクランブルエッグやベーコン、ゆで卵、パンやチーズを乗せたパンなど、もちろん、コーヒーもセットで。
僕の場合は、小さなロールパンを食べることが多いですね。栄養価が高いわけじゃないけど安く買えるので。子供の頃はデンマークの伝統的なペストリーやデニッシュ、クロワッサンなどを食べていたんだけど、最近はかなり高価になってしまって特別なときにしか食べられなくなってしまいました。
僕の朝食にはチーズも欠かせません。デンマークではスーパーでたくさんの種類のチーズが売られていて、僕はヤギのチーズをよく食べています」
デンマークでは、スーパーの中や街中にパン屋があり、さまざまな種類のパンが販売されています。ただ、確かにやや高価で、例えばクロワッサンは1個300〜400円ほど。その代わり味の満足度は高く、筆者はコペンハーゲンのカフェで人生一おいしいクロワッサンに出会いました。
ランチで外食するなら予算は「3000円」まで
カフェやレストランでの飲食代がとにかく高く、東京の1.5〜2倍と言われているコペンハーゲン。ここでのランチ事情を聞いたところ、やっぱりこの物価の高さがデンマーク人のランチにも大きく影響しているようです。
「ランチは、自宅で食べるときは簡単なものを作って、サッと済ませています。卵を揚げたフライドエッグにパンとか。外出するときは、ライ麦パンや黒パンで作ったサンドイッチを持参することが多いですね。あまりランチに外食することはありません」
「もし、外食するとしたら友達や家族など誰かと会うときぐらい。でも、たまにしか外食しない分、1食の予算はやや高めかもしれません。大体200クローネ(約3100円)を超えないぐらいですね」
筆者も、こちらに来て外食の感覚がすぐに変わりました。カフェでコーヒーと軽めのランチを頼むだけでも1500〜2000円ほどかかってしまうので、東京にいるときと同じ感覚では行けないんですよね。
こちらはコペンハーゲンのステーキ屋さんで食べたランチで、サラダビュッフェ付きで2000円ほど。ビュッフェ付きでお腹いっぱい食べられることもあり、現地ではかなりお手頃価格に感じます。
デンマーク人がディナーの外食に選ぶレストランは?
世界中から旅行者が多く訪れるコペンハーゲンには、伝統的なデンマーク料理が食べられるレストランをはじめ、イタリアン、中華、フレンチ、中東料理など、インターナショナルなレストランが並びます。チラホラと日本食レストランも見かけます。
そんなコペンハーゲンに住む人たちが、ディナーで選ぶレストランとは?
「僕の場合、ディナーは働いている居酒屋で安く食べるか、自宅でパスタなどを作って食べることが多いですね。
外食する場合は、デンマーク料理以外のレストランを選びます。ランチ同様、デンマーク人にとって外食は“贅沢をする”イメージなので、自宅でも作れるデンマーク料理を外に食べに行くという感覚が薄いんです。
例えば、僕はスパイシーな中東料理やインド料理が好きですね。中東料理のフムス(ゆでたヒヨコマメにニンニク、練ごま、オリーブオイルなどを加えてすりつぶしたペースト状の料理)も大好きです」
「日本食レストラン巡りも楽しんでいます。伝統的なデンマークレストランより高価じゃないから気軽に入れるのも良いですね。僕はラーメンが好きでよく食べに行くのですが、やっぱり日本とは使っている材料が違うこともあり、本格的ではない店が多いですね。彼らはヨーロッパの材料で日本らしい味を出せるように、もっと研究する必要があると思います」
「ただ、『SLURP』というコペンハーゲンのラーメン屋さんは何度も通っていて、かなりおいしいのでお勧めです」
デンマークを観光で訪れたら、伝統的な現地の料理を味わいたいところですが、1度ぐらいは日本料理を試してみて、日本との味の違いを比べてみるのもアリかもしれませんね。
ラウリツさんが居酒屋を好む理由は?
日本の大学に短期留学した経験があり、少しなら日本語も話せるというラウリツさん。数あるコペンハーゲンのレストランの中でも、和食を扱う居酒屋で働いている理由を聞いてみました。
「僕はかしこまった雰囲気のラグジュアリーなレストランが好きではなくて……。そういったレストランでは、マニュアルに沿ったプロとしての対応が求められるじゃないですか。でも、居酒屋のようなフランクな感じのレストランは、ナチュラルに自分らしく働けるところが気に入ってます」
「店のメニューでは、揚げ出し豆腐、イカ一夜干し、餃子がお気に入りです。コペンハーゲンに来たら、ぜひ立ち寄ってみてくださいね!」
「肉は食べない」食へのこだわりが強い一面も
食事に対して、何かオリジナルのこだわりがあるかを尋ねたところ、「健康」や「味」への強いこだわりが。
「僕は、好みの問題で肉を食べず、その代わりに野菜と魚を食べるようにしています。肉は消化に時間がかかるし、体が熱くなる感じが好きじゃなくて……。居酒屋には魚や野菜を使ったヘルシーなメニューが豊富で、そこも気に入っているポイントです。
あとは、ワインは亜硫酸塩無添加のものしか飲みません。健康を意識しているから、というのはもちろんですが、無添加のもののほうがぶどう本来の味の違いが楽しめて、おもしろいんですよね」
デンマークでは、肉がたくさん食べられている一方でベジタリアンやビーガンの人も多く、レストランにはベジタリアン・ビーガン専門のメニューが多くあったり、学校でもベジタリアン専門のメニューが提供されたり、生活の中に当たり前に浸透している印象があります。
少し前までは「宗教上の理由」で肉を避ける人が目立っていた気がしますが、デンマークで菜食主義を選ぶ人たちからは、健康への気遣いのほか、環境保護、動物愛護という声が聞かれます。
特別な休暇やバーで楽しむ「スナップ」とは
お酒好きな人が多く、スーパーではアルコール売り場が広く設けられ、さまざまな種類のビールやワインがそろうデンマーク。街中にもアルコール専門店やバーが多く見られます。「一番飲むのはビールだけど、時々スナップも飲んでいます」と語るラウリツさん。スナップとは?
「アルコール度数の強いお酒を総称して『スナップ』と呼びます。日本の焼酎に似ている感じかな。でも、焼酎よりもアルコール度数が高いから、飲むときは分量に注意が必要ですね。
デンマークでは、イースター休暇やクリスマス休暇のランチで、家族が集まって伝統的なデンマーク料理を食べながら、スナップを飲む習慣があります」
「シュリンプなどを乗せたスモーブロー(オープンサンドイッチの一種)やさまざまな味付けがされたニシンなどを食べながら、スナップを飲んで、ゆったりとした時間を過ごす。これはスタンダードなデンマークのイースターやクリスマス休暇の過ごし方だと思います」
このように日本とは食文化が大きく異なるデンマーク。訪れた際は、名物のスモーブローやクオリティの高いデニッシュやクロワッサン、ビールにスナップなど、現地ならではのグルメを試してみてくださいね!
筆者ホームページ:https://love-trip-kaori.com/
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2014年ライターデビュー。WEB媒体の取材記事を中心に【働き方、ライフスタイル、旅、海外文化】等のジャンルで多数執筆。旅と仕事を両立する海外ノマドワーカー。2019年よりフリーランス広報/PRとしても活動をスタート。好きなものは、旅、テクノロジー、英語、アート、カフェ。
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