外国人が日本で生活し、日本の文化、習慣や生活様式に慣れて「日本人っぽく」なることを「畳化」というそうです。「肩こり」という概念を持たないアメリカ人が日本に来たとたん湿布が手放せなくなったり、自分も外国人にもかかわらず他の外国人を目にすると「あ、外国人がいる!」と反射的に思ったり、そういうようなことです。
でも台湾人の筆者からすると、台湾の場合は「畳化」という言葉は最適じゃないかなと思っています。なぜなら台湾は日本の統治を受けていたので、古い家は畳が敷かれていることも多いし、いまだに畳を売っている店もあるほどなので……。
それはさておき、今回は筆者の周りの在日台湾人にインタビューをして「あ、日本人になっちゃってる」と思った瞬間を聞いてみたのでご紹介します!(以下はアンケートに応じてくださった方の個人的な意見です)
タクシーから降りるとき自動で開くまで待ってる!
「日本のタクシーのドアは自動的に開閉するんだけど、台湾ではそういうことがない。日本のタクシーに慣れちゃったから、台湾に帰ってタクシーに乗ると逆に慣れなくて。1回、お金を払ってからそのまま座ってドアが開くのを待っていたら、『お姉さん、まだ降りないのかい?』と聞かれちゃった。恥ずかしい……」(31歳、女性、会社員、在住歴4年)
日本に来る外国人の多くはタクシーの自動ドアにびっくりするようですが、逆に慣れすぎると自国で恥ずかしいことも起こったりするんですね……。
餃子、ラーメン、ご飯をセットで食べる!
「中華圏では、餃子もラーメンもご飯も主食だから、一緒に食べることってあまりないの。日本に来てからは、『餃子+チャーハン』または『ラーメン+チャーハン』のような食べ方にすっかり慣れちゃって。今や当たり前のようにご飯かラーメンがついてくる餃子定食を頼むようになったわ」(31歳、女性、会社員、在住歴4年)
日本で餃子定食というとご飯とセットになっているものですが、どちらも主食扱いをする中華圏の人は特に最初は戸惑うそう。どちらも美味しいので慣れれば普通に食べます。炭水化物ばかりで不摂生ですが(笑)。
飲食店ではまず出されたお手拭きを使う!
「日本のレストランって、大抵最初にお手拭きが出てくるんじゃない?それで手を拭いてから食事をする。それにすっかり慣れていて、こないだ台湾に帰って、レストランでお手拭きがなかなか出てこないので反射的に『お手拭きをください』と言おうとした。でもよく考えたら台湾ではそんなものは出ないのがデフォルトなんだよね」(24歳、男性、学生、在住歴2年)
筆者も日本に来たばかりの時は、出されたお手拭きが何に使うのかよく分からないことがありました。
一度、何人かの日本人の友達と食事をしていて、みんな当たり前のようにそれを使って手を拭いたのに、自分のだけが未開封のままテーブルに残っていて、それに気付くととっても恥ずかしい気分になったものです……。
はい、はい、はい……頻繁に相槌を打つ!
「日本人ってよく相槌をするんじゃない?自分が聞いていることを示すために、『はい、はい、そうですね』と合間に言葉を入れる。場合によっては頷きながら。自分もすっかり慣れてね、電話をする時さえ頷きながら相槌をする。そしてハッとしたの。いや、電話では頷いても相手には見えないだろうって。それで自分は本当に日本人化してるなーと心の中で苦笑しちゃった」(30~35歳、女性、会社員、在住歴8年)
日本語の相槌というのはなかなか奇妙なもので、習いたてはうるさいなと思ってなかなか慣れないけど、慣れてしまえば中国語を話す時も何かしら合いの手を入れたいなと思うようになります。
でも中国語では「はい」とか「そうだね」とか「なるほど」のような相槌の言葉を多用する習慣がないから、かえって変になっちゃうんですよね……。
カラオケでは順番を守って歌う!
「日本人の友達とカラオケに行くと、どんなに仲の良い友達でもみんな当たり前のように一人ずつ歌を入れて、順番を守って歌うんだけど、そういう方式に慣れちゃった。
台湾に帰って友達とカラオケに行くと、みんな無遠慮にガンガン歌を入れるわ、他の人が入れた歌を勝手に歌うわという感じで無法地帯(笑)。自分だけ遠慮してて、あれれ?って思って。そう言えば台湾ではカラオケで順番を守るという発想は、そもそもあまりないかも、ということを思い出して、自分も日本人になっちゃったな、って」(29歳、女性、会社員、在住歴7年)
台湾人のカラオケって、みんなで楽しむというのが前提みたいなところがあるから、一人ずつ、という習慣があまりないかもしれません。むしろ他の人が入れた歌でも、歌える人がどんどんハモろう、というノリが大事なんです。
食べるのはみんな揃ってから!飲み会ではまず乾杯!
「日本では食事会の時、自分の料理が出てきてもすぐには食べず、他の人の料理も出揃ってからみんなで一緒に『いただきます』という方式が多いでしょ?飲み会の場合だと、飲み物が出揃ってからまずは乾杯、という流れで。これはかなり日本式の流れで、最初は慣れなかったけど、今は台湾人の友達と食事する時でも必ずそうしている」(27歳、男性、会社員、在住歴4年)
正式な場ではともかく学生の食事会くらいだと、台湾では確かに「みんな出揃ってから!」「まずは乾杯!」という発想があまりないかもしれません。でも日本では学生の食事会でもそれが当たり前のように行われていますよね。
温水洗浄便座がない生活なんてムリ!
「日本の温水洗浄便座に慣れきっている!これがないとほんとにだめ!帰国する時に絶対1つ持って帰る!」(31歳、男性、会社員、在住歴7年)
日本の偉大な発明・温水洗浄便座。その洗浄機能に慣れてしまうと、普通の便座には戻れないものです。最近では大抵どこでもついていますが、地方などの小さい施設、店舗、そして海外にはあまりないということを思うと、旅行に行くモチベーションがだだ下がり。
テレビ・洗濯機・冷蔵庫につぐ次なる「三種の神器」を選ぶならこれはノミネートされるべし、と筆者は思います。そして世界中に広められるべし!
歩行者として堂々と道を渡る!
「日本では車は大抵歩行者を優先してくれるから、道を渡る時はあまり車に気を配らなくても安全。堂々と、ゆっくりと道を渡れる。でも、台湾では車の運転が荒い人がたくさんいる上、あまり歩行者を優先してはくれない。日本に慣れると、台湾で道を渡る時は『ヒヤッ』の連続」(32歳、女性、会社員、在住歴4年)
筆者も同感。台湾人の運転マナー、まだまだだなと思っちゃいます……。
バスや電車ではおしゃべりしない!通話もしない!
「日本ではバスや電車に乗ったら、基本携帯で通話してはいけない、場合によっては同乗する友達とおしゃべりするのもあまり良しとされていないでしょ?バスや電車の中ではいつもシーンとしている。
それに慣れると、台湾のバスや地下鉄に乗る時に思わず眉をひそめるの。みんな当たり前のように雑談したり通話したりする。私の両親だって、なんで通話してはいけないのか理解できないって」(33歳、女性、会社員、在住歴9年)
「車内では、マナーモードに設定の上、通話はご遠慮ください」――このお馴染みの車内放送は日本ならではのもので、台湾ではそんな制限がないんですよね。
そもそも「マナーモード」という名称自体が非常に日本的で、英語も中国語も「サイレントモード」のような言葉になっていますが、日本語だけが「マナー」に重きを置いていますね。
食事の時には冷たいお水を!
「日本のレストランでは大抵冷たいお水が出てくるんだけど、台湾ではそういう習慣がない。熱いお茶か、大衆食堂だと砂糖がたっぷり入っている甘ったるい紅茶が無料で飲めるところもあるけど、やはりお水が一番しっくり来る。というか、しっくり来るようになった。ひんやりしていて、口直しにぴったり。
中華圏では冷たい水を飲むことは健康的にあまり良しとされていないから、日本に来たばかりの台湾人だとなかなか慣れないけど」(25歳、女性、学生、在住歴2年)
そもそも「お水」と言うと冷たいものを指していて、熱いものを指す言葉は「お湯」という使い分けも、日本的ですよね。中国語だと「冷たい水」「熱い水」と言います。これもまた、日本ではお水を飲むのが生活習慣として一般的なことなのか物語っているようです。
いかがでしょうか? 外国人の「畳化」の事例を見ると、文化や習慣の違いが見えてきて面白いですよね。
台湾では中華文化的な思想が生活の根底にあるので、日本とは習慣が違うところもたくさんあります。今度台湾人の友達と食事したりカラオケに行く時に、そうした「畳化」の事例を話のネタにしてみてはいかがでしょうか?
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