日本料理の定番メニューには、一見同じような料理なのに名前が違うものが多数存在します。たとえば「唐揚げ」と「竜田揚げ」や、「お刺身」と「お造り」。その違いをはっきり説明できる人って意外と少ないのでは?
今回は、そんな日本食定番メニューの“○○と△△の違い”をテーマに調査! 武蔵野栄養専門学校で講師をしている、管理栄養士の杉崎くに子さんに教えてもらいました。
■「つくね」と「つみれ」は、使われる料理で違う?
一見同じ料理にも見える「つくね」と「つみれ」。「材料が違うだけでしょ?」と思われがちですが、その違いは調理方法にあるのだそうです。
「つくね(捏ね)は手でこねて丸くするという意味。細かくたたくかミンチにした豚肉や鶏肉などに、つなぎの卵を加えて粘りが出るまで混ぜ合わせたり、ときに野菜なども混ぜ合わせたりして、だんご状に丸めたもののこと。煮る、焼く、揚げるなどの料理があります」
一方「つみれ」は、材料をつまんで汁に入れることから「つみいれ(摘み入れ)」とも呼ばれているそう。「調理した生地を手やスプーンなどで食べる大きさにまとめて、熱湯や汁物へ加えて茹であげて作ります。
一般的には魚を主体としたすり身に、卵白や片栗粉などをつなぎとしたものが多く、イモや豆腐なども使われます」たしかに、「つみれ汁」という言葉はよく耳にしますが、「つくね汁」は聞きおぼえがない気がします。
■「竜田揚げ」は「からあげ」の仲間。大きな違いは味付けにあり!
どちらも衣をつけて揚げられた料理というイメージですが、その違いはいったいどこにあるのでしょうか?
「からあげ(唐揚げ、空揚げ)は下味をつけた食材に衣をまぶして揚げたものの総称です。筑前煮や肉じゃがなどを総称して煮物というのと同じ。調理方法は、下味をつけた肉や魚介類、野菜などの食材に衣(片栗粉や小麦粉)をつけて揚げるか、衣に色々な調味料を入れて下味をつけて食材を揚げるかの2パターンに分類されます」中国から伝わったので漢字で書くと「唐揚げ」とも言い、ニンニクを使っているのが基本なんだそう。
一方「竜田揚げ」は、奈良県の生駒地方に流れる、紅葉で有名な竜田川にちなんでつけられた名称。「肉や魚などに下味をつけ、衣(主に片栗粉)には下味をつけないで揚げるという調理方法。揚げたときに衣の厚い部分は白く、薄い部分は赤褐色に見えることで、川面に紅葉が映える風情を盛り込んだ料理」なんだとか。
「からあげの作り方の1パターンと同じなので、竜田揚げはからあげの仲間でもありますね。日本発祥の竜田揚げはニンニクをほとんど使わず、下味は醤油とみりんが基本になります」
■「お刺身」「お造り」etc.は、地域で呼び方に差も
魚介類を加熱せずに生で食べる「刺身」と「お造り(作り)」は、日本料理の代表的なメニューです。見た目には差がない印象ですが、言葉の意味を紐解くことで違いが見えてきます。
「刺身はもともと“さしみなます”と呼ばれていました。“なます”とは獣肉や魚肉を調味料と合わせて生で食べる料理のことで、魚介類の他に、鶏肉、牛肉、馬肉、こんにゃくなども“さしみ”になります。魚を切ることを“造る(作る)”と呼んだことから、“造り”という名称も生まれたようです」
「刺身」は主に関東、「造り」は関西で多く使われていて、丁寧語で「お造り」と呼ぶようになったんだそう。その昔、武士がいた時代は、「刺す」という言葉は縁起が悪いとされていたので、その流れから「お造り」という言い方を使うようになったのが通説なんだとか。
「作り方には、平作り、薄作り、角作り、あらい、湯引き、昆布じめなどがあります。お店でたまに目にする“あらい”は、骨から切り分けられた魚を薄く切ったり、糸状に細く切ったりして氷水で洗ったもののこと。身が引き締まって縮み脂肪が抜けるので、淡白な味と弾力、歯切れのよさを楽しめる夏向きの料理です。からし味噌、からし醤油、梅醤油などで食べるのが美味しいですね」
また「たたき」は、包丁の腹、すりこぎ、手などで叩いたものや、包丁で細かく刃たたきしたもののことを言います。「“たたく”という調理の仕方がそのまま料理名になっています。また、鰹などブロック状に切ったものを火の上にかざして軽くあぶったものも“たたき”と呼びます。ねぎや生姜、しそ、ニンニクなどが薬味として使われます」
■「煮込みうどん」と「鍋焼きうどん」は、手順で呼び方が分かれる
どちらも、たくさんの具材と一緒に煮込まれた温かいうどん、というイメージがある「煮込みうどん」と「鍋焼きうどん」ですが、こちらもまた作り方に違いがあるそう。
「煮込みは、麺と具、つゆを別々に加熱して、どんぶりの中で合わせる調理方法です。代表的なものは、名古屋の味噌煮込みうどん、山梨県のほうとうなどがありますね。お店によっては、家庭と同じようにだし汁に具を入れて加熱し、好みの味付けにして、うどんを入れて全体をなじませたあとに、煮込みながら仕上げる方法もあります」
一方の「鍋焼きうどん」は、「煮込みうどん」の一種で、江戸時代の終わり頃に大阪で誕生したそうです。囲炉裏に鍋をつるし直火にかけて具材を煮炊きすることを“焼(た)き”や“焼(や)き”と呼び、鍋を焼いているから“鍋焼き”という名前につながったようです。
「料理方法は、すべての具材を鍋に入れて同時に煮込むのが特長。底の浅い土鍋などに、だし汁、うどん玉を入れて、その上に、しいたけ、かまぼこ、野菜、えびの天ぷら、卵などの具をのせて煮ます。ぐつぐつ煮えているところを鍋のまま食べるのが“鍋焼きうどん”の醍醐味ですね」
■「おしんこ」「漬け物」「香の物」の違いは…実はほぼない!?
日本食に欠かせない食べもの、「漬け物」。お店によって「お新香」や「香の物」「漬け物」のように違った名称でメニューに書かれていますが、その差が気になっている人も多いのでは?
実は「お新香」も「香の物」も「お漬け物」も、ぜんぶ同じ「漬け物」のこと。「漬け物」の少し上品な表現が、「お新香」や「香の物」、「お漬け物」です。
「漬け物の歴史は古く、約2,000年前位からあるんだそうです。寺のお坊さんが、ナスやウリ、桃などを塩漬けにして、季節ごとに様々な野菜を中心に食べていました。そして、はじめは塩だけだったものが、味噌や酒、醤油など色々なもので漬けるようになっていきました。とくに味噌は香りが高いので“香(こう)”と呼んでいて、室町時代には味噌漬けのことを“香香(こうこう)”と言ったことが現在の呼び方にもつながっています」
また、江戸時代には、それまでは長時間漬けたものが好まれていましたが、江戸時代には、一晩ほど漬けたものが好まれるように。そこから、新しい香の物、つまり“新香”“おしんこ(お新香)”と呼ばれるようになったのだとか。呼び方の違いで、まったく違う食べもののように思えてくるのが日本語の面白いところですね。
編集・ライター歴トータル17年以上。マンガ、小説、雑誌等の編集を経てフリーライターに転向後、グルメ、観光、ドラマレビューを中心に取材・執筆の傍ら、飲食企業のWEB戦略コンサルティングも行う。そのため、日本グルメの新商品やトレンドのキャッチアップが早く、LIVE JAPANでは幅広い年齢層や国籍の方にわかりやすく伝えている。
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