こんにちは。旅をこよなく愛するライターの矢嶋です。日本では街中で当たり前に見かける自販機。実は、海外ではあまり見かけませんよね。加えて、紙パック飲料自販機というのはもっとレア! そこで今回は、日本ならではともいえる「紙パック飲料の自販機」、中でも日本が誇る大人気キャラクター「アンパンマン自販機」に注目して、その歴史やねらいを紐解いてみようと思います。
株式会社 明治さんに行って、お話を聞いてみた!
ヨーグルトの定番「明治ブルガリアヨーグルト」や、体調管理の強い味方「明治プロビオヨーグルトR-1」、子どもが大好きな「明治それいけ!アンパンマンシリーズ」など、多くの人気商品を製造・販売するのが株式会社 明治。今回、お話をうかがったのは、市乳営業部 自販機・販売促進グループの吉田元茂さんと山口裕さんです。
自販機のほとんどが紙パックという、株式会社 明治
山口さん:明治の自販機というのは、だいたい全国で5万5,000台くらいですね。世の中の飲料自販機が、全国でだいたい250万台くらい。その中で、紙パックの自販機は15万台くらいです。
矢嶋:そのうちの5万5,000台となると、つまりは御社が紙パック自販機シェアのほぼ三分の一を占めてるということですよね?!
吉田さん:いやいや(笑)。そうなるのですが、明治の自販機は、紙パック自販機がほとんどというだけで。自販機の中でも紙パック自販機市場というのは、かなりニッチな業界ですよ。
矢嶋:そういうことでしたか!明治さんの自販機は、ほとんどが紙パックということなんですね。
吉田さん:そもそも明治の自販機は、紙パックの販売が中心ですが、シースルー型と呼ばれる中味が見えて番号を押すと出てくるようなものもあって、そういった自販機ではビン牛乳やカップヨーグルトなども入れられます。自販機は冷蔵庫なので、何でも置けるんですよね。
矢嶋:御社で、最初に紙パックの自販機が設置されたのは、いつ頃なのですか?
吉田さん:1977年9月に、牛乳とコーヒーの2種類を紙パック商品として発売しました。その翌年から自販機を設置しています。当初の紙パックは、こんなずんぐりむっくりしたデザインだったんです。
吉田さん:初代機がどこに設置されたかというのは残っていないのですが、当初からかなりの数を置いていたんじゃないかな。
山口さん:ただ、実はうちは缶入りジュースの先駆けだったんですよ。
矢嶋:そうなんですか?!
山口さん:1957年に、日本初の缶入りオレンジジュースを発売したのが、明治なんです。
吉田さん:それまでは、瓶が主流でしたからね。瓶、缶ときて、紙パックと。それぞれに特性がありますけど、紙パックは飲み切りできるサイズ感というところや、作業をしながらでも飲みやすいっていうのが利点ですよね。当時、瓶に比べて軽いし割れないので携帯に便利、空き瓶を回収する手間が省ける、といった声をいただいていたようです。最近だとオフィスでも、キャップが閉じられるものか、ストローがついていてこぼれにくいものしか持ち込めないというところもあったりしますし。そうしたところでも、紙パックのニーズがあるのかなと思いますね。
日本ならではの自販機文化
矢嶋:どこに設置してある自販機が、一番売り上げが高いのですか?
山口さん:地域というよりは、業態でいうと、たとえば温浴施設の中にある自販機のビン牛乳はよく売れますね。
吉田さん:私、去年まで大阪にいたんですけど、東南アジアの方がたくさんいたんです。特に、中国の方がスーパー銭湯で自販機の牛乳を飲んだりしてるんですよ。そういうところで売ってるのが、きっとめずらしいんでしょうね。
矢嶋:外国の方にとっては面白いんでしょうね。「お風呂から上がったら牛乳!」は、日本の定番文化みたいなところありますもんね!
吉田さん:そうですよね! 外国の人から見たら「なんでこの人たち牛乳飲んでるんだろう?」って思ってやってみたくなるんでしょうね。
矢嶋:確かに!(笑)
紙パック飲料人気商品はオ・レ系
矢嶋:現在の紙パック飲料の人気商品を教えてください。
山口さん:人気は、やはりミルク系で、まろやかなミルク感とフルーツのおいしさを楽しめる「明治オ・レシリーズ」ですね。この商品はほぼすべての明治自販機に入っていると思います。
吉田さん:個人的には、「青汁」なんかも売っていきたいんですけどね。ちゃんとトクホも取っている、いい商品なんですよ!
矢嶋:これはどこで売っているんですか?
吉田さん:一部のスーパーや自販機で売っています。たまにファンの方がいらっしゃって、この商品をぜひ自販機に入れてほしい、と言われることがあるんです。
そして大人気はアンパンマン自販機
山口さん:そして、やはりアンパンマン自販機は人気ですね。
矢嶋:ちなみに、アンマンパン自販機はいつから設置されて、全国にどのくらいあるんですか?
山口さん:自販機の設置は、2011年からですね。今、全国に4000台くらい置いてあります。一番多いのは、商業施設やショッピングモールの授乳室など、小さいお子さんが来るところですね。
吉田さん:あとは、お子さんが泣いたりしたときに、アンパンマンジュースを渡すとあやす道具になるので、病院の待合室や小児科、調剤薬局とか、そういったところにもありますね。やっぱり泣き止むんですよね。
山口さん:お子さんは病院って嫌いじゃないですか。なので、少しでも癒しになりますよね。家族連れでという点で、温浴施設も多いですね。
吉田さん:大阪の商店街の中にも、アンマンパン自販機が設置されてたんです。それも珍しいらしく、外国の方がスマホでたくさん写真撮ったりしてたんですよ。
矢嶋:やはり!外国人の方にもアンパンマンは人気なんですね。
吉田さん:観光地に置くと、みなさん写真撮ったりしてますね。なので、外国人の方が良く来るところにも、アンパンマン機を置いています。たとえば、京都の伏見稲荷の近くとか、猫のタマ駅長で有名な和歌山の貴志川電鉄にも置いてありますね。やはり外国の方に人気ですね。
矢嶋:他に、海外の方向けになにか取り組んでいることなどはあるんですか?
吉田さん:自販機でいえば、商品や買い方がわかるように英語・中国語・韓国語表記のシールを張り付けたりしています。
子ども向けにキャラクターとのコラボ商品で開発されたアンパンマン飲料
矢嶋:そもそも、なぜアンパンマン飲料だったのですか?
吉田さん:他社さんでは幼児用牛乳といった商品があったんですが、弊社にはお子さま向けの商品というのが当時はまだなかったんです。それで、子供向けにキャラクターをつけてと考えて、キャラクター使用のライセンス契約を経てまずは商品を開発したというのが経緯ですね。
矢嶋:そこからアンパンマン自販機が開発された、ということですか?
吉田さん:それが結構人気になったので、じゃあこれを売るための自販機を作ろうということで、販売ツールとして自販機ができたということなんですよ。
矢嶋:なるほど。誰でも子供の頃に、一度はアンパンマン好きになりますもんね。このアンパンマンジュース、種類はどのくらいあるんですか?
吉田さん:現在は、8種類あります。また季節ごとに一部フレーバーを入れ替えたりしています。
山口さん:自販機で人気のフレーバーは完熟りんご、ぶどうとりんご、やさいとりんご、いちごオ・レあたりですね。あと時期によって、冬場はココアを出したり、夏場はイオン飲料にしたりと、違うフレーバーを出しています。
吉田さん:アンパンマン自販機のほうも進化していて、今設置されているのは三号機なんです。一番近いところだと、東京駅の授乳室にありますよ。
さっそく東京駅の授乳室にあるアンパンマン自販機に行ってみた!
実際にアンパンマン自販機を試してみようということで、さっそく東京駅の地下一階、銀の鈴の近くにある授乳室の中のアンパンマン自販機を発見!
自販機に近づくと、あの定番のメロディーとアンパンマンの声が流れてきました。こちらの三号機には人感センサーがついており、近づくと音楽が流れる仕組みになっています。さらに、ジャムおじさん、ばいきんまんなど、タイミングによって代わる代わるメインキャラクターがおしゃべりしてくれる、なんとも工夫を凝らした自販機です。
お子様向けとはわかっていますが、とても美味しかったです。
いかがでしたか? 手軽で飲みやすい紙パック飲料。そして、ただの自販機とはひと味違うアンパンマン自販機。日頃何気なく見ていた自販機が、だんだん気になる存在になってきたのではないでしょうか。
これからも、私たちが意外と気づいていない「日本ならではのいろいろな物たち」から目が離せません。
旅ライター×海外ツアーコンダクター。社会人向け教育コンテンツの企画開発・編集担当として11年従事。プライベートでは学生時代から旅に魅了され、これまで世界約50カ国150都市以上をめぐってきた大の旅好き。世界中、日本中のグルメを味わい、自然を感じ、世界遺産や歴史的建築を見て、温泉めぐりをするのが生きがい。そんな旅好きが高じて、会社員から旅ライター×海外添乗員へと転身。現在は、年間100日以上海外を飛び回りながら、旅ライターとしても活動。旅の楽しさ、日本の魅力、世界の多様な価値観をより多くの人に広めるべく、インバウンドの添乗や旅ライターの取材等で、日本各地を訪れて情報発信をしている。
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