
桜ほど日本文化に影響を与えた植物もないだろう。咲き誇る花の美しさ、そして枯れて散る様は日本人の死生観の哲学を象徴し、数々の文学のモチーフとなっている。咲いては散る桜の花に、独自の思想を持った男がいる。高岡照海氏は父の意志を受け継ぎ、自ら育てた桜の苗を、国家間の友好と平和の象徴として世界中の国々に贈っている。
高岡氏が贈っているのは、太陽の光を意味する「陽光桜」という品種。今回はこの桜にまつわるエピソードをご紹介しよう。
戦下の誓い「桜の木の下でまた会おう」

高岡照海氏の父・高岡正明氏は、四国・愛媛県の山間にある小さな村の学校で、16歳から19歳の生徒たちに農業を教えていた。ところが第二次世界大戦が勃発。若者たちは次々と日本軍に招集されていった。
校庭には大きな桜の木があった。高岡正明氏は招集されていく生徒たちを「再びこの桜の木の下に集まろう」と励まし、戦場へと送り出した。しかし戦争は凄惨を極め、終戦近くになっても半数の生徒も戻ってこなかったという。
教え子たちの戦死の知らせが届くたびに、高岡氏は桜の木を見上げながら、なぜ自分が生き残り、若者たちが死ななければならなかったかと悲しみに暮れた。そしてやがて、一つの思いに至るようになる。
生命力に満ちた桜の新品種開発への挑戦

高岡氏はその思いを象徴する桜の新品種の開発に取り組むようになる。暑さにも寒さにも耐え、地球上のどこでも花を咲かせる桜を生み出すこと、それが彼なりの教え子たちへの追悼だった。
幾度にもわたる失敗を繰り返し、諦めかけたこともあった。それほどまでに、生命力のある桜を作るのは難しいことなのだ。しかし諦めかけるたびに思い出したのが、「桜の木の下で会おう」という教え子たちとの誓いだった。
再び奮い立った高岡氏は、30年にもわたり200種を超える桜の交配の実験を行った。そしてついに、有効な交配の組み合わを発見することとなる。
太陽の光を象徴する陽光桜は、寒緋桜と天城吉野の交配によって誕生した。寒緋桜からは暑く乾燥した気候でも生育する性質を、天城吉野からは風の吹きすさぶ寒い土地にも耐えうる性質を受け継いでいる。陽光桜は世界中いたる場所で花を咲かせ、戦死した教え子たちを追悼している。
戦いから花びらへ、戦争から平和へ

高岡氏は第二次世界大戦が繰り広げられた土地、そして中国や韓国、フィリピンなど教え子たちと同じような若者が戦った国に陽光桜の種を贈った。そして高岡氏の死後には、息子である高岡照海氏がその意志を受け継ぎ、さらに10数か国へと陽光桜の苗を寄付している。
現在、明るい桜色の花びらは平和の象徴として、多くの人々が亡くなったかつての戦場を彩っている。また陽光桜は第二次世界大戦の戦場のほかにも、ミャンマーやベトナムでも咲いている。
かつての悲しい記憶を思い起こさせる陽光桜。しかしそれはまた平和、友好、そして協調の象徴でもあるのだ。
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