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歌舞伎の象徴と言えば、色鮮やかな衣装と独特な役者の化粧。この「歌」「舞」「伎」という3文字は、この日本独自の舞踊劇に込められた3要素を表している。ただし「歌舞伎」という文字は後の時代に当てられたもので、もともとは「普通の道から外れた」という意味の「かぶく」という動詞から由来するといわれている。
歌舞伎の成り立ち
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出雲阿国が女性のみによる歌舞伎を初上演したのは、1603年のこと。それから約30年後、「歌舞伎は非道徳的でわいせつ」といった議論が持ち上がるようになり、その結果、幕府によって女性役者が舞台に立つことを禁じることとなった。ところが女性役者に代わって若い男性役者が演じるようになっても、似たような議論は絶えず、結局、歌舞伎は年老いた男性役者のみで演じられることとなった。
歌舞伎が最も発展したのは江戸時代。歌舞伎役者はいわば、今でいうポップスターのような存在だった。現代に残る歌舞伎の様式や脚本もまた、江戸時代に確立したものだ。
「普通の道から外れた」歌舞伎が、日本の伝統を代表するようになった理由。それはこの舞台劇が初めて海外で上演された際に、大きな衝撃を与えたことも大きい。歌舞伎が男性役者のみで演じられることはよく知られているが、もともと歌舞伎を考案したのはある女性だった。彼女の名は出雲阿国(いずものおくに)で、出雲大社の巫女だったと伝わっている。神を讃えるための儀式の舞を踊るのは巫女の務めのひとつだが、彼女の独特な舞が後の歌舞伎の起源ともなったとされている。出雲阿国は儀式の堅苦しい伝統を破り、風刺を込めた舞を踊ったり、あるいは恋人たちの仲違いといった大衆の日々の営みを舞の主題とした。
彼女の舞はたちまち話題となった。さらに他の女性に舞を教えたり、彼女の踊りを手本にする者も現れ、やがて女性のみの歌舞伎の劇団も発足。この潮流は日本中へと広がっていった。
歌舞伎のビジュアル
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歌舞伎役者の独特なメイクは「隈取り」と呼ばれる。白・赤・青・茶の色は血管や筋肉を強調するためのものだ。また演じる役によって使う色は異なり、主役はエネルギッシュな赤と白、悪役は冷酷さを表す青が用いられる。歌舞伎の衣装が一般の着物と比べてはるかに大胆で派手なのは、舞台で目立たせる効果を狙っているため。特に女性役の衣装は、お姫様は赤い着物、側室は豪華な刺繍で飾り立てた着物といったように、その役回りや人物像を表現している。
舞台
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歌舞伎の舞台は、その他のジャンルの演劇の舞台とは大きく異なる構造となっている。最も象徴的な特徴は、舞台から観客席の真ん中を通り、劇場の後ろまで伸びる花道だ。この舞台装置は「見栄」のために使われる。「見栄」とは、役者が舞台へと駆け上がり、パッと動きを止め、顔を誇張して力強くポーズを取る、歌舞伎独特のダイナミックな感情表現のことだ。また舞台と花道の地下には「奈落」という空間がある。ちなみに奈落とは、仏教の宇宙論でいうところの地獄から名付けられた用語。奈落から役者が突然、花道に飛び出すパフォーマンスも歌舞伎特有の表現だ。
歌舞伎役者
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一般的に歌舞伎役者は特定の劇場、あるいは歌舞伎の流派に属しており、また大半の歌舞伎役者は何代にもわたる家元の生まれだ。親から子へと受け継がれる歌舞伎役者の芸名は、特定の役や演技の型とも深く関係しており、非常に重要なものとされている。伝統ある芸名の例には、市川團十郎、尾上菊五郎、坂東彦三郎などが挙げられる。またそれぞれの家元は、「家の芸」と呼ばれる特別な演技の型を継承している。そしてその役者の技術が十分に磨かれたと判断されると、「襲名」という儀式で芸名が与えられることとなる。
かけ声が生む一体感
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歌舞伎というと伝統的で堅苦しいものというイメージがあるかもしれない。しかし実際は、舞台と客席の一体感こそが歌舞伎の魅力なのだ。この一体感を生み出すのが「かけ声」で、特に「見栄」などの劇的な瞬間に観客が役者の名前を叫ぶ行為を指す。あるいは名前でなくても、幕が上がって舞台が始まる際に「待ってました!」といったかけ声をあげることもある。かけ声を専門とする組合もあり、その多くが年輩の日本人男性で構成されているが、なかには女性や外国人を受け入れているグループもある。
歌舞伎の劇場
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いくつかある歌舞伎専用の劇場のなかでも、最も有名なのは東京・銀座にある歌舞伎座だ。100年以上の歴史を持つ同劇場は、2013年に改築されたが、伝統的な構造はそのまま継承している。
近代化された中に伝統美を残した建物には、歌舞伎関連のグッズを売るみやげ物店はもちろん、歌舞伎の一幕から全幕までのチケットを購入できる自動券売機も設置されている。そのほか劇中の台詞や演奏された歌詞の現代語訳、物語の内容、役者、歌舞伎を代表する舞台装置などを説明するモニターも設置されている。なお、歌舞伎のチケットはネットでも購入ができる。
歌舞伎を観覧しよう
今や歌舞伎は日本人のみならず、英語の字幕パネルなどの整備で外国人にとっても身近なものとなっている。そもそも歌舞伎は大衆芸能のため、ドレスコードなどはなく、チケットもリーズナブルだ。独特の感情表現や鮮やかな衣装、そして深い物語と魅力に満ちた歌舞伎の世界。日本に来たらぜひとも堪能してほしい。
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