大都会・東京は、かつて「江戸」と呼ばれる活気あふれる町だった。何世紀にもわたって栄えた江戸では、数々の色鮮やかな文化が花開いた。今なお残る江戸の文化や歴史を知れば、東京観光にもより新たな視点と面白みが加わるだろう。
武家屋敷
150年以上も昔のことながら、江戸は現在の東京と同様に日本の政治と文化の中心地だった。現在、皇居のある場所には将軍(当時の政治・軍事の統治者)の住まい兼、政治の中枢である江戸城が築かれていた。また侍たちは、江戸城の周辺に住居を構えた。侍たちの住居跡は、今なお東京の随所に残されている。たとえば日本の最高学府である東京大学の「赤門」は、かつて武家屋敷の門だったものだ。
江戸の大衆文化
多くの国と同様に、かつて日本も政治と文化を牽引していたのは上流階級だった。ところが江戸時代は、一般の人々の中から数多くの文化が生まれた時代だった。1603年に江戸幕府を開いた初代将軍・徳川家康は、それまでの長年にわたる戦乱の世を経て、平和な国造りを志した。人々は戦の代わりに自己表現に夢中になり、その結果、さまざまな文化が花開いたというわけだ。江戸は1868年まで続き、その間に浮世絵や歌舞伎といった大衆芸能から、寿司や天ぷらといった食文化までもが発展を遂げた。
町民の日常生活
江戸の町民の多くは「長屋」と呼ばれる平屋に住んでいた。長屋は現在のアパートのような集合住宅であり、会話や物音も壁から隣りに筒抜けで、プライバシーはないに等しかった。同じ長屋に暮らす住民同士は家族のような関係で、共に助け合い支え合った。日本人特有の集団意識や相互協力のルーツは、江戸の生活様式に由来するといわれている。
江戸東京博物館
江戸時代の初期を体験できる場所として最もオススメなのが、江戸東京博物館だ。ちなみにこの博物館は、年6回行われる相撲の本場所の開催地である両国国技館の隣にある。江戸東京博物館の見どころは、かつての江戸と現代の東京の町並みを再現した模型の展示で、これを見ると江戸の中心地だった日本橋がいかに混雑した場所だったかがうかがい知れる。また実寸大で再現した長屋の展示は、人々が密接に結びついていた暮らしの様子を物語る。江戸の歴史を肌で感じる貴重な体験になるに違いない。
江戸深川資料館
江戸の町民はニワトリの鳴き声で朝を迎える。そして昼間は、通りを行き交う行商人の物売りの声が町中に響き渡る。1日の中でようやく静けさがやってくるのは、夕陽が空を赤く染める夕暮れ時だ。清澄庭園の近くにある江戸深川資料館では、そんなかつての江戸にタイムスリップしたような感覚を味わえる。ここには長屋や店といった建物から、火の見櫓まで、江戸の町並みとそこで暮らす人々の空気感が完全に再現されている。音と光による演出も臨場感たっぷりだ。
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